機能性構音障害における/h/、半母音、/r/の産生訓練

機能性構音障害における/h/、半母音、/r/の産生訓練

/h/の産生方法

/h/は、声門部における無声摩擦音です。誤りは、声門破裂音ないし省略が多いと言われています。
訓練方法としては、手のひらを吹かせることにより/h/を誘導します。
/h/産生時の呼気は温かいので(これに比し、/ɸ/の呼気は冷たい)、まずはSTの呼気で温かさを実感させ、次いで子どもが産生した呼気を自身の手のひらで感覚的にフィードバックさせるとよいでしょう。
産生可能となったら、母音と結合します。
特に、声門破裂音に誤っている場合、首や肩の様子を観察し、脱力を促すように留意します。

半母音の産生方法

半母音は、声道に狭めや閉鎖を作らず、いわば母音と母音の結合によって成立している音が半母音です。
日本語の語音としては/j/と/w/があります。
/j/は先行する母音が/i/であり、/w/は/ɯ/です。このため、/i/あるいは/u/に鼻咽腔構音、側音化構音が出現している場合、歪みを生じる。訓練方法としては、/i/あるいは/ɯ/を習得させた後、他の子音と同様、母音と結合させます。

/r/の産生方法

歯茎硬口蓋部における有声はじき音です。
日本語語音において、はじき音はこの/r/のみです。
誤りは/d/への置換が多く、/ri/では側音化構音が見られます。

反転挙上が可能な場合

「舌の裏側を見せて」などの指示で反転挙上させ、そのまま発声を促します。
そこから、舌出し母音を後続させます。

反転挙上が困難な場合

開口度が大きくなりすぎないよう配慮したうえで、舌尖で上唇先端をなめることから始めます。
可能となったら、上歯端、上歯裏(ないし歯茎)の順で徐々に反転させていきます。
反転挙上を促す訓練の流れ

はじきが不十分で歪んでしまう場合

舌尖がうまく使えていないことが多いため、舌尖部の運動として、硬口蓋部中央を舌尖で前後になぞるなどで運動感覚を養うと良いでしょう。

機能性構音障害における/ts//dz//tʃ//dʒ//ç/の産生訓練

機能性構音障害における/ts//dz//tʃ//dʒ//ç/の産生訓練

/ts//dz/の産生方法

/ts//dz/は、歯茎と舌尖における破擦音です。
無声舌尖歯茎破擦音は/ts/で、有声舌尖歯茎破擦音は/dz/です。
誤りとしては、摩擦部が構音できないことによる/t//d/への置換、構音点が後方へずれることによる/tʃ//dʒ/への置換、側音化構音があります。
/s/も同様に誤っている場合が多く、/s/の訓練を行い、/s/の構音操作が習得されると、自力習得や聴覚刺激のみでの改善が見られることが多いです。
訓練方法としては、/s/または/ ɸ /習得後に、いったん閉鎖をしてから/s/または/ɸ/を産生するように促します。
先に摩擦をさせ、その息を、舌を軽く噛んで止める(/s:t/)ことを連続させます。
そのうえで、正音を聞かせながら/ts/を導きます。
この際、/s/産出時に、/s/が破擦音化しないようチェックします。
一般的に破擦音は、関連する摩擦音の習得後に促すようにします。
しかし、例えば/s/において、狭めの維持が難しく、息を流出させようとすると破擦化してしまう場合、先に/ts/を習得させることも一案です。

/s/から/ts/を導く訓練の流れ


/tʃ//dʒ/の産生方法

歯茎硬口蓋と前舌における破擦音です。
無声音/ti/と有声音/dg/があります。
誤りとしては、摩擦困難による/t//d/への置換、/k/への置換、側音化構音鼻咽腔構音があります。
訓練方法は、基本的に/ts/に準じます。
/ʃ/習得後/ts/と同様に促していく。

/ç/の産生方法

硬口蓋と前舌による無声摩擦音です。
/ʃ//ti//k/などへの置換や、これらに近い歪み、省略、側音化構音などが見られます。
単独で誤りが出現することはまれです。
/ʃ/の構音が可能な場合 構音点を/ʃ/より後方にすることを説明し、硬口蓋と舌のどこを使って摩擦を行うかを、実際に口蓋や舌に触れて示します。
音を出させながら、構音点の指示。聴覚刺激を用いて/ç:/の産生を促します。

機能性構音障害におけるの/ʃ/の産生訓練

機能性構音障害におけるの/ʃ/の産生訓練

歯茎硬口蓋と前舌による無声摩擦音です。
誤りとしては、同一ないし類似構音点における閉鎖の出現による/t/tʃ/への置換、側音化構音、咽頭摩擦音鼻咽腔構音が見られます。

/t/へ置換する場合

/t/へ置換している場合、多くは/s/にも同様の誤りが出現します。
/s/の訓練を行い、後続母音/a//ɯ//e//o/において、文レベルの正音産生が可能となってから、/si/を習得させ、次いで/ʃi/へ誘導します。
 STと子どもが交互に産生し、漸次接近させていきます。
構音点を教示し、そのうえで漸次接近させるなどの方法があります。
ないしょ話や静かにしなさい、ということを示す「シー」(/ʃ:/)を身ぶりとともに示すことで、産生できる場合もあります。

/s/の産生訓練はこちら↓

/tʃ/へ置換する場合

/ʃ/の構音操作事態は可能であると考えてよいでしょう。
そのため、/s/を/ts/と置換している場合と同様のステップで/t/部を消去していきます。
/s/と/ʃ/がともに誤っている場合、並行して訓練を行うことは子供が構音操作を混同しやすので避けるようにします。

/tʃ/から/ʃ/を導く訓練の流れ

機能性構音障害におけるの/s//z/の産生訓練

機能性構音障害におけるの/s//z/の産生訓練

/s//z/は、歯茎と舌尖で狭めを作り、摩擦性の雑音を産生する音です。
日本語音においては無声舌尖歯茎摩擦音/s/と有声舌尖歯茎摩擦音/z/ですが、/z/と有声舌尖歯茎破擦音である/dz/は一般に日本語では区別されないので、必ずしも/z/として訓練を行う必要はありません。
誤りの傾向としては、同じ構音点において狭めが維持できず閉鎖してしまい破裂音に置換する、摩擦はできるが構音点後方に移動している、破擦音化しているなどがあります。
また、側音化構音が見られることもあります。
/s//z/の/t//d/や/ts//ʃ/への置換は、健常児の構音発達過程においても見られる誤りです。訓練導入に際しては、現在の構音の誤りが一過性のものであるか、習得が期待される年齢を過ぎており一定期間固定的であるかについて、確認する必要があります。

/s//z/が/t//d/に置換する場合

舌尖と歯茎の狭めが保てないことが、誤りの原因として考えられます。
このため、訓練は摩擦により雑音成分が産生できるだけの舌尖と歯茎との間隔を保てるようになることがターゲットとなります。
/s/の訓練は、構音運動・舌の様子を視覚的にフィードバックしやすくするため、上歯と前舌の摩擦音である/θ/から導入します。
まず、基本訓練として舌の脱力・安定を行います。
可能となったら舌出しのまま息出しをします。/ha/ないし/he/で可能となったら、徐々に開口度を小さくするよう見本を示しながら誘導します。 /θ/に近い音が出るようになったら、漸次接近法を用いつつ定着を図ります。
息出しで開口度を小さくすることが困難な場合、舌の安定のまま開口度を小さくしていっても良いです。
開口度が小さく、なかなかできない場合、上唇と前舌での摩擦を促すと開口度を小さくさせやすいです。
ただし、この状態から上歯と前舌の摩擦へ移行することが難しい子どももいる。
開口度が小さくなり上歯端と前舌の狭めが可能となっても、息を出そうとすると閉鎖が起きる場合、息を出そうと力が入りすぎていることが考えられます。
このような場合、呼吸のリズムに合わせて優しく息を出すことから始めると/θ/が可能となることがあります。 息を出す(呼気)よりも狭めを保ったまま息を吸う(吸気)ことを意識させることにより、結果的に/θ/が成立させる誘導法も有効です。
狭めが保てない場合、ストローを利用します。 ストローは太すぎるとストローを除去していく際に困難なことがあり、細すぎると噛んでつぶれやすいです。
市販されている直径4mm程度の袋入りのものが良いでしょう。
方法としては、まず、ストローを上歯と前舌で支えてもらいます。
ストローを口腔内に深く入れすぎると舌背を刺激して隆起を促してしまうことがあるので、歯裏1cm前後が適当でしょう。これにより狭めを確保します。
そして、舌の安定を保ったままストローから息を出すよう促します。
この際、/ɸ/のときと同じように紙やティッシュを吹いたり、紙人形を吹き倒します。
袋入りのストローであれば半分だけはストローにかぶせたまま残し、吹き矢のように袋を飛ばすなど、モチベーションを上げ、かつ、視覚的フィードバックとなります。
次に、ストローを除去していきます。すぐにストローのない状態での上歯と前舌の摩擦を促してもよいのですが、狭めを保つことをストローに頼っていた子どもは、ストローがなくなった状態か舌の脱力・安定を促すら狭めを作って息を出そうとすると、元の閉鎖の癖に戻ってしまいがちである。
そのような場合、子供に息を出させたまますこしずつストローを引き抜いていくほうが容易です。
その際、1~2秒の長さで断続的に息を出させ、息を出していない間に少しずつストローを抜いていく方法と、持続的に息を出させて、息を出しているあいだに抜いていく方法が考えられます。
/θ/が可能となったら、母音と結合し、口型が変化しない/ɯ/か、/a//e/から導入します。
以上のように/s/は歯間に突出させ、上歯端と前舌の無声摩擦音/θ/から導入することが主です。
訓練が単語から文レベルに進むにつれて、自然に舌を歯間に突出され、/s/の構音点へ移動することが見られます。
/θ/から/s/への自然改善が見られない場合、語音聞き取りにおいて、子供もが自分が産生した音の正誤を弁別できることを確認してから、STと子供が交互に音をだしながら、STは見本として徐々に舌を口腔内に収納さいていきます。
聴覚的にほぼ、同一の音であることを自己フィードバックさせつつ、視覚的、感覚的に構音点を歯茎に変更させます。

ストローで/θ/を促す訓練の流れ


/ts/に誤る場合

/ts/に誤っている場合、/s/音自体は構音できるのであるから、/t/部すなわち閉鎖部分を消去していく。/tss::/と持続的に産生させます。
このとき、ごく小さい音から徐々に大きく構音させることにより、/s/部を意識させ/t/部を消去していきます。

/ʃ//tʃ/と誤る場合、側音化構音の場合

/s//z/が/t//d/に置換する場合と同じように進めていきます。

機能性構音障害におけるの/k//g// ŋ/産生訓練

機能性構音障害におけるの/k//g// ŋ/産生訓練

/k//g// ŋ/は、軟口蓋と奥舌において、閉鎖・破裂することにより産生される音です。
日本語の語音としては、無声奥舌軟口蓋破裂音/k/、有声奥舌軟口蓋破裂音/g/、奥舌軟口蓋鼻音/ŋ/があるが、/g/と/ŋ/は音環境の違いによって生じ、同一の音と認識されています。
/ŋ/が用いられるのは、/Ŋ/に後続する場合(「まんが」「おんがく」など)が主です。
構音の誤りとしては、/t//d/への置換、声門破裂音が見られます。
また、/ka/ko/の構音が可能でも/ke//kɯ/ki/が/tʃ/に置換している場合があります。
/k/g//ŋ/の産生訓練では、奥舌の挙上を促すことと、舌尖の挙上を抑えることが主目的となります。

/ŋ/から導入する

/ŋ/を促す際には、まず「口を開けて『ンー』ってやって」と促します。
産生可能であれば、/a/と結合させます(/Ŋŋ:a:/)。
結合できたら、漸次接近法を用いて「ンー」の部分を短くしていき、/ŋa/から/ga/を導きます。
/ŋa/から/ga/へは、訓練として導入しなくても文レベル程度で正音が産生可能となると、自力学習することが多いです。
/ŋ/が構音できない場合、/n/などの構音点で「ンー」を産生させます。
持続的に産生させたままSTが見本を示して、少しずつ開口度を大きくしていきます。
このとき、口腔内のどこで閉鎖しているかを、STが視覚的に確認することが必要です。

構音点法を利用する

軟口蓋の前方部、すなわち口蓋の硬い部分と軟らかい部分の分かれ目付近と、奥舌を舌圧子で触れることで構音点を意識させ、この2点を接触させます。
舌尖にお菓子のかけらなどをのせておき、お菓子が見え続けることを鏡でフィードバックさせるとよいでしょう。
また、空うがいをさせて、その際に口蓋垂が見えていないことを視覚的にフィードバックさせる方法もあります。
ただし、空うがいをさせるときには閉鎖状態を確認し、咽頭摩擦音を生じてないことに十分注意します。

舌圧子を使用する

舌尖の挙上を防ぐため、舌圧子で押さえます。
「『か』(あるいは『た』って言って」と指示し、構音しようと舌尖が挙上するところを舌圧子で押さえることにより舌背の挙上を促します。
少しずつSTが舌尖を押さえる力を弱めていき、舌に触れるだけ、舌圧子を示すだけでも舌背が挙上するようにします。

/ke/ki/を/tʃ/と誤る場合

/ke//ki/のみを誤る場合、ほかの後続母音においては/k/の産生が可能であるので、それらを利用して正音の産生を促します。
/ke/は、/ka/ないし/kɯ/から導きます。
まず、/ka/ないし/kɯ/が産生可能であることを確認します。
次に、/ka/を用いる場合であれば、/kae/の表出を促します。
このとき、/ka/と/e/を区切らずに一息で表出させます。
可能であれば、図や身ぶりで示しながら/ka/部分(正確には/a/部分)を短くしていきます。
漸次接近法を用いて、あいまいな音から徐々に/ke/に近づけていきましょう。


機能性構音障害における/t//d//n/の産生訓練

機能性構音障害における/t//d//n/の産生訓練

/t//d//n/は、歯茎と舌尖において閉鎖、破裂することにより産生させる音です。
日本語の語音としては、無声舌尖歯茎破裂音/t/、有声舌尖歯茎破裂音/d/、舌尖歯茎鼻音/n/があります。
/t//d//n/における誤りは、主に構音点が後方にずれることにより生じ、/k//g/への置換、口蓋化構音が見られ、声門破裂音もまれに見られます。
/t//d//n/の産生訓練としては、両唇破裂音と同様、鼻音/n/から導入する方法と/t/から導入する方法が考えられます。
どちらの場合も舌背の隆起を抑制し、舌尖の運動を促すことが第一に求められます。

/n/から導く

まず、「基本訓練の舌の脱力・安定を行い、舌を平らにして維持できるようにしておきます。
そのまま、舌を出させたまま閉口を促し、舌を軽く噛ませ、この状態で「ンーって言ってごらん」と促します。
これだけでは/m/のときと同様、/n/が表出されているかどうか視覚・聴覚的には確認できません。
舌は歯間に出されていて、一見平らに見えても、口腔内で舌背が隆起していることがあります。
後続母音として/a/ないし/e/を結合し、「ンーナ(n:a:)ってやってみて」と促し、それにより産生された音が/ɲ/あるいは/ŋ/に近い場合、中舌ないし奥舌部においても閉鎖されているか、閉鎖は舌尖歯茎でのみ行われていたが、/na/あるいは/ne/を構音しようと意識したことにより/ ɲ // ŋ /に近い音となった可能性の、どちらも考えられます。
このような場合、舌をより前方に突出させる/na//ne/を意識させず、/a:n:a:n//e:n:e:n/と母音を先に産生させるなどの対応を行うと良いでしょう。

/t/から導入する

基本訓練として舌の脱力・安定を行い、舌を平らに維持できるようにしておきます。
そのまま、舌出し母音へ移行します。
/ha:/あるいは/he:/から導入し、舌出しで/a://e:/が可能となったら、舌出し/a://e:/と舌を軽く噛むことを繰り返します。
/a:t/e:t/が可能となったら連続的に行わせ、/ta://te:/を導きます。
舌を噛むことによる閉鎖が意識しにくい場合、/a:p//e:p/など両唇閉鎖で感覚をつかませてから再度行うと良いでしょう。

/t//d//n/の訓練の流れ



機能性構音障害のおける/ɸ/の産生訓練

機能性構音障害に方に対する、/ɸ/の産生訓練

/ɸ/は、上下唇で狭めを作ることによって産生される音です。
日本語の語音としては無声両唇摩擦音/p/があります。
誤りとしては省略が多いです。
/ɸ/を省略してしまう場合、以下のような方法を用いると良いでしょう。
/ɸ/は、口唇で摩擦を行うためには、上下唇で狭めを作り、その間をある程度以上の強さの呼気が通過することが必要なため、/ɸ/の訓練は、吹くことから始めます。
「フーって吹いて」と指示し、「フ」と聞くことができる程度の摩擦があれば、/ɯ/と結合させていきます。
「フーって吹いて」という指示でうまく吹けない場合には、手のひらを吹く、ティッシュを吹くなど、触覚的・視覚的フィードバックを用いるとよいでしょう。
いずれの場合も、STが見本として行ってみせることが望ましいです。
触覚的・視覚的フィードバックを用いても、鼻から息を出してしまったり、口唇閉鎖が起こり/p/となってしまう場合は、呼気のみでなく吸気を意識させるるとよいでしょう。
口唇を狭めた口型を動かさず、深呼吸のように吸気から始めると前述の誤りを防止しやすいです。

/ɸ/の産生訓練の流れ

機能性構音障害における 無声両唇破裂音/p/、有声両唇破裂音/b/、両唇鼻音/m/の産生訓練

両唇破裂音は、上下唇で閉鎖を作り、破裂させることによって産生される音です。
日本語の語音としては無声両唇破裂音/p/、有声両唇破裂音/b/、両唇鼻音/m/があります。構音発達初期から見られる音であり、機能性構音障害では誤りが見られることは少ないです。
一方、両唇破裂音に誤りの見られる子どもは、多構音障害や口腔器官の運動が不器用な場合が多いです。
両唇破裂音に誤りが見られる場合には、運動障害性構音障害に準じて構音器官の運動範囲、スピード、パワーを知っておくことが必要です。
誤りは省略が主であり、破裂音において声門破裂音が見られることがあります。
/p//b//m/を省略してしまうケースでは、以下のような方法を用います。

(1)/m/から導入する

口唇を閉じさせ、「お口を閉じて、ンーって言って」などの指示で[m:]を促します。
可能となったら、母音/a/との結合を図ります。
[m:]と伸ばさせたまま/a/を続けて構音させます。
図などで連続していることを示すとわかりやすいです。
反復させることにより[a:m:a:m:]から/ma/へ導きます。
一見、「ンー」という音が出ていても、口腔内で舌背と口蓋が閉鎖して/n/や/ɲ/を行っている場合もあります。
この場合、母音と結合しようとした際[na]や[ɲa]に近い音が表出されます。
/a/と/m/の連続表出で修正可能となることもあるが、困難な場合は/p/からの導入へ変更します。

(2)/p//b/から導入する

まず、頬をふくらませます。「アップップして」などの指示で行います。
ふくらませた類をSTあるいは自分の指で内側へ押し、破裂させます。
これを繰り返しながら、指を使わずに破裂できるよう少しずつ指の力を弱めていきます。
十分ふくらませることができない場合、鼻咽腔閉鎖機能や協調運動について再確認が必要です。
/p/が産生可能となったら、母音と結合させる。
この場合、口型の動きが少ない/ɯ/から始めると良いでしょう。

(3)/ ɸ/から導入する

/ɸ/が可能であれば、[ɸ:]と息を出すことを促します。
その途中で両唇を閉じさせます。
自力での閉鎖が困難な場合、STが軽く両唇をつまんで閉鎖します。
これを連続的に[ɸ:pɸ:pɸ:]と行わせる。 [pɸ:]が単独で可能となったら、/ɯ/と結合します。

(4)被刺激性があり、誤りが浮動的な場合

STの正音を模倣してもらいます。
並行して、構音操作に関して説明を行ってもよいですが、音に対し意識過剰とならないよう留意が必要です。
(1)(2)(3)のどの場合も、口唇の運動スピードとパワーを上げる訓練を並行することが望ましいです。 口唇の突出と口角の引きを繰り返す、口唇の閉鎖を保つなどです。
前者は「ウー、イーって続けてやって」と指示し、STが見本を示しつつスピードを上げていきます。
後者では、ストローや舌圧子などを口唇のみで支えさせます。
どちらにしても、ST=できる人、子ども=できない人、という図式にならないよういっしょに行います。ゲーム的要素を取り入れるなどのくふうがあるとよいでしょう。
声門破裂音となっている場合、もっとも注意すべきは二重構音を防ぐことです。
声門破裂音は声帯の強い内転によって起こるので、これを防止するよう以下に留意します。
1.声帯振動を伴わない無声音から導入するほうがよいです。
2.パピプペポである、と意識させないほうがよいです。
3.全身状態をリラックスさせるほうがよいです。
初めは急激な破裂でなく、やや引き伸ばしぎみのほうがよいです。具体的訓練は、(2)の訓練と同様です。

機能性構音障害の方に対する母音の産生訓練


機能性構音障害の方に対する母音の産生訓練

日本語の母音は、口唇の開き(口型)、舌の挙上部位、挙上の程度で決定されています。
母音における構音の誤りに、鼻咽腔構音(鼻腔構音)、側音化構音があります。
これは、舌背が口蓋と接してしまうのが原因です。
主に/i/に見られ、/ɯ/に見られることもあります。

鼻咽腔構音ケースの訓練方法

鼻咽腔構音ケースでは、以下のような方法を用います。
口腔から呼気を流出させることが主なねらいとなり、イ列音のすべてに誤りが見られる場合、/i/より/ʃi/から導入するほうが容易です。
鼻咽腔構音の場合、鼻孔をふさぐと鼻腔から呼気が流出できなくなり、音が出なくなります。
その結果、鼻孔を押さえることで、口腔からの呼気流出を促せることがあります。
鼻孔をふさぐ場合、鼻をつまむと痛みやむずがゆさ、不快感を伴いやすいため、両親指の腹で、鼻孔を下からふさいでやると良いでしょう。
口腔からの呼気流出が可能な他の母音を利用する方法もあります。
/i/であれば、同じ前舌系である/e/か開口度を小さくするら導くと良いでしょう。
[e:]と発声してもらい、そのまま連続して[e:i:]の発声を促し、徐々に/e/部を短くしていきます。
/ɯ/では、同じ奥舌音である/o/から同様に促すと良いでしょう。
基本訓練の舌の脱力・安定を行い、可能となったら、舌を歯間に出した状態のまま/i/の発声を促します。

基本訓練の舌の脱力・安定については下記の記事を参照ください↓
機能性構音障害の音の産生で基本となる訓練
舌を出すのは、舌が/i/発声時に動いていないことを、子どもに視覚的に確認させる意味があります。

/e/から/i/を促す訓練の流れ

機能性構音障害の音の産生で基本となる訓練

舌の脱力・安定

習慣化した誤り構音を改善するうえで、舌の脱力・安定は重要です。
特に、舌尖・前舌を用いて構音する音の場合、舌が緊張し、力が入ることによる舌背の挙上を抑制しなければいけません。
目標とする状態は、口を軽く開き、舌は下歯列に沿って下唇より前方に出ることなく、舌背はどこも隆起しておらず、舌縁が両口角に触れている状態です。
  1. まず、舌を出してもらいます。STが見本を示し、模倣させるとよいでしょう。困難な場合は、「アカンベーをして」と指示すると、低年齢児にも指示理解が容易です。しかし、このように指示すると、多くの場合、力いっぱい舌を出そうとして舌尖が下方を向き、舌は緊張した状態になりやすいです。そのため、この状態から目標の位置まで後退させることと、舌を脱力させることが必要です。
  2. 力いっぱい舌を出している状態で、舌を脱力することは難しいため、舌位置を後方に下げるよう促すと、それで脱力できる場合があります。その状態で舌の脱力が難しい場合、舌のみでなく、全身を脱力して見本を示すと、結果として舌も脱力しやすいです。脱力する感覚がうまくつかめない場合は、肩を上方に上げ緊張状態を作ってから、一気に息を吐きながら脱力を促すと誘導しやすいです。
  3. 舌に力が入り、円筒形となってしまい(イモ舌、棒舌と呼ばれる)、舌縁と両口角がつかない場合も、全身の脱力は有効です。言語指示としては、見本あるいは図示しつつ、「おイモの舌でなく、お皿の舌にして」と指示するとよいでしょう。また、息を止めて行ってしまう子どもの場合、待っていると呼吸が苦しくなって脱力が見られることがあります。言語指示、視覚刺激、運動による誘導を行いつつ、偶発した正しい状態を意識させていくことが大切です。

舌出し母音

舌が脱力できるようになったら、その状態を維持したまま、呼気を流出する訓練を行います。
この訓練は、/s//t/などの歯茎音の訓練や側音化構音の訓練時に用いられます。
  1. 舌を出したまま、「ハー(あるいはヘー)って息を出して」などの指示で息を出してもらいます。その際、舌の形が変化しないよう確認します。
  2. 可能となったら、舌を出した状態で母音を産生させる。/a//e/は比較的容易なことが多く、これに対し/i//o/はやや難しい。
  3. 母音を産生しようとすると舌に力が入ってしまう場合、「ハー」あるいは「ヘー」を息でなく声を出して行ってもらいます。この際、十分に音を伸ばしながら行わせるとよいでしょう。

訓練の流れ:舌の脱力・安定/舌出し母音

アカンベーをさせる(舌の位置、形、力の入り方に注意する。脱力できない場合は、舌ないし全身を使って、緊張と脱力を繰り返し、脱力している感覚を覚えさせる)
脱力したまま5~10秒活を維持する(時間経過につれて舌が動いてしまうことに注意する)
舌出しと舌を出さない状態を繰り返す(すばやくスムーズに舌の脱力状態ができるようにする)
舌出しのまま、呼気(「ハー」ないし「ヘー」)を出す
舌出しのまま声を出させ、舌出し音を促す。/a//e/→/ɯ/→/i//o/

有声音から無声音を導く

同一の構音点・構音法で、有声・無声が異なる音があります。
このような場合どちらかの音が産生可能となることによる自然治癒が期待できるが、自然治癒しにくい場合、ほかの音から移行する方法により対立する音を導くことができます。
  1. 有声音から無声音を導く場合、ささやき声での産生を促します。ささやき声においては、声帯振動を伴わないため、自然無声音を短くするを導くことができます。/ŋ/から導入し/g/が産生可能となった子どもに/k/を導入する場合、「ないしょで『が』をやってみて」と促し、無声音である/k/を導きます。ささやき声が導きにくい場合、STもささやき声で指示すると、自然に子どものささやき声を導きやすくなります。文字が読める子どもであれば、有声である「が」に対し、ないしょの「が」であることを色を変えるなどして図示すると、意識させやすいです。
  2. 可能となったら、「ないしょの『が』」に母音を結合させていきます。/a/から行うのが容易です。母音を結合する場合は、ささやき声と有声音である母音産生との切り替えが難しくなります。連続的に/k/と母音を産生することができず区切れてしまうことや、/k/から/a/へのわたりがスムーズに行われず、[kha:]と/h/が挿入されてしまうことがあります。このような場合は、/a/もささやき声から導入すると、無声から有声へ切り替えやすくなります。

訓練の流れ:/g/から/k/を導く


無声音から有声音を導く

無声音から有声音を導く場合、無声音を持続産生させたまま「声を出してごらん」と促すことで有声音を導く。この際、口型舌位置が変化しないよう持続して息を出させたまま声を出させる留意します。子ども本人に、鏡ですず視覚的にフィードバックさせるとよいでしょう。
STは対面で見本を示してよいが、鏡を用いる場合には子どもの横に位置し、鏡にSTの見本も同時に映るようにしたほうが、子どもの視覚的フィードバックの助けとなります。

訓練の流れ:/s/から/z/を導く


構音障害の病態や分類について

構音障害の病態について

呼気を用いて声帯を振動させることで作られる音を喉頭原音といい、これに口や舌などの構音器官を用いて言語音を産生する過程を構音といいます。
この過程においてさまざまな原因により異常な言語音を作り出した状態を構音障害といいます。
構音障害は、その原因によって、機能性構音障害、器質性構音障害、運動障害性構音障害に分類されます。
構音の誤りは言語発達の過程において多くみられます。
すべてが構音障害とされるのではなく、年齢・生育環境・精神運動発達などを考慮する必要があります。

構音障害の分類

機能性構音障害

言語発達遅滞や構音運動に関する神経系の成熟の遅れ、聴覚能力の低下など、何らかの要因により異常構音が習慣化し、固定化したものです。

器質性構音障害

構音器官の形態や機能の異常が原因で構音の誤りを呈するものをいう。原因となる疾患として、口唇口蓋裂、先天性鼻咽腔閉鎖機能不全、舌小帯強直症、巨舌症、下顎前突症、腫瘍切除術後の組織欠損などがあります。

運動障害性構音障害

中枢神経系から末梢の神経系、筋系の病変による構音器官の運動障害が原因で異常構音を呈するものをいう。運動性構音障害のうち失語失行は除く。原因疾患には脳梗塞、パーキンソン病、筋ジストロフィー、脳腫瘍、外傷などがあります。

リハビリの方針について

構音評価として、自由会話、単語検査、音節復唱検査、構音類似運動検査、文章検査などを行う。また、口腔内診査、聴力検査、言語発達検査、知能検査、発声発語器官検査などを行い、機能性構音障害、器質性構音障害、運動障害性構音障害について鑑別診断します。

機能性構音障害

治療としては、目標音の基本操作あるいは音を誘導し、単音、単語、文、文章の順に習熟をはかり、段階的に日常会話レベルへの汎化を行う。伝統的構音訓練で症状の改善に苦渋する症例や聴覚障害や軽度発達障害のある人に対しては、エレクトロパラトグラフ(EPG)を用いた視覚的フィードバック訓練を行うことがあります。
また、滲出性中耳炎や伝音性難聴は機能性構音障害に影響するといわれており、症例によってはこれらの合併を精査する必要があります。

器質性構音障害

器質的問題に対しては、発音補助装置や外科手術により構音器官の形態や機能の修復をはかるとともに、正しい構音操作の獲得のために構音訓練を行う。
また、発音補助装置を用いることで、訓練により機能が賦活化され、装置からの離脱や外科手術の回避が可能となることがあります。

運動障害性構音障害

原疾患に対しては、手術などの医学的・外科的治療、薬物治療を行い、補綴治療により発話器官の機能を補う。
また、行動調整的治療として、拡大/代替コミュニケーション(AAC)手段、発話器官の運動・感覚機能回復訓練、発話訓練などを行う。
障害された構音機能の回復や現状維持、あるいは機能低下に対する代償を目的として治療を行う。

参考文献

1)日本聴能言語士協会講習会実行委員会編:アドバンスシリーズ/コミュニケーション障害の臨床口蓋裂・構音障害。pp157−163、協同医書出版社、2001
2)本間慎治編著:言語聴覚療法シリーズ7機能性構音障害。pp1−47、建帛社、2000
3)斉藤裕恵編著:言語聴覚療法シリーズ8器質性構音障害。pp1−3、建帛社、2002
4)熊倉勇美編著:言語聴覚療法シリーズ9運動障害性構音障害。pp10−86、建帛社、2001

機能性構音障害に対する語音聞き取り訓練の方法について

機能性構音障害に対する語音聞き取り訓練の種類と方法

語音聞き取り訓練の種類

語音聞き取り訓練とは、正しい構音操作により産生された音と誤り音とを聞き分ける訓練をいいます。
訓練の種類として、語音弁別、音節の分解抽出、同定があります。
訓練の段階として、単音節、単語、文の順に行いますが、それ自体意味を持たない単音節よりも単語のほうが容易な場合もあります。

語音聞き取り訓練の方法

①音の呈示方法として、STが音を呈示する、②子ども自身が産生した音をテープに録音しそれを聞いて聞き分ける、③子ども自身の産生した音を即時に正誤判断する方法があります。
一般に、STの呈示した音を聞き分けることは、子ども自身が産生した音を聞き分けるより容易であるので、こちらを先に行います。
STが産生した音の弁別が可能であれば、テープから聞こえる自分の誤り音の弁別は可能なことが多いです。
即時判断が可能となれば、発話中に自分の誤りに気づけるようになります。
この訓練を行うことで、子どもが自身の誤りを自覚することにつながります。
子ども自身が浮動的にターゲット音を産生可能となっている場合には、自信にもつながっていきます。
その一方で、自覚が意識過剰につながり、発話の減少や吃音を誘発しないよう留意する必要があります。
語音聞き取り訓練は、誤りの種類が置換である子どもの場合、訓練を通して習得することより弁別可能であることを確認する意味合いが強くなります。
誤りが声門破裂音や側音化構音である子どもや成人の場合には、自身の産生した音の弁別に時間を要することも多いです。

訓練実施上の留意点

単音節の聞き取りにおいて、呈示する単音節は何でもかまいませんが、訓練導入当初は誤り音を含むことは避けたほうがよいです。
反応方法に遊びを取り入れたり、何回も続けてターゲット音を呈示するといった方法も、子どものモチベーションを高めることに役だちます。
単語レベルにおける音節の抽出・同定の訓練においては、文字が読める子どもの場合、文字で位置を認識してしまい聞き取りの訓練にならないことがあるので、文字は呈示しません。
逆に聞き分けが困難な場合には、文字を呈示してヒントとしてもよいです。
単語レベルにおける聞き取り訓練においては、STはプロソディーがヒントとならないよう注意します。
ターゲット音と誤り音の弁別が困難な場合、誤り音以外の音との組み合わせから行うこともできます。
/t/と/k/では弁別できていないが、/t/と/p/あるいは母音との組み合わせであれば弁別可能なこともあります。
組み合わせの難易度は、上記のように構音点、構音法が似ていない組み合わせが比較的容易です。
対象の難易度は、比較すべき音が語頭語尾にある場合、語中にある場合よりも容易なことが多いです。
文における比較は単音節・単語に比べ困難ですが、文レベルは語音聞き取り訓練を行わなくても可能となることがあります。

語音聞き取り訓練の進め方

語音聞き取り訓練

音・音節レベル

ターゲット音(正しい音)と、ターゲット音以外の音(誤り音)として、それらを交互に聞かせ、正しい音かどうか正誤判定させます。
ターゲット音以外の音には、訓練開始時は子どもがすでに獲得しており、かつ、ターゲット音と音響特性や構音(調音)特性において音としての差異が大きい音から開始し、しだいに差の少ない近似音、そして実際の誤り音として表出されている音というように移行していきます。
例として、/tʃi/をターゲット音とした場合、すでに両唇音が獲得できていれば、誤り音を/mi/から開始します。
そして構音特性の近い音へと進み、最後には類似性の大きい/ʃi/の弁別訓練を行います。
正誤を判定するための標識については、テレビのクイズ番組に出てくるような○と×の札を用意し、正誤判定でどちらかを指してもらう、訓練者と養育者が交互に正しい音と誤り音を発音し、どちらの構音が正しかったかを当てるようなゲーム感覚のものでもよいです。
また文字を獲得している場合は、ターゲット音となる音の文字と誤り音を示す文字を使って、どちらに聞こえたかを判定させます。

単語レベル

ターゲットとなる音を含んだ単語について、訓練者が正しい音、または誤り音を子どもに聞かせて、その正誤の判定をさせます。
原則として、ターゲット音と誤り音の設定に。音節レベルと同じように、音響特性における音の差異が大きいものから始めるようにします。
単語の音節数は、2音節のように音節の少ない単語から多い単語へと移行していきます。

文レベル

ターゲット音を含んだ単語を文中に入れ、その文章を聞いて誤り音を指摘させます。
文章は、構音障害のドリルブックなどを参考にするとよいです。

音節の分解・抽出・同定訓練

単語を聞き、そのなかに含まれる音節の数を分解します。
また、それらの音節のなかに含まれる、ある特定の音を抽出し、その音の単語における位置を同定します。

音節の分解訓練

2音節語を訓練開始語とし、ゆっくりと訓練者がその単語を言い、子どもは単語を繰り返しながら該当する音節の数だけ積み木やおはじきを置きます。
または置いてある積み木に、その単語の音節の数だけ触れます。
各単語の音節と、それに対応する音節数を視覚的にマッチングさせる練習です。
2音節語で可能となれば、3音節語、4音節語と音節数を増やして練習します。
この課題は、かな文字の習得と関連が深いといわれています。
また、市販のトーキングカードには、同じ音節を何回か聞かせ、その音節がいくつあるかを当てさせる課題があります。

音節の抽出訓練

該当する音が、単語の音節のどこにあるかを探し、抽出する課題です。
子どもの前に、音節数だけ記された枠を用意しておきます。
抽出の反応例として、単語を「たいこ」、抽出する音節を「た」とした場合、訓練者は「たいこ」とゆっくりと言い、それから「『た』はどこにありますか」と質問します。
子どもには、前に置かれた枠のどこに「た」があったかを指してもらいます。
ここでは、いちばん最初の音節に該当する枠を指せば正解です。
枠の代わりに数字を用意し、該当する音節の番号を言ってもらう(この場合の答えは“1”)のもよいです。 音節の分解訓練と同じく2音節語で、かつ子どもがすでに習得している音を含んだ単語から開始し、習得していない目的音へと移行していきます。
市販のトーキングカードでは、信号機の3色(青、黄、赤)と対応させ、指定された音が語頭に出てくる場合は青、語中の場合は黄色、語尾の場合は赤と答えさせる課題があります。
また刺激語は、絵を用意し、答えの音に該当する音節の位置を音声刺激なしで抽出・回答させるなど、より難易度の高い課題も用意します。

音節の同定訓練

音節の抽出訓練と同じ枠を用意し、枠のある1か所におはじきを置いたり、マーク(「?」マークなど)を記入し、訓練者が提示した単語の音節のなかで、おはじきを置いた音節の部分にはどのような音があったか、子どもに答えてもらいます。
例として、訓練語を「たいこ」とし、3番目の枠におはじきを置いた場合の答えは「こ」です。
また、しりとりや、ある音のつく単語を挙げる(例:頭に「さ」のつくことばを挙げる)など、ある音節のつく単語を想起させるような「ことばあそび」は、音節の同定に有効な課題です。

構音の発達について言語聴覚士が解説!

構音の発達について

構音の発達は、誕生とともに始まります。
子どもが初めて発する音は、いわゆる産声です。
あの「オギャー」という声は、肺呼吸の結果、発せられる生理的な発声であり、意図的に「オギャー」と言おうと思って発している音ではありません。
意図的な発声が見られるようになるのは、生後3~4か月ごろからです。
生後1か月ごろまでは一定のリズムで泣くばかりであり、発声とはつまり泣くことです。
誕生とともに発声するということは、誕生のとき発声するために必要な器官を備えていることを示しています。
生後1か月を過ぎるころから、状況によって異なる発声が見られ始めます。
泣くという不快を示す発声ばかりでなく、笑いをはじめとする快の発声が出現します。
これは、リラックスした状態での発声が可能となったことを示しています。
赤ちゃんの泣き声と笑い声をまねてみると、その発声時における緊張の差が実感できるでしょう。このリラックス時の発声が喃語につながっていきます。
生後3か月を過ぎると、徐々に噛語が盛んになっていきます。
これは、それまでの呼吸と同じリズムでの発声から、呼気をコントロールしての発声へと変化していることを示しています。
また、これまで偶発的で単発的であった発声が再現性を持ち始め、繰り返し同様の発声をすることが可能となります。
生後7~9か月ごろには、さまざまな音を発するようになります。
このころの子どもが発する音の種類は、日本語の語音よりも多いと言われています。
哺語期に発せられる音がそのまま言語音につながるわけではありませんが、さまざまな音を出します。
離乳食を食べるといった行為が、構音器官の運動能力を向上させていきます。
これに模倣力の向上などが加わり、構音のための準備がなされていきます。
1歳近くなると、意思伝達を目的として音声を使用することが見られ始めます。
また、音声と意味の結びついた有意味語が見られるようになります。
構音面では、母音や両唇音を中心とした同音反復(マンマン、ワンワン、ブーブーなど)が多く、音も歪んでいますが、理解語彙・表出語彙の拡大につれて徐々に構音操作も学習していきます。
構音の習得過程では、子音を省略したり、獲得が遅い音を構音点や構音法の近い音へ置き換えることが見られ、これを発達途上の誤りといいます。
同じ音でも語によって正しく発音したり誤ったり、あるいは同じ語のなかでもできたりできなかったりと浮動性があることが特徴です。
構音器官の成長、構音運動の巧緻化、自己モニタリング力の向上、音韻分析能力の確立などに伴って、おおむね5~6歳までにすべての音が一貫して正しく構音できるようになります。
下記の図は、構音の完成時期を示したものです。
一般的に視覚的に確認しやすく、動きがダイナミックな両唇破裂音が早期に習得され、/s//ts/dz//r/の習得は5歳前後となってからです。その他の音は、4歳を過ぎるころまでに習得されていきます。
発達途上によく見られる音の誤りは下記のとおりです。
機能性構音障害の評価に関しては、音の完成時期の知識に加えて、発達途上の誤りと、発達途上にはあまり現れない特異的な誤りとを区別できることが大切です。

機能性構音障害の訓練の目的と訓練適応について(言語聴覚士向け)

訓練の目的と訓練適応

訓練の目的

機能性構音障害に対する訓練の目的は、適切な構音操作を習得し、それを日常会話において使用できるようにすることです。

訓練の適応

誤りが固定化している場合や被刺激性がない場合には、訓練適応があります。
ただし、構音の発達年齢から見てまだ獲得時期ではない構音が対象である場合や、構音発達から見て訓練の適応ではあるが、口腔運動に被刺激性を認める場合など、自然治癒が期待できる場合は、訓練時期を3か月、あるいは半年遅らせて、自然治癒の有無を確認します。
もし、その期間が過ぎても構音が改善していないようであれば、訓練を開始します。
また、自然治癒が期待できる場合でも、音の誤りが原因でいじめられている、就学が近いといった要因のある場合は、構音訓練を直ちに開始する場合もあります。

訓練の開始時期

構音訓練は、一般的には4~5歳に開始するのが良いといわれています。その理由として、音の抽出や分解が可能であるのが4歳から5歳であること、就学前に訓練対象の構音に対する訓練を終了させるには、4~5歳に訓練を開始することが適当であることが挙げられます。
さらに、4~5歳は、文字に興味を持ち始める時期でもあり、文字に興味を持たせつつ、音の抽出や分解、誤り音と正確な音との違いを分別させるなどの学習をすることが可能です。
また、このころの子どもの年齢は、ちょうど幼稚園に通園している時期であり、保育士と子どもとの関係が、同様に言語聴覚士と子どもとの間にできやすいことも一因です。
その一方で、訓練の開始時期をさらに早期にするべきという立場もあり、訓練回数や、家庭での訓練プログラム設定およびその家庭での訓練担当となる養育者への指導の重要性がいわれています。

訓練頻度

訓練頻度は、原則的には週1~2回です。これはあくまでも目安であり、養育者が仕事を持っている、子どもが幼稚園・保育園に通園しているなど、養育者や子どもの置かれた環境や、訓練に対する子どものモチベーションに影響されることが多いです。
1回の訓練時間については、低年齢児であれば15~30分年長児や就学児では30分~1時間を原則とします。
しかし、これも子どもの気分や状態によって左右されることがあります。
例えば、子どもが幼稚園で、けんかをした後や、おもちゃを買ってもらえなかったなどでぐずった後に訓練室に来て、30分フルに訓練を行うことは難しくなります。
また、与えている課題が、子どもにとって理解が難しい場合は、子どもも訓練に対する動機づけが保てず、1回の訓練時間のみならず、訓練頻度も減少することがあります。
そのため、養育者や子どもの置かれている環境を考慮し、養育者と話し合いながら、訓練頻度や訓練時間、家庭学習での頻度や時間を設定すると良いでしょう。

訓練期間

およそ1年を目安とします。
1年を過ぎても改善しないようであれば、訓練プログラムの確認や、構音に影響する器質的な原因(難聴、鼻咽腔閉鎖機能などがないかを再度確認します。
不要な長期間の訓練は、訓練意欲の減退を招く。またいじめなどの二次的な問題が生じてくる場合には、迅速な改善に留意すべきです。

訓練における留意点

言語聴覚士は、機能性構音障害児に対する訓練を実施するにあたり、子どもの労力や負担が最小限になるように考慮しなければいけません。
子どもの負担になるものとしては、訓練の難易度や訓練の量、訓練時間が挙げられます。
子どもの場合、成人の患者と比較して改善への動機づけが明確ではないため、うまくできない練習を続けることは難しくなります。
そのため、訓練は「やっぱりできない」ではなく、「これならできる」と思ってもらうことが大切であり、子どもが実施でき、かつ難易度の低い訓練をあらかじめ用意し、セッションの初めと終わりに行うことが望ましいです。
また、セッションの終了時には成功感や満足感を子どもに与えて終了することも、訓練の難易度を考えるためのひとつの基準となります。
一方、訓練開始時、特に音の産生訓練を実施する際は、音の誤りの許容範囲は厳密でなく、むしろあいまいな音を許容し、子どもに訓練意欲を持たせることも重要です。
その許容範囲は、訓練を重ねていくなかで少しずつ厳密にしていくようにします。
気分により訓練が進まないようであれば、1段階難易度を下げた訓練を行うことや、訓練を早めに切り上げて、残りの時間を日常生活での子どもの様子を養育者から聴取する時間にあてる、などを試みてみましょう。
また子どもにとって、行われている訓練への理解が難しい場合は、同じく1段階難易度を下げた訓練を行う、ほかの誤り音の練習を先に行う、文字や絵などの視覚的なヒントやフィードバックを増やして訓練理解を高めるなどの工夫をすると良いでしょう。
これらは小児領域の言語訓練全般に関連することでもあります。
1つの訓練法や誤り音に言語聴覚士が固執することなく、あらかじめ難易度の高いまたは低い訓練の「引き出し」をいくつか用意し、子どもの状態を見ながらその「引き出し」から訓練法を選びつつ、臨機応変に対応・変更していく能力が言語聴覚士には必要です。