注意障害 認知リハのガイドライン

注意障害 認知リハのガイドライン

1)注意機能を刺激する直接訓練は勧められる(グレードB)

従来の注意障害への取り組みは注意のある側面を回復させようとするものであったが、最近の研究報告では、訓練を通して、注意障害を補う方法を身につけようとすることに効果があり、その補償方法の修得が日常生活の改善にも影響を与えるとするものが多い。 これらの報告はすべて、維持期に入った脳外傷例に対する結果である。 Sohlbergらが進めている机上での注意課題であるattention process trainingについても、訓練群は自己の注意障害や記憶障害を報告できるようになり、心理社会的問題も改善をみている(Ib)。

2)作業や活動に対し、十分な時間をとることに配慮する(タイムプレッシャーマネージメント)ことが勧められる(グレードA)

脳損傷により情報処理速度が低下している場合には、こなすべき作業を前にして、時間を十分に確保する工夫が重要となる。 そのためには、「自分はうまく事を処理することに時間がかかる」ことをきちんと自覚し、「作業をするときには時間が必要である」ことを、第三者に告げられるようにし、これらの方法を他のすべての日常動作に適応できるように練習する。 このようなタイムプレッシャーマネージメントが身に付くと、注意障害があっても、日常動作にミスが少なくなる(la)。

記憶障害 認知リハのガイドライン

記憶障害 認知リハのガイドライン

1)外的補助手段を使いこなす訓練は勧められる(グレードA)

記憶障害を補う方法としてメモやスケジュール管理などの外的補助手段の利用は毎日の記憶の問題を軽減し、生活の質を高めるとするエビデンスの高い研究報告がある(Ia)。 ただし、これらの補助手段を使いこなすためには、記憶障害に関する病識、補助手段を使いこなすための知能、病前あるいは受傷前にメモなどを利用していたという経験が必要であると考えられる。

2)失敗を経験しにくい配慮をした学習方法は勧められる(グレードB)。

リハにおいて新規の学習を行う場合、失敗経験をなるべくしないように配慮して学習(errorless learning:EL)した方が、試行錯誤を通して学習するよりも習得が早い。ELを行う上での工夫は、 (i)目標とする作業を細分化し各ステップを明確にする (ii)作業を行う前に、十分にモデル(見本)を提供する (iii)作業を行うにあたって、なるべく推測(思考)をしないように指導する (iv)誤りがあったら即座に修正する (v)徐々に手がかりを減らす ことである。
記憶障害が重度の場合は、ELが、日常の記憶障害に関する問題を軽減する上で効果がある。しかし、遂行機能障害が重度の場合は、ELの効果は少ない。

言語障害 認知リハのガイドライン

言語障害 認知リハのガイドライン

1)失語症者に対し、集中的な言語聴覚療法が勧められる(グレードB)。急性期、回復期に集中的に言語聴覚療法を行うことに高いエビデンスがあるが、一方で、訓練時期と自然回復を除外した訓練効果の関連について、Robeyは、メタアナリシス(55の研究報告)の結果、急性期(発症から3カ月間)は、失語症訓練例は非訓練例よりも2倍の改善が期待でき、3カ月から12カ月の時期では、失語症訓練例は非訓練例よりも1。5倍の治療効果が期待でき、1年以上の慢性例では、失語症訓練例は非訓練例よりも12倍の改善が期待できると結論し(Ia)、維持期における訓練介入の意義を述べてる。

2)失語症者に対し、グループ訓練(lb)、地域リハプログラム(Ib)は勧められる(グレードB)。

3)脳外傷後のコミュニケーション障害に対し、実践的なコミュニケーション技術の習得訓練が勧められる(グレードB)。 前頭葉を中心とした広範な損傷が認められる脳外傷者では、そのコミュニケーション障害は失語症のみが原因ではない。 Dahlbergらは、RCTにて1年以上経過した脳外傷者に対し、グループによるコミュニケーション能力を高める訓練を12週間施行し、訓練群で日常生活レベルまで有意な改善をみている(Ib)。

研究論文のエビデンスレベルおよびリハ内容の勧告グレード

研究論文のエビデンスレベルおよびリハ内容の勧告グレード

Ⅰa ランダム化比較試験のメタ分析による

Ⅰb 少なくとも一つのランダム化比較試験による

Ⅱa 少なくともよくデザインされた非ランダム化比較試験による

Ⅱb 少なくとも一つの他のタイプのよくデザインされた準実験的研究による

Ⅲ 比較研究や相関研究、症例対照研究など、よくデザインされた非実験的記述的研究による

Ⅳ 専門家委貝会の報告や意見、あるいは権威者の臨床的経験


Grade A 行うよう強く勧められる

Grade B 行うよう勧められる

Grade C 行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない

Grade C 2科学的根拠がないので、勧められない

Grade D 行わないように勧められる

挿管し人工呼吸器を装着している患者へのリハビリテーションの障壁

挿管し人工呼吸器を装着している患者へのリハビリテーションの障壁

挿管し人工呼吸器を装着している患者へのリハビリテーションを行うことの必要性は広がっているが、まだどの施設でも実施できるということではないのが現象である。
障壁としては、治療計画の中での離床の風土(鎮静レベル調整、人工呼吸器設定による自発呼吸の使用、早期のリハビリテーション処方)、人的背景(理学療法士や病棟スタッフ数、専門的知識や経験不足)、機器の準備(歩行器、リクライニング車いす、重錘、足置き台、移動可能なモニターや人工呼吸器)などが挙げられる。

急性期で人工呼吸器を装着している患者へリハビリテーションを進める場合の注意点

急性期で人工呼吸器を装着している患者へリハビリテーションを進める場合の注意点

1.ライン管理
ライン管理は、挿管チューブ、動脈ライン、各静脈ラインや疾患によりドレーンなどさまざまなラインが装着されているので、運動や坐位・立位の動作により、それらの抜去や位置のずれなどが生じないように注意する。すべてのラインが見えるようにして、患者の位置や移動方向を念頭にしてそれぞれのライン類を配置する。

2.転倒・転落予防
坐位や立位の際の転倒、転落予防が必要である。下肢の筋力低下や起立性低血圧、また運動時の疲労などにより姿勢が保持できない場合がある。実施者は患者への声掛けへの応答の様子や表情を観察しながら練習時間を調整すると同時に、適宜介助、もしくはすぐ対応できるよう対応する。
事前に筋力評価や疼痛の確認と鎮痛の必要性や、歩行器など支持具を用いることも検討する。

3.酸素飽和度の低下
人工呼吸器を装着している患者へリハビリテーションを進める場合 酸素飽和度の低下が運動時に見られることがある。
医師と酸素飽和度が低下した際の下限値をあらかじめ確認しておく必要がある。
患者の状況により吸入気酸素濃度を少し上げて実施する場合もあり、医師と相談して実施する。

急性期人工呼吸器装着患者への早期人工呼吸器離脱を目指したリハビリテーションの注意点

急性期人工呼吸器装着患者への早期人工呼吸器離脱を目指したリハビリテーションの注意点

リハビリテーション処方後も患者の状態は変化する。そのため、毎日(毎回)実施可能な状況か否かの確認が必要になる。
循環動態の不安定さや出血傾向、鎮静を強めなくてはならない程度の不穏が見られるときは実施困難となる。
また、活動範囲(安静度)は医師の指示により設定されるため、基本はそれに従い実施する。
外傷による局所安静(骨盤、脊椎、下肢骨折など)はその可動範囲を確認して実施する。また、検査、処置後に一時安静時間を要する場合もあるため、当日のリハビリテーション実施前にあらかじめスケジュールを確認し、患者を中心にした時間の設定する。

ABCDEバンドルの内容

ABCDEバンドルの内容


人工呼吸器装着患者への早期人工呼吸器離脱などを目的にした一連の治療やケアをまとめて、「ABCDEバンドル」と呼ばれるものがある。内容は下記の通り。

A:Awaken the Patient Daily


1日1回鎮静を中断し覚醒させる

B:Breathing:Daily Interruptions of Mechanical Ventilation


1日1回自発呼吸の評価をする

C:Coordination:Daily awakening and daily breathing


鎮静をoffにしているときに自発呼吸の評価をする

D:Delirium Monitoring


せん妄の観察

E:Exercise/Early Mobility


早期離床、運動療法の実施

関連筋力低下(ICU-AW)とリハビリテーション

ICU関連筋力低下(ICU-AW)とリハビリテーション

ICU-AWにより筋力低下が見られると、筋力が維持されている患者と比べ人工呼吸器離脱が遅延するといわれている。

四肢筋力の低下が生命予後や在院日数と関連しているという報告もあり、ICU在室中に人工呼吸器を装着している段階から筋力低下を予防することが求められている。

人工呼吸器装着後に早期からリハビリテーションを開始した場合では、人工呼吸器離脱期間の短縮、せん妄の減少が見られ、退院時のADLが向上し転帰先では自宅退院の患者が増えたと報告されている。

人工呼吸器装着患者への早期人工呼吸器離脱などを目的にした一連の治療やケアをまとめて、「ABCDEバンドル」と呼ばれるものがある。
この中で、リハビリテーションは「E」の「早期離床:Exercise、 運動療法実施:Early Mobility」として組み込まれるようになっている。

ICU関連筋力低下 (ICU-AW)

ICU関連筋力低下 (ICU-AW)

ICUに入室する重症患者には、明らかに骨折などのような運動器疾患や脳卒中などの神経疾患を伴わない場合でも筋力低下を併発する患者がいる。
このような筋力低下をICU acquired weakness(ICU-AW)と呼ばれている。
原因として全身性の炎症や、血糖値上昇による末梢神経の微小循環障害、神経軸索障害、筋肉の蛋白異化、筋不活動によるものなど、いくつかの要因が重なり生じるといわれている。
ICU-AWが発症しやすい患者は、全身性炎症、多臓器不全、高血糖、ステロイドや神経筋遮断薬投与、ベッド上安静により筋活動が低下していることなどが挙げられる。
予防するためには、ICUでの治療中からステロイドや筋弛緩薬の使用を最小限にすることや、血糖値や電解質のコントロール、栄養療法やリハビリテーションを考慮して行うことが大切となる。

くも膜下出血 雷鳴頭痛

くも膜下出血 雷鳴頭痛

「これまで経験したことのない突然の激しい頭痛」と表現される雷鳴頭痛を呈することが多く、CTで確認できなくてもMRIのFLAIRや腰椎穿刺の評価で診断可能なこともあるため、強く疑う場合はこれらを施行します。
歩行可能な軽症例もしぼしばあり、これを見落とすと予後悪化につながるため注意が必要です。

くも膜下出血を認めた場合、可能な限り救急でCT angiographyを施行して脳動脈瘤の確認を行います。
重症度の評価はHunt and Hess分類で行い、初療の目標は再出血予防となります。

Hunt and Hess分類 くも膜下出血

Hunt and Hess分類 くも膜下出血

Grade Ⅰ
最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる

Grade Ⅱ
中等度から強度の頭痛,項部硬直をみるが,脳神経麻痩以外の神経学的異常はみられない

Grade Ⅲ
傾眠状態錯乱状態,または軽度の巣症状を示すもの

Grade Ⅳ
昏迷状態で,中等度から重篤な片麻痺があり,早期除脳硬直および自律神経障害を伴うことがある

Grade V
深昏睡状態で除脳硬直を示し,瀕死の様相を示すもの

てんかんの運転免許交付・更新許可の条件

てんかんの運転免許交付・更新許可の条件

1.発作が過去5年間に起こったことがなく、医師が「今後発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合

2.運転に支障をきす発作が過去2年間に起こったことがなく、医師が「今後、X年程度であれば、発作が起こ るおそれがない」旨の診断を行った場合

3.医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害および運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合(ただし、上記2の発作が過去2年間に起こったことがないのが前提)

4.医師が2年間経過観察をした後「発作が睡眠中に限って起こり、今後症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合

5.上記の診断には6カ月間までの保留期間がある

6.大型免許および第二種免許については、服薬なしで5年間発作がなく、今後も再発のおそれがないことを条件として推奨している

後頭葉 損傷

後頭葉 損傷

後頭葉には視覚野がある。
一次性視覚野は後頭葉内側の鳥距溝(calcarine sulcus)周囲に存在する。
その後方部分に対半側黄斑部からの線維が入っている。
その損傷により半盲が生じまるが、ほとんどの部分的障害の場合では、中心視力は残る。

網膜に映った対象物は、一次性視覚野に投射されることによって網膜でとらえたとおりの像を構成させ、両側の視覚野の統合により全体像が構成される。

一次性視覚野周囲には視覚に関する外線条皮質が広がり、視性情報の記憶や認知に関する連合野として機能しており、その障害によっては視覚失認(optic agnosia)や失読(alexia)が生じる。

側頭葉 損傷

側頭葉 損傷

側頭葉には、さまざまな言語処理に関する言語野と聴覚野が存在する。
一次聴覚野に損傷を受けた患者は、音に対してその認識を失われるが、反射的反応の能力は残されている。聴覚的な“対象”の同定や分離、空間における音源の位置の同定などにかかわっており、患者は話す人の存在や場所がわからなくなる、テレビから聞こえる内容が理解できない、音がこもって聞こえるなどの症状を訴えるが、通常一過性の症状である。

言語に関しては、側頭葉だけではなく、前頭葉、頭頂葉にも皮質機能があり、これらが複雑なネットワークを形成して処理している。
失語症の観点からは自発言語、復唱、言語理解、文字理解、音読、自発書字、書き取りの可否を診断する。
ウェルニッケ失語(感覚性失語)では、聴理解が難しくなる他に、復唱や読み書きが難しくなり、自発言語は 喚語困難、語性錯語、音韻性錯語、保続、錯文法といった症状がでる。

頭頂下葉から中下側頭回の障害による超皮質性感覚失語では、復唱が良好だが理解が伴わない症状がでる。自発言語は、 喚語困難、語性錯語の症状がでる。

頭頂葉 損傷

頭頂葉 損傷

頭頂葉には一次体性感覚野、頭頂葉連合野がある。
感覚野の障害は改善しにくく、たとえば位置覚の障害が生じると、筋力が保たれていても歩行不能になることに気をつける必要がある。

連合野に関しては、優位半球頭頂葉、とくに側頭葉との境界近傍の障害によってゲルストマン症候群が出現する。このほかにも、左頭頂後頭葉の障害により、観念失行(物品を使用することができない)が生じる。

非優位側(右側)の頭頂葉障害では、半側空間無視や着衣失行(服を着ることができない)、構成失行(図示などで形を作ることができない)といった症状が出現する。

一次陰性運動野

一次陰性運動野

一次陰性運動野は、顔面の一次運動野とブローカ領域の間に存在し、運動前野まで広がるミラーニューロンの分布と同様であり、言語獲得に重要な役割を持っていると考えられている。
電気刺激を行うと運動が開始できなくなるが、傷害されても運動麻痺を生じることはない。

前頭前皮質

前頭前皮質

前頭前皮質は前頭葉の前側の領域で、一次運動野と運動前野の前に存在する。
この脳領域は複雑な認知行動の計画、人格の発現、適切な社会的行動の調節にかかわっているとされている。 領域内での機能局在は明らかではなく、皮質下ネットワークを通じてこれらの脳機能を調節していると考えられている。

運動前野

運動前野

運動前野は、頭頂葉の感覚連合野や陳述記憶(内容を言葉で述べることができる記憶)の場である前頭前野からの入力を受け一次運動野に出力することから、感覚情報や認知記憶に基づく運動の企画・発案に関与していると考えられている。
背側運動前野は感覚情報をもとに動作を企画して準備し、腹側運動前野はmirror neuron(ミラーニューロン、学習・模倣に関与する皮質細胞群)、認知機能に関係し、感覚情報に基づいた運動の企画発案に関係している。
運動前野の損傷後は、運動麻痺がないにもかかわらず運動は拙せつれつ劣になり、着衣に伴う動作や楽器演奏など精微な動きに障害が出ます。これらは頭頂葉が傷害されたときの失行と似ており、運動前野が頭頂葉の影響を強く受けていることを示している。

補足運動野

補足運動野

補足運動野は、一次運動野内側に存在して運動順序の制御を行っている。
その摘出によって自発運動減少、強制把握(自分の意思とは無関係に手に触れる物を握りしめて放さない)、左右の手の強調運動障害を生じる。

一次運動野

一次運動野

一次運動野は、その名のとおり運動を行う際に筋力を直接コントロールする部分である。
中心溝前方に体の部位に応じた局在を示す。ヒトでは、顔面や手指といった部位が腹側で大きな面積を占めており、背側に向かって上肢、下肢の機能部位が並んでいる。
傷害された部位により、相当する部位の運動麻痺が生じるが、顔面と体幹では両側支配のため、皮質障害では大きな障害は出現しない。

皮質脊髄路の構造

皮質脊髄路の構造

皮質脊髄路は層状の構造をしている。つまり、仙髄や腰髄まで到達する神経線維は皮質脊髄路の外側を下っていく。
頸髄を例にすると、下肢の筋肉をコントロールしている腰髄の前角細胞につながる神経線維は皮質脊髄路の外側を下行し、その内側には体幹の筋肉をコントロールする胸髄の前角細胞につながる神経線維が走行する。
さらにその内側には、上肢の筋肉をコントロールしている頸髄の前角細胞につながる神経線維が下行している。

皮質脊髄路

皮質脊髄路

錐体路のうち皮質脊髄路は、大脳皮質運動野から内包後脚、中脳の大脳脚、さらに橋を下っていき、延髄の腹側にある錐体に集まる。皮質脊髄路の神経線維の75~90%が延髄の下部で交叉して反対側に走り(錐体交叉)、脊髄白質内の外側皮質脊髄路となって、目的とする脊髄前角細胞につながる。

錐体で交叉しなかった神経線維は、同じ側にある脊髄白質の前皮質脊髄路を通って目的とする脊髄まで下行していき、左右の脊髄白質を連絡している白交連を通って反対側の脊髄前角細胞に接続する。
皮質脊髄路の神経線維は、延髄の錐体交叉、または脊髄白質の白交連ですべて交叉して、反対側の前角細胞につながる。
脳梗塞や脳出血などの脳の病気により、錐体で交叉する前で錐体路が障害された場合は、病変側とは反対側の手足が麻痺するが、錐体交叉の後で障害された場合は、病変側と同じ側の手足の麻痺を認める。

オシレーション法

オシレーション法

呼吸の抵抗を測定する方法にオシレーション法があります。
複数の周波数を含む振動波をマウスピースを通じて被験者の口腔内に与えて口腔内の気流と圧力を臨時的に測定する方法がオシレーション法による呼吸インピーダンス測定の主流となっています。
広帯域周波数オシレーション波を用いた呼吸抵抗測定装置としてMostGraph-01(チェスト社)、 Master ScreenIOS(Jaeger社)の2機種が市販されています。
オシレーション法は最大努力を必要とするスパイロメトリーとは異なり、安静呼吸で短時間のうちに実施できるため、小児や高齢者、呼吸困難度の高い被験者にも負担が少ないという利点があります。
呼吸インピーダンスは粘性抵抗(Rrs)とリアクタンス(Xrs)から成ります。
粘性抵抗(Rrs)の主成分は気道抵抗ですが、胸郭の粘性抵抗も含むため、「呼吸抵抗」とよばれます。リアクタンス(Xrs)は弾性抵抗と慣性抵抗からなり、低周波数では弾性抵抗が、高周波数では慣性抵抗が主体となります。MostGraph-01とMaster Screen IOSのいずれにおいても、5Hzおよび20Hzにおける呼吸抵抗(R5およびR20)、5Hzにおけるリアクタンス値(X5)、リアクタンスが0となる共振周波数(Fres)が測定結果として表示されます。

錐体路

錐体路

錐体路は、大脳から末梢の組織へと下っていく神経伝導路の一つである。
随意運動に関係している神経線維は、前頭葉の中心前回にある皮質運動野から内包を下る。
脳幹(中脳、橋、延髄)に位置する神経細胞の塊である運動性神経核に接続する皮質核路と、皮質運動野から内包、さらに脳幹を下って、神経細胞が集まっている脊髄灰白質の前角細胞に接続する皮質脊髄路があり、両者を合わせて錐体路と呼ぶ。

気道過敏性試験

気道過敏性試験

気道過敏性とは外因性および内因性の非特異的刺激に反応して気道平滑筋が容易に収縮する状態のことであり、気管支喘息に特徴な病態です。
吸入負荷試験である気道過敏性試験は気管支喘息の診断および重症度の判定のために重要な検査です。
吸入負荷に用いる気道平滑筋収縮薬にはアセチルコリン、ヒスタミン、メサコリンがあり、検査方法としては標準法とアストグラフ法があります。
気道過敏性試験により喘息発作が誘発されることがあるため、高度の呼吸機能異常がないこと、救急対応の準備を確認することが必要です。

標準法では試薬を低濃度から吸入し、吸入後スパイロメトリーによる1秒量を測定します。1秒量が刺激前の値より20%以上低下するまで順次薬剤濃度を上げていきます。
1秒量が20%以上低下するときに吸入した溶液の薬剤濃度を閾値と呼びます。
アセチルコリン閾値、ヒスタミン閾値ともに健常人では10、000μ9/mL以上とされ、喘息患者は10、000μg/mL以下の濃度で閾値に至ります。
本法はスパイロメーターがあれば施行可能です。
アストグラフ法では薬剤を低濃度から吸入しながら同時に呼吸抵抗を連続測定することにより、呼吸抵抗の上昇を調べます。
呼吸抵抗が刺激前値の2倍になったところで検査は終了となります。
標準法と比べ手技が簡単で測定時間も短縮できるという利点があります。
強制呼出を繰り返し行う必要がないため被験者の負担も軽減される一方で、この検査専用に呼吸抵抗測定装置アストグラフ(チェスト株式会社)が必要となります。
気道過敏性試験では、いずれの方法においても検査後に気管支拡張薬(β2刺激薬)を吸入させ、喘息発作が誘発されていないことを確認して終了します。

肺拡散能検査

肺拡散能検査


空気中の酸素は換気によって肺胞に到達し、酸素分圧較差に従って拡散により肺毛細血管内に移動し、赤血球中のヘモグロビンに結合します。
肺拡散能は、肺胞腔内から肺毛細血管内への酸素取り込み能力の指標です。
測定方法としては、酸素のかわりに一酸化炭素(CO)拡散能力であるDLcoを測定する方法(Fosterの一回呼吸法)が広く用いられています。
肺拡散能検査にはCO分析器やヘリウム濃度分析が必要であり、通常のスパイロメトリーのみでは測定することはできません。

肺拡散能の規定因子としては、肺胞毛細管膜の障害、肺胞ガス交換面積、肺毛細血管血流量、血液中ヘモグロビン濃度が挙げられます。
間質性肺炎や放射線肺臓炎などはDLcoが低下する代表的疾患です。
進行した肺気腫では肺胞ガス交換面積の低下に伴いDLcoが低下しますが、特に肺胞気量(VA)との比DLco/VAが著明に低下します。
肺塞栓や肺高血圧症でも毛細血管血流量低下によりDLcoが低値となります。
VAは残気量と吸気量から求めるため、ガス希釈法による機能的残気量(FRC)測定を組み合わせて行います。