機能性構音障害の方に対する母音の産生訓練


機能性構音障害の方に対する母音の産生訓練

日本語の母音は、口唇の開き(口型)、舌の挙上部位、挙上の程度で決定されています。
母音における構音の誤りに、鼻咽腔構音(鼻腔構音)、側音化構音があります。
これは、舌背が口蓋と接してしまうのが原因です。
主に/i/に見られ、/ɯ/に見られることもあります。

鼻咽腔構音ケースの訓練方法

鼻咽腔構音ケースでは、以下のような方法を用います。
口腔から呼気を流出させることが主なねらいとなり、イ列音のすべてに誤りが見られる場合、/i/より/ʃi/から導入するほうが容易です。
鼻咽腔構音の場合、鼻孔をふさぐと鼻腔から呼気が流出できなくなり、音が出なくなります。
その結果、鼻孔を押さえることで、口腔からの呼気流出を促せることがあります。
鼻孔をふさぐ場合、鼻をつまむと痛みやむずがゆさ、不快感を伴いやすいため、両親指の腹で、鼻孔を下からふさいでやると良いでしょう。
口腔からの呼気流出が可能な他の母音を利用する方法もあります。
/i/であれば、同じ前舌系である/e/か開口度を小さくするら導くと良いでしょう。
[e:]と発声してもらい、そのまま連続して[e:i:]の発声を促し、徐々に/e/部を短くしていきます。
/ɯ/では、同じ奥舌音である/o/から同様に促すと良いでしょう。
基本訓練の舌の脱力・安定を行い、可能となったら、舌を歯間に出した状態のまま/i/の発声を促します。

基本訓練の舌の脱力・安定については下記の記事を参照ください↓
機能性構音障害の音の産生で基本となる訓練
舌を出すのは、舌が/i/発声時に動いていないことを、子どもに視覚的に確認させる意味があります。

/e/から/i/を促す訓練の流れ

機能性構音障害の音の産生で基本となる訓練

舌の脱力・安定

習慣化した誤り構音を改善するうえで、舌の脱力・安定は重要です。
特に、舌尖・前舌を用いて構音する音の場合、舌が緊張し、力が入ることによる舌背の挙上を抑制しなければいけません。
目標とする状態は、口を軽く開き、舌は下歯列に沿って下唇より前方に出ることなく、舌背はどこも隆起しておらず、舌縁が両口角に触れている状態です。
  1. まず、舌を出してもらいます。STが見本を示し、模倣させるとよいでしょう。困難な場合は、「アカンベーをして」と指示すると、低年齢児にも指示理解が容易です。しかし、このように指示すると、多くの場合、力いっぱい舌を出そうとして舌尖が下方を向き、舌は緊張した状態になりやすいです。そのため、この状態から目標の位置まで後退させることと、舌を脱力させることが必要です。
  2. 力いっぱい舌を出している状態で、舌を脱力することは難しいため、舌位置を後方に下げるよう促すと、それで脱力できる場合があります。その状態で舌の脱力が難しい場合、舌のみでなく、全身を脱力して見本を示すと、結果として舌も脱力しやすいです。脱力する感覚がうまくつかめない場合は、肩を上方に上げ緊張状態を作ってから、一気に息を吐きながら脱力を促すと誘導しやすいです。
  3. 舌に力が入り、円筒形となってしまい(イモ舌、棒舌と呼ばれる)、舌縁と両口角がつかない場合も、全身の脱力は有効です。言語指示としては、見本あるいは図示しつつ、「おイモの舌でなく、お皿の舌にして」と指示するとよいでしょう。また、息を止めて行ってしまう子どもの場合、待っていると呼吸が苦しくなって脱力が見られることがあります。言語指示、視覚刺激、運動による誘導を行いつつ、偶発した正しい状態を意識させていくことが大切です。

舌出し母音

舌が脱力できるようになったら、その状態を維持したまま、呼気を流出する訓練を行います。
この訓練は、/s//t/などの歯茎音の訓練や側音化構音の訓練時に用いられます。
  1. 舌を出したまま、「ハー(あるいはヘー)って息を出して」などの指示で息を出してもらいます。その際、舌の形が変化しないよう確認します。
  2. 可能となったら、舌を出した状態で母音を産生させる。/a//e/は比較的容易なことが多く、これに対し/i//o/はやや難しい。
  3. 母音を産生しようとすると舌に力が入ってしまう場合、「ハー」あるいは「ヘー」を息でなく声を出して行ってもらいます。この際、十分に音を伸ばしながら行わせるとよいでしょう。

訓練の流れ:舌の脱力・安定/舌出し母音

アカンベーをさせる(舌の位置、形、力の入り方に注意する。脱力できない場合は、舌ないし全身を使って、緊張と脱力を繰り返し、脱力している感覚を覚えさせる)
脱力したまま5~10秒活を維持する(時間経過につれて舌が動いてしまうことに注意する)
舌出しと舌を出さない状態を繰り返す(すばやくスムーズに舌の脱力状態ができるようにする)
舌出しのまま、呼気(「ハー」ないし「ヘー」)を出す
舌出しのまま声を出させ、舌出し音を促す。/a//e/→/ɯ/→/i//o/

有声音から無声音を導く

同一の構音点・構音法で、有声・無声が異なる音があります。
このような場合どちらかの音が産生可能となることによる自然治癒が期待できるが、自然治癒しにくい場合、ほかの音から移行する方法により対立する音を導くことができます。
  1. 有声音から無声音を導く場合、ささやき声での産生を促します。ささやき声においては、声帯振動を伴わないため、自然無声音を短くするを導くことができます。/ŋ/から導入し/g/が産生可能となった子どもに/k/を導入する場合、「ないしょで『が』をやってみて」と促し、無声音である/k/を導きます。ささやき声が導きにくい場合、STもささやき声で指示すると、自然に子どものささやき声を導きやすくなります。文字が読める子どもであれば、有声である「が」に対し、ないしょの「が」であることを色を変えるなどして図示すると、意識させやすいです。
  2. 可能となったら、「ないしょの『が』」に母音を結合させていきます。/a/から行うのが容易です。母音を結合する場合は、ささやき声と有声音である母音産生との切り替えが難しくなります。連続的に/k/と母音を産生することができず区切れてしまうことや、/k/から/a/へのわたりがスムーズに行われず、[kha:]と/h/が挿入されてしまうことがあります。このような場合は、/a/もささやき声から導入すると、無声から有声へ切り替えやすくなります。

訓練の流れ:/g/から/k/を導く


無声音から有声音を導く

無声音から有声音を導く場合、無声音を持続産生させたまま「声を出してごらん」と促すことで有声音を導く。この際、口型舌位置が変化しないよう持続して息を出させたまま声を出させる留意します。子ども本人に、鏡ですず視覚的にフィードバックさせるとよいでしょう。
STは対面で見本を示してよいが、鏡を用いる場合には子どもの横に位置し、鏡にSTの見本も同時に映るようにしたほうが、子どもの視覚的フィードバックの助けとなります。

訓練の流れ:/s/から/z/を導く


構音障害の病態や分類について

構音障害の病態について

呼気を用いて声帯を振動させることで作られる音を喉頭原音といい、これに口や舌などの構音器官を用いて言語音を産生する過程を構音といいます。
この過程においてさまざまな原因により異常な言語音を作り出した状態を構音障害といいます。
構音障害は、その原因によって、機能性構音障害、器質性構音障害、運動障害性構音障害に分類されます。
構音の誤りは言語発達の過程において多くみられます。
すべてが構音障害とされるのではなく、年齢・生育環境・精神運動発達などを考慮する必要があります。

構音障害の分類

機能性構音障害

言語発達遅滞や構音運動に関する神経系の成熟の遅れ、聴覚能力の低下など、何らかの要因により異常構音が習慣化し、固定化したものです。

器質性構音障害

構音器官の形態や機能の異常が原因で構音の誤りを呈するものをいう。原因となる疾患として、口唇口蓋裂、先天性鼻咽腔閉鎖機能不全、舌小帯強直症、巨舌症、下顎前突症、腫瘍切除術後の組織欠損などがあります。

運動障害性構音障害

中枢神経系から末梢の神経系、筋系の病変による構音器官の運動障害が原因で異常構音を呈するものをいう。運動性構音障害のうち失語失行は除く。原因疾患には脳梗塞、パーキンソン病、筋ジストロフィー、脳腫瘍、外傷などがあります。

リハビリの方針について

構音評価として、自由会話、単語検査、音節復唱検査、構音類似運動検査、文章検査などを行う。また、口腔内診査、聴力検査、言語発達検査、知能検査、発声発語器官検査などを行い、機能性構音障害、器質性構音障害、運動障害性構音障害について鑑別診断します。

機能性構音障害

治療としては、目標音の基本操作あるいは音を誘導し、単音、単語、文、文章の順に習熟をはかり、段階的に日常会話レベルへの汎化を行う。伝統的構音訓練で症状の改善に苦渋する症例や聴覚障害や軽度発達障害のある人に対しては、エレクトロパラトグラフ(EPG)を用いた視覚的フィードバック訓練を行うことがあります。
また、滲出性中耳炎や伝音性難聴は機能性構音障害に影響するといわれており、症例によってはこれらの合併を精査する必要があります。

器質性構音障害

器質的問題に対しては、発音補助装置や外科手術により構音器官の形態や機能の修復をはかるとともに、正しい構音操作の獲得のために構音訓練を行う。
また、発音補助装置を用いることで、訓練により機能が賦活化され、装置からの離脱や外科手術の回避が可能となることがあります。

運動障害性構音障害

原疾患に対しては、手術などの医学的・外科的治療、薬物治療を行い、補綴治療により発話器官の機能を補う。
また、行動調整的治療として、拡大/代替コミュニケーション(AAC)手段、発話器官の運動・感覚機能回復訓練、発話訓練などを行う。
障害された構音機能の回復や現状維持、あるいは機能低下に対する代償を目的として治療を行う。

参考文献

1)日本聴能言語士協会講習会実行委員会編:アドバンスシリーズ/コミュニケーション障害の臨床口蓋裂・構音障害。pp157−163、協同医書出版社、2001
2)本間慎治編著:言語聴覚療法シリーズ7機能性構音障害。pp1−47、建帛社、2000
3)斉藤裕恵編著:言語聴覚療法シリーズ8器質性構音障害。pp1−3、建帛社、2002
4)熊倉勇美編著:言語聴覚療法シリーズ9運動障害性構音障害。pp10−86、建帛社、2001

機能性構音障害に対する語音聞き取り訓練の方法について

機能性構音障害に対する語音聞き取り訓練の種類と方法

語音聞き取り訓練の種類

語音聞き取り訓練とは、正しい構音操作により産生された音と誤り音とを聞き分ける訓練をいいます。
訓練の種類として、語音弁別、音節の分解抽出、同定があります。
訓練の段階として、単音節、単語、文の順に行いますが、それ自体意味を持たない単音節よりも単語のほうが容易な場合もあります。

語音聞き取り訓練の方法

①音の呈示方法として、STが音を呈示する、②子ども自身が産生した音をテープに録音しそれを聞いて聞き分ける、③子ども自身の産生した音を即時に正誤判断する方法があります。
一般に、STの呈示した音を聞き分けることは、子ども自身が産生した音を聞き分けるより容易であるので、こちらを先に行います。
STが産生した音の弁別が可能であれば、テープから聞こえる自分の誤り音の弁別は可能なことが多いです。
即時判断が可能となれば、発話中に自分の誤りに気づけるようになります。
この訓練を行うことで、子どもが自身の誤りを自覚することにつながります。
子ども自身が浮動的にターゲット音を産生可能となっている場合には、自信にもつながっていきます。
その一方で、自覚が意識過剰につながり、発話の減少や吃音を誘発しないよう留意する必要があります。
語音聞き取り訓練は、誤りの種類が置換である子どもの場合、訓練を通して習得することより弁別可能であることを確認する意味合いが強くなります。
誤りが声門破裂音や側音化構音である子どもや成人の場合には、自身の産生した音の弁別に時間を要することも多いです。

訓練実施上の留意点

単音節の聞き取りにおいて、呈示する単音節は何でもかまいませんが、訓練導入当初は誤り音を含むことは避けたほうがよいです。
反応方法に遊びを取り入れたり、何回も続けてターゲット音を呈示するといった方法も、子どものモチベーションを高めることに役だちます。
単語レベルにおける音節の抽出・同定の訓練においては、文字が読める子どもの場合、文字で位置を認識してしまい聞き取りの訓練にならないことがあるので、文字は呈示しません。
逆に聞き分けが困難な場合には、文字を呈示してヒントとしてもよいです。
単語レベルにおける聞き取り訓練においては、STはプロソディーがヒントとならないよう注意します。
ターゲット音と誤り音の弁別が困難な場合、誤り音以外の音との組み合わせから行うこともできます。
/t/と/k/では弁別できていないが、/t/と/p/あるいは母音との組み合わせであれば弁別可能なこともあります。
組み合わせの難易度は、上記のように構音点、構音法が似ていない組み合わせが比較的容易です。
対象の難易度は、比較すべき音が語頭語尾にある場合、語中にある場合よりも容易なことが多いです。
文における比較は単音節・単語に比べ困難ですが、文レベルは語音聞き取り訓練を行わなくても可能となることがあります。

語音聞き取り訓練の進め方

語音聞き取り訓練

音・音節レベル

ターゲット音(正しい音)と、ターゲット音以外の音(誤り音)として、それらを交互に聞かせ、正しい音かどうか正誤判定させます。
ターゲット音以外の音には、訓練開始時は子どもがすでに獲得しており、かつ、ターゲット音と音響特性や構音(調音)特性において音としての差異が大きい音から開始し、しだいに差の少ない近似音、そして実際の誤り音として表出されている音というように移行していきます。
例として、/tʃi/をターゲット音とした場合、すでに両唇音が獲得できていれば、誤り音を/mi/から開始します。
そして構音特性の近い音へと進み、最後には類似性の大きい/ʃi/の弁別訓練を行います。
正誤を判定するための標識については、テレビのクイズ番組に出てくるような○と×の札を用意し、正誤判定でどちらかを指してもらう、訓練者と養育者が交互に正しい音と誤り音を発音し、どちらの構音が正しかったかを当てるようなゲーム感覚のものでもよいです。
また文字を獲得している場合は、ターゲット音となる音の文字と誤り音を示す文字を使って、どちらに聞こえたかを判定させます。

単語レベル

ターゲットとなる音を含んだ単語について、訓練者が正しい音、または誤り音を子どもに聞かせて、その正誤の判定をさせます。
原則として、ターゲット音と誤り音の設定に。音節レベルと同じように、音響特性における音の差異が大きいものから始めるようにします。
単語の音節数は、2音節のように音節の少ない単語から多い単語へと移行していきます。

文レベル

ターゲット音を含んだ単語を文中に入れ、その文章を聞いて誤り音を指摘させます。
文章は、構音障害のドリルブックなどを参考にするとよいです。

音節の分解・抽出・同定訓練

単語を聞き、そのなかに含まれる音節の数を分解します。
また、それらの音節のなかに含まれる、ある特定の音を抽出し、その音の単語における位置を同定します。

音節の分解訓練

2音節語を訓練開始語とし、ゆっくりと訓練者がその単語を言い、子どもは単語を繰り返しながら該当する音節の数だけ積み木やおはじきを置きます。
または置いてある積み木に、その単語の音節の数だけ触れます。
各単語の音節と、それに対応する音節数を視覚的にマッチングさせる練習です。
2音節語で可能となれば、3音節語、4音節語と音節数を増やして練習します。
この課題は、かな文字の習得と関連が深いといわれています。
また、市販のトーキングカードには、同じ音節を何回か聞かせ、その音節がいくつあるかを当てさせる課題があります。

音節の抽出訓練

該当する音が、単語の音節のどこにあるかを探し、抽出する課題です。
子どもの前に、音節数だけ記された枠を用意しておきます。
抽出の反応例として、単語を「たいこ」、抽出する音節を「た」とした場合、訓練者は「たいこ」とゆっくりと言い、それから「『た』はどこにありますか」と質問します。
子どもには、前に置かれた枠のどこに「た」があったかを指してもらいます。
ここでは、いちばん最初の音節に該当する枠を指せば正解です。
枠の代わりに数字を用意し、該当する音節の番号を言ってもらう(この場合の答えは“1”)のもよいです。 音節の分解訓練と同じく2音節語で、かつ子どもがすでに習得している音を含んだ単語から開始し、習得していない目的音へと移行していきます。
市販のトーキングカードでは、信号機の3色(青、黄、赤)と対応させ、指定された音が語頭に出てくる場合は青、語中の場合は黄色、語尾の場合は赤と答えさせる課題があります。
また刺激語は、絵を用意し、答えの音に該当する音節の位置を音声刺激なしで抽出・回答させるなど、より難易度の高い課題も用意します。

音節の同定訓練

音節の抽出訓練と同じ枠を用意し、枠のある1か所におはじきを置いたり、マーク(「?」マークなど)を記入し、訓練者が提示した単語の音節のなかで、おはじきを置いた音節の部分にはどのような音があったか、子どもに答えてもらいます。
例として、訓練語を「たいこ」とし、3番目の枠におはじきを置いた場合の答えは「こ」です。
また、しりとりや、ある音のつく単語を挙げる(例:頭に「さ」のつくことばを挙げる)など、ある音節のつく単語を想起させるような「ことばあそび」は、音節の同定に有効な課題です。

構音の発達について言語聴覚士が解説!

構音の発達について

構音の発達は、誕生とともに始まります。
子どもが初めて発する音は、いわゆる産声です。
あの「オギャー」という声は、肺呼吸の結果、発せられる生理的な発声であり、意図的に「オギャー」と言おうと思って発している音ではありません。
意図的な発声が見られるようになるのは、生後3~4か月ごろからです。
生後1か月ごろまでは一定のリズムで泣くばかりであり、発声とはつまり泣くことです。
誕生とともに発声するということは、誕生のとき発声するために必要な器官を備えていることを示しています。
生後1か月を過ぎるころから、状況によって異なる発声が見られ始めます。
泣くという不快を示す発声ばかりでなく、笑いをはじめとする快の発声が出現します。
これは、リラックスした状態での発声が可能となったことを示しています。
赤ちゃんの泣き声と笑い声をまねてみると、その発声時における緊張の差が実感できるでしょう。このリラックス時の発声が喃語につながっていきます。
生後3か月を過ぎると、徐々に噛語が盛んになっていきます。
これは、それまでの呼吸と同じリズムでの発声から、呼気をコントロールしての発声へと変化していることを示しています。
また、これまで偶発的で単発的であった発声が再現性を持ち始め、繰り返し同様の発声をすることが可能となります。
生後7~9か月ごろには、さまざまな音を発するようになります。
このころの子どもが発する音の種類は、日本語の語音よりも多いと言われています。
哺語期に発せられる音がそのまま言語音につながるわけではありませんが、さまざまな音を出します。
離乳食を食べるといった行為が、構音器官の運動能力を向上させていきます。
これに模倣力の向上などが加わり、構音のための準備がなされていきます。
1歳近くなると、意思伝達を目的として音声を使用することが見られ始めます。
また、音声と意味の結びついた有意味語が見られるようになります。
構音面では、母音や両唇音を中心とした同音反復(マンマン、ワンワン、ブーブーなど)が多く、音も歪んでいますが、理解語彙・表出語彙の拡大につれて徐々に構音操作も学習していきます。
構音の習得過程では、子音を省略したり、獲得が遅い音を構音点や構音法の近い音へ置き換えることが見られ、これを発達途上の誤りといいます。
同じ音でも語によって正しく発音したり誤ったり、あるいは同じ語のなかでもできたりできなかったりと浮動性があることが特徴です。
構音器官の成長、構音運動の巧緻化、自己モニタリング力の向上、音韻分析能力の確立などに伴って、おおむね5~6歳までにすべての音が一貫して正しく構音できるようになります。
下記の図は、構音の完成時期を示したものです。
一般的に視覚的に確認しやすく、動きがダイナミックな両唇破裂音が早期に習得され、/s//ts/dz//r/の習得は5歳前後となってからです。その他の音は、4歳を過ぎるころまでに習得されていきます。
発達途上によく見られる音の誤りは下記のとおりです。
機能性構音障害の評価に関しては、音の完成時期の知識に加えて、発達途上の誤りと、発達途上にはあまり現れない特異的な誤りとを区別できることが大切です。

機能性構音障害の訓練の目的と訓練適応について(言語聴覚士向け)

訓練の目的と訓練適応

訓練の目的

機能性構音障害に対する訓練の目的は、適切な構音操作を習得し、それを日常会話において使用できるようにすることです。

訓練の適応

誤りが固定化している場合や被刺激性がない場合には、訓練適応があります。
ただし、構音の発達年齢から見てまだ獲得時期ではない構音が対象である場合や、構音発達から見て訓練の適応ではあるが、口腔運動に被刺激性を認める場合など、自然治癒が期待できる場合は、訓練時期を3か月、あるいは半年遅らせて、自然治癒の有無を確認します。
もし、その期間が過ぎても構音が改善していないようであれば、訓練を開始します。
また、自然治癒が期待できる場合でも、音の誤りが原因でいじめられている、就学が近いといった要因のある場合は、構音訓練を直ちに開始する場合もあります。

訓練の開始時期

構音訓練は、一般的には4~5歳に開始するのが良いといわれています。その理由として、音の抽出や分解が可能であるのが4歳から5歳であること、就学前に訓練対象の構音に対する訓練を終了させるには、4~5歳に訓練を開始することが適当であることが挙げられます。
さらに、4~5歳は、文字に興味を持ち始める時期でもあり、文字に興味を持たせつつ、音の抽出や分解、誤り音と正確な音との違いを分別させるなどの学習をすることが可能です。
また、このころの子どもの年齢は、ちょうど幼稚園に通園している時期であり、保育士と子どもとの関係が、同様に言語聴覚士と子どもとの間にできやすいことも一因です。
その一方で、訓練の開始時期をさらに早期にするべきという立場もあり、訓練回数や、家庭での訓練プログラム設定およびその家庭での訓練担当となる養育者への指導の重要性がいわれています。

訓練頻度

訓練頻度は、原則的には週1~2回です。これはあくまでも目安であり、養育者が仕事を持っている、子どもが幼稚園・保育園に通園しているなど、養育者や子どもの置かれた環境や、訓練に対する子どものモチベーションに影響されることが多いです。
1回の訓練時間については、低年齢児であれば15~30分年長児や就学児では30分~1時間を原則とします。
しかし、これも子どもの気分や状態によって左右されることがあります。
例えば、子どもが幼稚園で、けんかをした後や、おもちゃを買ってもらえなかったなどでぐずった後に訓練室に来て、30分フルに訓練を行うことは難しくなります。
また、与えている課題が、子どもにとって理解が難しい場合は、子どもも訓練に対する動機づけが保てず、1回の訓練時間のみならず、訓練頻度も減少することがあります。
そのため、養育者や子どもの置かれている環境を考慮し、養育者と話し合いながら、訓練頻度や訓練時間、家庭学習での頻度や時間を設定すると良いでしょう。

訓練期間

およそ1年を目安とします。
1年を過ぎても改善しないようであれば、訓練プログラムの確認や、構音に影響する器質的な原因(難聴、鼻咽腔閉鎖機能などがないかを再度確認します。
不要な長期間の訓練は、訓練意欲の減退を招く。またいじめなどの二次的な問題が生じてくる場合には、迅速な改善に留意すべきです。

訓練における留意点

言語聴覚士は、機能性構音障害児に対する訓練を実施するにあたり、子どもの労力や負担が最小限になるように考慮しなければいけません。
子どもの負担になるものとしては、訓練の難易度や訓練の量、訓練時間が挙げられます。
子どもの場合、成人の患者と比較して改善への動機づけが明確ではないため、うまくできない練習を続けることは難しくなります。
そのため、訓練は「やっぱりできない」ではなく、「これならできる」と思ってもらうことが大切であり、子どもが実施でき、かつ難易度の低い訓練をあらかじめ用意し、セッションの初めと終わりに行うことが望ましいです。
また、セッションの終了時には成功感や満足感を子どもに与えて終了することも、訓練の難易度を考えるためのひとつの基準となります。
一方、訓練開始時、特に音の産生訓練を実施する際は、音の誤りの許容範囲は厳密でなく、むしろあいまいな音を許容し、子どもに訓練意欲を持たせることも重要です。
その許容範囲は、訓練を重ねていくなかで少しずつ厳密にしていくようにします。
気分により訓練が進まないようであれば、1段階難易度を下げた訓練を行うことや、訓練を早めに切り上げて、残りの時間を日常生活での子どもの様子を養育者から聴取する時間にあてる、などを試みてみましょう。
また子どもにとって、行われている訓練への理解が難しい場合は、同じく1段階難易度を下げた訓練を行う、ほかの誤り音の練習を先に行う、文字や絵などの視覚的なヒントやフィードバックを増やして訓練理解を高めるなどの工夫をすると良いでしょう。
これらは小児領域の言語訓練全般に関連することでもあります。
1つの訓練法や誤り音に言語聴覚士が固執することなく、あらかじめ難易度の高いまたは低い訓練の「引き出し」をいくつか用意し、子どもの状態を見ながらその「引き出し」から訓練法を選びつつ、臨機応変に対応・変更していく能力が言語聴覚士には必要です。

災害時の在宅医療の対応について

災害時においては、訪問診療を実施するスタッフのほとんどが同時に被災者となります。
しかし地域密着型医療である在宅診療では、現地スタッフの情報なしには在宅患者の安全を確保することは困難です。
患者・地域情報を効率よく外部からの支援に伝達し、シームレスな医療提供につなげる準備および災害時のマネージメントが必要です。
災害の種類や環境により発生する問題は多岐にわたるため、地域で想定される災害のシミュレーションが非常に重要となります。

発災直後について

訪問診療クリニックや看護ステーション、ケアマネジャー、在宅酸素業者などの在宅患者を把握している職種が、それぞれ電話連絡あるいは直接自宅を訪問し、安否確認を行います。
災害時は電話やインターネットなどが通じない場合も多いため、環境に応じ安否確認方法について事前に検討し、フローを作成する必要があります。

超急性期(当日−翌日)

日本赤十字社やDMATといった急性期災害医療チームや自衛隊が全国より派遣され、病院や施設、自宅などに取り残された患者や入所者の救出、トリアージおよび広域搬送が行われます。
そのため、災害時の伝達用診療情報書の準備や、搬送先不明とならないよう情報収集が必要となります。

急性期

被害状況の確認が大切となります。
状況に応じて、救護所の立ち上げについて検討すると良いでしょう。
そして、必要に応じて、医療支援チームの要請を行います。
病院自体が被災したときは、医療機器や薬剤、診療材料の確保、診療体制の検討をすみやかに行う必要があります。

災害時の医療活動

大災害時は、ライフラインの破壊(電気通信、水道、トイレなど)、道路の断絶、公的交通機関の停止、流通の停止(食品、ガソリン、灯油など)のため、受診意思があっても医療機関の位置がわからない、移動手段がないなどの問題が多発します。
避難所では、狭いところに多くの人が集まり、心的問題や、衛生上の問題が起こるおそれがあります。
こういった問題を解決し住民に医療を届けるために、救護所などの医療機関に留まるだけではなく、一般の在宅訪問診療以外に、避難所巡り、保健師活動など院外活動を展開する必要があります。

避難所巡り

被災地では、被災後多くの避難所に住民が集結し、数百人、東日本大震災では、多いところでは千人を超える避難所もありました。
避難所の中で発生した健康問題の解決や予防、今後のコミュニティー再生への取り組みの啓蒙などのために、積極的に訪問する必要があります。
その活動は、栄養士による栄養指導やリハビリスタッフによる生活不活発病予防のための運動啓発、薬剤師による薬剤の管理や服薬の指導相談、血圧計や手指消毒用物資の配布など多岐にわたります。
衛生上の問題発生を未然に防ぐための視点も必要です。

保健師活動への参加

被災地域が広いときは、全住民の安否確認を短期間に行う必要があります。
東日本大震災では、陸前高田市は、被災後、各家庭の被災状況や健康や社会的な問題把握のために全戸調査ローラー作戦を展開し、高田病院の看護師も延べ280人が参加したといいますが、2か月の期間を要したとのことです。

訪問診療

歩行困難や寝たきり以外に、当初は交通手段の欠如のため訪問診療が必要になったケースが最も多かったようです。
疾患は内科的疾患から整形外科、皮膚科など、総合診療医が求められました。
要請経路も家族、保健師、本人、ケアマネジャーなど多岐にわたり、医療の緊急度も異なっていましました。
訪問診療を扱う部署を作り、必要事項、緊急度を把握し訪問予定を決めていくなどの工夫が必要です。
訪問スタッフも、訪問先の必要に応じて、医師、看護師以外に、栄養士、リハビリセラピスト、薬剤師、放射線技師が同乗するようにします。
困難事例は、介護職を含めた検討会を行い対応すると良いでしょう。
災害時の在宅医療は一般的な訪問診療以外に、災害の状況に応じ必要な院外活動を展開する必要があります。