横向き嚥下(頸部回旋嚥下 Head rotation*)

横向き嚥下(頸部回旋嚥下 Head rotation*)


横向き嚥下の効果


頸部を回旋すると咽頭腔の形態が変化し、食塊が咽頭の非回旋側へ誘導されます。

また、非回旋側の食道入口部静止圧が低下することも知られています。

横向き嚥下はこれを応用して、咽頭残留の軽減や誤嚥の防止を期待する手技となります

横向き嚥下は、嚥下前から頸部を回旋する「嚥下前頸部回旋」、嚥下後に頸部を回旋して嚥下を追加する「嚥下後頸部回旋空嚥下」とがあります。

主な対象者


咽頭機能に左右差があり、片側性の咽頭残留を認める例が対象となります。

具体的な方法


咽頭機能の悪い側(患側)に頸部を回旋し嚥下をします 

回旋の程度は近年45°程度が良いといわれています

実際には、嚥下造影(正面像)などで効果を確認して行うことが望ましいです。

回旋のタイミングは捕食前からが確実ですが、口腔保持ができて咽頭流入に伴う誤嚥のリスクが少なければ、嚥下直前に回旋しても効果があるとの報告があります(嚥下前頸部回旋)。

また、嚥下後に残留がみられたとき、非残留側に回旋して空嚥下を行って残留の除去を試みる方法もよく行われています(嚥下後回旋空嚥下)。

注意点など


最大可動域位(正常者では70度とされるが、人によって異なる)では、過度な努力による筋緊張が嚥下に悪影響を及ぼしうるので注意する必要があります。

無理のない頸部回旋を行いましょう。

特に、頸椎疾患やその術後患者では注意が必要です。

仰臥位では、回旋側が下側になり、食塊が重力で回旋側に誘導されるので注意する。

このときは、健側を下にした側臥位を併用して対処すると良いです 


*英語圏ではhead rotationであるが、本邦では「頸部回旋」とされる。英文でneck rotationという用語はほとんど用いられない。
Headと「首(頸部)」に関する、日本と西欧の言語感覚の相違がある。