口蓋ミオクローヌスについて

口蓋ミオクローヌス(palatal myoclonus)は、23Hzの持続性の規則正しい律動性を口蓋や咽頭の筋群に認める不随意運動です。最初、ミオクローヌスは軟口蓋に出現し、後に両側性に広がり喉頭、声帯に及ぶこともあります。多くは小脳や脳幹の脳血管障害が原因で、小脳歯状核一赤核一下オリーブ核で形成されるGuillainMollaretの三角とよばれる神経回路が障害されるときに生じます。臨床症状としては機能障害をきたさないことが多いですが、耳鳴りや、ときに嚥下障害を生じることもあります。発症時期としてはその原因となった急性障害後数週間~数カ月であり、その後症状は一生涯永続するといわれています。

発達性吃音の疫学

発達性吃音はありふれた疾患です。

幼児期の罹患率は約5%とされていましたが、近年の調査では8%程度あるいはそれ以上とされています。

吃音の発症(発吃)は3語文の発話が始まる頃に多く,満3歳までに約半数,満5歳までに9割程度が発症します。

幼児期には過半数が自然回復するので、医師の多くには対応が必要な疾患だと思われていない可能性がありますが、罹患率が高いため,学齢期で1〜2%、成人で全人口の1%弱に吃音が残ると推測され、他の発達障害に匹敵する患者がいることになります。

男女比は、幼児期の発症時にはほぼ1:1から1.4:1程度と報告され、ほぼ男女差はありませんが、女児の方が回復しやすく、青年期以降は4:1で男性が多くなります。

医療的ケア児とその家族へのケアについて

医療的ケア児の増加とその影響

新生児・小児集中治療の進歩により救命率が上昇する一方、気管切開、人工呼吸、経管栄養などの医療的ケアを必要とする重症心身障害児が増加しています。特に介護負担が大きい児は超重症児、準超重症児として認識され、長期入院や頻回入院のため新生児集中治療室(NICU)や一般小児科病棟の負担となっています。

在宅療養という選択肢

重症心身障害児施設は回転率が低く、入所者は高齢化しています。新たな施設や療養病床を増やすことは根本的な解決にはつながらず、医療的ケア児の受け入れ先として在宅は重要な選択肢です。医療的ケア児が在宅で家族と安心して過ごせることは、本人のQOL向上、家族の精神的・社会的な安定に対して有効な作用をもたらします。

移行期医療の問題

成人期を迎える医療的ケア児に対し、成人医療への移行が検討される場合があります。また、介護する家族の高齢化も大きな問題であり、介護体制の再構築、両親への医療・介護の介入が新たに必要な場合があります。

医療的ケア児の在宅療養の実際


医療的ケア児の特徴

医療的ケア児は先天性疾患や周産期の病態に起因する疾患が多く、「医療的ケアを必要としながら長期的な療養が見込まれる疾患」、「進行性の難病や予後が限られている疾患」、「新生児期・幼児期を支えることで成長・発達が望める疾患」の3群に大きく分けられます。

特徴として、①予備力が少なく病態が変化しやすい、②平時のバイタルサイン、身体所見が正常範囲から逸脱している、③本人からの説明が期待できず、理解・協力が得られにくい、④病状の把握、病態説明、介護支援の点から保護者への対応が重要、などが挙げられます。

在宅療養中も各種検査や外科的介入の必要性、医療デバイスの追加などに関連して病院小児科への継続受診が必要なケースが多くなります。

在宅医療がはたすべき役割

在宅療養支援診療所は、定期的な訪問診療を行うことで普段の病状を把握し、平時の在宅療養に関するサポートを行います。
各種医療管理、医療材料の提供を行い、気管切開、胃瘻などの交換も在宅で実施可能です。
状態変化時には電話相談や臨時往診で対応します。
在宅でも採血、輸液療法、注射薬の使用などが可能であり、必要に応じて病院受診や入院を判断します。

訪問看護、訪問リハビリテーションの重要性

訪問看護は病状の観察、医療的ケアの支援のみならず、育児支援、成長・発達の評価・促進、生活の安定化、精神的サポートなど、多岐にわたる支援を提供します。
リハビリテーションの必要性も高く、緊張の緩和、関節の拘縮や変形の予防、関節可動域の維持、ポジショニング、呼吸リハビリテーション、摂食・嚥下障害に対するアプローチなどに加え、補装具・日常生活用具の相談、住環境の評価と住宅改修の調整、自助具作製、介護指導と幅広いアプローチが求められます。

障害者総合支援法による在宅サービス

障害者総合支援法に基づき相談支援専門員が総合的なマネジメントを行い、訪問ヘルパーや訪問入浴サービス、デイケア、ショートステイなどの在宅サービスが提供されます。
長期療養においては介護負担軽減のためレスパイトケアサービスが重要です。
就学前・学童期には保育・教育との連携も必要であり、現場での医療的ケアが課題となります。
多職種での情報共有を意識し、退院前カンファレンスや個別支援会議への出席などを通して顔の見える関係を構築することを心がけます。

倫理的課題、意思決定支援


医療的ケア児は多くの場合で病状が進行し、新たな医療デバイスの追加が検討される時期が来きます。経管栄養法の導入、気管切開や人工呼吸管理の適応などの積極的・侵襲的な治療をどこまで行うか、緩和ケアの導入、看取りについて、など重要な意思決定に関与し、倫理的問題について家族とともに考えることが要請されます。

参考文献

日本小児科学会倫理委員会:超重症心身障害児の医療的ケアの現状と問題点―全国8府県のアンケート調査―。2008田村正徳:重症の慢性疾患児の在宅での療養・療育環境の拡充に関する総合研究。平成24年度成育疾患克服等次世代育成基盤研究、2012江草安彦(監):重症心身障害療育マニュアル。医歯薬出版、1998

学齢期の吃音の対応方法や治療について

学齢初期は発達の状況に差が大きく、本人のモチベーションによっても治療の成否が変わってきます。
吃音への意識や困り感が少ない症例は治療に乗りにくいですが、低学年では幼児期と同様にリッカムプログラムが有効な場合があります。
8歳頃以降になると第2相の吃音に移行し、心理的悪循環が加わって自然治癒が少なくなります。
小学校の通級教室は地域差が大きく、教師に対して吃音についての研修の機会が与えられていない地域では、医療との連携が必要になります。

環境調整といじめ・からかいへの対応

吃ってもせかさずに最後まで聞き、吃るかどうかより、発話内容を重視するなどの態度を周囲が示す必要があります。朗読が苦手な場合は、授業では複数人で斉読するなどで困難が軽減されることがあります。順番に当てるよりランダム順に当てる方が言いやすい場合もあります。ランダム順に当てていると、抜かされても目立たないので、調子の悪い日は当てないという対応もしやすいです。何れにせよ、吃音のことをクラスに言いたいか、隠したいかなども含めて、あらゆる側面で、本人の希望を優先していきます。いじめやからかいが生じやすく、それらがあっても恥ずかしいために誰にも相談しないことも多いため、ことばの教室など、話を聞いてもらえる場を提供することが重要です。いじめやからかいが起きている場合は担任教師に断固とした対応を依頼します。低学年の場合、クラスメートにはわざと吃っているのではないという説明も有用です。

流暢性形成法

流暢性形成法は、柔らかくゆっくり言うことで、吃らないという目標を達成するための方法ですが、幼児期と異なり発話を意識的に修正しようとすることになり、ワーキングメモリが小さい学童では、日常的に使えるようになるのは難しいです。学童後期でワーキングメモリが大きい生徒は流暢性形成法が使えるようになることもあります。落ち着いて」「ゆっくりなどのアドバイスは、当人がすでに意識的に類似の努力を最大限しており、無効です。

吃音緩和法

吃音緩和法は力の入った吃音を楽な吃音にして、辛さを減らす方法です。わざと吃ることで吃音症状に慣れ、あるいは吃っても大丈夫だとわかり、過敏な情緒反応が減って、コミュニケーションが楽にできるようになります。遊び場面から導入することが多いです。手技としては流暢性形成法より容易であり、発話の不安を減らす効果があります。欧米では学童には、吃音緩和法を中心として、流暢性形成法を組み合わせて治療することが多いようです。

斉読、シャドーイング等

斉読やシャドーイングを行うと自動的に流暢な発話ができるので、繰り返すことで自然な発話能力があることを理解し、発話への自信が生まれます。斉読では指導者は徐々に声を小さくして(フェードアウト)、一人でも読めるようにします。シャドーイングは、適切な話速で行うと、吃らないように頑張る余裕がなくなり、結果的にそれをしなくても吃らないという体験ができます。素材としてはニュースなどが使えますが、速度調整ができるものが望ましいです。構音を意識しないで発話できるような他の二重課題によっても、自然な発話を誘導することができます。想定練習(ロールプレイ)も有用です。構音を意識させる単語の復唱練習や単なる朗読では悪化しやすいです。遅延聴覚フィードバック(DAF)は自分の発話を数十msから200ms程度遅らせて聴取するものであり、対症療法ではありますが、吃音がある者の半数近くはDAFを使うと吃音症状が抑制されるとの報告があります。これが有効であれば、発表や朗読等で使って授業への参加を改善することも選択肢になります(低学年には推奨しない)。

自己効力感の維持・増強

吃音のある方は、発話困難によって、自己効力感が低下していることが多いと言われています。学齢期には有症率が1〜2%になるため、他の吃音がある児に会うことは稀で、孤立感を深める一因になるので、行事などで他の吃音児と交流する機会を作ることが望ましいです。自助団体が主催するキャンプなども利用できます。学齢中期以降、個別対応としては、得意分野を伸ばすなどで自己効力感を高めさせることも重要となります。自己イメージを改善したり、吃音への見方を変えるなどを目的として、認知行動療法が用いられます。

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記憶障害へのアプローチ方法

環境調整


記憶障害者をとりまく周囲の環境に手を加えて生活や仕事をしやすくすることはすべての患者に必要な支援です。具体的には、物理的環境、生活全般、コミュニケーションの3側面において記憶への負担が少ない環境を作ります。

物理的環境に対する支援として、次に何をすべきかが思い出せず、ADLについても指示が必要だった重度記憶障害例に対して、戸棚などの収納内容をラベルにして貼る、行動の順序をチェックリストにして貼る、行動できたらカレンダーにシールを貼ってフィードバックする、という訓練を系統的に行った結果、自立が可能になり自宅復帰できたとの報告があります。

生活全般について記憶への負担を減らすためには、生活パターンや日課を決めて規則正しい生活をする、予定の変更は最小限に抑えるなどが有効です。

会話やコミュニケーション面での調整としては、記憶障害のある人に話しかける場合はまず自分の名前や役割を名乗る、話題やテーマを具体的に伝えて話しかけ、折に触れて繰り返す、何かを説明したり、指示したりする時は必ず紙に書いて目につく場所に貼る、といった配慮をします。

学習法の改善


記憶障害のある人にとって新たな学習は極めて困難なので、本人にとって重要で必要なことや、本人が行わなければならない作業の手順などに限定して学習してもらいます。学習を促進する方法として、例えば、注意を払う、覚える材料を整理して構造化する、他の事物に関連付けるなど深い処理をする、時間間隔をあけて学習する、などの有効性がこれまでの研究から明らかになっています。

ここでは、記憶障害のリハビリテーションの領域で注目されている、誤りをさせない学習法と間隔伸張法を取り上げたいと思います。

誤りをさせない学習法(エラーレス学習)とは、いったん間違えると誤反応が残り、修正が難しいという記憶障害者の特性から、新しいことを記憶する場合に誤反応を避け、最初から正反応を導く方法です。健常者では、仮に間違えたとしても修正体験がエピソード記憶に残るため、間違いを通して学んで行くことが可能です。しかし、記憶障害者ではエピソード記憶が著しく障害されるため、修正体験は記憶されない。一方、潜在記憶は記憶障害者にも保たれているため、自分の行った誤り反応が潜在記憶に残り、次回以降も同じ誤りを繰り返す結果になると考えられています。

エピソード記憶のない記憶障害者にとっては試行錯誤を避けるのが最善の方法であり、間違いをさせないように周到に計画した上で学習してもらうことが必要です。

間隔伸張法とは、情報を保持する時間間隔を少しずつ延ばして想起させて行く方法です。第一試行、第二試行で想起に成功した場合、両者の時間間隔が長くなるほど第三試行が成功する確率が高くなるという実験結果に基づいています。

まず、短い保持時間の後にテストを行い、想起に成功したらその後の保持時間を次第に長くして行く、というように想起テスト間の間隔を徐々に延長していく。

記憶障害患者、認知症患者での効果が知られていますが、最近は失語症者の呼称訓練についても有効との報告があり幅広く応用できます。
車いすの操作や安全な移動の仕方、嚥下の仕方などを認知能力の低下した高齢者に指導する際にも有効です。
ここでもできるだけ失敗を避け、また失敗した場合はすぐに正答もしくは手がかりを与えることなど、エラーレス学習を基本として行うことにより効果を上げることができます。

代償手段の利用(内的・外的補助手段)


内的補助手段とは、記憶や想起をしやすくするために記憶障害者自身が頭の中で用いるストラテジーです。例えば、人の名前を覚える時に、視覚的なイメージ(並木さん→並木道)に置き換えて覚える、などです。まとまった内容を記憶するときに、情報を整理した形で取り込むための方法がPQRST法です。

PQRST

P:Preview(ざっと目を通す)
Q:Question(質問を作る)
R:Read(じっくり読む)
S:State(質問に答える)
T:Test(答え合わせをする)

時間をかけて、構造化し、深い処理を行うことで記憶に残りやすくします。内的補助手段はどのような患者でも活用できるというわけではありませんが、試みて使えそうであれば訓練を行います。

外的補助手段とは、記憶障害によって生じる困難を減らす目的で、日記やメモ、カレンダー、手帳を使ったり、ICレコーダーのタイマー機能を使って時刻ごとにすべきことを音声出力したりすることです。

外的補助手段は、実際に使ってもらう訓練を身につくまで丁寧に行わない限り活用に至らない例も少なくありません。


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参考文献
Jpn J Rehabil Med VOL.42 NO.5 2005

記憶障害のリハビリの考え方

記憶リハの目標は、患者自身の記憶能力と患者を取り巻く環境が要求する記憶能力との隔たりを何らかの方法で調整し、日常生活や社会生活への適応をはかることであり、記憶を筋肉のように"鍛える"ことではありません。

脳損傷による記憶障害では、元のレベルを回復することは困難であり、また、回復がおきる期間は比較的初期に限られると言われています。

このため、時期に応じた系統的なアプローチが必要となります。

初期の対応としては、まず適切な診断・評価によって記憶障害を見落とさないことが肝要です。評価結果をもとに、記憶障害についての情報を当事者、家族に提供し、今後起こりうることや日常生活上の対処の仕方などを伝えます。

発症から日の浅い入院中のリハでは、主として病棟での自立度の向上を目的に訓練を行います。

例えば、その日の予定をノートなどで確認して行動する、病室や訓練室の場所を覚えて移動できるようにする、などを課題としてとりあげ、細かくステップに分割し、スタッフ間でやり方を統一して指導します。

病棟での自立度の向上をはかりながら、代償手段の獲得に向けて手がかりを探って行きます。

さらに退院などの際にも支援機関との繫がりが絶たれないように配慮します。

一方、発症からの経過が長い場合には、生活の中での問題を調整し、解決をはかるという日常生活に即した目標設定とアプローチが必要となります。

記憶障害に気づくまでに数年かかるケースもありますが、発症からの経過期間にかかわらず、リハとしてアプローチをすべきことはあり、有効性もあるとの報告もあります。

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参考文献:リハビリテーション医学VOL.42 NO.5


顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD)の病因や病理、病態生理について

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD)の病因・病理・病態生理

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー は、常染色体優性遺伝をとる浸透率の高い疾患です。
頻度は他の筋ジストロフィーに比べると低く 、人口10万人あたり0.20.5人です。

本症の遺伝子座は第4染色体長腕テロメア4q35-qterに存在します。
この部位を認識するプローブを用いてサザンブロット法を行うと 、大半の患者では正常よりも短い(35kb)制限酵素断片が得られ(遺伝子の欠失) 、診断に役立ちます。しかし 、遺伝子はまだクローニングされていません。

筋生検では筋線維の大小不同 、壊死・再生など筋ジストロフィーの変化がみられます。
時に炎症細胞の浸潤をみて 、筋炎との鑑別を要することがあります。


顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD)臨床所見

発症は小児期から成人前までと幅広く 、また症状も幅があります。

患者の家族をみると表情が乏しいだけで 、四肢には全く筋力低下をみないこともまれではありません。

病気は上肢の挙上困難で気づかれることが多いです。

肩甲帯周囲の筋萎縮が強いので 、病初期から翼状肩甲winged scapulaeがみられます。

大半の患者では顔面筋がおかされ 、頬のふくらみがなくなり 、表情が乏しくなり、病気が進行すると 、筋力低下は下肢にも及びます。

本症の筋罹患は左右非対称であることが特徴的であるとされています。

心・肺機能はおかされにくく、難聴 、網膜症retinal vasculopathyが約半数の患者にみられます。