全失語の病巣

全失語の病巣

全失語は古典的には、ブローカ失語の病巣とウェルニッケ失語の病巣の両方が損傷されて起こると考えられていました。 また、やや前方よりの病巣では経過とともにブローカ失語に移行すると言われていました。
大きな病巣による全失語例が多いことは確かですが、最近では、ウェルニッケ失語の病巣が含まれないか小さい前方病巣、前頭葉損傷が小さい後方病巣、あるいは比較的小さな深部病巣でも全失語が起こることが示されています。
De Rettiらによると、ブローカ失語の病巣とウェルニッケ失語の病巣の両方を含む広範な損傷は、慢性期の全失語患者の35%にしかみられなかったとの報告があります。また、病巣の範囲と言語機能の回復に有意の関係を見いだせなかったと報告しています。
慢性期に至っても全失語を呈する症例はCT上の病巣よりも広範囲の脳機能障害がある可能性が高いといわれています。
大半の全失語例は右片麻痺を伴いますが、前方病変+後方病変や多発病巣などで麻痺を伴わない全失語が出現する場合もあります。この場合、一般的に失語の回復は比較的良好といわれています。