包括型地域生活支援(ACT)についての解説します。

包括型地域生活支援(ACT)とは?

ACT(包括型地域生活支援)とは、統合失調症を主とする重度精神障害者の地域生活を、医療と福祉の多職種からなるチームによる生活現場への訪問を中心として支援する体制です。
ACTチームは、精神科医、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士、就労支援専門家など多彩な顔ぶれからなります。これらのスタッフが定期的に、あるいは必要に応じて、利用者の自宅や職場を訪問して、医学的治療、広範な生活支援、レクリエーション、リハビリテーション、就労支援、家族支援など精神障害者の療養と支援に必要なあらゆる支援活動を行います。
さらに、急性増悪期には24時間365日の危機介入を同じチームが受け持つようにして対応します。

包括型地域生活支援(ACT)の意義

このような支援体制は、特に医学的治療を要する疾患と日常生活上のつまずきをきたす障害が表裏一体となって存在している統合失調症の回復に対して大きな意義をもちます。
つまり、①多職種による多角的支援、②チームによる継続的支援、③アウトリーチによる生活現場での支援、④24時間の危機介入という特性が、「安全保障感」に乏しい統合失調症にとって心強い助けとなり、その基盤の上に、障害を乗り越えて生活を営んでいく「リカバリー」が生まれます。

包括型地域生活支援(ACT)の方法

1つのACTチームは10-15人のスタッフからなり、スタッフ1人につき利用者数はおよそ10名です。
各スタッフは利用者10人程度の主担当者となってケースマネジメントの責任をもちます。
主担当者は、他のスタッフ2-3人と各利用者の支援を行います。
この小さな担当チームを個別援助チームIndividualTreatmentTeam(ITT)といい、ミーティングを密に行い時期に応じた適切な支援を提供します。
このように職種にかかわらず利用者への責任をもつACTでは、スタッフ間で自由に意見をいえる雰囲気と平等性が大切です。
医師を頂点とした堅固なヒエラルキーのある病院医療の思想や雰囲気を、ACTに持ち込まないことがことに大切です。
疾病管理が目的である病院医療の思想は、地域を疾病管理・生活管理の場にしてしまいます。
ACTの現場では、自らが判断して動く自主性が各スタッフに求められます。
自分の職域に固執すると援助の迅速さが損なわれ、スタッフ相互の依存と牽制によってチームの運営は萎縮してしまいます。
ACTでの専門職のあり方は、必要なあらゆることを現場のスタッフ自身の責任で行う「超職種」でなくてはなりません。
24時間365日の支援というと大変なことのようですが、実際には、日中の支援がしっかりすれば夜間休日の緊急事態はほとんどなくなります。
現在の精神科救急の困難さは、地域における日中の支援が乏しいために生じることです。
これからのわが国の包括型地域生活支援(ACT)
残念ながらわが国では、諸外国のようにACTが制度化されることはありませんでした。
地域処遇への熱意に乏しい現体制と施設的な精神科病院に慣れきった精神保健医療従事者に、この現状を変えることは期待できません。
したがって、ACTの実現は個々の支援者の熱意と創意にかかっています。
幸いなことにこの10年で、それぞれ運営に工夫をこらしたACTチームがいくつか誕生しており、これからACTを立ち上げたい人はこれらの先達から学ぶことができます(ACT全国ネットワークHP参照)。
また、本来のACT実践の基盤となるべき地域の資源は、現在のわが国には乏しいままです。
そのような現状のなかで活動するとき、ACTチームは常に外部のさまざまな地域機関と連携して互いに切磋琢磨し、自らを支える地域基盤を地域の人々とともに創り、ACT自身が地域から孤立しないように努めなければなりません。

参考文献

ACT-Kの挑戦-ACTがひらく精神医療・福祉の未来。批評社、2008