ハント症候群の予後と治療と予防





ハント症候群の予後と治療と予防

ハント症候群は、ベル麻痺と比較して麻痺が重症であることが多く、治癒率も50~70%程度と不良となります。

そのため、できるだけ早期にVZVの増殖を抑制し、また神経浮腫による顔面神経管内での絞拒を解除することを目的として、抗ウイルス剤とステロイドの併用療法が推奨されています。

Murakamiらは、麻痺発症3日以内に治療を始めた群では完全治癒率が75%、発症4~7日目に治療を開始した群では48%、発症7日以降では30%と有意に低くなり、発症早期の併用療法が有用であることを報告しています。

しかし、ハント症候群の場合、早期に併用療法を開始しても、高度の神経障害が生じ、病的共同運動などの後遺症を呈する例が少なからず認められます。

ハント症候群の治療成績には限界が認められることから予防が重要となります。
2008年に米国CDCは60歳以上を対象に帯状庖疹ワクチン接種を勧奨しています。

また、小児期に水痘ワクチンを接種した後でも帯状庖疹が発症しますが、その頻度はワクチン未接種者に比べ低率であり、また軽症であることが報告されています。 小児への水痘ワクチン接種、高齢者への帯状庖疹ワクチン接種により、ワクチン接種率が高い国では全年齢層において帯状庖疹の発生率が低下し、さらに軽症化することが予測されます。 その結果、ハント症候群の発生率が低下し、顔面神経麻痺と第8脳神経症状が軽症化することが期待できます。


主な末梢性顔面神経麻痺の原因





主な末梢性顔面神経麻痺の原因

特発性
Bell麻痺

炎症
Ramsay Hunt症候群(水痘帯状庖疹ウイルス)、中耳炎(急性、慢性、真珠腫性、結核性)、Lyme病(Borrelia)

腫瘍
神経鞘腫(顔面神経,前庭神経)、耳下腺癌、側頭骨血管腫

外傷
医原性(耳下腺手術、中耳手術、脳神経外科手術)、側頭骨骨折、顔面外傷

全身疾患
糖尿病、Guillain-Barre症候群、Sarcoidosis


X線北大病期分類(大腿・脛骨関節)





X線北大病期分類(大腿・脛骨関節)

Ⅰ Bone spur only

Ⅱ Narrowing of joint space(less than 1/2 normai joint space)

Ⅲ Narrowing of joint space(more than 1/2 normal joint space)

Ⅳ Obliteration of joint space or minor bone attriation (under 1 cm)

Ⅴ Major bone attriation (over 1 cm),’subluxation, or secondary lateral arthrosis


装具適応時の評価項目と効果判定





装具適応時の評価項目と効果判定

装具処方時や変更時の評価として、運動麻痺の回復段階、筋緊張の状態、表在・深部感覚、関節可動域、健・患側肢の支持性、立位バランス、歩行評価、知的レベルや半側空間無視等の高次脳機能障害などがあります。

筋緊張の評価は、臥位や座位の静的状態だけでなく、起立・歩行の動的状態で行います。

可動域は痙縮か拘縮か、徒手矯正可能な柔軟性が残存しているか否かを評価します。

歩行については、歩調、歩幅、歩行スピード、持久力、荷重のシフト等について、処方時、仮合わせ時、完成時に行い、完成後は定期的な評価と、目的、病態の変化に合わせた装具の調整を行い、過度な支持・矯正には十分注意するようにします。


脳卒中の異常パターンに対する装具適応と対策





脳卒中の異常パターンに対する装具適応と対策

足趾の過度の屈曲に対しては、屈曲による痛みが生じる場合があるので靴のトゥボックスを拡げてたいおうします。

尖足・内反尖足に対しては、痙縮や変形が軽度の場合は、フットアップスリング等の軟性装具で対応できる場合もあります。

軽度から中等度の痙縮による変形に対してはプラスチック製または金属支柱付きの短下肢装具が適応となります。

徒手や体重支持でも矯正が出来ない場合は、尖足では程度に応じて踵部を補高し、内反足に対しては短下肢装具と外側Tストラップで矯正したり、徒手矯正可能な場合は外側に、不可能な固い例に対しては内側にウェッジを靴にインサートして対応します。
外反足に対しては内反足と逆の対応を行います。

膝過伸展(反張膝)に対しては、継手付きの短下肢装具では、足継手を後方制動にして足関節を背屈位に保持し、膝関節が屈曲する方向に制御するようにします。

膝折れに対しては、足継手を前方制動にして足関節を底屈位に保持し膝が伸展する方向に制御します。

遊脚期でのつま先引きずり、分まわし、棒足歩行に対しては、健側靴の補高や足関節を背屈保持し、内反や尖足の予防・矯正を行ない、痙縮の程度により装具を選択します。

長下肢装具の使用例では膝を軽度屈曲位にすると患肢のクリアーが容易になり、踵接地時の不安定性も軽減されます。
足関節固定時には装具靴をロッカーボトム様にすると踏み返しが良くなります。


脳卒中と膝装具





脳卒中と膝装具

脳卒中に対して単独で適応する事は少なく、短下肢装具と組み合わせて使用する場合があります。

起立歩行時に膝過伸展(反張膝)がみられる場合や不安定膝、膝屈曲拘縮時に適応となります。

反張膝に対しては軽度屈曲位(10~15。)に保持し対応します。

屈曲拘縮に対しては膝装具にダイヤルロック、ファンロック、ターンバックルを用いて矯正する場合もあります。

膝装具には、スウェーデン式、TKS、SK式、HRC膝装具などがあります。

反張膝、屈曲拘縮は下肢三頭筋やハムストリングスの痙縮の影響により歩行時に増強する場合が多いので金属支柱付き短下肢装具か長下肢装具で対応したほうが良いです。


プラスチック短下肢装具





プラスチック短下肢装具

1970年代より熱可塑性の高密度ポリエチレン(オルソレン、サブオルソレン)やポリプロピレンの装具への導入や加工、真空成形法等の製作技術の進歩により急速に普及し、多種多様な装具が発表されています。

プラスチック短下肢装具を形態で大別すると、①後方支柱タイプ、②前方支柱タイプ、③側方支柱タイプ、④らせん状支柱タイプの4つに分類されます。

後方支柱タイプは最もポピュラーであり使用頻度も多く、shoe-horn typeやEngenのTIRR typeがあり、硬度は材質の厚みや後部支柱の幅のトリミングで調節されます。

前方支柱タイプには湯之児式やKU式があり前足部を挿入する形態になっており、背・底屈の可橈性は僅かですが、装具や靴の着脱が容易です。

側方支柱タイプにはたわみを利用したSaga typeがあり、たわみ部分が生理的足堅等軸に近く背・底屈の補助や抵抗に作用します。

らせん状支柱タイプは動作時に下腿への支柱の巻き付きや巻き戻りなど、装具自体のたわみで足部をコントロールします。
らせんタイプと半らせんタイプがあります。


脳卒中に対する短下肢装具





脳卒中に対する短下肢装具

脳卒中に対して最も多く処方される装具です。
金属支柱付き装具と、著しい発展を遂げているプラスチック装具があり、足継手なしと足継手付きがあります。

金属支柱付き短下肢装具は、弛緩性麻痺、中等度から重度の痙性麻痺や足部内反、外反のある例、重度の感覚障害がありプラスチック装具では対応出来ない症例に対して処方されます。 また、軽度から中等度の反張膝や膝折れ、膝屈曲拘縮を合併した症例にも適応となります。

足継手にはクレンザックやダブルクレンザックを用いて、足関節部の可動域の制限とバネを用いて底背屈の補助を行ないます。

痙縮や拘縮、内反尖足が強い症例に対してはロッドに替えて底屈方向への動きを制限する後方制動を行ないます。

また、内・外反が強い例に対しては外側・内側のT又はYストラップにより制限します。

初期の足関節不安定時は足部固定にした方がよいと言われています。

反張膝に対しては軽度(0~10°)底屈制限・後方制動を行ない、膝折れや軽度の屈曲拘縮には背屈制限・前方制動に足継手を調整し、膝のコントロールを図るようにします。

金属支柱付き短下肢装具は固定性、制動性が良く病態が変化しつつある時期に装具の持つ機能調整が行なえ、多様な対応が可能であり、装着効果も良いです。


下肢装具の膝・足継手と適応





下肢装具の膝・足継手と適応

○膝継手
伸展制限付:膝関節側方不安定、反張膝膝折れ、膝関節の安静、固定

伸展制限付(オフセット):膝伸筋筋力低下、膝折れ防止

ダイヤルロック付:膝関節の屈曲拘縮、伸展拘縮


○足継手
遊動式:足の側方不安定

底屈制御付:下垂足、底屈筋痙縮、反張膝

背屈制御付:底屈筋力低下、背屈筋痙縮、膝折れ

底・背屈制御(含固定):足関節周囲筋の高度筋力低下足関節不安定、足関節の安静・固定

底・背屈補助付:足関節周囲筋の筋力低下、底・背屈筋、膝伸筋力の変化時期


脳卒中に対する長下肢装具





脳卒中に対する長下肢装具

長下肢装具は膝関節と足関節の二関節をコントロールし、麻痺による膝折れや反張膝、膝屈曲拘縮など、短下肢装具ではコントロールできない重度の下肢機能障害に対して用いられます。

片麻痺患者への長下肢装具処方の目的として、石神らは、①重度の弛緩性麻痺、②重度の深部感覚障害、③半側空間無視、④支持性の低下、⑤関節の変形・拘縮をあげ、代償機能のみでなく、促通効果や治療用装具としての重要性を述べています。

長下肢装具を必要とする症例は、装具の着脱や、立位・歩行時に介助を要する場合が多いため実用性は低いですが訓練用としての利用価値は大きいと思われます。

膝の安定性、支持性が増せば短下肢装具へ移行することを考慮しておきます。

近年は、発症後早期より長下肢装具を治療用装具として起立・歩行訓練に用いた報告も多くみられます。

膝角度は完全伸展位よりも軽度屈曲位(20°前後)にすると患肢のクリアーもよく、股関節に屈曲モーメントを与え、股伸展筋の促通にも効果的と言われています。

膝関節に屈曲拘縮がある症例に対しては、長下肢装具にターンバックルやダイヤルロックを付け、拘縮の矯正に用いる場合もあります。


脳卒中に対する下肢装具の目的





脳卒中に対する下肢装具の目的

脳卒中では、発症から経過、時期によって病態が大きく変化します。 発症初期の弛緩期から筋緊張が亢進し痙性麻痺に変化していく例が多いです。

また、慢性期には拘縮や変形などの二次的合併症を伴う例もあり、装具の目的も発症からの時期により異なってきます。

急性期で弛緩性麻痺のために、起立や歩行が困難な症例に対しては下肢に支持性、安定性を与えることが主目的であり、慢性期で痙縮や拘縮が起立や歩行を阻害する場合には痙縮のコントロールや変形の予防・矯正等の目的も加わってきます。

一般的には、体重の支持、変形の予防、変形の矯正、不随意運動のコントロールが挙げられているが、脳卒中患者に対する処方目的としては、立脚期の安定を得やすくし、歩行時に床からのつま先離れを容易にして正常歩行パターンに近づけるなど、より具体的になっています。 脳卒中片麻痺患者の起立、歩行能力に影響を与える要因として、脳の損傷部位とその広がり、高次脳機能、感覚機能、平衡機能、年齢等が挙げられますが、運動麻痺の程度や回復段階、下肢の支持性など、個々の症例により様々な病態を持つため、機能に合った装具、目的に沿った装具を十分検討し、症状に合致しない装具や過度の装具(over bracing)にならないよう注意する必要があります。


脳卒中片麻痺と肩装具





脳卒中片麻痺と肩装具

脳卒中片麻痺においては、弛緩麻痺の場合は特に肩関節の亜脱臼を生じやすいと言われています。
また、麻痺により良肢位保持が困難なためにADLに支障が生じることがあります。
そこで一般的に用いられるのが三角巾です。
しかしこの三角巾ですが、実際に使用してみると意外に装着が難しく、装着の仕方にバラつきが生じ、装着する人により肢位が異なってしまう場合もあります。
そのような際には市販のアームスリングを用いると対応が統一でき良いです。
アームスリングの中にはワンタッチで固定でき、一度肢位を設定すればその後は常に同一肢位で上肢を保持することができるものがあります。


起立性低血圧





起立性低血圧

起立性低血圧は臥位または座位から立位直後(数分以内)に血圧が低下して失神する病態です。

圧受容器反射系の機能異常(低下)もしくは循環血液量の過度の低下に起因します。

診断基準として起立3分(5分)以内に収縮期血圧の20mmHg以上の低下(もしくは収縮期血圧90mmHg未満)、拡張期血圧の10mmHg以上の低下とされています。

起立性低血圧の原因として、①特発性自律神経障害(純粋自律神経失調、Shy-Drager症候群、Parkinson病など)、②二次性自律神経障害(加齢、自己免疫疾患、腫瘍性ニューロパチー、多発性硬化症、糖尿病、アミロイドーシス、アルコール中毒、腎不全、神経性感染症、代謝性疾患などによる)、③薬剤性および脱水症性(利尿薬、α遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、硝酸薬、抗うつ薬、節遮断薬、精神神経作動薬、アルコールなど)がありますが、薬剤性および脱水に起因するものが最も多いと言われています。

通常は起立による血圧低下に伴って代償性に頻脈となりますが、神経疾患による純粋な自律神経失調では低血圧に伴う心拍数の上昇が欠如しています。


SEIQoL-DWの概要





SEIQoL-DWの概要

SEIQoL-DWは、半構造化された面接によって行われます。

手順は、①検者はまず、個人のQOLを決定する最も重要な5つの生活の領域(キュー)を回答者から引き出す、②さらにそれぞれの領域の満足の程度(レベル)を引き出す、③その出された5つの領域の重みづけを引き出します。

③ではディスク(円盤)を利用して、面接者にそれぞれの領域の相対的な重要性を決定してもらいます。

さらにそれぞれの領域(キュー)の、満足度(レベル)と重みを掛け合わせ積を求め、総計することも可能です。 <SEIQoLインデックス=Σ(レベル×重み)〉

この評価スケールを用いQOLを量ることにより、QOL向上を目的とするリハビリテーションプログラムの立案と評価の一助となります。


ALSに対する運動療法





ALSに対する運動療法


ALSの特に運動療法を考える上で、重要な3つの事項があります。

①筋力および動作訓練


機能訓練の効果は正常者での効果ほど著明ではなく、またその処方は安全な範囲でなされ、disuseあるいはoverworkによる機能低下に注意しなければならないとされています。
Bello-Hass VDらによりALSの筋力トレーニングは有用性が示されていますが、そこでもMMT3以上と考察されています。しかし、運動が積極的に行えない状況下においても、運動を行っていないわけではありません。
目的が筋力強化・向上だけでなく、機能維持や心理的な効果も期待できるためです。
exerciseを低強度で行い自信や満足感を得ることも運動療法の1つとの考えもあります。

②合併症の予防


TPPV施行のALS症例の予後は大きく改善し、現在では80%以上の10年生存率が期待できるようになっています。安心した長期の療養生活を送るためには合併症の対策をしなければいけません。

人工呼吸器装着ALS患者の肺合併症として、箕田は、①気管支の閉塞・換気障害、②人工呼吸器関連肺炎(VAP)、③無気肺・胸水を挙げています。

この中でもVAPはTPPV施行ALS症例の直接死因の一位(33.3%)となっています。

肺理学療法(呼吸リハビリテーション)の目的は、

  1. 呼吸筋力の強化と維持
  2. 胸郭の柔軟性の維持・肺の弾性維持
  3. 排疾・(窒息・肺炎・無気肺などの)合併症の予防
  4. 心地よさ
  5. 代償的手段の使用による運動量の維持(ADLの維持・向上)
  6. 定期的な呼吸機能評価や呼吸理学療法によって、患者自身が呼吸状態を把握し、治療選択や、感染、誤嚥・窒息などのリスクに対して判断対処する

といった肺合併症の予防を含めた6項目が挙げられています。
記載されているTPPV管理下で行える呼吸リハビリテーション手技は大きく2つに分かれます。

1つ目に胸郭可動性・肺弾性維持のための手技と、2つ目に排疾法としての手技です。
これらを行うことで合併症を予防し安全で充実した生活を行うことが必要と考えられます。

③緩和ケア(QOLの向上を目的として)について


緩和ケアとはWHOの定義(2002年)によれば、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life:QOL)を改善するアプローチとされています。
これでは消極的な印象を持つ方もいるかもしれませんが、WHOは1998年と2002年にそれぞれ緩和ケアの定義を出しており、2002年の新しい定義ではく予防という言葉が入り、言わば、攻めの姿勢も必要としています。 つまり、リハビリテーションであれば、人工呼吸器装着による肺合併症やROM制限また高頻度に出現するといわれる疼痛などを積極的に予防しながら、精神的・社会的に働きかけ、QOLの向上を図るというものであると考えられます。
個人別QOLの評価としては、SEIQoL-DW(SEIQoL-direct weighating)等があります。


失神患者の高リスク基準





失神患者の高リスク基準

1.重度の器質的心疾患あるいは冠動脈疾患:心不全、左室駆出分画低下、心筋梗塞歴

2.臨床上あるいは心電図の特徴から不整脈性失神が示唆されるもの
 ①労作中あるいは仰臥時の失神
 ②失神時の動悸
 ③心臓突然死の家族歴
 ④非持続性心室頻脈
 ⑤二束ブロック(左脚ブロック、右脚ブロック+左脚前枝or左脚後枝ブロック)、 QRS≧120msのその他の心室内伝導異常
 ⑥陰性変時性作用薬や身体トレーニングのない不適切な洞徐脈(<50/分)、洞房ブロック
 ⑦早期興奮症候群
  ・QT延長or短縮
  ・Brugadaパターン
  ・不整脈原性右室心筋症を示唆する右前胸部誘導の陰性T波、イプシロン波、心室遅延電位

3.その他:重度の貧血、電解質異常等


循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)より。


失神の定義





失神の定義

失神は急性および可逆性の全般的な脳血流低下に起因する一過性意識消失と定義されます。
一過性意識消失は失神と非失神に分かれ、前者には心原性失神、起立性低血圧、反射性失神が含まれ、後者にはてんかん、代謝性疾患、過換気症候群、心因性等によるものが含まれます。
しかしながら、両者の鑑別は必ずしも容易でなく診断が困難な場合もあります。




小脳半球症状と小脳虫部症状





小脳半球症状と小脳虫部症状

小脳半球症状
代表的なものは運動失調と呼ばれ、大脳の障害時のような手足の筋力低下や、感覚障害がないにもかかわらず、スピードや力加減がうまくいかないためにスムーズな動きをすることができず、日常生活動作が不器用になってしまう(測定異常、共同運動障害、反復拮抗運動不能、筋緊張低下、無力、企図振戦)。
これらは大脳の場合と異なり、例えば右の小脳半球の障害によって右の上下肢に障害が現れ、起立時や歩行時に障害側に倒れやすくなってします症状が現れる。
さらに発声筋の協調運動障害も起こるため、緩慢でリズムが悪く、とぎれとぎれで抑揚の不自然な発語になる(構音障害)。
その他、障害側を向いたときに顕著になる水平性眼振も特徴的である。

小脳虫部症状
体幹失調と呼ばれ、立位や座位などの姿勢保持が困難になり、歩くときに両足を開いて酔っ払いのようによろめきながら歩行する(開脚歩行)のが特徴となる。
その他、構音障害や頭部の振戦がみられる症状がある。


脳出血と高血圧





脳出血と高血圧

脳出血は脳の血管が破綻して、脳の中に出血を起こすことにより、半身の麻痺や言葉の障害などを起こす病気である。

脳出血の8割以上は高血圧が原因で、血圧が高いことにより脳の中の細い血管がもろくなり、脳出血が起こりやすくなる。

脳出血の発症を予防するためには、定期的に健康診断などを受けてもらい、高血圧がないかをチェックすることが大切である。

高血圧がある場合には、塩分制限・カロリー制限を中心とした食事療法や、有酸素運動を中心とした運動療法により、至適血圧を目指す必要がある。

最初から収縮期血圧が160~180mmHgを超える場合、多くの危険因子を合併している場合や、食事療法や運動療法で血圧管が不十分な場合には、降圧薬の内服を開始して至適血圧を目指すことになる。 至適血圧に管理することで、多くの脳出血を未然に防ぐことが可能となる。

至適血圧は下記を参照下さい



嚥下内視鏡検査 (VE) と嚥下造影検査 (VF)





嚥下内視鏡検査 (VE) と嚥下造影検査 (VF)

RSSTやMWST、FTはベッドサイドで施行可能な簡便な検査で、非常に汎用性が高いですが、いずれの検査も外見からみた観察所見によるもので、実際にどのような嚥下が行われているか観察することができないのが欠点となります。

これを補うために実施されるのが、嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)です。

VEのメリット

VEのメリットとしては、被曝がなく、携帯性に優れていて、粘膜や唾液の状態が直視下に観察可能で、実際の食事場面での評価も行えるため利便性が高いです。

VEのデメリット

デメリットは、ファイバー挿入時の疼痛や鼻出血などのリスクがあり、また咀嚼・食塊形成や奥舌への食塊移送の様子など、口腔内はみることができず、嚥下の瞬間はホワイトアウトしてしまうため、喉頭侵入や誤嚥の詳細を知ることは困難となります。
加えてファイバーの挿入が嚥下機能に悪影響を及ぼす可能性についても考慮が必要です。

VFとは

VFはX線透視装置が必要で、結果の解釈がやや煩雑ですが、造影剤を含んだ食材を摂食し、その様子を直接観察できるため、単に喉頭侵入や誤嚥の有無をみるだけでなく、咀嚼や食塊形成の様子、口腔内保持や送り込みの能力、咽頭残留や喉頭侵入・誤嚥の有無やその量まで観察可能です。

また、検査中に体勢を変化させたり、さまざまな代償手段を試したりすることも可能であり、嚥下障害の詳細を観察し、それに即した治療戦略を立てるために非常に重要な情報を提供してくれる検査として、嚥下機能評価検査のゴールド・スタンダードと考えられています。

このようにVEやVFは嚥下障害の評価・治療において重要な情報を提供してくれますが、脳卒中患者の摂食・嚥下を考える上で必要な情報は、病前の身体機能、日常生活能力、摂食・嚥下機能、既往、今回の疾患、疾患の経過、病巣、意識レベル(意識レベルの変動の有無)、全身状態、高次脳機能障害の有無、頸部、体幹機能、咳鰍の強さ、治療期間など多岐にわたり、これらの要素すべてを総合して決定されます。


嚥下障害の直接訓練の概要





嚥下障害の直接訓練

直接訓練とは


直接訓練とは、食物を直接用いた嚥下訓練のことをいいます。

直接訓練開始についてと注意点


直接訓練開始に関しては、 急性期の経口摂取開始基準を参考にし、RSST、MWST、FT等の詳細な評価行い、摂食の安全な条件が設定された上で摂食訓練を開始します。

その後、3~7日程度、誤嚥や肺炎の徴候がないかを観察し、食事条件をアップさせていきます。

脳卒中患者の摂食・嚥下の特徴としては、覚醒レベルによって機能が容易に変動し得ることと、顔面の麻痺などを伴うことが多いです。
顔面や舌の麻痺により咀曜機能が低下している場合が多く、十分な咀噌によって滑らかで適量の食塊を形成することができなくなるため、咽頭でのクリアランスが悪くなり、食塊の咽頭部での残留を引き起こしやすくなります。

残留食物は誤嚥や窒息の原因となり得るため、脳卒中急性期から咀嚼を要するような食事を摂取させることは危険です。

そのため、軽度であっても嚥下障害を疑う場合は、ペーストなど単一の食形態から摂食を開始することが安全です。

摂食開始後に注意すべき徴候としては、唾液・流涎および痰の増加、咳漱の増加、食後の疲労、発熱、食事中の声の変化(湿性嗄声)、口腔内残留などです。

むせのない誤嚥も多くあるため、むせ以外でもこのような徴候がみられるようであれば、胸部聴診やバイタルサインのチェックを行い、必要に応じて胸部レントゲン検査、採血検査などを実施します。

肺の背側の肺炎では胸部レントゲン検査では明確な異常所見を得られないことが多いため、背側の肺炎を疑う場合は胸部CT検査の実施も考慮します。

これらの検査で誤嚥性肺炎がみられた場合には、いったん直接訓練を中止し、肺炎の治療を実施します。

治療終了後、再度ベッドサイドの嚥下機能評価を行い、必要に応じてVE/VFで再評価を行うようにします。

特に、高齢、両側病変、神経症候の重度な患者は誤嚥性肺炎を来たすリスクが高いため、より慎重な対応が必要となります。


脳血管障害急性期の経口摂取開始基準





脳血管障害急性期の経口摂取開始基準

1.意識障害がJapan Coma Scaleで1桁である。

2.重篤な心肺合併症や消化器合併症がなく、全身状態が安定している。脱水・栄養障害については補正しておくことが望ましい。

3.脳血管障害の進行がない。

4.飲水試験(3mL)で嚥下反射を認める。

5.十分な咳(随意性または反射性)ができる。

6.著しい舌運動・咽頭運動の低下がない。

7.口腔内が清潔で湿潤している。


嚥下障害の内科的治療





嚥下障害の内科的治療

脳梗塞患者では他疾患を合併することも多く、服薬内容も多彩です。 なかには摂食・嚥下機能低下を来たす薬剤も少なくありません。

睡眠薬・抗精神病薬は集中力の欠如や嚥下機能不全を引き起こします。 また、唾液分泌低下に伴う食塊形成不全を呈する抗コリン薬、嚥下機能不全を引き起こすCa拮抗薬などの内服時にも注意が必要です。
このような薬剤は可能な限り中止または減量します。

一方、脳梗塞ではドパミン作動性神経とそれに連なる迷走神経の機能低下が起こり、神経末端からのサブスタンスP放出が低下することによって、嚥下反射・咳反射の低下を来たすことが知られていますが、この部分を狙ったいくつかの薬剤が、嚥下性肺炎の予防に効果的と考えられています。

具体的にはACE阻害薬、アマンタジンなどのドパミン遊離促進薬、カプサイシンなどが知られていますが、抗血小板薬であるシロスタゾールも急性期~慢性期を通じて嚥下性肺炎の予防に効果的である可能性が示されています。


嚥下障害に対する外科的治療





嚥下障害に対する外科的治療

嚥下障害に対しては種々の外科治療法がありますが、いずれも患者に侵襲を与えるため、手術以前に十分なリハビリテーションを行っても改善がないことを確認し、また手術に伴うリスクと予想し得る結果を十分に説明した上で慎重に手術適応を決定するようにします。

術式を選択する際には、誤嚥の有無、輪状咽頭筋弛緩不全の有無、音声機能を残存するか否かがポイントとなります。

誤嚥がなく輪状咽頭筋弛緩不全がある場合は輪状咽頭筋切除術を、誤嚥があり輪状咽頭筋の弛緩不全がなく音声機能を残存させたい場合は喉頭挙上術を、誤嚥と輪状咽頭筋の弛緩不全があり音声機能を残存させたい場合は輪状咽頭筋切除術と喉頭挙上術を、誤嚥が重度で音声機能を犠牲にせざるを得ない場合は喉頭摘出術または喉頭気管分離術を選択します。

喉頭摘出術または喉頭気管分離術を行った場合は、基本的には誤嚥のリスクはなくなりが、音声と引き換えになるため、患者と家族が十分に納得してから手術を実施する必要があります。

その他の嚥下機能の改善を目的とした手術は、喉頭挙上を改善したり嚥下圧を高めたり、嚥下時の抵抗を改善しクリアランスを高めることができるため、何らかの嚥下機能の改善につながることが多いのですが、手術後も誤嚥のリスクは残存するため、術後の間接訓練、直接訓練の継続が重要となります。


LPAとは





LPAとは

LPAとは、2004年にGorno-Tempiniらによって提唱された、PPAのうち、進行性非流暢性失語 (progressive non一且uent aphasia;PNFA)、SDに次ぐ、第3の亜型です。

言語性の短期記憶障害が中核であるため、句や文の復唱障害が主にみられます。

また、自由会話や呼称において、喚語困難や音韻性錯語がみられます。 しかしながら、文法や構文は冒されないため、発語は基本的に流暢です。

優位半球の上・中側頭葉後部から下頭頂小葉を中心とした、萎縮あるいは血流低下がみられます。
病理学的には、ADの病理が多いです。


LPA(Logopenic progressive aphasia)の診断基準





LPA(Logopenic progressive aphasia)の診断基準

Ⅰ.臨床診断
 次の中核的特徴の両方を満たすこと

 1.自由会話や呼称における単語検索障害
 2.句や文章の復唱障害

次のその他の特徴のうち少なくとも3個以上満たすこと
 1.自由会話や呼称で音韻の誤り
 2.単語の理解や物の知識は保たれている
 3.運動性発話は保たれている
 4.明らかな失文法はない


ll.画像所見に支持された、LPA  次の両方を満たすこと

 1.LPAの臨床診断
 2.次のうち少なくとも1つは満たすこと
  a.MRIで、左シルビウス裂周囲後方あるいは頭頂葉の顕著な萎縮
  b.SPECTかPETで、左シルビウス裂周囲後方あるいは頭頂葉の顕著な血流あるいは代謝低下

Ⅲ.LPAの確定病理診断
 臨床診断(下記基準1)かつ、基準2か3

 1.LPAの臨床診断を満たす
 2.特定の神経変性疾患病理を示す組織病理学的証拠 
  (AD,FTLD-tau,FTLD-TDPなど)
 3.既知の病因性突然変異の存在


アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)の言語症状





アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)の言語症状

アルツハイマー病患者は、初期には物の名前が出てこないという健忘失語を呈します。

中期には、言葉の意味がわからない、反響言語がみられるという超皮質性感覚失語様の症状を呈し、錯語やジャルゴンがみられるウェルニッケ失語様の症状を呈します。

末期には表出障害と了解障害がみられ、無言症となり、全失語を呈し、最末期には無言無動、寝たきりとなり、失外套症候群を呈するようになります。


Probable AD dementia の主要臨床症状





Probable AD dementia の主要臨床症状

A.数か月から数年あまりに緩徐進行

B.報告や観察による認知機能低下の明らかな病歴

C.初期の最も顕著な症状として、病歴や検査において、以下の1つの項目で明らかな低下
 a.健忘症
 b.非健忘症状:失語、視空間障害、遂行機能障害

D.以下の所見がない場合
 a.脳血管障害
 b.レビー小体型認知症
 c. behavior variant FTD
d.意味性認知症、non-fiuent/agramrnatic PPA
 e.他の内科・神経疾患の存在、薬剤性認知機能障害


麻痺側上肢強制使用療法(constraint-induced movement therapy:CI療法)





麻痺側上肢強制使用療法(constraint-induced movement therapy:CI療法)

CI療法は非麻痺側の上肢を三角巾やミットで拘束し、強制的に麻痺側上肢の使用を促すものです。

手関節の背屈が20度、手指の伸展が10度できるのが基準であり、比較的軽度の片麻痺が適応となり、片麻痺が中等度または重度の患者には実施困難でとなります。
Wolfは、14日間1日中非麻痺側を抑制し、Taubらはこれに6時間の麻痺側上肢を使用する訓練を組み込んでおり、いずれも麻痺側上肢機能の改善を認めました。CI療法を行うと麻痺側上肢機能が改善するばかりではなく、上肢運動時の脳活性レベルは低下し運動マップの領域は拡大していました。しかし、実際の臨床場面では長時間療法士と患者が1対1対応で訓練を継続できる施設は限られ、患者に関しても長時間の健側の拘束に耐えうる精神力と麻痺肢の機能レベルが要求されるため、適応には限りがありたす。

そこで、外来通院でも行えるようにに訓練時間を短縮したmodified CI療法が開発されました。
それでも通常の訓練にくらべ拘束時間が長く煩雑であり適応には限界があります。


リハ訓練による運動学習と大脳皮質の変化





リハ訓練による運動学習と大脳皮質の変化

運動学習とは訓練や練習を通じて獲得される運動行動の変化のことを言い、運動学習によって、ニューロンやシナプスに変化が起こることが、知られています。

運動学習により、脳可塑性を引き起こし、ニューロンやシナプスの解剖学的または機能的再構築が生じます。

運動学習を行うと大脳皮質では樹状突起の分岐が増加し、樹状突起にある棘の密度が増加してニューロンあたりのシナプス数が増加します。
またシナプスの構造的な変化も認めます。

動物モデルでの実験では、脳卒中後のリハ訓練において課題を特定した訓練が有用とされています。
訓練により、学習・記憶に関与する神経発生に重要な脳由来神経栄養因子を、増加させる等の分子経路が、活性化します。

マウスの研究では運動トレーニングの種類によって解剖学的および生理学的な変化の違いが指摘されていてます。 耐久性トレーニングでは代謝要求量が増加して新脈管形成を誘導し、スキルに特化した訓練ではシナプス形成やシナプスの相乗効果を誘導することが報告されています。

脳梗塞ラットでは社会的交流があり、自由な身体活動が可能な環境で飼育すると、最も良好な回復が得られたとの報告があります。

特定の運動課題を行う以外にも、動物を様々な遊戯や活動ができる、刺激の豊富な環境で飼育するほうが、刺激が少ない環境で飼育するよりも、大脳皮質の神経ネットワークの変化が増えることも報告されています。


脳の可塑性





脳の可塑性

脳卒中後の機能回復で臨床的に重要なのはネットワークレベルでの可塑性です。

この可塑性は中枢神経の解剖学的および機能的再構築により生じ、中枢神経の機能を制御して障害や生理学的要求に応じて変化します。

脳可塑性には、①もともと存在していたが抑制されていた経路の顕在化(unmasking)、②残存する軸索から側芽形成をして新しいシナプスができる(sprouting)の2つがあげられ、将来的には、③移植(transplantation)により神経の損傷を改善することが可能かもしれません。

脳可塑性は神経回路の再構築により体部位に対応する感覚運動領域の再発現に関係している脳の再マップ化、あるいはニューロン可塑性として出現します。

短期間で発現する変化は機能的にはたらいていない経路の顕在化による機能回復であり、長期間を要する変化はシナプスの形、数、サイズ、タイプの変化を伴う神経再生や側芽によるプロセスです。

マップ可塑性に関して、活動、行動、技術獲得に応じて大脳皮質に体部位発現を引き起こすことが報告されており、ニューロン可塑性は、シナプス抑制が解除され、神経ネットワークのすみやかな変化を生じる際に認められます。

ヒトでの脳卒中後のネットワークの再構築は、病変の周囲はもちろん、病変と同側の大脳半球、あるいは病変と反対側の大脳半球でも起こります。 またリハ訓練により上肢の運動機能の改善とともに大脳皮質での神経ネットワークの再構築を生じます。


脳卒中後の神経機能回復機序





脳卒中後の神経機能回復機序

脳卒中により中枢神経に傷害を生じると、神経細胞や神経ネットワークに機能障害を生じます。

脳卒中急性期には神経細胞死を防止するための治療が重要であり、急性期治療の成否はその後の神経機能回復の重要な因子となります。

脳梗塞急性期において脳血流が低下すると、細胞死をもたらす高度虚血領域と、その周囲に細胞死には至らないが機能障害をもたらすペナンブラ領域が生じます。

ペナンブラ領域の神経細胞は、適切な時間内に再灌流させれば機能回復の可能性があり、急性期治療のターゲットとなります。

ペナンブラ領域の早期の再配流は脳卒中発症後にすみやかな機能回復を生じると考えられ、浮腫の軽減や神経保護的治療も細胞内レベルの神経機能回復を促進します。

また脳卒中によって傷害を受けた神経は再生しないといわれてきましたが、成人の中枢神経系にも神経新生がみられ、虚血損傷が幹細胞や前駆細胞の神経新生のトリガーとなり、穎粒細胞層あるいは損傷を受けた海馬CA1領域や線条体に移動し、神経結合の再構築を生じて機能回復をもたらす可能性も示唆されています。

また動物実験レベルですはありますが、幹細胞移植により炎症を抑制し、新脈管形成、再髄鞘化、軸索の可塑性を起こすことによりニューロンを新生することが示されており、内因性神経幹細胞が脳卒中後の新たな治療ターゲットになる可能性が示唆されています。


脳卒中後の運動機能回復の経過





脳卒中後の運動機能回復の経過

Duncanらは脳梗塞急性期患者104名の経過をFugl Meyerスコアで評価しました。
Fugl Meyerスコアは片麻痺重症度の評価で、発症時の脳卒中重症度にかかわらずおおむね最初の30日以内に大きく改善しましたが、中等度および重度の患者は30~90日のあいだも改善しており、その後わずかであるが180日まで改善傾向がありました。

この結果より、機能障害は30日以内の回復が著しく、大部分は90日以内にプラトーに達すると考えられます。

Duncan以外にも運動麻痺回復に関して多くの報告がありますが、この運動麻痺回復の経過と大きく異なる点はありません。

運動麻痺回復には脳卒中により直接障害を受けた神経やネットワークの修復のほかに、浮腫や血液灌流低下により二次的に障害されていた機能の回復が要因としてあげられます。

一方で神経系の可塑性変化は脳内に新しい神経ネットワークをつくり、残された正常な組織がはたらくことでの機能回復であり、その回復は長期に及ぶと考えられています。


パーキンソン病の非薬物療法(手術療法、リハビリテーション)





パーキンソン病の非薬物療法(手術療法、リハビリテーション)

・手術療法
脳に電極を埋め込む深部脳刺激療法を代表として、パーキンソン病の治療として手術を行うことがあります。術式や用いる機械も日々進歩しており、ドパミンを増やすような遺伝子を脳に導入するような治療も研究されている。

原則として手術療法は薬剤による治療を工夫しても症状がコントロールできない患者に対し適応となる。

まずは、薬を使って症状が抑えられないかどうか、十分に検討することが大切となる。

・リハビリテーション
リハビリに関しても、様々な研究・工夫が進められている。
残念ながらリハビリでパーキンソン病の病態そのものが良くなったり失われた神経細胞が蘇ったりする訳ではないが、実際の歩行能力・生活能力に関してはある程度の改善が見込め、能力の維持という意味でも重要となる。
ただし、症状の程度やライフスタイルによっては、入院して専門的なリハビリを受ける事よりも、家で生活をすること自体が一番のリハビリになることもある。
地域や環境によっても利用できる福祉サービスなどには違いがあるため、患者それぞれの生活環境と症状の程度に応じて対応を相談していく必要がある。


パーキンソン病治療開始のタイミング





パーキンソン病治療開始のタイミング

現在用いられているどの薬剤も、パーキンソン病の病態そのものを根本的に改善させたり進行を遅らせたりする効果は証明されていない。

そのため症状が軽いうちから少しでも早く診断をつけて薬を使わないといけないと考える必要はない。

しかしパーキンソン病の症状のせいで日常生活が上手く送れず家に引きこもってしまったり寝たきりに近い生活になってしまったりすれば、体を動かさないことでますます弱ってしまう(廃用)ため、日常生活を送るために適切に薬を使うことは結果的に体の状態を維持するために有用だと考えられている。

つまり、「生活や仕事に支障がでてきたとき」が治療を開始すべきタイミングとなる。


歯周病が全身に及ぼす影響





歯周病が全身に及ぼす影響

これまで歯周病は「口の中だけに限局した病気」と考えられてきました。

しかしながら近年歯周病が全身にもたらす影響、全身が歯周病へあたえる影響についての研究も進み、歯周病と関連があるといわれている以下の症状がわかってきています。

①糖尿病
歯周病は糖尿病の合併症の一つとして捉えられています。歯周病を合併した患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られており、歯周病になるリスクが高い反面、歯周病の治療によっては血糖値が改善する可能性があります。

②心疾患
心疾患は生活習慣病が要因とされていますが、別の因子として歯周病菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。歯周病が重篤であればあるほど、心疾患を発症するリスクが高いと言われています。
これは、歯周病によって歯肉で生産された炎症物質が血流を開して心臓血管にも影響を及ぼすためと考えられています。

③脳梗塞
歯周病の人はそうでない人の2.8倍なりやすいと言われています。

④誤嚥性肺炎
唾液中に含まれる細菌が主な原因です。歯周病菌は誤嚥性肺炎の原因になるものが多く、唾液中に含まれる細菌が主な原因です。

⑤骨粗鬆症
全身的の骨が弱くなると、歯を支える歯周組織にも影響があると考えられており、骨粗鬆症は歯周病を進行させる一因とみられています。
特に閉経後の女性は骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下によって、かかりやすく、広がりやすいと言われています。
また治療薬のビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)を服用中に歯を抜くと、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。

⑥関節炎・腎炎
発症する原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌は、口の中に存在する歯周病菌にも多く存在しているため、発症することがあります。

⑦早期低体重児出産
妊娠中の女性で歯周病の人は、そうでない人に比べて低体重児出産や早産する確率が高いことが報告されています。
歯周病による炎症性物質が、へその緒を通じて胎児に影響するため、早期低体重児出産の確立が高まると考えられています。
妊娠中は、つわりによって口腔清掃が不良になりやすく、またホルモンの変化などによって、妊娠中期から後期にかけて歯肉の炎症が起こりやすくなります。
基本的には歯垢が残存しない清潔な状態では起こりにくいため、気を付けて歯をみがくことで予防できます。


左半側空間無視に対する機能的アプローチ





左半側空間無視に対する機能的アプローチ

機能的アプローチは、日常生活活動(Activity ofdaily living;AD:L)のなかで重要度の高いものを繰り返し練習して、患者の自立度を向上させるようなものをいいます。
半側空間無視そのものの改善を促すアプローチではないので、汎化は困難とも考えられていますが、トップダウンアプローチやボトムアップアプローチにおいてもADLに汎化されるというエビデンスは乏しいのが現状であり、日常生活に結びつきやすく、具体的な成果がわかりやすい機能的アプローチで、有用なリハの手法となります。


左半側空間無視に対するボトムアップアプローチ





左半側空間無視に対するボトムアップアプローチ

一側性感覚刺激が古くから行われています。
カロリック刺激を応用し左向きの眼振を誘発する方法、ランダムドットが左側に動く背景を用いて視運動性眼振を引き起こす方法、左後頸部への電気刺激や振動刺激を利用する方法、反復頭蓋磁気刺激等がありますが、無視を改善させるというエビデンスにはなかなか至っていないのが現状です。

ただし、左頸部への振動刺激では、身体中心の座標系の右方偏僑が矯正され、視覚走査訓練と組み合わせると無視が改善するという報告もあり、今後さまざまな方法の組み合わせが無視の改善に寄与する可能性を示唆しています。

また、感覚と運動の協調に介入する目的で半側空間無視患者に対するプリズム適応(プリズム順応)療法が行われています。
これは、視野を右にずらすプリズムの入った眼鏡をかけてリーチ動作訓練を行うことで、視覚的には右側にずれてみえる状態に到達運動を順応させるというものです。

眼鏡を外しても数週間効果が持続するとの報告がある一方、プリズム順応の有用性を確認できないとする報告もあり、現在進行中であるランダム化比較試験や長期予後に関する結果の報告が待たれています。


左半側空間無視へのトップダウンアプローチ





左半側空間無視へのトップダウンアプローチ

代表的な訓練法に視覚走査訓、Spatiomotor cueing、体幹を左に向けるアプローチ、聴覚的フィードバックを用いた訓練等があります。

視覚走査訓練では、訓練課題に近い評価課題では改善がみられたが、課題内容との違いが大きくなると効果が一定しなかったといいます。

また、類似した訓練として、左側をみるようにそのつどcueを出す、探索すべき空間的フレームの左端に目印をつける、右側の標的に反応したら視界から取り去る等の方法があり、いずれも左側を探索しようとせず、右側の刺激に引きつけられ、そこから注意が解放されにくいという視覚走査の問題に着眼した訓練法ですが、視覚走査に特化しずぎても効果が得られにくいとされ、ある程度幅の広い課題で繰り返し訓練すると良いと言われています。

あるいは、患側の左上肢をわざと無視空間である左側の空間内で動かすことで効果が得られるという報告や、体幹そのものを左側に回旋させるとよいという興味深い報告等がありますが、麻痺が重度であったり、体幹の安定が得られていなかったりする場合は実施困難である等、現実的な訓練場面で行うには工夫が必要です。


呼吸リハビリテーション・包括的呼吸リハビリテーションプログラムとは





呼吸リハビリテーション・包括的呼吸リハビリテーションプログラムとは

・呼吸リハビリテーション 呼吸器の疾患によって生じた障害を持つ患者に対して、可能な限り機能を回復、あるいは維持させて、これにより患者が自立できるように継続的に支援していくためのリハビリテーション医療です。

・包括的呼吸リハビリテーションプログラム 呼吸リハが単なる手技を意味するのではなく、理学療法や運動療法、患者指導など「包括的に」広く含んでいるということを強調した用語です。内科治療、呼吸理学療法、栄養療法を組み合わせたプログラムのことを言います。


スクイージングとは





スクイージングとは

スクイージングは呼吸介助法の手技の1つである。排痰体位をとり、胸郭を呼気時に圧迫する(スクイーズsqueeze)することにより排痰を促します。
わが国で開発され発展してきた排痰方法です。
特に訳語はありません。

当初、胸郭を圧迫する方向が気管分岐部に向かって行うとされていたが、これは胸郭の生理的運動方向と一致していないため、現在では生理的運動方向を意識して肺葉、ないし肺区域に相当する胸郭上を圧迫するように修正されています。

タッピングやバイブレーションよりも排痰効果が高く安全であるとされています。


左半側空間無視のリハビリテーションを進める上でのポイント





左半側空間無視のリハビリテーションを進める上でのポイント

①左側にとらわれずに感情的交流を工夫する

②そのままでは見落としても10個の星印がありますと言えば見落とさない、多くの刺激だと見落とすが1つの刺激だと見落とさないなど、反応の仕方に注目して刺激提示を工夫開発する

③できることの能力評価を正確に行い結果の肯定的再評価に努める

④半側空間無視以外の行動特性を分析する

⑤本人の意欲や関心に結びつく課題を設定し、自己意識化行動の援助をする

⑥環境調整・人的資源の確保・言葉の提供など、いわゆる概念的補装具の開発を行う

消失する無視の回復期間の中央値は9週で、発症2~4週に残存する例では6ヵ月後の完全消失は13%であったという報告がある。


左半側空間無視に対して行うリハビリテーションの種類





左半側空間無視に対して行うリハビリテーションの種類

(1)Visual scanning training(視覚探索練習)、左側への注意集中指導“look to the left”The New York studies

(2)左耳冷水刺激(Caloric stimulation)(Rubens 1985)

(3)視覚的課題による直接訓練(Dillerら1977)

(4)経皮的通電による刺激訓練(網本1997、Vallar 1995)

(5)足底接地(ブザー)フィードバックによる歩行改善、左上下肢にブザーやLEDなどを付けて注意を左に向ける訓練(Neglect Alert Device)(Robertson 1991)

(6)音楽療法(前田2001)

(7)車椅子移乗動作の段階的ステップ訓練(Stantonら1983)

(8)Dynamic stimulation LEDの利用(Butterら1989)

(9)健側の目にEye─patching(眼帯)装着(Butterら1992)

(10)Fresnel Prismの利用(対象物が10度右へシフトするプリズム眼鏡)(Rossettiら1998、Rossiら1990)

(11)半側サングラス(Araiら1997)

(12)体性感覚に対する注意の喚起(Gordonら1985)

(13)人的介助(Mental Prosthesis)(Seronら1989)

(14)左上肢使用の活性化と空間運動の手がかり(Robertson 1991)

(15)左への15度の体幹回旋(Robertson 1992、Karnath 1991)

(16)神経薬理学的治療:ドーパミン拮抗薬(Fleetら1987)

(17)低頻度反復経頭蓋磁気刺激(井上2007)


半側空間無視の病巣





半側空間無視の病巣

皮質領域の病巣では、中大脳動脈領域が一般的で、頭頂葉性(側頭・頭頂・後頭葉接合部、角回、縁上回)のものは、多彩な消去現象、視覚的イメージの左半分の無視(知覚的無視)、右側の刺激から離れることが困難、方向性運動低下などの特徴を持ち、病態失認、重度左片麻痺・感覚障害などを伴い予後不良のことが多いです。

後大脳動脈領域の病変では左同名半盲、地誌的失認などを伴うことがあります。

前大脳動脈領域の帯状回や補足運動野など前頭葉病変で生じることがあります。視覚スキャンや視覚定位における左側の運動性の無視、方向性運動低下などの特徴を持ち、予後良好なことが多く、motor impersistenceなどを伴いやすいです。

皮質下病巣では、前脈絡膜叢動脈領域の梗塞で生じることがあり、左片麻痺、感覚障害、記銘力障害などを伴い予後不良の場合もあります。

視床病巣でも生じることがあり一過性のことが多く、皮質下線維の障害などが考えられています。対側性の刺激に注意を固定できない、網様体による注意覚醒障害に伴う無視という特徴を持ちます。

線条体・内包・外包など穿通枝系の障害でも皮質関連線維の損傷により生じることが知られています。

特殊なものとして、テント下の中脳網様体賦活系の損傷や、脳梁損傷によって右手に半側空間無視が生じるといった報告もあります。

責任病巣が多岐に及んでいることが半側空間無視の特徴ともいえます。


注意集中と無視空間





注意集中と無視空間

半側空間無視の現象には、無視されていないような右の空間や、注意をしてみている中で左側を無視することがあります。
このように注意を向けた中での左、さらにその中で左を無視するという現象があり、入れ子現象、タマネギ現象などと呼ばれています。

見えている全体の左半分を無視してしまう主体性半側空間無視と、全体はあまり見落とさないが注目した細部の左半分を見落とす対象依存性半側空間無視に分ける考え方がありますが、この2つのタイプが入り混じって現われることも多いです。

注意を向けた中で左を無視しやすいかどうか、相貌の判別が主に眼や眉で行われるというという特性を考慮し回転相貌課題を用いて実験し、眼や眉が左側や下側にあるほうが無視しやすいことが認められています。


左半側空間無視の臨床症状





左半側空間無視の臨床症状

半側空間無視の、臨床での行動観察からは、ベッドサイドでは「顔や視線が健側を向いている」、「斜めに寝て左側の手足の位置に無頓着」、「座っていても患側に傾く」、「患側にいる人に気付かない」などの症状がみられます。

生活場面では「車椅子の患側ブレーキやフットプレートの操作忘れ」、「移動時に患側の壁や物にぶつかる、ぶつかっても強引に進もうとする」、「乗り移りのときに患側上下肢の置き忘れがあり、その操作も性急かつ強引さある」等見られます。

ADLの場面でも「患側の食事の食べ残し」、「衣服の左袖を通さない」のなどで気がつくことが多いです。


半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)





半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)は、損傷大脳半球と反対側の刺激に気がついたり、反応したり、その方向に向いたりすることが障害されている病態です。

頻度は右半球損傷で報告が多く特に急性期で70~80%程度、慢性期で40%前後、左半球損傷による右半側空間無視は0~38%といわれています。

半盲は眼球を固定したときの視覚の欠損という視野における障害で、障害を認識し代償動作を行いますが、 半側空間無視は眼球の動きを制限しないときの視覚の欠如で、空間における障害で、障害を否認し代償動作を行わないことを特徴とします。

Kinsbourneの説によると、右脳は左右空間を、左脳は右空間を主に監視しているため、左脳損傷の場合は残っている右脳が左右両側を監視するために無視は生じませんが、右脳損傷の場合は左脳が残るため右空間しか監視できず、左半側空間無視が生じると説明されています。

左下ほど無視されやすいことも指摘されている。


小脳性認知情動症候群 (CCAS)





小脳性認知情動症候群 (CCAS)

小脳損傷による高次脳機能障害の先行研究では、右小脳半球損傷例の言語性学習障害や失語など、左小脳半球損傷例の視空間認知機能障害が報告されています。小脳虫部損傷では感情が不安定になるという報告もあります。これらの障害をまとめてSchmahmannらは小脳病変による遂行機能障害、言語障害、感情障害、空間認知障害の4症状を主症状とするCCASという病態概念を提唱しました。

障害の根拠として、脳血流検査やfMRI、PETを用いた研究から小脳機能と対側大脳半球との関係を示唆する報告が多く、また逆に、大脳半球錐体路の障害で対側小脳の血流低下や萎縮を示すcerebro-cerebellar diaschisisも良く知られています。

小脳と大脳皮質間の線維連絡の解剖学的基盤として、前頭前野の46野と淡蒼球内節、小脳虫部の線維連絡が明らかにされています。


認知症タイプごとの食支援の大まかな考え方





認知症タイプごとの食支援の大まかな考え方

アルツハイマー型認知症と血管性認知症の大きな違いは、進行性か非進行性かという点であります。

進行性であるアルツハイマー型認知症については「病態の進行に伴う特徴」、非進行性である血管性認知症では「損傷部位による特徴」を考慮しつつ食支援を行っていくことが大切です。

漠然と「アルツハイマー型(あるいは血管性)認知症」として患者をとらえる場合と、病期や損傷部位を把握して対応法を考える場合とでは、提供できる医療・介護の質はまったく異なります。

対応法で両者が共通するのは、「キュア=治す」ではなく、「ケア=支える」という考え方です。

基本的に認知症の摂食・嚥下障害はキュアできないことを心にとどめておく必要があります。

医療者や介護者は、どうしても患者に「よくなってほしい」と願いがちです。
しかし、良くなってほしいという思いぼかりが強くなると、良くならないときに医療・介護職だけでなく、患者・家族も消耗してしまいます。

真摯に臨床に取り組んでも症状が改善しない・悪化していく場合は疾患に起因する避けられない症状であり、医療・介護職が責められるものではありません。

専門職としては、病期・病態に基づいて冷静にとらえる必要があります。


局在病変型血管性認知症の摂食嚥下障害





局在病変型血管性認知症の摂食嚥下障害

認知機能障害に深くかかわる部位(角回、視床、前脳基底部など)に単一の血管性病変を生じることによって発症します。

症状は部位によって多岐にわたり、記憶障害、アパシー、傾眠など、さまざまです。

それらに随伴して食行動の障害が生じることや、嚥下機能の障害(誤嚥等)を生じることがあり注意が必要です。


皮質下性血管性認知症の食支援





皮質下性血管性認知症の食支援

主に多発性ラクナ梗塞とビンスワンガー病によって生じる認知症が含まれます。

日本では、このタイプの血管性認知症が多く、そのなかでもラクナ梗塞によるものがもっとも多いとされています。

ラクナ梗塞は、大脳基底核の穿通枝領域に小さな梗塞巣が多発する病態である。一方、ビンスワンガー病は、高血圧や脳の動脈硬化などによる脳の血流障害のため大脳白質が広範に障害されることによって生じる病態であり、徐々に進行するのが大きな特徴です。

そのため、アルツハイマー型認知症などの変性性認知症と誤診されやすいです。

症状としては、歩行障害、バランス障害などの基底核の症状がみられる。また、うつ傾向や感情失禁が多いのも特徴です。

四肢のまひや高次脳機能障害を認めない、もしくはあったとしても軽度であることが多く、臨床でのイメージとして「軽症例」としてとらえられやすいです。
しかしながら、嚥下機能に関しては、ドーパミン関連の神経ネットワークが障害されるため咽頭のサブスタンスPが減少し、嚥下反射低下や咳漱反射低下といった重度の嚥下障害を呈することがあるため注意が必要です。 そのため、皮質性や局在病変型の血管性認知症よりも誤嚥性肺炎のリスクは高いです。

対応法としては、誤嚥の防止・誤嚥性肺炎の予防に重きをおいたものとなります。
皮質下性血管性認知症の場合も意思疎通が困難な症例が多いため、嚥下訓練ではなく食支援の観点からのアプローチがメインとなります。

対応方法としては、認知しやすい食事(温度、味、においの工夫)、嗜好に合わせた食事、口腔機能に合わせた食事、増粘剤・ゼリー剤の利用、食事時のポジショニングにするなどの対応をします。

服用薬剤についても注意が必要です。ドーパミンをブロックする作用機序をもつ薬剤(抗精神病薬制吐剤など)は、ドーパミン関連の神経ネットワークの障害をさらに悪化させるため、嚥下障害を助長することがあります。
病院では不穏などのために抗精神病薬が投与されることがあり、それが原因で誤嚥や不顕性誤嚥を呈している症例があります。

抗精神病薬は、すべての高齢者で嚥下障害の原因になりえますが、皮質下性血管性認知症においては、とくに注意が必要です。


皮質性血管性認知症の食支援





皮質性血管性認知症の食支援

中大脳動脈などの主幹動脈が閉塞することによって、主に大脳皮質に梗塞巣が多発して生じる認知症を指します。

脳梗塞などの病巣に対応する皮質部位の障害と血管性認知症に共通してみられる遂行機能の障害を呈します。

皮質の言語野の障害のために失語を呈している場合や運動野の障害のために四肢麻痺を生じている場合には、臨床的に認知機能障害を重度に判定してしまうことがあり注意が必要です。

その場合でも、記憶障害が軽度であり人格も保たれている症例は多いです。そのため、遂行機能障害のために食事に時間がかかったとしても、ぞんざいな態度をとってはいけません。

さらに、食事の嗜好の主張がはっきりしていたり、食事の介助者によって反応が異なったりするといった症状にもつながります。

両側に病巣が存在する場合は、偽性球麻痺を示すことがあり脳卒中の嚥下リハに共通したアプローチが必要となります。

ただし、認知症のために意思疎通が困難であることが多いことから、患者自身が行う訓練や嚥下代償法は適応できないことが多いです。
マッサージや他動的な関節可動域(ROM)訓練食事時のポジショニングなど、介助者が主体となって行える支援を選択します。


脳血管性認知症の食支援の考え方





脳血管性認知症の食支援の考え方

脳血管性認知症は、局所的な脳血管障害や持続性脳虚血の結果生じる認知機能障害のことを指じます。 四大認知症のなかでもほかの3つ(アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型)の変性疾患による認知症とは異なり、非進行性のものが多いという特徴をもちます。
そのため、ほかの変性性認知症とは分けて考えられることもあります。
脳血管性認知症の認知機能に共通して認められるのは、遂行機能障害や注意障害、歩行障害です。 しかしながら、それ以外の障害は損傷する中枢の部位により、皮質欠落症状や基底核症状などさまざまな障害が現れるのが特徴です。
したがって、脳血管性認知症の食支援を考えるときには、アルツハイマー型認知症では「病態の進行」の把握が重要であるのに対し、「損傷された部位」の把握がポイントとなります。



アルツハイマー型認知症中期の摂食・嚥下障害の症状と対応





アルツハイマー型認知症中期の摂食・嚥下障害の症状と対応

アルツハイマー型認知症は変性疾患であるため、経過に伴い脳の萎縮も進行します。そのため、見当識障害や視空間認知障害も悪化し、失行や失認も出現してきます。
そのため、嚥下に関しては、食事を始められない、食器や食具が使えない、手を使って食べる、食器の模様に気をとられる、他人の食事を食べる、異食といった食行動の障害が出てきます。
これらの症状は、適切な食事環境のセッティングを行うことにより軽減することができます。

はじめのうちは、声かけをする、食器を持ってもらう、模様のない食器にする、集中できる環境を提供する、などの間接的な介助をすることで症状は軽減することが多いです。

進行すると、自分で食事はできますが食べこぼしが増えてきます。
さらに進むと、介助者が食事を口に入れるといった直接的な介助が必要となってきます。

この段階でのもう1つの大きな特徴は、一部の症例で拒食のような症状を認めることがあります。
口に食べ物を入れても口を動かさない、飲み込むまでに時間がかかる、口を開けない、などさまざまな拒食様症状があります。

この拒食様症状は、ボディイメージの喪失、すなわち自分の舌や顎がどこにあるのかが分からなくなることにより、食事を送り込めなくなると考えられています。しかし、詳細は不明です。
拒食様症状が出ると、食事介助の手を非常にわずらわせることとなり、また、体重減少にもつながることがあるため、介助者にとっては大きなストレスとなります。

重要なことは、拒食様症状のほとんどが一時的なもの(期間は1~6か月程度であり症例によって異なる)であり、再び食べるようになることを介助者に説明しておくことです。

拒食様症状が何年も続くと思うと介助者も消耗してしまいますが、数か月で治まると思えば許容できる場合が多いです。

拒食様症状に対して、介助の労力を考えて胃ろうを造設する方法でありますが、その場合は数か月後に拒食様症状が改善していないかどうか経口摂取の可否を再評価するということを忘れてはいけません。

誤嚥が時折みられるようになるのも中期からですが、誤嚥性肺炎につながるような重度の誤嚥を呈することは非常にまれです。
これは、中期から重度の誤嚥を呈するレビー小体型認知症とは大きく異なる特徴です。


長期臥床と精神障害





長期臥床と精神障害

長期臥床により身体的な障害だけでなく、精神面も問題も出現します。

不安や抑うつ症状が出現し、判断力、記憶力、注意力の低下となり認知症となる場合もあります。

不動化により脳波上基礎波(α波)の徐波化がみられ、感覚運動刺激の減少が関与して中枢神経機能が低下していることも示唆されています。

認知機能の低下となり、特に高齢者ほど、認知症、うつ症状になる可能性が高くなります。

対策としては、まず病気の早期から刺激を与え、適切な運動を提供することが大切です。

また、抗精神病薬も適切に併用することも必要となります。


褥瘡と廃用症候群





褥瘡と廃用症候群

褥瘡とは体の接触面から受ける圧力によって、組織の毛細血管が閉塞したために血管の灌流域が壊死に陥ってしまう病態です。

一般的には褥瘡の発生は外力の大きさと外力が作用している時間が主な決定因子であるとされていますがが、生体側の全身状態または外力を受ける局所の状態にも左右されます。
特に骨の突出部位に外力が集中されやすく、褥瘡発生の好発部位となります。

廃用症候群では同じ姿勢を長時間とることにより、外力の作用時間が長くなり、さらに生体側の全身状態も悪いことが多いため褥瘡が発生しやすい。

対策としては、褥瘡の成因から圧迫圧の分散、外力の作用時間の短縮、全身の栄養状態の改善、局所の皮膚状態の改善などが挙げられます。手術療法も有力な手段です。


初期のアルツハイマー型認知症と摂食障害





初期のアルツハイマー型認知症と摂食障害

アルツハイマー型認知症の初期は、一般には中核症状が主で、周辺症状はみられたとしてもまだ軽度です。

アルツハイマー型認知症の初期にまれにみられるのは、偏食や食欲といった先行期の問題です。

一部の症例で嗜好が甘味にかたよる、空腹を感じない、食べすぎるといった症状が出ることがあります。

もう少し進行すると、記憶障害や見当識障害、実行機能障害がみられるため、食べたことを忘れる、食器の使い方が分からない、などの症状を生じます。

食事をした直後に症例が「食事はまだ」と聞くのは有名なエピソードですが、それは近時記憶の障害によるものです。

血管性認知症では、脳血管障害の部位によっては発症当初から誤嚥を生じることがありますが、この時点のアルツハイマー型認知症では、誤嚥を生じることはありません。

すなわち、嚥下障害は生じておらず、食行動の障害のみを生じます。


長期安静と消化器系に及ぼす影響





長期安静と消化器系に及ぼす影響

安静臥床により腸管の蠕動運動は低下し、栄養の吸収率が低下します。
その結果、食欲不振、体重減少、便秘といった症状を生じてしまいます。

安静により抗利尿ホルモンが分泌抑制され、循環血液量は低下し、便秘となります。
ベッド上での排便も非生理的であり便秘を促進します。
また、逆流性食道炎の頻度も増加します。
対策としては、安静を防止することです。
トイレ動作の確立と野菜などの繊維を多く含んだ食事と水分補給が重要となります。
緩下薬や下剤などの薬剤も検討することも必要です。


半側空間無視の発現機序説





半側空間無視の発現機序説

1 注意障害説
右脳は左右に注意を向けるが、左脳は右へ注意を向けるため、右脳損傷で左への注意が低下する左半分には注意が向かない。(Kinsbourne 1987,Weintraubら 1989)

2 表象障害説
意識の中で、外空間、自己の身体に関する表象が認識されない。脳内で左半分のイメージがない。(Bisiachら 1978)

3 方向性運動減少説
知っているけど左へ手が動こうとしない(Heilmanら 1993)

4 眼球運動障害説
左側への眼球のサッケードの立ち上がりが不良で、左右同時に刺激されると右へ引かれる。

5 amorphosynthesis説
頭頂葉損傷で複数の感覚を空間処理できない。

6 一側性記憶障害説
左半側空間に提示された刺激を忘れてしまう。


長期臥床と呼吸器症状





長期臥床と呼吸器症状

長期臥床により呼吸筋の筋力低下や胸郭の可動域制限により肺活量や最大換気量の減少、咳漱力が減少してしまいます。

同一姿勢の仰臥位が長く続くと、重力の影響で、気道内分泌物もより背側に貯留しやすい状態となり、末梢気道閉塞が生じ肺胞は虚脱しやすく嚥下性肺炎のリスクが高まってしまいます。

対策としては、長期臥床の場合には、早期離床が一番の予防となります。
安静を強いられる場合には、体位変換や座位、立位時間をアップさせることが重要です。

呼吸方法としては、口すぼめ呼吸や腹式呼吸を行わせ、呼吸介助もする必要があります。


深部静脈血栓症(DVT)の対策





深部静脈血栓症(DVT)の対策

深部静脈血栓症(DVT)では、何といっても予防が第一です。そのためには早期離床と下肢の運動(自動、他動)です。弾性ストッキング(下肢の圧迫で表在静脈に流れる血液を減少させて、深部静脈の血流量を増やし血栓形成を抑える)や間欠的空気圧迫法(足底部からの静脈血流を保ち下肢血流停滞を予防する)による下肢の圧迫も有効です。

DVTの診断がくだされれば、ワルファリン内服による抗凝固療法を開始します。

効果の発現まで数日間を要するために、その間はヘパリンの静注を併用します。

深部静脈血栓症が残存する場合には下肢マッサージは禁忌となります。


長期臥床と静脈血栓症





長期臥床と静脈血栓症

長期臥床により、深部静脈血栓症(DVT)の発生が高まります。 原因として血液停滞、血液凝固能の亢進が考えられます。

臥床により、下肢の筋ポンプ作用が減少して血液が停滞します。 循環血漿量の減少によって血液凝固能は亢進し、下肢のDVTのリスクが高まることになります。

DVTにより生じた血栓が血流で運ばれ、肺動脈が閉塞すると、肺血栓塞栓症を生じます。
急性の循環動態不全、ガス交換不全を起こして呼吸困難を呈します。

末梢動脈が完全に閉塞すると肺梗塞をおこし肺組織の壊死となります。 肺塞栓の中で妬く20%に肺梗塞が起こるといわれています。

自覚症状は、突然の呼吸困難、息切れ、胸痛、胸内苦悶、背部痛、咳、血痰、失神、意識レベル低下、下肢痛などが上げられます。

他覚所見として血圧低下、頻脈、徐脈、肺雑音、チアノーゼ、頚静脈怒張、浮腫、下肢腫脹、発熱などがありますが、突然ショック症状で発症する致死性肺血栓塞栓症も多く、注意が必要です。

悪性腫瘍による凝固機能亢進や、下肢の手術後にもリスクが高くなる。

診断は、凝固線溶系マーカー(D−dimer)、超音波検査、静脈造影、造影CTで行われます。

肺血栓塞栓症の診断は、肺血管造影、胸部造影CT、肺血流シンチグラム、肺換気シンチグラム、心電図、心エコー動脈血液ガス胸部Xpで診断を行います。


廃用症候群と心機能、全身持久力の低下





廃用症候群と心機能、全身持久力の低下

安静臥床により、心拍数の増加、一回拍出量の減少、最大酸素摂取量の低下を認めるようになります。

安静臥床により、一回拍出量が減少し、その代償反応として心拍数の増加を認め、心拍出量を保持することとなります。

運動能力の指標とされる最大酸素摂取量は、安静臥床の日数と高い相関関係があるとConvertinoらは報告しています。

対策としては、仰臥位での軽度から中度の運動では、健常者の安静時の最大酸素摂取量の減少は完全に予防することはできませんが、減少度を抑えることは可能といわれています。

心肺系の機能が低下した時、運動開始時は予測最大心拍数の65%以下で心拍数上昇を20拍/分程度の運動強度を指標としています。

健常者(高齢者を含む)では最大酸素摂取量の50〜80%の運動が全身持久力の改善につながるとされています。

脳卒中患者では、最大運動負荷の30〜50%やATレベルでのエルゴメーター訓練が有効とされています。

頻度や時間については週に3〜5回、一回30分程度の運動をすることが多いです。

運動負荷は、バイタルチェックを行いながら、徐々にアップさせることが望ましいです。


廃用症候群と起立性低血圧





廃用症候群と起立性低血圧


安静臥床から立位になると、血液が下肢に移動し貯留され、静脈還流量は減少します。

正常では高圧受容器に刺激が入力され、交感神経活動が亢進し、心拍数の増加と末梢の血管抵抗の増加を来たし血圧を維持する働きを示します。

収縮期血圧は若干減少し、拡張期血圧は末梢血管抵抗の増加と同じく若干の増加を示しますが、平均血圧は変化しない反応となります。

しかし、長期の臥床によりVasomotor controlの障害で交感神経活動の働きである下肢の末梢血管収縮反応が不十分となり、下肢に血液が貯留し、静脈環流量が減少します。一回拍出量が低下し、血圧が維持できなくなって、血圧の低下を示した後、脳血流量の低下へと繋がります。

起立性低血圧の症状は、立ちくらみ、顔面蒼白、ふらつき、めまい、頭痛、発汗、意識不鮮明、目のかすみを伴うことがあります。


廃用症候群と拘縮予防





廃用症候群と拘縮予防


予防が最も大切です。ベッド上で良肢位を保ち、1日2回以上、全可動域にわたり関節可動域訓練を行います。自動運動、他動運動のどちらでもよいです。動くことが可能な患者には、安静臥床をさせないで、早期離床、早期歩行に努めることが大切です。

拘縮に対しては、温熱と持続伸長を行います。
温熱を加えることで関節包、周辺組織が伸長されやすくなり、痛みの軽減効果もあります。そこで、持続的に伸長を行います。
疼痛の自制範囲内で行いますが、まずは徒手的に行い、長時間の効果を期待する際には、装具、自助具、キャスティングを使用します。
また、ブロック治療も併用すると効果が倍増します。
保存的治療で効果がない場合には関節受動術、観血的剥離術、腱延長術を検討します。


廃用症候群と関節可動域制限





廃用症候群と関節可動域制限


長期の安静臥床により関節の可動域制限をきたし、拘縮と強直に分けられます。拘縮とは、皮膚、筋肉や関節構成体である関節包や靭帯の変化により正常の関節の動きが制限された状態をいいいます。
さらに長期にわたる関節内の病変により、関節端や関節軟骨が骨性に癒着した状態が強直といいます。

筋肉、骨格系の可動性は結合織の状態で変化します。
結合織は、コラーゲン、レチクリン、エラスチンといった線維成分から成り立っており、可動性を持っています。
関節の動きが制限された時に内部組織の細胞浸潤とともにフィブリンの析出がおこり、さらに結合織の増殖がおこることで結合密度の高い状態となります。

関節固定を行うと、3日で顕微鏡レベル、7日で臨床的な拘縮が観察されるようになります。

また、関節の運動により軟骨は直接的に栄養をうけており、この作用がなくなると軟骨への栄養も障害され易い様態となります。


半側空間無視 重症度評価 CBS





半側空間無視 重症度評価 CBS


Catherine Bergego Scale(CBS)は、ADLでの無視症状で重症度を評価します。


  1.  整髪または髭剃りのとき左側を忘れる
  2. 左側の袖を通したり、上履きの左側を履くときに困難さを感じる
  3. 皿の左側の食べ物を食べ忘れる
  4. 食事の後、口の左側を拭くのを忘れる
  5. 左を向くのに困難さを感じる
  6. 左半身を忘れる(例、左腕を肘掛けにかけるのを忘れる。左足を車椅子のフットレストに置くのを忘れる。左上肢を使うのを忘れる)
  7. 左側からの音や左側にいる人に注意をすることが困難である
  8. 左側にいる人や物(ドアや家具)にぶつかる(歩行・車椅子駆動時)
  9. よく行く場所やリハビリ室で左に曲がるのが困難である
  10. 部屋や風呂場で左側にある所有物を見つけるのが困難である


各項目0~3点で評価(0~30点)

0:無視なし

1:軽度の無視(常に右の空間から先に探索し、左の空間に移るのはゆっくりで、躊躇しながらである。時々左側を見落とす)

2:中等度の無視(はっきりとした、恒常的な左側の見落としや左側への衝突が認められる)

3:重度の無視(左側をまったく探索できない)


上記項目のうち、麻痺などでその動作が不可能な場合は、試行可能な項目の平均点を割り当てます。


半側空間無視の重症度分類 (福井 1981)





半側空間無視の重症度分類 (福井 1981)


1 ときに片側空間の物体を認知しないこともあるが、ADLはほとんど支障なし

2 両側刺激による消去現象を認めるが、片側刺激は認知可能

3 片側刺激でも末梢部分を見落とす

4 片側のみの刺激でも全部見落とし、空間軸変位・崩壊現象を伴うことが多い

5 片側をまったく無視し、right neck rotation、空間軸変位・崩壊現象を伴う


廃用性骨萎縮の対策





廃用性骨萎縮の対策


廃用性骨萎縮の対策は、早期からのリハビリが大切です。臥床早期からの関節可動域訓練と筋収縮を行います。

可能であれば早期より体重負荷も行わせると良いです。

ベッド上でのギャッジアップ、端座位訓練、立位訓練と進めていく事が、骨萎縮の予防となります。

自力での起立が困難な時には、起立台を利用しての起立訓練を早期より行うのが有用です。

骨量が最大となる青年期において骨量を多くしておくことは、高齢者となってからの骨量を維持するために役に立ちます。

薬物療法は非常に有効な手段で、ビスフォスフォネート製剤、カルシトニン製剤、ビタミンKなどの処方が行われています。


長期臥床と骨萎縮





長期臥床と骨萎縮


長期臥床により骨萎縮が生じることはよく知られています。
高齢者には生理的に骨量が減少することも多く、長期臥床によりさらに骨萎縮が進行します。

そのため軽微な外力により骨折をきたす事があり、例えば、おむつ交換時にも大腿骨頚部骨折をきたす例もあります。

骨組織は骨基質を吸収する破骨細胞と骨形成を行う骨芽細胞のバランスで一定に保たれています。

荷重と筋活動の刺激により骨格構造が維持されていますが、臥床が続く影響で、骨形成が低下し、骨吸収が亢進し骨密度が低下することとなります。

中村らは廃用性の骨粗鬆症の原因は、骨組織の歪み感知機構が関与していると述べています。
荷重によって骨にかかる歪みは増大します。荷重が減少し骨にかかる歪みが減少すれば、感知機構も退化し、骨組織は吸収され、骨量が少なくなります。

骨量の減少は、骨のなかでも骨幹部から骨端部の海綿状骨の部分が大きいです。
海綿状骨は皮質骨に比較して廃用の影響を受けやすくなっています。
理由としては、両者の代謝回転の違いから生じていると考えられています。

臥床の実験でLcblancらは17週の長期安静をとらせて骨量を計測しまさたが、骨量は荷重部位で骨量が有意に減少していたと報告しています。
前腕骨では骨量に変化を示さず、上半身と下半身で異なった影響となりました。

麻痺のよる影響として脊髄損傷患者では、麻痺部の骨萎縮は知られています。受傷後6ヶ月で約7%の骨量減少を認めたと報告されています。


廃用性の筋力低下の予防





廃用性の筋力低下の予防

廃用性の筋力低下の予防は、早期から離床、荷重が重要です。
基本的には、早期にベッド上からのリハビリを施行していくことが重要となります。

座位が困難な状態では、チューブやセラバンド等を使用しベッド上での四肢筋力増強訓練を行います。

その際に筋力増強を目的とするならば、最低でも最大筋力の60%以上の強度で4〜10回繰り返します。

筋持久力を目的とすれば12〜20回程度繰り返す運動強度とします。

また、筋力がMMTで1〜2レベルでの筋力増強には、筋電図バイオフイードバックを利用し視覚的に筋収縮を会得させるようにします。

筋力がMMTで0〜1レベル時には、治療的電気刺激(TES:therapeutic electrical stimulation)を利用し筋肉の萎縮を予防します。

可能であれば起立性低血圧等に注意しながら離床を進めていきます。

また同時に荷重をかける(重力をかける)ことも重要となります。


廃用症候群 筋肉におよぼす影響





廃用症候群 筋肉におよぼす影響

筋力は運動不足により低下し、安静によりさらに筋力の低下、筋萎縮、筋耐久力の低下が生じます。

安静臥床を続けると1週間で10〜15%、3〜5週間で50%程度低下するとされています。

健常者に4〜6週間安静臥床を行わせた筋力の低下は、腓腹筋とヒラメ筋、前脛骨筋、肩甲周囲筋、上腕二頭筋の順に大きく低下しました。 手内筋には明らかな筋力の低下は認められませんでした。

Mullerは、筋力の35%を越える程度の負荷では筋力は増加し、20〜35%の負荷で維持でき、20%未満の負荷では筋力は維持できないと報告しています。

筋萎縮は筋線維数の減少ではなく、筋線維径の減少によるものです。 タイプⅠ線維とタイプⅡ線維のいずれも径が減少します。

廃用性筋萎縮では筋収縮がみられないためタンパク質の合成が低下しています。

低活動においてはタイプⅡ線維優位の筋萎縮がみられます。
タイプⅡ線維の筋線維の質的な変化もみられ、遅筋の速筋化がおこります。


開口訓練 (舌骨上筋群強化目的)





開口訓練 (舌骨上筋群強化目的)

意義
舌骨上筋の筋力トレーニングを行うことで舌骨の挙上や食道入口部開大を改善する。

主な対象者
脳血管疾患、高齢者全般等で舌骨挙上不全や食道入口部開大不全を呈した意思の疎通が可能な患者。

具体的な方法
座位もしくは臥位にかかわらず、体幹が安定した姿勢で行う。
最大限に開口を命じて舌骨上筋群が強く収縮していることを意識しながらその状態を10秒間保持させて10秒間休憩する。
これを5回で1セットとして1日2セット行う。
嚥下障害患者に対して4週間行わせたところ、舌骨上方挙上量、食塊の咽頭通過時間、食道入口部開大量が改善したとの報告がある。

注意点など
顎関節症や顎関節脱臼のある患者には注意して行う、もしくは適用を控えるのが望ましい。

http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/18-1-p55-89.pdfより抜粋


線維筋痛症(fibromyalgia:FM)





線維筋痛症(fibromyalgia:FM)

線維筋痛症(fibromyalgia:FM)は、長期間持続する全身の結合織(筋肉、靱帯、腱の疼痛と多彩な愁訴を呈する慢性疾痛のモデルともいえる病態です。

FMでは睡眠障害、慢性的な頭痛(多くは筋緊張性頭痛)、易疲労性、過敏性胃腸障害などの不定愁訴が多く、これらの心身症状は天候・温度・気圧・湿度などの環境変化、肉体負荷・労働・睡眠状態などの身体的なコンディション、社会的、対人交流上のトラブル・感情のもつれなどの精神的ストレスや性格的特性が問題になることもあり、心身症としての側面を濃厚に有している疾患です。

発症の背景には何らかの遺伝的、生理学的要因に加え、女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の多彩な心理社会的ストレス要因も大きく関係します。

ストレスの形成要因として、不規則な生活、過労、疲労の蓄積などにより引き起こされる肉体的疲弊状態、さらに心理的葛藤、フラストレーション、不適応状態、正当な評価が得られないための欲求不満状態や怒りなどが認められており、これらの心身の疲弊状態に筋肉の疼痛を生じさせる肉体的外傷体験などが加わって発症するプロセスが考えられています。

FMは長い経過の中で不安障害や気分障害を伴うことが多く、時に対応に苦慮することもあります。


急性疼痛と慢性疼痛





急性疼痛と慢性疼痛

急性疼痛は外傷、炎症、火傷など身体的に明らかに原因が認められます。 客観的に部位や程度の評価が容易で、一般的な鎮痛剤、麻薬、神経ブロックなどでコントロール可能です。

慢性疼痛は、“急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて持続する痛み”と定義されているように、長期間にわたる頑固に繰り返される反復性の痛みとして表現されます。

局所の痛みが全身に拡大し、痛みの部位や明確な原因が特定しにくくなり、医学的な説明が困難なものがあります。慢性の痛みは自律神経、内分泌、免疫系のホメオスタシスに悪影響を及ぼし「痛みが痛みを呼ぶ」という悪循環がみられるようになります。

また痛みのみならず不眠、倦怠感、食欲不振、微熱など多彩な全身性の愁訴を伴うようになり、愁訴の多さからとらえどころのない痛みとなります。

長期にわたる対応困難な痛みは心身の健康を損ねる有害なストレス刺激となり、心身交互作用による「痛みととストレスの悪循環」が生じます。


精神医学的にとらえた疼痛





精神医学的にとらえた疼痛

ICD-10
F-45.4持続性身体表現性疼痛障害(persistent somatoform pain disorder)
頑固で激しく苦しい痛みで、生理的過程や、身体的障害によっては完全に説明できない情緒的葛藤や心理社会的問題に関連して生じる
(含)精神痛psychalgia
   心因性背部痛、頭痛
   身体表現性柊痛障害


DSM-IV
300-81身体化障害(somatization disorder)
少なくとも4つの異なった部位または機能に関連した疼痛の病歴 疼痛性障害(pain disorder)

307-80 心理的要因と関連した疼痛性障害

307-89 心理的要因と一般身体疾患の両方に関連した疼痛性障害
心理的要因と一般身体疾患の両方が疼痛の発症、重症度、悪化、持続に重要な役割

DSM-5
身体症状障害(somatic symptoms disorders)


慢性疼痛の病態と特徴





慢性疼痛の病態と特徴

①長期間にわたる、頑固に繰り返される反復性の痛み

②局所よりも全身的な不定愁訴を生みやすい

③疼痛のために、筋緊張・血管攣縮などによる血行動態の障害が、さらに痛みを増強させる悪循環

④自律神経、内分泌、免疫系のホメオスタシスに悪影響

⑤不眠、全身倦怠感、気分の日内変動、意欲や集中力の低下などの症状を伴う痛み

⑥社会的活動性が制限され、人生、生活の質が損なわれる

⑦不眠、全身倦怠感、気分の日内変動、意欲や集中力の低下などの症状を伴う

⑧鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬物や、マッサージ、牽引、鍼灸などの理学療法でも改善しないことが多い

⑨慢性疼痛患者は他者から受容、共感されにくい

⑩良好な医師・患者関係が築きにくく、医療不信に陥る


心因性疼痛





心因性疼痛

痛みは経過が長いほど、精神的要素が強いほど、疲労やストレスが強いほど疼痛症状が悪化し、特に慢性の経過をとる神経因性疼痛は心因性疼痛と密接に関係します。
慢性疼痛患者はうつ病をはじめさまざまな精神医学的問題を有することが多いとされ、慢性疾痛もうつ病のcomorbidity(共存、併存する疾患)の一つとして考えられるようになりました。


神経障害性疼痛





神経障害性疼痛

神経障害性疼痛は末梢および中枢神経の損傷を基盤とし、受傷から時間を経て発生する激しい痛みです。

切断し失われたはずの四肢に痛みを覚える幻肢痛(phantom limb pain)、脳卒中後疼痛、視床痛、帯状庖疹後疼痛、腰痛症などは神経障害性疾痛であり、慢性疼痛の形をとりやすいです。 また、糖尿病性神経障害は動脈硬化から生じる侵害受容性疼痛も加わっています。

神経障害性疼痛は以下の症状があります。

知覚過敏(hyperalgesia):少し触れても飛び上がるほど痛い、などと表現され、軽微な痛み刺激でも激しい痛みとして感じてしまう症状です。

異常感覚(dysesthesia):不快な異常感覚を伴う自発痛。「しびれるよう」な、「灼けるよう」な、「ピリピリ」「じりじり」するような痛みとして表現される症状です。

アロディニア(allodynia、異痛症):シャワーを浴びても痛い、衣服が擦れても痛いなど、本来痛みを発生しない軽い触刺激でも痛みを引き起こす症状です。
他人には大げさでヒステリックな表現として受け取られやすく、時に詐病の汚名も着せられてしまいます。
アロディニアには、脊髄後角での痛覚神経線維であるAδ、C線維が頻回に刺激されることにより触覚の神経線維であるAβ線維の興奮が惹起され、そのうち痛み刺激が加わらなくとも痛みが生じるという中枢性感作が成立します。


侵害受容性疼痛





侵害受容性疼痛

侵害受容性疼痛とは、皮膚・筋組織・内臓器などの末梢の自由神経終末に存在する侵害受容器に対する切り傷や打撲などの外的刺激・損傷・炎症、火傷などの熱や圧迫などの機械刺激によって生じる痛みのことであり、内臓痛(腹痛など)と体性痛(筋骨格系や皮膚)に分けられます。


誤嚥性肺疾患の分類





誤嚥性肺疾患の分類

1.Aspiration pneumonitis
誤嚥性肺臓炎
 ・胃酸や食物残渣による化学的肺臓炎:Mendelson症候群

2.Aspiration pneumonia
誤嚥性肺炎
 ・顕性誤嚥
 ・不顕性誤嚥

3.Diffuse aspiration bronchiolitis
びまん性嚥下性細気管支炎

4.異物誤嚥による肺炎
 ・不活性液体(三水;海水,真水)
 ・油類(リポイド肺炎)
 ・固形異物(気道異物)

5.人工呼吸器関連肺炎
(Ventilator associated pneumonia:VAP)


誤嚥性肺炎の基礎疾患・リスク





誤嚥性肺炎の基礎疾患・リスク

・脳血管障害

・中枢神経系の変性疾患

・認知症

・咳漱反射や嚥下反射の低下

・意識レベルの低下(鎮静剤や麻酔の影響も含む)

・食道の通過障害

・胃・食道逆流(食道裂孔ヘルニア、口腔・咽頭癌術後、上部消化管術後、胃管挿入など)

・嘔吐


誤嚥性肺炎 抗菌薬





誤嚥性肺炎 抗菌薬

誤嚥性肺炎と診断され、重症度が判定されると、治療に入ります。
日本呼吸器学会のガイドラインでは、「高齢者の誤嚥性肺炎は、中等症以上と考えて治療する必要がある」としています。

起因菌は、同定が困難なことが多いことから、最初はエンピリックな治療(原因菌を推定して行う治療)を始めます。
誤嚥性肺炎では、嫌気性菌とグラム陰性桿菌の関与が高いことから、βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬、クリンダマイシン、カルバペネム系抗菌薬などが推奨されています。
これらの初期治療で無効な時は、侵襲的な方法(経気管支吸引法や経皮的弓穿刺吸引法)を用いて起因菌を同定することを奨めています。
高齢者では、加齢によって薬物動態が変化するので、十分な配慮が必要です。特に、潜在性に腎機能が低下しているので、抗菌薬の尿中排泄率が低く、薬剤の血中半減期が延長します。
そのため注射薬では、1回投与量を成人投与量の50-70%にして投与間隔を腎機能に応じて延ばす必要があります。
抗菌薬の副作用の種類は、成人と変わりませんが、気づかれにくく、重症化しやすいです。


誤嚥性肺炎に対する一般療法





誤嚥性肺炎に対する一般療法

患者の全身状態を的確に把握し、感染防御に悪い影響を与える要因を改善することが大切です。
高齢者の肺炎では、全身管理(脱水の是正、栄養状態の改善、酸素療法、気道分泌物処理など)を必要とする場合が多くなります。

①安静、保温
安静を保って治療に専念する必要があります。寒冷、高温を避けるようにします。
ただし、病状が安定した後は安静を速やかに解除します。

②栄養管理
低栄養状態は感染防御低下の大きな原因です。経口摂取による栄養補給に努めるべきではありますが、摂食に伴う明らかな誤嚥のある時には一時的に禁食とし、静脈栄養、経腸栄養などを考慮します。
また嚥下障害を評価し、嚥下リハビリテーションを施行します。
③水、電解質管理
脱水の場合には、速やかに水分、電解質を輸液します。

④呼吸管理
低酸素血症が認められる時には、酸素を投与します。また、疲を喀出できるよう、吸入療法や肺理学療法などを行います。酸素を投与しても、低酸素血症が改善しない場合には、気管内挿管、人工呼吸管理を考慮することがあります。


肺炎の治療効果判定





肺炎の治療効果判定

「成人市中肺炎診療ガイドライン」によると、治療の効果判定には下記4つの指標を用います。 ( )内は、抗生物質投与終了の基準です。
感染防御能が正常と考えられる患者では、4項目中3項目以上を満たした場合に薬剤投与を終了します。
基礎疾患があり、感染防御能が低下していると考えられる患者では、4項目中3項目以上を満たしてから4日後に治療を終了します。

●解熱(目安:37℃以下) ●白血球数増加の改善(目安:正常化) ●CRPの改善(目安:最高値の30%以下の低下) ●胸部レントゲンの浸潤影の明らかな改善


効果判定
・3日後(重症例は2日後):初期抗菌薬の評価
・7日以内:有効性の評価や終了時期の決定・14日以内:終了時期や薬剤変更の決定


肺炎の起因菌同定のための検査





肺炎の起因菌同定のための検査

肺炎と診断したら、原因微生物を同定するための検査をします。
喀痰の検査(塗抹鏡検検査、培養)が施行されますが、誤嚥性肺炎の起因菌は嫌気性菌が多いので、通常の培養では菌の同定は困難です。
また、口腔内常在菌の混入を考慮する必要があります。
原因菌の同定には、経気管支吸引法や経皮的肺穿刺吸引法が優れており、「成人市中肺炎診療ガイドライン」では、「治療無効例や重症例では試みる価値がある」としています。


肺炎の検査





肺炎の検査

身体所見では、まず呼吸数、呼吸様式、チアノーゼを診ます。ただし高齢者は必ずしも呼吸困難を訴えないので、注意が必要です。
聴診では、呼吸音の性状、雑音の有無に注意します。肺胞呼吸音が聴こえるべき部位での気管支呼吸音の聴取(肺炎が疑われる)、呼吸音の減弱(無気肺が疑われる)の有無、断続性雑音(ラ音)の有無を聴診します。

肺炎の診断は、胸部単純レントゲン撮影で行われます。肺炎を起こしている部位には、浸潤影が認められます。浸潤影はair bronchogram(エアー・ブロンコグラム)といわれる気管支の透亮像(周囲に比べて黒く写る所見)を伴うことがあります。
単純レントゲン撮影で診断がはっきりしない時には、CTが用いられることもあります。

血液検査では、炎症所見(白血球増加、赤沈亢進、CRP陽性)が認められます。

肺でのガス交換の結果は、動脈血ガス分析で評価する。低酸素血症(PaO260 Torr以下)の有無、肺胞低換気(PaCO245Torr以上)の有無を評価します。

以上の検査から、肺炎の重症度を判定します。
重症度は日本呼吸器学会「成人市中肺炎診療ガイドライン」の重症度分類を参照してください。 肺炎患者の生命予後という点から、身体所見ならびに検査成績から重症度を分類しています。 目安として、軽症(0点)は外来治療を、中等症(1または2点)は外来治療または入院治療、重症(3点)は入院治療を、超重症はICU入院にて治療します。


誤嚥性肺炎の症状





誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎の症状は、通常の肺炎と同様で、発熱、咳、黄色調の痰、胸痛、呼吸困難があります。
ただし、高齢者の場合は、症状が軽いことがあり、必ずしも高熱や多量の疲の喀出がみられないこともあります。呼吸困難も、はっきりとは訴えないので、家族や医療従事者は、呼吸数やチアノーゼの有無に注意する必要があります。
チアノーゼも高齢者は貧血があることが多いので、認めらにくいです。


栄養とリハ





栄養とリハ

低栄養・過栄養による代謝異常があるのに、栄養管理を行わずにリハを行うと、リハの効果が得られず、さらに機能低下を招き、ADL自立度が低下することを念頭に置く必要がある。
患者が最大限の力を発揮できるように、個々の病態を把握し、口から食べることを推奨しながら適切な栄養管理を行うことが望まれている。


肥満の病体





肥満の病体

肥満とは、肥満に起因・関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合であり、医学的に減量を要する病態である。
肥満には遺伝因子と環境因子の両者が関与するので、過栄養のみが肥満の原因ではないことに留意すべきとされている。

WHO分類ではBMI 30kg/m2以上を肥満と定義しているが、日本肥満学会はBMI 25kg/m2以上から肥満と定義している。

日本人ではBMIが25kg/m2を超えると肥満に伴う健康障害が合併しやすく、BMIが22kg/m2以下で最も疾病が少ないと報告されている。

合併症は、代謝異常として耐糖能異常、脂質代謝異常(高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症)、高血圧、内臓脂肪蓄積をはじめとする動脈硬化のリスクが挙げられる。

内臓脂肪蓄積による高血糖、高脂血症、高血圧などの合併率が高くなり、複数の心血管疾患のリスクが高くなる病態(メタボリックシンドローム)も問題となっている。
肥満では筋力や持久力低下などによるADL低下を認めることがある。
代謝異常を改善させるには内臓脂肪の減少が必要となる。BMI単独評価ではクワシオコルの栄養障害を見過ごさないように注意が必要である。


悪液質の特徴





悪液質の特徴

骨格筋の減少はADLに支障をきたすだけでなく、代謝障害のため食欲不振やさまざまな身体症状も出現し、抑うつ症状など精神的な有病率も高く、QOLも低下してしまう。

飢餓であればエネルギー必要量を投与すれば栄養状態は改善するが、悪液質の場合、エネルギー必要量を投与するだけでは栄養状態の改善は難しいことが多く、飢餓と悪液質の鑑別は栄養管理を行ううえできわめて重要となり、CRP 0.3〜0.5mg/dL以上が慢性炎症や悪液質の目安となるといわれている。
悪液質では原因疾患の治療が重要となる。
補助として適切な栄養管理、廃用予防程度の運動、n-3系脂肪酸(EPA)、L-カルニチン・グレリンなどの薬剤や栄養素の効果が期待されている。


悪液質 栄養代謝障害





悪液質 栄養代謝障害

がんに起因する悪液質はよく知られているが、悪液質とはがんだけでなく慢性疾患によってひき起こされる栄養代謝障害のことを指している。
悪液質の原因となるのは、がん、慢性感染症(ARDSなど)、慢性心不全、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患、リウマチなどの膠原病、肝不全などである。
飢餓は脂肪組織の減少が主体で骨格筋の大きな喪失を伴わないのに対し、悪液質は早期から骨格筋の喪失を生じるため、飢餓と異なる病態と考えられている。


異化期と同化期の評価





異化期と同化期の評価

患者が異化期なのか同化期なのかを見極めることは大切なことである。異化期では筋肉の蛋白質や脂肪を分解してエネルギーを産生するが、同化期では筋肉の蛋白質や脂肪が合成されるようになり、点滴や経腸栄養投与による栄養素を有効活用できるようになる。

異化期から同化期への指標となるのが、尿中の窒素排泄量と水分バランスである。
窒素バランスは異化期では負になり、同化期では正になる。
侵襲直後は栄養を入れすぎないように注意しなくてはならないが、異化期が過ぎれば少しずつ目標とするエネルギー必要量に増やしていく。
高血糖とならないように、適宜、インスリンを投与し、尿糖・AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)・BUN(血中尿素窒素)などをモニタリングしながら投与量の調節をする。
侵襲時は補助的に栄養管理を行い、同化期になってから機能訓練を行うようにする。


傷害期と異化期





傷害期と異化期

侵襲の初期、傷害期には肝臓のグリコーゲンが分解されるが、これが枯渇すると筋肉の蛋白質や脂肪を分解してエネルギーを供給するようになる。この時期を異化期とよぶ。

高度な侵襲の場合、外部から糖を補っても蛋白質の分解を抑制することができない。糖は最も効率のよいエネルギー源だが、インスリン抵抗性を示す場合は糖を入れても生体は利用しにくい状態である。侵襲直後、とくに異化期の患者に高カロリー輸液を行ってもなかなか利用できないのは、こういった代謝異常があるためである。
侵襲をコントロールできなければ、いくら適切な栄養管理とリハを行っても栄養や機能の維持は困難となる。
異化期に機能訓練を行っても筋肉量が減少するばかりで逆効果となるため注意が必要である。


侵襲時の炎症とサイトカイン





侵襲時の炎症とサイトカイン

侵襲とは、具体的には手術、外傷、骨折、感染症、熱傷などのことで、CRP(C反応性蛋白)の急速な上昇が一つの目安になる。
侵襲時には創傷治癒などのためエネルギー需要が亢進するほか、ホルモンやサイトカインの産生が増加する。
侵襲が加わると傷を治すために炎症性サイトカインが分泌され、必ず炎症が生じる。

炎症性サイトカインが過剰に分泌されると体中に炎症が起こり、臓器障害が発生してしまう。
抗炎症性サイトカインは炎症性サイトカインとほぼ同時に、その量に応じて分泌されるが、これが出すぎると免疫能が低下し、感染症から臓器障害をひき起こしてしまう。


リフィーディング症候群





リフィーディング症候群

高度な低栄養状態にある場合に栄養補給を行う際は、必ずrefeeding症候群の発症リスクを念頭に置いて栄養補給する必要がある。
マラスムスやクワシオルコルはrefeeding症候群発症のリスクとなる。

Refeeding症候群とは、長期間、高度な低栄養状態にあった患者に急速に栄養投与することで発症する代謝異常で、急激に起こる異化から同化への代謝変化と、それに伴うリン、カリウム、マグネシウムの細胞内移動が原因となる。
なかでも低リン酸血症はとくに危険な状態である。
低栄養の患者の栄養補給を行う際は、とくに糖の補給方法が問題となるためモニタリングとともに段階的な栄養補給が必要となる。


炎症を伴わない低栄養





炎症を伴わない低栄養

炎症を伴わない低栄養であれば、エネルギー必要量を補充し、消化・吸収・代謝されることで改善する。
5大栄養素についてバランスよくエネルギー必要量を摂取し、廃用予防程度の運動は行うようにする。


典型的な飢餓





典型的な飢餓

飢餓には、「マラスムス」と「クワシオルコル」とよばれる典型的な2つの病型がある。
マラスムスは蛋白質量とエネルギー量のどちらも不足しているため、protein energy malnutri-tion(PEM/蛋白質・エネルギー栄養失調)とよばれ、著明なやせ、体重減少や筋肉・脂肪の減少、成長停止、筋萎縮や貧血が認められるが、浮腫や低蛋白血症は認められない。
血中アルブミン値も低下しないことがある。

クワシオルコルは、蛋白質の不足がエネルギー量の不足よりも重篤な場合の病型で、内臓蛋白の高度減少が特徴で低蛋白血症から浮腫、腹水をきたす。 実際の臨床現場では、両者が混在することが少なくない。


窒素死 飢餓





窒素死 飢餓

飢餓が長期間続くと、多くの組織が、グルコースではなく遊離脂肪酸から産生したケトン体からエネルギーを獲得する。
さらに飢餓が悪化すると、免疫能の低下、創傷治癒遅延、臓器障害を認め、除脂肪体重(LBM:lean body mass/全体重のうち、体脂肪を除いた総量)の30%を失うと、「Nitrogen Death、窒素死」とよばれる死に至るとされている。


飢餓とリハビリテーション





飢餓とリハビリテーション

飢餓とは、エネルギー必要量より少ない摂取量が続いたときに起こる低栄養の状態である。
飢餓のときは体外からのエネルギー摂取量が不足しているため、体内に蓄えられている糖質、脂質、蛋白質を分解することで、生きるために必要なエネルギーを産生する。

短期(24時間以内)の飢餓では肝臓のグリコーゲンが分解され、まかなわれるが、その後、蛋白質と脂肪を分解してエネルギーを産生する。

アミノ酸や脂質、エネルギーが不足している飢餓の状態で運動すると、筋肉の蛋白質をさらに分解するため、筋肉量は減少してしまう。

栄養管理をせずにリハを行うと低栄養が長期化し、ますます機能低下が進み、日常生活活動(ADL)に大きな支障をきたすことにもなりかねないため留意する必要がある。


低栄養へのアプローチ





低栄養へのアプローチ

成人の低栄養は、炎症反応の有無が重要な因子である。
病因によって、
①飢餓(炎症を伴わない)
②悪液質(軽度〜中程度の炎症を伴う)
③侵襲(中程度〜高度の炎症を伴う)
の3つに分類され、低栄養を体系的に診断しアプローチするよう提唱されている。

病態によって代謝は変動するため、栄養管理を理解するうえで、個々の病態の代謝を考えることが重要である。


栄養障害





栄養障害

生命活動を維持するために必要な栄養量と摂取量のバランスが崩れると栄養障害が起こる。
エネルギー必要量より少ない食物を摂取していることで起こる代謝障害を「低栄養」という。
またエネルギー必要量よりも多くの食物を摂取することで起こる代謝障害を「過栄養」という。


代謝とは





代謝とは

生命活動を行っている私たちの生体を形づくる組織は、つねに壊され生まれ変わっている。
これを「代謝」という。
その材料・燃料となるのが食物である。
材料となる食物や栄養素がなければ、徐々に生命活動を維持できなくなり、最終的には死に至る。
代謝とは、栄養素の同化(合成)および異化(分解)のことである。
食事から消化吸収された栄養素は異化することでエネルギーを産生し、同化にはエネルギーが必要になる。

ウェルニッケ・コルサコフ症候群





ウェルニッケ・コルサコフ症候群

ウェルニッケ・コルサコフ症候群はビタミンB1欠乏を原因とし、急性期には意識障害、眼球運動障害、運動失調といったウェルニッケ脳症の症状が前景に立ち、約半数の例で前向健忘、逆向健忘、見当識障害、作話病識の欠如といったコルサコフ症候群が残存します。

アルコール依存症に多いですが、拒食症でもみられ、なかにはビタミンB1を欠いた点滴時といった医原性の場合もみられます。

急性期であればMRIのT2強調画像、FLAIR画像、拡散強調画像でしばしば病巣が確認されます。

病巣の範囲は、第3脳室、中脳水道第4脳室底の周辺であり、この部位の損傷によって意識障害、眼球運動障害、運動失調、記憶障害が生じます。

記憶障害に関しては、視床(背内側核、乳頭体視床路、前核等)や乳頭体の障害により起こります。


作話 記憶障害





作話 記憶障害
作話は記憶障害を背景として出現しますが、側頭葉内側部、乳頭体、脳弓、脳梁膨大後域皮質の限局損傷で作話を認めることは稀てす。
限局損傷で作話が出現する際は、前脳基底部を含む病巣が多く、疾病としては前交通動脈破裂によるクモ膜下出血で出現しやすいです。

ただし、限局した前脳基底部損傷では作話は出現しても一過性であると報告されています。

作話を伴う記憶障害の患者は、程度の差はあるものの見当識障害や遂行機能障害を伴い、自立した生活を送ることは困難と言われています。


健忘症候群 病巣





健忘症候群 病巣

健忘症候群の責任病巣としては、側頭葉内側部(海馬、海馬傍回、嗅内野、嗅周囲野)、視床(背内側核、乳頭体視床路、前核等。)、乳頭体、脳弓、脳梁膨大部後方領域、前脳基底部が知られています。
これらの責任病巣の多くは、Papezの回路、すなわち、海馬体(歯状回、固有海馬、海馬台)一脳弓一乳頭体一視床前核一帯状回(脳梁膨大部後方領域も含まれる)一海馬傍白一海馬体といった回路にあります。
このなかでも臨床上、健忘症候群が出現する典型的な病巣は、側頭葉内側部の損傷です。


記憶障害 高次脳機能障害





記憶障害 高次脳機能障害

記憶障害は、脳損傷に伴う高次脳機能障害のなかでも比較的頻度が高く出現し、日常生活における問題の中核となることが多いです。記憶障害は知能の低下や注意障害に伴って出現する場合が少なくありませんが、独立して出現する場合もあります。この場合は健忘症候群といい、その正確な定義は、基本的な注意機能、短期記憶(即時記憶)、手続き記憶、プライミング効果が保たれているなかで、前向健忘および、または逆向健忘がみられることとされています。


利き手と失語症





利き手と失語症

右利きであれば、言語機能は左半球に側性化※しています。右利き失語症患者の約1%に、病変が右半球にある交叉性失語を認めます。
左利き、両手利きの場合は、右利きほど言語機能の左半球の優位性ははっきりせず、約60%が左半球に言語機能が側性化していますが、右半球で営まれている場合や、左右で分担している場合などさまざまです。

※側性化とは、ある特定の機能の処理が、大脳半球の左右のどちらかで重点的に行われていることをいいます。


角回のMRI上の目印と優位半球における欠落症状





角回のMRI上の目印と優位半球における欠落症状

角回は、MRl水平断では、側脳室の体部がややくびれる断面で、側脳室の後角の延長線上にあります。

優位半球における角回付近の欠落症状は、手指失認、失書、左右失認、失算の4徴を呈するGerstmann症候群です。


Broca Wenicke領野のMRI上の指標と局在性





Broca Wenicke領野のMRI上の指標と局在性

Brooa領野は、下前頭回の三角部、弁蓋部に相当する領域です。
MRI水平断では、外側溝がコの字に見える部位の断面で、コの字1画目にあたる上行枝の前方が三角部、その後方が弁蓋部です。
Broca領野に限局した病変ではBroca失語を生じす流暢性の失語生じると言われています。

典型的なBroca失語は、Broca領野を含む下前頭回、中前頭回後部と中心前回下部を含む広い病巣で生じます。

Wernicke領野は、矢状断でみて上側頭回後方1/3領域の部位です。
MR1水平断では、Broca領野が見える同じ断面で、横側頭回があれば、その直後がWemicke領野に相当する上側頭回です。
Wemicke失語は、Wernicke領野を含む側頭葉後方、頭頂葉に広がる病巣によって生じます。


障害半球別の失語症と利き手の関係





障害半球別の失語症と利き手の関係

利き手が右手であるとき、言語機能は左半球が重要な役割を担います。右利きである失語症の病変のほとんどが左側にあります。

利き手が左手または両手の場合(非右利き)は、右利きほど左半球の優位性は明らかではありません。 非右利きの失語症で、左側に病変があるのは60%程度です。

利き手が右手である失語症で、病変が右側にある場合は交叉性失語と呼ばれます。


純粋語唖と伝導失語





純粋語唖と伝導失語

純粋語唖と伝導失語は症状と病巣の対応関係が明らかです。

純粋語唖は、Wernicke―Lichtheimの図式では、皮質下運動失語の範疇に入ります。
基本的には失語の要素を欠き、発話面において失構音のみ呈するのが特徴です。
しかし、実際には軽度の書字障害を伴うこともあります。
失構音は、構音障害とは異なり、誤りかたに一貫性がありません。
顔面失行、軽度の上肢の筋力の低下を伴うこともあるが、必発ではありません。
発症当初から純粋語唖を呈する場合と、Broca失語が軽快する過程で同様の症状をきたす場合があります。病巣は、左中心前回下部の病巣で生じる。

伝導失語は、聴覚理解が良好な流暢性失語で、音韻性錯語の頻出が発話の特徴です。
復唱、呼称、音読にも音韻性錯語は現れます。復唱において最も音韻性錯語が目立ち、特に文節が長くなると顕著となります。Wernicke失語と異なる点は、聴覚理解が保持され、 さらに自己の発話の間違いに気づいていることであす。
自己修正をし、何度も言い直す接近行動を認めます。書字にも音韻性錯書を認めます。
病巣は、左縁上回皮質、皮質下を含んでいます。


失語症の重症度と予後





失語症の重症度と予後

失語症の重症度、その予後は、発症年齢、病前の言語能力、病変部位、広さ、発症初期の言語症状、言語の側性化など複合的な要因がかかわります。

失語症の病因が血管障害の場合は、病変が大きいほど回復が遅い、あるいは回復が困難であることが示されています。

病変部位に関しては、脳の前方病変による非流暢性失語の場合、Broca領野の最深部、中心前回、中心後回下部の深部に病巣があると、非流暢性発話が長期間持続するという報告があります。
Wernicke失語では、中側頭回に病変が広がる場合は、回復が遅いという報告などがあります。
失語症の長期的な回復には、病巣側の機能回復だけではなく、非言語半球の関与もあると推測されています。

脳の機能面の評価には、脳血流シンチグラフイが用いられ、定量的な評価も可能となっています。頭部MRIで認められる病巣よりも、広範囲に血流が低下している場合があり、このときには、回復に時間がかかる可能性があります。


健忘失語





健忘失語

喚語の障害を中核症状とする軽症の失語症です。
純粋型も存在しますが、各失語型の回復過程で本型を呈することも多いです。
失名詞失語と同義的に使用されています。
本型は基本的には流暢失語であり、責任病巣として側頭葉や頭頂葉病変を指摘する報告があります。しかし、各失語型の回復過程に出現することからも予想されるように、本症の責任病巣を特定するには困難も多いです。


全失語





全失語

言語の基本要素である「聴く」「話す」「書く」「読む」の能力が重度に障害された状態です。
ブローカ領野とウェルニッケ領野を含む左中大脳動脈領域の広範な障害で出現してきます。
通常、右の片麻痺や感覚障害も重度です。
主幹動脈の血栓閉塞(左内頸動脈閉塞症)では、深部型境界域梗塞例で全失語をみることがあります。
この場合、形態画像による病巣は深部白質のみに限局しているようにみえますが、機能画像でみると、言語野を含む大脳皮質領域にも広範な脳循環代謝の障害を見ることができます。
形態画像と機能画像の顕著な解離をきたす状態となります。


皮質下性失語





皮質下性失語

大脳基底核部や視床、深部白質のみの病巣で失語を呈する症例があります。線条体失語や視床性失語とよばれる一群です。これらの失語症は皮質下性失語ともよばれています。
線条体失語は中大脳動脈の穿通枝領域の脳梗塞(線条体内包梗塞)や被殻出血で出現します。
失語症のタイプや重症度は様々です。

視床を中心とした病巣による失語症を視床性失語とよびますが、通常、流暢型の失語を呈してきます。
しかし、視床に限局した病巣で真の失語症が出現してくるか否かに関しては検討の余地が残っています。視床に限局した梗塞で失語症をきたした症例の報告はありますが、視床に限局した梗塞の大多数には失語は認められていません。一方、視床出血ではしばしば失語症状が認められます。この場合は線条体失語と同様に、周囲の白質や言語領野への直接的、間接的影響の有無について検討されています。


境界域梗塞と超皮質性失語





境界域梗塞と超皮質性失語

超皮質性失語は復唱が保たれている失語群です。
超皮質性失語の発現機序は境界域梗塞に限ったわけではありませんが、境界域梗塞により各タイプの超皮質性失語が出現してくることが指摘されています。

前大脳動脈と中大脳動脈、後大脳動脈の脳動脈には脳表を介する吻合があります。
灌膨圧の低下により、これらの脳動脈の境界領域に出現してくる梗塞が境界域(分水嶺)梗塞である主幹動脈の閉塞ないしは高度の狭窄によるアテローム血栓性脳梗塞に特徴的な所見で、表層型境界領域とよばれています。

中大脳動脈と前大脳動脈との境界域梗塞は、前方部境界領域梗塞で、中大脳動脈と後大脳動脈のそれは後方部境界領域梗塞です。
前者では超皮質性運動性失語が、後者では超皮質性感覚性失語が出現することがあります。

中大脳動脈からの穿通枝とその皮質枝から髄質へと向かう髄質枝の境界域は深部型の境界領域です。深部型境界域梗塞では全失語や超皮質性混合性失語のような重症失語が出現してくることがあります。
この場合、形態学的病巣部位は皮質下に限局しているようにみえても、機能障害部位は広範囲です。
失語症が重症であることが、障害が重度であること示唆しています。主幹動脈閉塞による深部型境界域梗塞に基因する重症失語も、形態画像と機能画像の著明な解離を示す病態です。


頭頂葉と失語症





頭頂葉と失語症

伝導性失語の責任病巣としては、縁上回が重要です。
通常、病巣は皮質下の弓状束も損傷しています。
この領域を灌流する中大脳動脈の主要な分枝は後頭頂動脈です。


側頭葉と失語症





側頭葉と失語症

感覚性失語症の責任病巣はウェルニッケ領野と言われています。
病巣が頭頂葉(角回や縁上回)へと拡がるとウェルニッケ失語はより重度となります。
領域は中大脳動脈の灌流域にあります。
ウェルニッケ領域は主として後側頭動脈の灌流域にあります。
頭頂葉の縁上回や角回を灌流するのは後頭頂動脈や角回動脈です。

頭頂葉症候群としての失書や失算、観念性失行、観念運動性失行などを伴うことがあります。

超皮質性感覚性失語はブローカ領域に限局した領域でも出現しますが、その責任病巣は主として、ウェルニッケ領野の周辺領域の側頭葉、頭頂葉後頭葉領域と言われています。その領域は、後方部の境界域梗塞により障害される部位でもありますが、塞栓症によることもあります。


前頭葉と失語症





前頭葉と失語症

運動性失語症の責任病巣は、ブローカ領野と中心前回下部を含む領域と言われています。
中大脳動脈の分枝でいえば、前前頭動脈や前中心門動脈、中心溝動脈の灌流域に相当します。
病巣が周囲へと拡大していれば失語症は重度になります。

神経症状としては、右片麻痺や口腔顔面失行を伴うことが多いです。 

純粋語唖は失構音を主徴とします。責任病巣は中心前回に想定されています。
この部位は中心溝動脈の灌流域にあります。

ブローカ領野のみに限局した病巣では運動性失語は出現せず、流暢性の失語を呈してくると言われています。失語症のタイプでいえば、超皮質性感覚性失語である心溝動脈の灌流域にあります。
この両動脈の灌流域には中前頭回も含まれます。
この領域は前頭葉性純粋失書の責任病巣であり、通常、書字の障害も顕著となります。

超皮質性運動性失語の責任病巣は、前大脳動脈領域にある補足運動野や中大脳動脈が灌流する前頭葉でブローカ領野周辺部位と言われています。
中大脳動脈が灌流する前頭葉でブローカ領野周辺部位を原因とする本症の発現機序としては、前方部の境界域梗塞や深部前方部の境界域梗塞や深部型境界域梗塞が関与することがあります。


失語症タイプ診断の流れ





失語症タイプ診断の流れ


失語症のタイプの診断は発話の流暢性や聴覚的理解障害の程度、復唱障害の程度などから判定します。

流暢性


ひとつのポイントは発話の流暢性です。
非流暢性失語群であれば、次は聴覚的理解の障害の重症度です。
これが重症であれば、全失語か超皮質性混合性失語です。
超皮質性混合性失語であれば復唱が保たれています。

聴覚的理解


聴覚的理解が比較的保たれていれば、運動性失語か超皮質性運動性失語です。


復唱


超皮質性失語であれば復唱は保たれています。

流暢性失語群で中等度以上の聴覚的理解障害をみれば、感覚性失語か超皮質性感覚性失語です。

前者では復唱が障害され、後者では保たれています。

聴覚的理解障害が比較的軽度であれば、伝導性失語か健忘性失語です。復唱でみると、前者では障害が目立ち、後者では障害は認めません。 伝導性失語の診断においては、音韻性錯語の存在に留意します。





失語症の症状





失語症の症状

失語症は「聞いて理解する」「話す」「読んで理解する」「書く」のいずれも障害されます。 失語症のタイプによってそれぞれの重症度は異なります。 また、計算の障害も伴う事が多いです。

「聞いて理解する」ことの障害
聴覚的理解の障害は程度の軽重はあってもすべての失語症者に認められる症状です。
理解障害に影響を与える因子は、単語の使用頻度や抽象性、文の長さや構文の複雑さ、発話の速度などです。
ウェルニッケ領野を中心とした病巣では、聴覚的理解の障害が目立ってきます。言語音そのものの認知が障害されるときは純粋語聾とよばれますが稀な病態です。環境音や音楽の認知障害とともに聴覚性失認として論じられることが多いです。

「話す」ことの障害
意図した言葉をうまく出せない状態を喚語困難と呼びます。失語の中核症状であり、すべての失語症者に認められると言っても過言ではありません。状況に応じて呼称障害や語想起障害として区別されています。
物品の名称が言えないため、その用途を述べたり、回りくどい説明を加えたりする。迂言や迂回表現などと呼ばれています。
喚語がうまくできないこともあれば、喚語したものが誤っていることもあり、字や語が誤って発せられる現象を錯語とよびます。
単語が他の語へ置き換えられるとき語性錯語といいます。
意味的関連がある単語へと置き換わる語性錯語を意味性錯語と呼びます。無関係な語であれば無関連錯語と呼ばれています。

単語の特定の字の誤りを音韻性錯語、ないしは字性錯語といいます。
音韻性錯語を特徴とする失語は伝導性失語やウェルニッケ失語です。
縁上回や弓状束の障害を示唆する局在性が高い症状です。
音の置換が多いときは意味がとれなくなります。単語レベルであれば新造語とよばれ、発話全体の意味が不明となればジャルゴンとよばれています。 ジャルゴンはウェルニッケ失語で出現してくる症候です。

ブローカ失語で観察される特有の構音やプロソディーの障害を発語失行(アナルトリー)と呼びます。 一貫性のある構音の誤りである構音障害と異なり、発語失行は一貫性のない構音の誤りが特徴で、プロソディー(発話のスピードやリズム、抑揚など)が障害されてくる。この非流暢性の発語障害の責任病巣は中心前回と考えられています。

個々の単語の喚語は可能でも文の構成に障害をきたすことがあり、失文法とよばれ、とくに助詞や助動詞が脱落し、名詞のみがぼつりぽつりと発語される電文体が特徴です。ブローカ失語で観察される症状です。

「読んで理解する」「書く」ことの障害
失語症では、読み書きにも障害をきたしてきます。失語症で出現してくる読み書きの障害は失語性失読や失語性失書とよばれています。
一方、音声言語に障害を示さずに、文字言語、すなわち、読み書きのみに純粋な障害を呈してくることがあります。純粋失書や失読失書、純粋失読などが代表的な病態です。
純粋失書は前頭葉性純粋失書と頭頂葉性純粋失書に分類されます。
失読失書は側頭葉後下部病変や角回病変により出現してくる。純粋失読の発現には後頭葉や脳梁膨大の障害が関与します。

「計算」の障害
計算機能は言語機能と独立していると考えられていますが、多くの失語症者では計算障害を伴っています。標準的な失語症検査では計算能力も同時に評価しています。
失計算の責任病巣は左の頭頂葉(特に角回)に想定されることが多いですが、種々部位の損傷による計算障害も報告されています。


失語症 言語領野





失語症 言語領野

言語領野は左の大脳半球にあります。左半球は言語の優位半球とよばれています。大脳優位性との関連では利き手を知ることも重要です。右利きであれば言語領野はそのほとんどが左半球に存在すると考えて良いでしょう。一方、左利きでも多くは左半球に言語領野があると考えられていますが、言語領野が右半球に存在する頻度は、右利きで右半球に存在する場合よりも圧倒的に高くなります。
また、中枢は左にあっても左右両側に側性化していることもあり、左利きや両手利きでは大脳優位性に配慮が必要となります。

言語領野の、ブローカ(Broca)領野は下前頭回後部の前頭弁蓋部や三角部に存在します。
ウェルニッケ(Wernicke)領野は上側豆頁回の後半部に存在しています。 中心前回は運動性失語にみられる発語の障害の責任病巣と考えられています。

縁上回は音韻性錯語の責任病巣として重視されています。
この皮質下には弓状束が走っています。縁上回皮質、皮質下の障害で伝導性失語が出現します。


失語症の訓練のエビデンス





失語症の訓練のエビデンス

誰が訓練を行うかについては必ずしも専門家(言語聴覚士:ST)である必要はないという報告が多いです。
訓練方法を訓練された非専門家であれば、言語聴覚士同様の訓練効果を提供できるといわれています。
ST資源不足な現状にとって重要な事実です。在宅生活も踏まえ家族指導の重要性もわかります。

発症早期からの訓練の有効性については肯定的な意見が多いです。
BhogalやRobeyの報告を基にIntercollegiate Stroke Wbrking PartyのNational Clinical Guidelines for Stroke2004では週に2~8時間を推奨しています。
訓練をいつまで続けるかという点については実際には人的資源の問題や、病院・地域・家族等訓練を行う場所によっても意見は分かれるところですが、長期にわたり訓練効果があるとする報告は多いです。
特にCI言語療法やコンピュータを用いた補助的訓練は慢性期失語症に対する治療効果を認めており、少なくとも長期にわたり専門的なフォローアップが重要であることは間違いないと思われます。
長期的な視野でみた際に最終的にはコミュニティーベースの訓練、ホームリハが中心になると考えられます。訓練を受けた非専門家でも同様の結果を示していることからも支持されるように、集団訓練含めたコミュニティーベースの訓練や家族介護者指導は積極的に検討すべきです。
家族指導については、患者の会話能力向上を認めており、失語症訓練の補助として有用です。

具体的な訓練手法についてはさまざまな脳卒中リハのガイドラインでも明確には述べられていない場合が多く、ゴールデンスタンダードがないのが現状です。しかし慢性期失語症に対するアプローチでも訓練の有効性を示されています。

一般的に行われている手法としては、「直接刺激法」「刺激促通法」、「機能再編成法」「PACE」などがあります。


失語症の評価





失語症の評価

失語症においてその程度や回復、治療効果の判断などに適切な評価が重要です。
疫学的には、失語症は発症後2週間~3カ月までの改善が著明であり、その後も改善度は低下するものの1年程度は緩徐に改善、結果的に失語症状の40%は1年でほぼ完全に戻るとされています。
発症時の重症度によって最も改善するタイミングも異なり、最終的な改善に対する最大の予測因子は発症時の重症度であるため、初回の評価は特に重要です。
Davidらは失語症訓練の有効性に対する研究において、むしろ訓練よりも患者の適切な環境設定、そのための評価が重要であるとしています。
わが国で広く使用されている評価法としては標準失語症検査(Standard Language Test of Aphaisia:SLTA)が有名で、失語症患者のSLTAによる評価とコミュニケーション能力評価の問に高い相関が報告されています。
世界的にも広く使用され有用性が確立しているWestern Aphasia Battery(WAB)失語症検査には日本語版もあるため、こちらもわが国でも使用されています。
イギリスをはじめヨーロッパで広く使用されているFrenchay Aphasia Screen-ing Test(FAST)は、6つのRCTの系統的レビューにおいて有用性が認められたものの、筆者も評価法のゴールドスタンダードはないと結論づけています。
FASTの日本語版はありません。



鎮痛薬使用の5原則





鎮痛薬使用の5原則

①経口的に (by mouth)

②時刻を決めて規則正しく (by the clock)

③除痛ラダーにそって効力の順に (by the ladder)

④患者ごとの個別的な量で (for the individual)



WHO方式がん疼痛治療法 治療戦略





WHO方式がん疼痛治療法 治療戦略

WHO方式がん疼痛治療法では次のような治療戦略を立てています。

①チームアプローチによる、がん患者の痛みの診断とマネジメントの重要性

②詳細な問診診察画像診断などによる痛みの原因、部位、症状の十分な把握の必要性

③痛みの治療における患者の心理的、社会的およびスピリチュアルな側面への配慮と患者への説明の重要性

④症状や病態に応じた薬物または非薬物療法の選択

⑤段階的な治療目標の設定

⑥臨床薬理学に基づいた鎮痛薬の使用法


筋性疼痛





筋性疼痛

痛みを訴える筋群の触診で、筋組織の緊張(凝りや張り)が明らかで、マッサージなどで痛みが緩和するような場合、あるいは廃用が進行している四肢の痛みの場合も筋性疼痛(無動による痛み)に該当します。
筋緊張亢進による痛みでは、鎮痛薬のほかに、筋緊張をほぐすストレッチ運動(リハビリテーション)、マッサージ、温(冷)器法、NSAIDs系の貼付剤を用いて対応します。


炎症性の疼痛





炎症性の疼痛

原因病態として炎症が示唆される痛みのことです。
鎮痛にはNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)、コルチコステロイドが有効であることが多く、原因疾患の治療と並行して用いることが多いです。
長期にわたって使用せざるをえない場合には、それぞれの薬剤が起こしうる副作用について適切にモニターしながら、注意して継続します。


神経障害性疼痛





神経障害性疼痛

障害された神経の支配領域にさまざまな痛みや感覚異常が発生します。
通常、癖痛領域の感覚は低下しており、しばしば運動障害や自律神経系の異常(発汗異常、皮膚色調の変化)を伴います。
また、神経障害性疼痛においてはオピオイド受容体の機能低下が示唆されており、オピオイドの作用が減弱している可能性があります。
非オピオイド鎮痛薬、オピオイドといった鎮痛薬の効果が乏しいことがあり、その場合には鎮痛補助薬の併用を考慮します。
薬物療法のみで治療困難な難治性の神経障害性痺痛では、神経ブロック等も適応になります。


内臓痛





内臓痛

胸腔や腹腔の内部組織に分布する侵害受容器から伝達される痛みです。 痛覚刺激が複数の脊髄レベルに分散して入力されるため、痛みが広い範囲に漠然と感じられると考えられています。
内臓痛が発生すると、通常は機能していないC線維が活性化され痛みを伝えるようになります。
こうした状況下では痛みの程度も非常に強くなり、関連痛と呼ばれる病巣から離れた部位に痛みが発生する原因にもなります。
内臓痛には非オピオイド鎮痛薬、オピオイドが鎮痛に有効です。


体性痛





体性痛

筋骨格系組織(体性組織)の侵害受容器から伝達される痛みです。
体性痛は伝達速度の速いAδ線維、遅いC線維の2種類の感覚神経で脊髄に伝えられます。
Aδ線維、C線維は 脊髄後角に入力し、主に脊髄視床路ニューロンに痛みの情報を伝達します。
通常、非オピオイド鎮痛薬、オピオイドが鎮痛に有効ですが、体動時痛の増強にはレスキュー・ドーズ (痛み出現時の鎮痛薬頓用)で対応します。


認知症高齢者の日常生活自立度





認知症高齢者の日常生活自立度

 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。

Ⅱa 家庭外で、日常生活に支障を来たすような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。

Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱaの状態が見られる。

Ⅲa 日中を中心として、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。

Ⅲb 夜間を中心として、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。

 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。

M 著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患(意志疎通が全くできない寝たきり状態)が見られ、専門医療を必要とする。


下行性痛覚調整経路





下行性痛覚調整経路

同じ程度の傷害を受けても、それによって生じる瘍痛は状況や人により著しい差があります。

このことは、脳に痛覚伝導路の活性を調整する回路が存在することを意味しています。

これらの回路の1つは視床下部、中脳、延髄につながっており、下行路を通して選択性に脊髄の痛覚伝導 ニューロンを制御します。
遷延した痺痛や恐怖がこの内因性のオピオイドを介した調整系を最も確実に活性化します。
痛覚伝導ニューロンは調節系ニューロンによって活性化されうるので、理論的には末梢の侵害刺激がなくても痛覚シグナルを生じることがわかっています。
この理論により、心理的要因がいかに慢性終日に影響を及ぼしうるかを理解することが可能になりました。


痛覚の上行経路





痛覚の上行経路

一次求心性侵害受容器につながる脊髄ニューロンの大多数は対側の視床に軸索を伸ばしています。これらの軸索は対側の脊髄視床路を形成し、脊髄白質の前側方、延髄の外下縁、橋と中脳の外側に位置します。


伝導路と痛覚調整路





伝導路と痛覚調整路

・侵害受容メッセージの伝導系
侵害性刺激は、刺激伝導の過程で一次求心性侵害受容器の感受性がある末梢神経の末端を活性化します。メッセージは、末梢神経から脊髄に送信されます。脊髄では主要な上行性の面部経路である脊髄視床路由来の細胞でシナプスを形成します。メッセージは、視床で前帯状回、前島皮質、体性感覚野に中継されます。

・蓼冬痛調整ネットワーク
前頭部皮質と視床下部からの入力は、中脳にある細胞を活性化します。それにより延髄の細胞を介して脊髄の痛覚伝導細胞を制御します。


痛み 感作(SenSitization)





痛み 感作(SenSitization)

組織の損傷や炎症があり、強い反復性あるいは持続性の刺激が加えられたときには、一次求心性侵害受容器を活性化するための閾値は低下し、どのような強さの刺激に対しても 神経興奮の頻度は増加します。
ブラジキニン、神経成長因子、いくつかのプロスタグランジンやロイコトリエンのような炎症メディエーターが関与しており、この過程を感作と呼びます。
感作された組織では、非侵害性の刺激によっても柊痛が生じます。
感作は、圧痛、痺痛、痛覚過敏に関与する臨床的に重要な過程です。


一次求心性侵害受容器(primary afferent nociceptor)





一次求心性侵害受容器(primary afferent nociceptor)

末梢神経は3つの異なる型のニューロン、すなわち一次求心性ニューロン、運動ニューロン、交感神経節後ニューロンの軸索から成ります。
一次求心性ニューロンの細胞体は、椎孔で後根神経節に位置し、軸索は分枝して、一方は脊髄に、もう一方は組織に分布しています。
一次求心性ニューロンはそれらの直径、髄鞘形成の程度、伝導速度によって分類されます。

直径が大きい線維(Aβ)は軽い接触や動きの刺激に最大限に反応し、主に皮膚に分布する神経に存在します。
健常人ではこれらの線維の活動は疹痛を生じません。
一次求心性ニューロンはほかに2つあります。
直径の小さい有髄のAδと無髄の(C線維)軸索です。
これらの線維は、皮膚や深部の体組織および臓器に分布する神経に存在します。
これらが電気的に刺激されると、大部分のAδとC線維の求心性ニューロンは強いり冬痛刺激に対してのみ最大限に反応し、自覚的には終痛として認識されます。
このことから、この2つのニューロンは一次求心性侵害受容器と定義されています。
個々の一次求心性侵害受容器はいくつかの異なるタイプの有害性刺激に反応します。
例えば大部分の侵害受容器は、加熱、強い冷却、しめつけなどの強い機械的刺激ATPやセロトニン、ブラジキニン、ヒスタミンなどの刺激的な化学物質の塗布などに反応します。


痛みと医療者





痛みと医療者

痛みとは患者の痛みに関する主観的表現を介してのみ医療者はこれを理解できるものです。
医療者は、患者の痛みに関する表現それ自体を痛みとして受け止めるべきです。
ここに医療者の主観が入ってはいけません。

痛みは感覚(知覚)体験であるとともに、情動体験の要素を含んでいます。
痛みに個人差が大きいことは、同一の痛みの感覚刺激が伝達されてもそれをどれだけ不快な情動体験と処理するかに関して個人差が大きいことで理解できます。


緩和期のがん 呼吸リハ





緩和期のがん 呼吸リハ

がんの種類に関わらずがん終末期に呼吸苦を訴える患者は多いです。
一般的に心理的な問題としてカウンセリング中心の対応がなされるが、この時期の呼吸苦は、悪疫質による均衡の破綻や呼吸筋も含めた全身の廃用症候群に伴う換気不全に起因するところが大きいです。
用手介助手技で呼気の補助を行うことにより、換気が改善し呼吸苦の緩和が期待できます。
緩和期はQOLの維持・改善を最優先するステージであり、呼吸苦の対処は最優先事項の1つと言えます。
在宅でも行なえるよう家族にも指導するようにします。


誤嚥性肺炎 呼吸リハ





誤嚥性肺炎 呼吸リハ

老人福祉施設の肺炎は、8~9割が誤嚥性肺炎といわれています。
誤嚥性肺炎は肺の慢性炎症が急性増悪したものであり、抗生剤投与のみでは完治しません。
呼吸理学療法を併用することにより、咽頭残留物の除去、咳そうの強化、嚥下と呼吸の協調性の改善、気道分泌物のドレナージ促進、気道分泌物貯留の予防と対処ならびに呼気予備力の改善が期待できます。
また、運動療法や作業療法により離床が促進され、運動耐容能やADLが拡大すれば、食事姿勢や食事動作の安定、呼吸機能の向上、二次的合併症の予防、感染への抵抗力改善が得られます。
まず補助栄養も視野にいれて栄養管理を強化し、就寝中の15度ベッドアップによる誤嚥予防や早期の会話、嚥下の意識化などを、摂食嚥下訓練と共に包括的に実施します。


呼吸リハビリテーション 概念





呼吸リハビリテーション 概念

呼吸リハビリテーションは、「呼吸器の病気によって生じた障害を持つ患者に対して、可能な限り機能を回復、維持させ、これにより、患者自身が自立できることを継続的に支援してゆくための医療である」と定義されています。

呼吸リハの概念は、従来の身体機能の維持・改善を目的としたものから、生活の質(QOL)の向上、疾病の自己管理や急性増悪の予防へと拡大し、最近では生命予後の延長という新たな局面にも対応する幅広い概念で捉えられ、心理面のサポートや生活・環境面の工夫や改善も取り入れて行うべき、全人的な取組みとなっています。

呼吸リハでは、慢性呼吸器疾患患者にとどまらず、呼吸症状を有する全ての患者がその対象となります。


パーキンソン病とMSW





パーキンソン病とMSW

パーキンソン病は、経過とともに病勢の進行に加齢変化も加わって、ADLは低下し介護の必要度は確実に増加します。

パーキンソン病の患者や家族は、常に病状の進行や今後の生活について漠然とした不安を抱えています。

医療ソーシャルワーカー(MSW)の介入を早期に開始し、面接や支援を通して不安の解消を図るようにします。

病期の進行に応じて、特定疾患、介護i保険、身体障害者手帳、障害年金などあらゆる社会資源を活用し援助することで、MSWは患者や家族の療養生活の設計、再調整を支援します。

核家族化・少子化のために、一人暮らしや配偶者以外の家族の介護支援が得られない老老介護の患者が増加しているのが現状です。

病初期から、患者のみならず家族のライフステージ、ライフスタイルを把握して、病期の進行や介護負担の増大に対する方向性を考える上での情報を収集しておくことが大切です。


パーキンソン病と訪問リハビリテーションのポイント





パーキンソン病と訪問リハビリテーションのポイント

パーキンソン病の進行期・終末期においては、廃用症候群の予防が基本となります。
訪問リハのスタッフは、褥瘡、誤嚥、窒息、脱水、栄養障害、感染、睡眠時呼吸障害、突然死などの知識を十分に持ち、その予防、早期発見、早い段階での対応につなげて最後までQOLを保つ役割を担っています。
これらの重要な役割を遂行するためには、福祉用具や家屋改修、医療福祉制度はもとより、パーキンソン病の病態や治療についても習熟し、最後まで患者・家族に寄り添って支援できる訪問リハのスペシャリストを育てる環境が必要となります。



パーキンソン病の運動のポイント





パーキンソン病の運動のポイント

  • パーキンソン病では、歩行など無意識のうちに行っている運動が障害される注意を集中して(意識して)繰り返し行う。
  • 自分が困難と感じている動作を繰り返し行う。
  • 1回10分~20分、1日2回~3回、疲れない程度、毎日規則正しく続ける。
  • 運動練習は正しい手順で行う。
  • 運動障害の克服は姿勢を正しくすることが基本。 鏡の前に立ち、正しい姿勢と悪い姿勢の違いを体で感じ、良い感じを覚える。



パーキンソン病のリハビリのポイント





パーキンソン病のリハビリのポイント

パーキンソン病におけるリハのポイントは、ON時に、決して無理をせず、疲れない程度、強い痛みは生じない程度に、易しい運動から徐々に難しい運動へ、運動量は漸増して最終的には1回につき10~20分、1日に2~3回を継続できるように指導することです。
気楽に時間をかけて、集団で行ったり、遊びを取り入れたり、音楽に合わせて行ったりすると楽しく継続できます。
段階的な目標を設定して、達成感を感じて貰うような仕組みも取り入れるようにします。
家族が一緒に行い、運動の動作をチェックし、絶えず見守り励ますように指導することも有用です。



パーキンソン病 コミュニケーション訓練





パーキンソン病 コミュニケーション訓練

運動低下性による構音障害の重症度は必ずしもStageとは一致しません。
個々の症状や重症度に合わせたアプローチが必要となります。
嗄声や声量の低下などの軽度の場合は、腹式呼吸やソフトブローイング、発声訓練を中心としたアプローチを行います。 頚部のリラクゼーションや発語器官の運動も初期から継続して行うようにします。
発話開始が困難な患者では、自分で膝をポンと叩くことで発話を誘発しやすくなることもあります。
発話の加速、音の繰り返し(症候性吃)などのプロソディーの症状には、タッピングや指折りなど外部の手掛かりを用いた練習を行います。
重度になると、補助・代替的コミュニケーション(AAC)が必要となります。 AACの導入にあたっては、コミュニケーション意欲、知的能力、言語機能、運動機能などを把握し、簡便で実用的な方法を検討すると良いです。 携帯拡声器、書字や空書、トーキング・エイドや50音表、コミュニケーションボ一ドなどの導入を検討します。
書字や指差しが困難であれば、「はい・いいえ」の反応で意思疎通を図るようにします。 うなずく・首を振る、指を曲げる・伸ばす、手を握る・離すなど、患者に合った表現方法を模索します。



パーキンソン病 ADL IADL指導





パーキンソン病 ADL IADL指導

Stage l・llのADL IADL指導

Stage l・llでは、ADLの障害はほとんどみられませんが、更衣動作や箸動作に時間がかかるようになります。 大き目のボタンを選択し窮屈な衣類は避けるように指導します。 家事動作は、ビンや缶の蓋の開け閉め、皮むきや固い物を切るなど具体的に本人が困っている動作を評価して動作指導や福祉用具の導入を行います。 家事動作が困難な場合は、家族との役割分担を見直したり、ヘルパーなどの介護サービスを利用したりすることも必要となります。

Stage ⅢのADL IADL指導

Stage Ⅲでは、薬効減弱やON-OFF現象の出現パターンを把握し、各ADLの実施時間帯を見直してみるように指導します。 できる限りADLが自立するように、実施時間の変更や動作の簡略化なども検討します。 食事動作では前腕の回内外の動きが制限されて、食物を口に運ぶ動作が困難となります。 食事前の上肢ストレッチや、上肢操作の繰り返し練習を指導し、スプーンの大きさや形状を工夫するなど自助具の導入も検討します。 更衣動作は座位で実施する方法を指導して転倒のリスク軽減を図ります。 入浴動作では、手すりの設置や福祉用具の導入が必要となります。 大掛かりな改修が必要であれば、通所リハ時に利用するなど自宅外での入浴を検討することも、安全な入浴環境確保や家族の介護負担の軽減のための選択肢の1つです。 敷居やカーペットの段差でも転倒の原因となることがあるので、テープを貼って視覚的注意喚起をはかり、すくみ足の出易い箇所には床に目印などをつけます。 洋服や利用頻度の高い物品の収納の位置、軽い布団、足元の布団をめくる時には「孫の手」を利用するなどこと細かな対策で患者、家族のストレスや介護負担が軽減できることが多くあります。

Stage lVのADL IADL指導

Stage lVでは、OFF時の対策、家族の介助量軽減が課題となります。生活環境の段差解消が必要となり歩行補助具や車椅子を導入します。 また、ポータブルトイレや尿器の導入、電動ベッドの背上げ機能の活用も検討します。 嚥下機能の低下も必発であるので、食前の嚥下体操、食物の形態や水分のトロミ、食べる姿勢など状態に応じた具体的方法も指導します。

Stage VのADL IADL指導

Stage Vでは、全般的にADLの介助が必要となり、介助量を軽減することを考慮した指導を行います。 家族への移乗動作の指導や食事の介助方法の指導、トイレの介助量の軽減を考えたオムツの種類や離床し易い車椅子を提案します。 嚥下障害に対しては、適切な食事形態や補助栄養の情報提供を行うとともに、経管栄養や胃痩造設など侵襲的で延命に関わる処置についての情報提供を行って本人・家族の考える時間を作ることも重要です。



パーキンソン病の歩行練習





パーキンソン病 に対する歩行練習

StageⅢ

StageⅢに入るとすくみ足や突進現象など、パーキンソン病特有の歩行障害が出現します。
その場合、歩行を開始する前に、一呼吸おいて、正しい姿勢がとれているか確認する習慣をつけるように指導するようにします。

すくみ足に対して

すくみ足に対しては、①歩行開始時に声を出し聴覚的刺激でリズムをつける、②一歩後退させ前方に踏み出す、③床に足跡を予測(イメージ)し、その上に足を乗せるなどの方法が有効なこともあります。

方向転換

また方向転換は、前方へ半円を描くように大きく向きを変えることや、その場の足踏みで向きを変えるなどの対処を行います。 歩行練習を行う際、視覚的刺激や音楽・手拍子などのリズムを用いると効果的です。

歩行補助用具

歩行補助用具は、症状や生活環境を十分に考慮した上で種類やサイズを選定します。 歩行車の場合、前方突進を回避するため、重心線が前方より体軸に近くハンドブレーキ付きが好ましいです。
安全な歩行能力の維持は、PDにおけるリハの最も重要で最も難しい課題です。パーキンソン病の歩行障害の特徴を良く理解して、きめ細かで根気強い歩行練習を繰り返すようにします。



パーキンソン病の基本動作練習





パーキンソン病 基本動作練習

StageⅡに対して

StageⅡでは、歩行に問題がなくても、寝返り・起き上がりが困難な場合が意外に多いです。 動作を確認して具体的に手順、要点を指導するようにします。 起き上がりは、幾つかのパターンを試して、本人が無理なく安全にやり易い動作を指導します。 立ち上がりは、足を手前に十分引く、顎を引く、両肩を膝の位置より前へ出す、前上方へ向かって立ち上がるなど手順を確認しながら練習を繰り返します。



パーキンソン病のバランス練習





パーキンソン病に対するバランス練習

StageⅠ・StageⅡ

姿勢反射障害、歩行障害、ひいては転倒・骨折をできる限り予防するために、StageⅠやStageⅡの時期から積極的な反復練習を指導します。

StageⅢ・IV

StageⅢ・IVでは、座位・四つ這い・膝立ち・立位における重心移動練習を行います。 体幹・頚部・四肢のアラインメント修正や正中位に戻すための鏡を用いた姿勢矯正運動は姿勢反射獲得にもつながります。
日常生活においては、ドアの開閉、方向転換、物の出し入れ、浴槽への出入り時に転倒が頻発するので、生活場面での動作指導、住環境の確認・整備を必ず行ようにします。



パーキンソン病 筋力増強運動





パーキンソン病 筋力増強運動

立位・座位姿勢や歩行の安定性確保のため、体幹筋、股・膝伸筋群の筋力増強を行います。
StageⅢになると、背筋群や大殿筋の筋力を強化して前傾姿勢の軽減に努めます。
各種の運動は、体が動きやすく疲労を生じにくいONの時間帯に行うのが原則です。


パーキンソン病 関節可動域・姿勢矯正運動





パーキンソン病 関節可動域・姿勢矯正運動

頚部伸展、体幹前屈、肘・股・膝関節屈曲の独特の姿勢や手関節変形、足趾屈曲などPD特有の変形や拘縮を起こさないように努めます。

Stage I~Ⅱ

Stage I~Ⅱでは、パーキンソン体操によって、リラクゼーションから、四肢屈筋群のストレッチ、頚部・体幹の伸展・回旋運動、体幹・下肢の筋力増強など、立位や座位での項目を指導します。

StageⅢ

StageⅢに入ると腹臥位での体幹・股関節の持続伸張や他動運動を行います。 鏡を利用した姿勢のフィードバックは自宅での自主練習時の確認にも有用です。 胸郭・腹部を中心とした姿勢矯正運動や深呼吸の練習、カラオケなども取り入れます。

Stage V

Stage Vでは、更衣や排泄介助、車椅子乗車時など大関節の最低限の可動域の維持に努め、介護者にも可動域練習の方法を指導します。




ホーンヤールStage lVの対応





ホーンヤールStage lVの対応

Stage lVでは、嚥下性肺炎や転倒・骨折による臥床によって、ADLの急速な低下を引き起こします。
嚥下造影など嚥下機能の評価を実施して、食形態、食器、姿勢の工夫など嚥下障害に対する対応を行います。
この時期には、薬効減弱に伴う症状変動やON-OFF現象が出現します。
生活環境の安全性を常に確認し、OFF時の歩行状態に対応できるように対策を講じます。
Stage Vでは、介護が中心となるので廃用症候群の予防に努め、特に、家族の食事介助に関する負担の軽減を図ります。


ホーンヤールStageⅢ~IVの対応





ホーンヤールStageⅢ~IVの対応

ホーンヤールStageⅢ~IVは、リハビリテーションが最も投入されるべき時期です。
排泄、食事、入浴など生理的に必要な基本的活動の維持に努め、社会生活上の義務的な活動の減少に伴う時間を、各人の自主的、積極的な余暇活動へ変えるように指導します。
関節可動域運動、姿勢矯正運動、バランス練習、ADL指導、IADL指導など、継続的に関わって、日常生活を維持し歩行可能な期間の延長に努めます。


ホーンヤールStageⅠ~Ⅲの対応





ホーンヤールStageⅠ~Ⅲの対応

ホーンヤールStageⅠ~Ⅲでは、教育、健康増進、拘縮や姿勢障害の予防が主体となります。
規則正しい生活リズムを保って、従来の生活を継続するように指導し、パーキンソン体操を日常生活のなかに定着させます。
仕事や家事など社会生活を営む上での義務的な活動の継続をできる限り支援し、外出などに関連する整容や更衣の工夫による時間の短縮を図ることが目標となります。


パーキンソン病の臨床経過





パーキンソン病の臨床経過




パーキンソン病に対するリハビリテーションの役割





パーキンソン病に対するリハビリテーションの役割

理学療法(PT)では、主に身体機能面に対する運動療法を行って、動作機能の維持・改善および動作遂行可能な体力の維持・獲得を図ります。

作業療法(OT)では、身体機能は勿論、精神機能やADL、復職、QOLなど多方面に渡って、症状に応じたADLおよび精神機能の維持・向上を目指します。

言語聴覚療法(ST)では、コミュニケーション能力の維持・向上を図ると共に、摂食・嚥下障害に対しても他職種と共にアプローチを行います。

パーキンソン病の多岐にわたる症状に対して早期から理学療法、作業療法、言語聴覚療法をチームで行うことで、症状の進行を遅らせることができ、在宅生活を継続しつつQOLの向上を図ることができます。


パーキンソン病 生活機能障害分類





パーキンソン病 生活機能障害分類

Ⅰ度
日常生沽にほとんど介助を必要とはない
(Hoehen&YahrⅠ Ⅱ にあたる)

Ⅱ度
日常生活、通院に介助を必要とする
(Hoehen&YahrⅢ Ⅳ にあたる)

Ⅲ度
起立や歩行が不能で、日常生活に全面的な介助が必要
(Hoehen&Yahr Ⅳ にあたる)


パーキンソン病診断基準





パーキンソン病診断基準

自覚症状
1.安静時にふるえがある(四肢またはあごに目立つ)
2.動作が遅く、ひとつの動作に時間がかかる
3.歩行がのろく、うまく歩けない

神経所見
1.毎秒4~6回ほどのゆっくりしたふるえが、安静時に起こる
2.無動・寡動:仮面様顔貌、低く単調な話し声、動作の緩慢、 姿勢をうまく変えることができない
3.歯車現象を伴う、こわばり(筋固縮)がある
4.姿勢・歩行障害:前傾姿勢、歩行時に手を振らない、歩き出すと 止まらない(突進現象)、小刻み歩行、立ち直り反射障害

臨床検査所見
一般的な検査には特異的な異常がない
脳の画像検査(CT、 MRI)では、明らかな異常がない

鑑別診断
1.血管障害性の病気ではないことが証明されている
2.薬剤性の病気ではないことが証明されている
3.その他の変性疾患ではないことが証明されている

診断の確定
次の1~5のすべてを満たすものをパーキンソン病と診断する
1.経過は進行性である
2.自覚症状で、上記のいずれか1つ以上がみられる
3.神経所見で、上記のいずれか1つ以上がみられる
4.抗パーキンソン病薬による治療で、自覚症状や神経所見の明らかな改善がみられる
5.鑑別診断で、上記のいずれの病気でもないことが証明されている

参考事項
診断上、次の事項が参考となる
1.パーキンソン病では神経症候に左右差を認めることが多い
2.深部反射の著しい亢進、バビンスキー徴候陽性、初期からの高度の痴呆、急激な発症はパーキンソン病らしくない所見である
3.画像所見で、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮、著明な脳幹萎縮、広範な白質病変などはパーキンソン病に否定的な所見である*診断的治療で判断が可能
・L-DOPA製剤による診断的治療で症状が明らかに改善された場合は、ほぼパーキンソン病と診断することができる
・薬の効果が現れる期間は、およそ1~2週間。薬の効果が現れない 場合は、パーキンソン病の可能性はない

(厚生省(現・厚生労働省)特定疾患神経変性疾患調査研究班(1996年))より


認知リハの流れ





認知リハの流れ

急性期から回復期は、高次脳機能障害の自然回復が期待されますが、この時期のリハ効果にも高いエビデンスがあり、言語能力の改善、記憶能力の改善など要素的なレベルでの改善が期待できます(restorative training)。

一方、時期が経過すると、これらのアプローチよりもむしろ、代償手段を身につけるリハに重点を置き、特定の環境に適応する技術を身につけられるよう訓練を行います。

記憶障害に対する代償手段の活用訓練もその1つです。

達成すべきゴールは、日常生活動作(ADL)から始めてinstrumental ADL(IADL)といわれる料理、洗濯、買物、外出、趣味、電話、金銭管理、交通機関の利用などに拡大され、個人のニーズに合わせて就学・就労にまで及びます。

特に若年者では、就労を目標にする例も少なくないです。
復職には、多職種による包括的リハと就労支援機関の協力は欠かせないものになっています。
職業リハの環として、援助付き雇用やジョブコーチの有効性も実証されています。 しかし、重度の脳損傷例では復職は困難を極めます。


失行症 認知リハのガイドライン





失行症 認知リハのガイドライン

1)障害のある行為に対し、代償方法を習得する訓練(ストラテジー訓練)は勧められる(グレー  ドB)。
Donkervoortらは、113名の左大脳半球損傷者を無作為に2群に分けてストラテジー訓練の効果を検討した。
その結果、動作の順序を言語化する、記述して提示する、図柄にするなどの障害の代償方法を習得するストラテジー訓練が、その他の日常生活動作にも般化し効果的であったと結論している。


遂行機能障害 認知リハのガイドライン





遂行機能障害 認知リハのガイドライン

Metacognitive strategy trainingは勧められる(グレードA)。

自己の能力を自覚したうえで、動作を選択していく訓練をいう。たとえば、日常生活動作施行中に、各動作の目的と予想される結果と難しさ、そして、自分の能力で完遂するためにはどの動作を選択すべきか、また、必要な介助の内容を尋ねられる。 本訓練は、遂行機能障害を補う技術を身につけ、自己の管理能力が向上するとする高い研究報告がある(la)。
Goal management training(GMT)も、Metacognitive strategy trainingの1つと考えられる。 GMTはゴール設定ができない脳損傷患者のトレーニングプログラムとしてLevineらが提唱した。 意図した行動が実現するように、「計画し、構造化」できるように訓練を行う。 GMTは、5つのステージからなる。

Stage1

現状に注意を向け、評価を行い、何がゴールなのかに目を向ける(’‘stop”)(私は何をするのか?)

Stage2

適切なゴールを選び、設定する。

Stage3

ゴールを達成するために、ゴールを部分的に分けるsub goalsの設定(“split”)。

Stage4

ゴール、サブゴールを記述し留める(私はゴールを達成する手順を知っているか?)

Stage5

結果を設定したゴールと比較する(モニタリング“checking”)(私が計画したことをしているか?)
マッチしない場合、以上のプロセスを繰り返す。
Levineらは、GMTを中等度から重度のTBI患者に行い、机上の作業において、明らかな作業成績の改善をみた。
また同時に脳炎患者に、料理の準備に関する訓練について、GMTを施行し(手順をカードに記載)、改善をみたと報告している。



注意障害 認知リハのガイドライン





注意障害 認知リハのガイドライン

1)注意機能を刺激する直接訓練は勧められる(グレードB)

従来の注意障害への取り組みは注意のある側面を回復させようとするものであったが、最近の研究報告では、訓練を通して、注意障害を補う方法を身につけようとすることに効果があり、その補償方法の修得が日常生活の改善にも影響を与えるとするものが多い。 これらの報告はすべて、維持期に入った脳外傷例に対する結果である。 Sohlbergらが進めている机上での注意課題であるattention process trainingについても、訓練群は自己の注意障害や記憶障害を報告できるようになり、心理社会的問題も改善をみている(Ib)。

2)作業や活動に対し、十分な時間をとることに配慮する(タイムプレッシャーマネージメント)ことが勧められる(グレードA)

脳損傷により情報処理速度が低下している場合には、こなすべき作業を前にして、時間を十分に確保する工夫が重要となる。 そのためには、「自分はうまく事を処理することに時間がかかる」ことをきちんと自覚し、「作業をするときには時間が必要である」ことを、第三者に告げられるようにし、これらの方法を他のすべての日常動作に適応できるように練習する。 このようなタイムプレッシャーマネージメントが身に付くと、注意障害があっても、日常動作にミスが少なくなる(la)。



記憶障害 認知リハのガイドライン





記憶障害 認知リハのガイドライン

1)外的補助手段を使いこなす訓練は勧められる(グレードA)

記憶障害を補う方法としてメモやスケジュール管理などの外的補助手段の利用は毎日の記憶の問題を軽減し、生活の質を高めるとするエビデンスの高い研究報告がある(Ia)。 ただし、これらの補助手段を使いこなすためには、記憶障害に関する病識、補助手段を使いこなすための知能、病前あるいは受傷前にメモなどを利用していたという経験が必要であると考えられる。

2)失敗を経験しにくい配慮をした学習方法は勧められる(グレードB)。

リハにおいて新規の学習を行う場合、失敗経験をなるべくしないように配慮して学習(errorless learning:EL)した方が、試行錯誤を通して学習するよりも習得が早い。ELを行う上での工夫は、 (i)目標とする作業を細分化し各ステップを明確にする (ii)作業を行う前に、十分にモデル(見本)を提供する (iii)作業を行うにあたって、なるべく推測(思考)をしないように指導する (iv)誤りがあったら即座に修正する (v)徐々に手がかりを減らす ことである。
記憶障害が重度の場合は、ELが、日常の記憶障害に関する問題を軽減する上で効果がある。しかし、遂行機能障害が重度の場合は、ELの効果は少ない。