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顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD)の病因や病理、病態生理について

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD) の病因・病理・病態生理 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー は、常染色体優性遺伝をとる浸透率の高い疾患です。 頻度は他の筋ジストロフィーに比べると低く 、人口 10 万人あたり 0.2 ~ 0.5 人です。 本症の遺伝子座は第 4 染色体長腕テロメア 4q35-qter に存在します。 この部位を認識するプローブを用いてサザンブロット法を行うと 、大半の患者では正常よりも短い ( < 35kb) 制限酵素断片が得られ ( 遺伝子の欠失 ) 、診断に役立ちます。しかし 、遺伝子はまだクローニングされていません。 筋生検では筋線維の大小不同 、壊死・再生など筋ジストロフィーの変化がみられます。 時に炎症細胞の浸潤をみて 、筋炎との鑑別を要することがあります。 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD) 臨床所見 発症は小児期から成人前までと幅広く 、また症状も幅があります。 患者の家族をみると表情が乏しいだけで 、四肢には全く筋力低下をみないこともまれではありません。 病気は上肢の挙上困難で気づかれることが多いです。 肩甲帯周囲の筋萎縮が強いので 、病初期から翼状肩甲 winged scapulae がみられます。 大半の患者では顔面筋がおかされ 、頬のふくらみがなくなり 、表情が乏しくなり、病気が進行すると 、筋力低下は下肢にも及びます。 本症の筋罹患は左右非対称であることが特徴的であるとされています。 心・肺機能はおかされにくく、難聴 、網膜症 retinal vasculopathy が約半数の患者にみられます。

筋強直性ジストロフィー(MD)と摂食・嚥下障害

筋強直性ジストロフィーの摂食・嚥下機能の病態 国立病院機構筋ジストロフィー病棟の 2000 年から 2004 年の MD の死因を 5 年間の累計でみると、呼吸不全が 27.9% 、次いで呼吸器感染症 21.8% 、呼吸不全と呼吸器感染症併記が 5.5% と呼吸器系の関与が目立ちます。 呼吸器感染症には誤嚥性肺炎も多く含まれていると考えられ、摂食・嚥下障害が、この疾患の予後と強い関連をもっていることを示唆しています。 嚥下障害を引きおこす要因には、ミオパチーによる嚥下筋力の低下、ミオトニア、中枢神経障害があげられています。 ミオトニアについては、筋電図により顎下筋の放電を確認した報告があります、嚥下運動の中でどのように関与しているかについては明らかではありません。 MD では、認知期・準備期の問題、口腔の形態的・機能的問題、咽頭期・食道期の問題がいずれも存在します。 CTG 三塩基反復数と嚥下機能重症度との関連は明らかでないといわれています。 MD 患者のなかには、誤嚥を繰り返しながら経口摂取を続けているものが少なからず存在すると推察されますが、自覚症状やスクリーニング検査で発見することは困難と言われています。 摂食・嚥下運動の各プロセスにおける障害 認知期 認知障害による摂食行動異常 ( 次々に大きな食塊を口に詰め込むなどの行動 ) や病識の甘さなどがみられます。嚥下障害の自覚症状として、のみ込みにくさを 45% 、むせを 33% が訴えているとの報告もありますが、一般に自覚の乏しい場合が多く、誤嚥のリスク管理上十分な観察が必要です。摂食・嚥下障害の自覚に乏しく、自食患者の誤嚥のリスクはかなり高いと言われています。この点を踏まえた、見守りと管理体制が必要となります。 準備期 不正咬合は 35% にみられ、前歯と小臼歯部の歯が噛み合わない開咬があります。咀嚼力低下は不正咬合と咀嚼筋 ( 咬筋と内側翼突筋 ) 筋力低下の両者によってもたらされます。咬合力は健常者の 1/10 程度ですが、咀嚼障害について病識が少なく、不十分な咀嚼でのみ込む行動がみられます。不正咬合に対し、口腔外科的矯正手術が有効との報告があります。 口腔期 鼻咽腔閉鎖不全、軟口蓋挙上の遅れ、咽頭への送り込み...

Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の摂食・嚥下障害について

DMD 患者は、 10 歳代より口腔期の異常が存在し、さらに 20 歳頃より咽頭残留などの咽頭期障害が出現し、口腔、咽頭の通過障害は固形物の方が強く、咽頭残留は液体の方が多くみられたとの報告があります。また、口腔・咽頭移送時間は年齢とともに遅延し、舌骨の前上方への運動時間は、年齢とともに短縮すると報告されています。   摂食・嚥下運動の各プロセスにおける障害と対策について 準備期の障害と対策について 閉口筋と開口筋の機能の不均衡により、しばしば開口障害と開咬を認めます。 咬合不全があり、咬合力は 20 歳代でも 100N 以下であり、健常人の平均値、 10 歳代 468N 、 20 歳代 654N に比べきわめて低値となります。 また、巨舌や筋力低下のため、明らかな舌の可動域制限がみられます。 歯列は、前後径が小さく左右径がやや大きく、相対的に側方に広がり、そのため舌の左右運動量が多くなり咀嚼効率が低下してしまいます。 対策としては、咬合床などの装置により、咀嚼機能を改善したとの報告があります。 口腔期の障害と対策について 巨舌と舌の可動域制限のため、奥舌への移送や咽頭への送り込み、運動中に口腔内を食塊が行きつもどりつしてしまいます。対策としては、咬合訓練や口腔周囲筋のストレッチを行い可動域を拡大を図ります。 咽頭期の障害と対策について 咽頭筋の筋力低下による咽頭移送障害と舌骨挙上不全による食道入口開大不全があります。そのため、食道入口部を食塊が一度に通過しないことが少なくありません。結果として、食塊の口腔への逆流が少なからず認められます。障害食道入口開大不全に対してはバルン拡張法法 (1 回引き抜き法 ) が有効なことがあるとの報告があります。 食道期の障害について 食道の移送障害は、少ないといわれていますが、胃食道逆流がみられることがあります。 摂食障害と対策について 脊柱変形や上肢・体幹筋力低下による疲労が必発です。慢性進行性のため、患者は必ずしも疲労を自覚していませんが、食事の後半に頻脈や体動が目立つときは、疲れているサインと判断します。 脊柱変形や上肢・体幹筋力低下による疲労の対策としては、ただちに全面介助に変更するのではなく、患者の自食の意欲を尊重して...

進行性筋ジストロフィーProgressivemusculardystrophyの病型(タイプ)について

筋ジストロフィーは筋線維の変性・壊死を主病変とし、進行性の筋力低下をみる遺伝性疾患です。筋線維の壊死とそれに伴う再生が慢性的に行われる過程で線維化や脂肪変性が出現・進行し、筋量が減少することによって徐々に筋力低下が進行していきます。 運動機能障害を主な症状ですがが、関節拘縮や呼吸機能障害、心機能障害、嚥下障害、消化管症状、骨代謝異常、内分泌代謝異常、中枢神経障害などの合併を認めることも多いです。 筋ジストロフィーの病型について 【 1 】 Duchenne 型筋ジストロフィー (Duchennemusculardystrophy ; DMD) DMD は X 連鎖劣性遺伝形式をとり原則男児に発症します。ジストロフィン遺伝子変異によって筋線維膜直下に存在するジストロフィン蛋白の欠損をきたすことによって生じます。 2 歳以降に転びやすい、走れないなどで気付かれますが、発症前にたまたま行った検査で高クレアチンキナーゼ血症が判明し診断を受ける場合も多いです。 5 歳頃に運動能力のピークを迎えたのち緩徐に症状が進行し 10 歳頃に歩行不能となります。 10 歳以降に呼吸不全、心筋症を認めるようになるが出現時期や経過に個人差が大きいです。 進行性の側弯症の合併が多く脊柱固定術の適応となる場合があります。 ジストロフィン遺伝子変異を有する女性を保因者と呼び、その多くは無症状ですが、一部成人以降に筋力低下や心筋症を呈する例があります。 2014 年に「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン 2014 」が刊行されています。 【 2 】 Becker 型筋ジストロフィー (Beckermusculardystrophy ; BMD) DMD に臨床症状は類似しますが、発症時期がより遅く 15 歳を過ぎても歩行可能ですが、重症度には幅があります。歩行や起立、階段昇降に支障をきたすことが初発症状のことが多いです。 BMD では歩行可能な時期であっても心筋症を発症する場合があります。 BMD の病因もジストロフィン遺伝子変異によるが、 BMD ではジストロフィン蛋白の量的質的異常を示します。 【 3 】先天性筋ジストロフィー (congenitalmusculardystrophy ; ...

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者に対する嚥下評価について

デュシェンヌ型筋ジストロフィー( Duchennemusculardystrophy ; DMD )患者の平均寿命は人工呼吸器療法などの集学的医療の効果により延長しています。寿命の延長に伴い、嚥下機能の低下が顕在化し、胃痩栄養や中心静脈栄養などの栄養管理方法を選択する例が増加しています。 一般に DMD 患者では 10 歳代から咀噌や咽頭への食物の送り込みなどの口腔機能に異常が現れ、 20 歳以上では咽頭喉頭の筋力が低下することにより嚥下後に食物が咽頭に残留する頻度が高くなりますが、誤嚥を来す頻度は少ないと報告されています。 DMD の診療ガイドラインでは、口腔機能の低下が始まる 10 歳代半ばから定期的に嚥下機能評価を行うことが推奨されています。 DMD 患者のスクリーニング検査 スクリーニング検査としては反復唾液嚥下テスト( RSST )と( MWST )を実施していますが、 DMD 患者ではスクリーニング検査の結果を適切に評価できないことが少なくありません。嚥下障害が進行している DMD 患者では、嚥下時の喉頭挙上の動きが弱く、弱い嚥下運動を反復しながら少しずつ嚥下するため、嚥下反射のタイミングを触診だけで判断することが難しい場合があります。 この喉頭挙上が 1 横指を超えない弱い嚥下運動が観察される場合には、咽頭への食物残留が認められることが多いという報告があります。また、呼吸筋が弱くなっている場合には、検査者にわかるように強くむせることが出来ません。 ただし、 DMD 患者の場合には咽頭喉頭の感覚が保たれているため、咽頭残留の有無や飲み込みにくさについては比較的正確に自覚されている場合が多いです。 DMD 患者の嚥下内視鏡検査 外来またはベットサイドに内視鏡を持参して検査を行います。検査の際には普段食事をしている姿勢をとってもらい、普段の食事中に鼻マスクなどを使用し NPPV 換気を行っている場合には呼吸器を装着したまま検査を実施します。内視鏡の先端部分を鼻腔内に挿入する時のみ少しマスクをずらすだけで、その後は通常通りに換気をしながら検査を実施することができます。 嚥下時の咽頭喉頭の動きが減弱した DMD 患者では咽頭の唾液貯留や嚥下後の咽頭残留を認めます。ただし、唾液や残留した食物の喉頭...

ディシュンヌ型筋ジストロフィーの初期症状

ディシュンヌ型筋ジストロフィーの初期症状 初期症状 初期症状の多くは3~5歳頃に転びやすい、ジャンプができない等で運動発達の遅れに気づかれます。その後、遺伝子診断や筋生検で診断されるようです。 5~6歳で運動機能がピークに達した後は徐々に筋力低下が進行して、無治療の場合、多くは10歳前後に歩行機能を失ってしまうとのことです。 平均寿命 以前の平均寿命は20歳前後だったそうです。 今では、包括的な医療・ケアの進歩により、平均寿命は30歳を超えて、生活の質(QOL)も向上していると言われています。 ※ディシュンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne musculardystrophy:DMD)は、基本的に男児に発症するX染色体劣性遺伝性疾患です。 筋ジストロフィーの中で最も頻度が高いのが、ディシュンヌ型筋ジストロフィーで、男児出生3,000~4,000人に1人の割合で発症すると言われています。

肢帯型筋ジストロフィー2B型

肢帯型筋ジストロフィー2B型 大半の筋疾患は肢帯が好んで侵されます。 従って「肢帯型筋ジストロフィー」とは、臨床的特徴に乏しい筋ジストロフィーを意味します。従って、必然的に遺伝学的に異なる疾患が含まれます。 常染色体優性遺伝のものは1型、常染色体劣性遺伝のものは2型に分類されます。 それぞれの型の中で、最初に遺伝子座または原因遺伝子が見つかった順に1A、1Bなどとアルファベットが割り振られていきます。 これまでに少なくとも1Gまでと、2Pまでがあることが知られています。 本邦で最も頻度の高いのは2B型です。この2B型で欠損するジスフェルリンも筋線維膜タンパク質ですが、筋線維膜の補強ではなく、筋線維膜が損傷を受けた場合の修復に関与しています。 従って、ジスフェルリノパチーは、筋線維膜の脆弱性による筋ジストロフィーではなく、膜の修復異常による筋ジストロフィーと言えます。 ジスフェルリノパチーは10歳代後半から30歳代半ばにかけて、下肢筋力低下で発症します。当初は上肢の筋力は保たれていることが多い。同様にジスフェルリン欠損を原因とする疾患に三好型ミオパチーがあります。 三好型は遠位型ミオパチーの一種であり、腓腹筋が好んでおかされる。ただし進行すると肢帯型であっても進行例ではほぼ必ず腓腹筋が侵されており、進行例で肢帯型と三好型を区別することは困難です。 さらには、同一家系内でも肢帯型と三好型が混在することもあります。 血清CK値は数千IU/l に上昇しており、歩行可能な時期で1、000IU/l を下回ることはありません。 筋生検を行い、免疫染色またはウェスタン解析を行うことで診断が付きます。 遺伝子診断が必要な場合には、55個全てのエクソンのシークエンスが必要となります。

福山型先天性筋ジストロフィー患者の筋肉

福山型先天性筋ジストロフィー患者の筋肉 福山型先天性筋ジストロフィー患者の筋肉では、α- ジストログリカンの糖鎖部分に対する抗体で免疫染色を行うと染色性が著減していますが、蛋白質部分に対する抗体で染色すると染色性が保たれています。 このことは、福山型先天性筋ジストロフィーにおいては、α- ジストログリカンの糖鎖に何らかの異常があることを示しています。 同様の異常はmuscle-eyebrain病、Walker-Warburg症候群を初めとする先天性筋ジストロフィーや2I 型を初めとする一部の肢帯型筋ジストロフィーにも認められます。 福山型の原因遺伝子FKTNがコードするフクチンのアミノ酸配列は糖転移酵素と相同性があることから、α- ジストログリカンの糖修飾に何らかの役割を有しているものと考えられています。 福山型先天性筋ジストロフィーを含む一連の筋ジストロフィーでα- ジストログリカンの糖鎖異常を来すものは、α- ジストログリカノパチーと総称されています。 ジストロフィン軸の最外層のラミニンはα- ジストログリカンとα- ジストログリカンの糖鎖部分で結合しています。 α- ジストログリカノパチーにおいては、α- ジストログリカンの糖鎖が正しく形成されていないことから、ラミニンとα- ジストログリカンとの結合が断絶しています。 すなわち、ジストロフィン軸の断絶を意味しており、ジストロフィノパチーと同様に筋線維膜の脆弱性を来して、筋ジストロフィーを引き起こします。

福山型先天性筋ジストロフィー (Fukuyama congenital muscular dystrophy)

福山型先天性筋ジストロフィー (Fukuyama congenital muscular dystrophy) 福山型先天性筋ジストロフィーは常染色体劣性の遺伝性筋疾患であり、その患者は本邦先天性筋ジストロフィー患者のおよそ半数を占めています。乳児期に発育・発達の遅れで気付かれると言われています。典型的には、幼児期に座位まで獲得するものの、生涯、起立・歩行を獲得することはありません。知的発達障害も著明です。小児期には全身の筋萎縮が進行します。以前は10歳代半ばで死亡するとされていましたが呼吸管理の改善により30歳を越えて生存する患者も存在するようになっています。

サルコグリカノパチー (sarcoglycanopathy)

サルコグリカノパチー(sarcoglycanopathy) 筋線維膜にはサルコグリカンという糖蛋白質が発現しています。 α、β、γ、δの4つのサルコグリカンからなるサルコグリカン複合体がジストロフィン軸を側方から支えるようにして存在しています。 これらのサルコグリカンはそれぞれ異なる遺伝子によってコードされていますが、何れのサルコグリカン欠損によっても基本的に全てのサルコグリカンが複合体ごと欠損してしまいます。 サルコグリカンが欠損すると、生化学的にジストロフィンとβ- ジストログリカンの結合が弱まることが知られているます。 ジストロフィンとβ- ジストログリカンの結合が弱まるというのは、ジストロフィン軸の筋線維膜を補強するという機能的な側面からは、ジストロフィンが欠損したのと同義となります。 サルコグリカノパチーは当初「常染色体劣性の重症小児筋ジストロフィー」として報告されました。これはすなわちDuchenne型に似ていますが常染色体劣性遺伝形式を取る筋ジストロフィーであることを意味しています。 実際には、Duchenne型よりは軽症の例が多く、むしろBecker 型やDuchenne型の症候性保因者などの鑑別に重要です。 サルコグリカノパチーは現在、肢帯型筋ジストロフィー(2C~2F型)に分類されています。

遺伝子診断 Duchenne型、Becker型筋ジストロフィー

遺伝子診断 Duchenne型、Becker型筋ジストロフィー 遺伝子診断は2段階で行われます。最初に行われるのは、簡便にエクソンの存在を確認できるmultiplex ligation probe amplification (MLPA)法で、これは保険収載されています。 もしエクソン単位の欠失・重複があれば、この方法で検出することが可能です。もし欠失や重複が見出されない場合には、筋生検を行い、ジストロフィン欠損を蛋白質レベルで証明する必要があります。その上で、さらに遺伝子変異の確定が必要な場合は、全79エクソンのシークエンス解析が必要となりますが、この解析は有償(10万~ 15万円程度の患者実費負担)で行われています。ただし患者登録システムRemudy(http://www.remudy.jp/)へ参加する場合には研究費でカバーすることが可能となります。

ジストロフィン dystrophin

ジストロフィン dystrophin ジストロフィンは、ジストロフィン・β-ジストログリカン(β-dystroglycan)・α-ジストログリカン( α-dystroglycan)・ラミニン2( laminin 2)からなる「ジストロフィン軸」と呼ばれる蛋白質複合体を構成し、これを支えるサルコグリカン(sarcoglycan)複合体とともに、筋線維膜を裏打ちするアクチン線維のネットワークと基底膜とをつないで筋線維膜を補強しています。ジストロフィンが欠損すると、この補強が弱まり、筋収縮時に筋線維膜に強い負荷が掛かって損傷を起こします。損傷を受けた筋線維膜に小さな穴ができます。細胞外のカルシウム濃度は細胞内の濃度の1万倍以上高いことから、筋線維膜に穴が開くと高濃度のカルシウムが一気に細胞質内に流れ込みます。一方、筋収縮は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが滑ることによって生じますが、これは、筋小胞体からの少量のカルシウム放出によってコントロールされています。このような仕組みのあるところに高濃度のカルシウムが流入すると、筋線維の過収縮が引き起こされ、筋線維の内部構造が破壊されてしまいます。これが筋線維壊死の原因と考えられています。筋線維は壊死を起こすと、カルパインなどのプロテアーゼが活性化されて自己消化を起こすとともに、速やかにマクロファージが出現して障害を受けた細胞質を貪食します。さらに、休眠していた筋衛星細胞が活性化されて分裂増殖し、筋線維を再生し、やがてほぼ元通りの筋線維が構築されます。筋ジストロフィーの場合は、何度も壊死が繰り返されるために、やがて再生が追いつかなくなり、筋線維数が減少していきます。更にそのスペースを埋めるべく間質の線維組織や脂肪組織が増加します。

Duchenne型筋ジストロフィー 特徴

Duchenne型筋ジストロフィー 特徴 Duchenne型筋ジストロフィーでは、約半数の例で処女歩行が遅れるとされています。典型的には、3~5歳頃に腰帯筋筋力低下による転びやすいなどの症状で気付かれることが多いとされています。 この時期の筋力低下の検出には、腰帯筋筋力低下を鋭敏に捉えるGowers徴候が有用です。 歩行可能時期には、多くの例で腓腹筋の肥大を認めます。 やがて骨格筋障害が進行して動揺性歩行を示すようになり、更には10歳前後で歩行不能となります。 横隔膜を中心とする呼吸筋も障害されるために拘束性換気障害を来たします。 以前は呼吸不全により20歳までに死亡するとされていましたが、近年は呼吸管理法の発達により平均寿命は大幅に延長し、30歳を超えて生存することが普通になってきています。 20歳代になると拡張型心筋症が出現してきます。 現在では心不全が死亡原因の多くを占めるようになってきており、心不全症状をより適切にコントロールできれば、更に寿命を延長できるのではないかと考えられています。 検査所見では、血清クレアチンキナーゼ(CK)が高値を示します。数千IU/lのことが多いが、発症早期では1万IU/lを越えることも希ではありません。 近年では、無症状の時期にたまたまCKが測定されて、そこから診断に至る例も増えてきています。

Duchenne型とBecker型筋ジストロフィー

Duchenne型とBecker型筋ジストロフィー 筋ジストロフィーは骨格筋の壊死・再生を主体とする進行性の遺伝性筋疾患と定義されています。 最も頻度の高いのは、筋線維膜蛋白質ジストロフィン(dystrophin)の原発性欠損を原因とするDuchenne型(Duchenne muscular dystrophy)です。 軽症型のBecker型(Becker muscular dystrophy)と併せ、ジストロフィノパチー(dystrophinopathy)が筋ジストロフィーの半数近い例を占めています。 ジストロフィン蛋白質をコードしている原因遺伝子DMDはX染色体短腕(Xp21)に存在し、X連鎖性劣性遺伝形式を取ります。ジストロフィンは79エクソンにコードされています。イントロンを含むゲノム上の遺伝子サイズとしては最も大きいものです。 Duchenne型もBecker型も約2/3はエクソン単位の欠失または重複によります。 原則として、Duchenne型はout-of-frame型、Becker型はin-frame型の欠失を有しています.Duchenne型ではジストロフィン蛋白質は完全欠損しますが、Becker型では筋線維膜上にfaint and patchyに残存します。