前頭葉背外側面の損傷における超皮質性運動失語の特徴

前頭葉背外側面の損傷における超皮質性運動失語の特徴

自発話は極端に減少し、わずかな決まり文句を発するか、相手の質問を繰り返して文末などを変化させて答える反響的応答がみられるのみで、話し始めたとしても中断してしまうことが多いと言われています。
患者は手や頭を振ったりして、発話を促そうとする場合がある一方、コミュニケーションをとろうとしない場合もあります。
発話が回復してきても、短い文を話すことが多く、保続や語性錯語がみられます。
「1、2、3…」と数えるような系列語は、検者が最初のいくつかを与えることによつて、いったん開始されると続けられることが多いです。
復唱は自動的なオウム返しというのではなく、文法的な誤りのある文ではそれを修正する場合があると言われています。また、補完現象がみられることがあります。
前頭葉内側面損傷の場合と異なり、片麻痺はないかあっても軽度で一過性のことが多いです。
病巣は、ブローカ領域の前方または上方と考えられていて、下前頭回の中または前部、中前頭回、さらに上前頭回がこれにあたります。
前大脳動脈と中大脳動脈領域の間のwatershed領域の脳梗塞は、超皮質性運動失語を起こす代表的病巣です。 また、中大脳動脈の分枝である前ローランド動脈領域の脳梗塞で中・下前頭回が損傷された場合に超皮質性運動失語を生じると言われています。
また、中前頭回損傷では文を構成することが困難でありLuriaの前頭葉性力動性失語の純粋型にもっとも近く、下前頭回に病変が及ぶ例では失文法が現れてくるといいます。
以上はブローカ領域を含まないことを前提としていましたが、プローカ失語からの回復過程で超皮質性失語を呈する場合が古くから指摘されています。また、ブローカ領域とその周辺を含む病巣によって比較的早期から超皮質性運動失語を呈する例も報告されています。ブローカ領域周辺を含む病巣では、軽い構音障害、音韻性錯語、一過性の失文法が目立つことがあると言われています。