ことばの発達を促す「ことばかけ」の方法「ミラリング」「モニタリング」「パラレルトーク」「セルフトーク」「リフレクション」「エキスパンション」について言語聴覚士が解説!

赤ちゃんの動きをまねる「ミラリング」


生後2ヶ月くらいまでは、赤ちゃんは、身体を大きくすることに懸命ですが、3ヶ月、4ヶ月以降は、自分で身体を動かせるようになってきます。
目もだいぶ上手に使えるようになってきます。
赤ちゃんが手足をバタバタさせたら、大人も真似て手をパタパタさせてみたり、まねをしてあげると良いです。
おすわりができるようになったら、ベッドのさくをガタガタさせるのを一緒に真似て遊んだり、積み木をトントン打ち合わせるのを真似てみたり、いろんなことができます。
赤ちゃんは、自分と同じ動きをしてくれる大人に、興味をもち、「この次も、また真似をしてくれるかな?」と大人の様子を観察しながら、誘いをかけてきたりします。
鏡に映すように真似るという意味で「ミラリング」といいます。

赤ちゃんの出す声や音をまねる「モニタリング」


赤ちゃんはごきげんなときに、唇を使って「ブーブー」「ブーブー」と言ったり、「フニャー、ウニャー」と声を出したりします。
こういう意味のない(と大人にはみえる)声を真似して返してあげることで、赤ちゃんは「音を出すこと」「音を出すと、あっちから同じ音が返ってくること」を楽しむようになり、話をする楽しさを知るようになっていきます。
このことを、音を拾ってモニターする意味で、「モニタリング」いいます。

赤ちゃんの状態や気持ちを代わりにことばで言ってあげる「パラレルトーク」


赤ちゃんが、おやつを食べながら幸せそうな顔になったら、「おいしいね」といい、ミルクがこぼれてエプロンがびしょびしょになったら、「あら、びしょびしょになっちゃったね」などと言います。
どこかにゴチンとぶつけたら「痛くない!」ではなく「イタイ、イタイね」などと言ってあげましょう。
そういった言葉かけを行うことで、大人はボク(ワタシ)のことを「よく分かってくれているんだな」という安心感が、子どもの一生を支える宝物になります。
子ども平行していうので、「パラレルトーク」といいます。

お父さんお母さんが自分の口に出していう「セルフトーク」


お風呂に入ろうとしている時にバスタオルが見つからない。「あれ?バスタオルどこだろう?」
怪訝そうな顔をしてみているこどもに「バスタオルを探しているんだよ」
そして「あった、あった」「さあ、お風呂にはいろう!」
こんなふうに自分の行動を口に出していうことを「セルフトーク」といいます。
赤ちゃんや子どもは大人の姿をみて、だんだんに「バスタオル」や「探す」といったことばの意味を知るようになっていきます。

子どもが間違えた言葉をさり気なく直して返す「リフレクション」


子:「あ、うたぎたん!」
親:「ほんどだ、うさぎさんだね」
子:「うたぎさん、お耳、おっちいねぇ」
親:「ほんとだね、うさぎさんの耳、おおきいねぇ」
子どもが言った言葉に間違いがあってもm言い直しをさせたり、訂正するのではなく、さりげなく正しく直して返してあげるようにしましょう。
これを「リフレクション」といいます。
「そうね」「ほんとだ」で始まる文章で返しましょう。
カラスのことを「たあちゅ」っていう子がいます。
「たあちゅじゃないの、か・ら・す!いってごらん!」
なんて言われ続けたら、お話をするのを嫌いな子になってしまうかもしれません。
子どもがおぼつかない口調で一生懸命に話してくれることは、なるべく「そうだね」「ほんとだね」という受け方で答えます。
「そうだね」(あなたは、あの、黒い鳥のことを言ったのね、という気持ちで)いったん受け止めてから、正しいことば「カラスだね」とさりげなく直してあげる程度が良いでしょう。

子どもが言った言葉を少し広げて返す「エクスパンション」


子:「うわー、おおっきいブーブ」
親:「ほんどだ、大きいブーブだね。何を積んでるんだろうね。」
という具合に、話題を少しふくらませて返すことを「エクスパンション」といいます。
単語を並べて(2語文、3語文)、比較的達者にお話ができるようになると、こういった関わりが大切になってきます。

ゆっくり、はっきり、繰り返し話してあげましょう!

赤ちゃんや小さい子の耳の聞き取りの力はまだ未熟です。
ご国語を習い始めた時と同じです。
相手がゆっくり、はっきり話してくれると、よくわかります。
赤ちゃんに対しても、普通の大人に対して話すよりも、心持ちゆっくりめに、はっきりと話してあげましょう。
一番大切なことは、大人が何かを教えようという気負いを捨てて、赤ちゃんがどんな気持ちでいるのかを知ろう、まだ「ことば」にはならない色々なしぐさを読み取ろう、とあの手この手で観察することです。
赤ちゃんのことを細かく観察しているうちに、きっと、赤ちゃんと一緒にいることを楽しめるようになるでしょう。

「ことばかけ」は日頃の生活の中の自然な関わりで十分


お母さんたちに「何について話しかければいいですか?」と真剣に尋ねられることがあります。
何か特別なことをしようと思わなくても、日頃の生活の中で自然にやっていれば十分です。
日頃の生活の中で、今回、ご紹介した「ミラリング」「モニタリング」「パラレルトーク」「セルフトーク」「リフレクション」「エキスパンション」を取り入れながら、子育てを楽しみながら子どもと接していきましょう!

誤嚥性肺炎の予防と栄養管理などのケアについて言語聴覚士が解説!


今回は、高齢者においてよくみられる誤嚥性肺炎の予防と栄養管理などのケアについて説明していきたいと思います。

誤嚥性肺炎の病態と評価・診断方法

病態について

高齢者では、認知症の進行や摂食嚥下機能の低下、全身機能の低下などにより誤嚥性肺炎を発症することがあります。
発熱や炎症を伴う誤嚥性肺炎を繰り返すと、栄養状態の悪化やADLの低下をきたすため、まずは誤嚥性肺炎を繰り返さないための予防が大切となります。
そのためには口腔内を清潔に保つことに加え、摂食・嚥下機能の評価と食事の工夫を含めた栄養管理が重要となります。

摂食・嚥下機能の評価について

検査結果は藤島の摂食、嚥下能力グレードや、才藤の摂食・嚥下障害の重症度分類などで段階分けをします。

栄養管理について

摂食・嚥下グレードに準じて、嚥下食や嚥下訓練食など食事の工夫が必要となってきます。
嚥下調整食の分類については、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2013」を参照すると良いでしょう。
「嚥下調整食分類2013」はこちらからPDFファイルで開くことができます↓
嚥下機能が正常でも、十分な栄養量を確保できない場合は、メイバランスミニなどの栄養補助食品などで補充する必要があります。
また、食事量が十分でない場合には、Na・Kなどのミネラルや亜鉛・鉄などの微量元素が不足するので注意する必要があります。

誤嚥性肺炎の治療方針

嚥下機能評価の結果、少しでも経口摂取が可能な場合は経口摂取を継続することが望ましいのですが、重症の嚥下機能障害がある場合は経口摂取継続による誤嚥性肺炎再燃のリスクもあるため、患者や家族に対しては十分に説明を行い、相談していく必要があります。
また、経口摂取のみで十分な栄養補給が難しい場合には、ほかの栄養ルートについての検討が必要となります。
十分な栄養量が確保できない期間が長期化することで栄養状態とADLの低下をきたし、その後の治療に難渋する場合があるため、食事摂取状況を観察し栄養障害をきたす前に判断することが望まれます。

経口摂取のみで栄養補給可能な場合の対応方法について

通常の食事、または誤嚥が認められた食品について検討すれば3食経口摂取が可能なことが多いです。
高齢者の多くが誤嚥しやすい水分に関しては、増粘剤で粘度をつけることで改善される場合が多いですが、その場合には増粘剤の適正使用について十分に指導する必要があります。

経口と代替栄養が必要な場合の対応方法について

3食経口摂取が可能でも、代替栄養が必要な場合には、栄養補助食品を併用し必要栄養量が充足できるように栄養プランを作成する必要があります。
栄養補助食品には、液体・ゼリー状・ムース状などさまざまな形態があります。
また、味の種類もおかず系のものやデザート系のものなど種類が多くあるので、何種類かを組み合わせて使用することで飽きずに継続することができるため工夫すると良いでしょう。
一部経口摂取が可能・お楽しみとしての摂取が可能な場合は、栄養補助食品の併用だけでは必要栄養量を充足することが難しいため、経口摂取以外の栄養ルートの検討が必要となります。

経口不可な場合の対応方法について

経口摂取以外での栄養ルートを検討する必要があります。
基本的には消化管を使用することが第1選択になるが、高齢者の場合は倫理的適応も含めて本人・家族と十分に相談する必要があります。
また、重度の嚥下機能障害や認知症がある場合でも、身体機能の回復や栄養状態の改善により経口摂取可能になる場合もあるため、変化を見逃さない日頃の観察が大切です。

経腸栄養

経鼻胃チューブ・経鼻十二指腸チューブ・経鼻腸チューブ
鼻から胃、空腸にチューブを入れ非侵襲的に栄養投与できるため短期間の栄養法として適しています。チューブの違和感があり、誤嚥性肺炎のリスクが高まるため長期間使用する場合には適しません。
胃瘻・腸瘻
チューブによる違和感や苦痛がないため、長期の経腸栄養法として適しています。瘻孔周囲の栄養漏れが起こる場合がありますが、半固形栄養剤の選択により改善される場合が多いです。

経静脈栄養

末梢静脈
必要栄養量を投与することが難しいため、栄養障害の改善には適しません。短期間の栄養管理において選択すべき方法です。
中心静脈
2週間以上の長期間での使用に適しています。適応については日本静脈経腸栄養学会が作成した「静脈経腸栄養ガイドライン第3版」を参照すると良いでしょう。
「静脈経腸栄養ガイドライン第3版」は下記のリンクからPDFファイルを開くことができます↓
低栄養状態にある高齢者に経腸栄養法や静脈栄養法を開始する場合には、早期の合併症としてリフィーディング症候群を発症する可能性を必ず念頭におき、栄養投与量の増量中は呼吸機能、心機能、神経症状(脱力、意識障害、痙攣など)などについて厳格なモニタリングを行います。
同時に、ビタミンB1 や亜鉛欠乏症にも注意を要します。
発症予防には、初期投与エネルギー量の制限と緩徐な増量、適切なビタミンとミネラル類の補給が大切です。

きょうだいげんかの理由や意味について言語聴覚士が解説!

大人からの注目


すでに子どもがいる家庭に、またひとり子どもが生まれると、きょうだいという関係が生じる。
このきょうだいの出現は、まったく自然なことなのだが、当の子どもたちにとっては非常に大きな生活環境の変化である。
家庭のなかでの最初の子どもは、多くの場合、両親やその他の家族の注目を一身に浴びながら育つ。
ここでいう注目とは、視線を向けること、声をかけること、笑顔を向けること、指示すること、叱ることなど、子どもにあらゆる種類の信号が送られることを指す。
注目を受けることは、人間にとって行動の原動力となる。
新たな料理に挑戦して、「おいしかったよ」「新しいレパートリーが増えたね」などと言われると、この料理をまた作ってみようと、さらに新たな料理に挑戦しようという気になる。
仮に、「いまひとつ、おいしくないな」と言われても、それはそれで、今度はもっとうまく作ろうとか、残念だったけど次はもう少し工夫してみようなどと思うものである。
しかし、まったく何の反応も得られないと、新しい料理に挑戦しようといった意欲がそがれていってしまう。
乳幼児期は、大人に比べて、よい子でいたい、よい子であることを認めてもらいたい、あるいはいろいろなものごとが“できる"ことを認めてもらいたいという素朴な気持ちを持ち、またそれを素直に表出できる時期である。
幼児の生活には、周囲の大人が与える注目が、より大きな影響を及ぼしているのである。
きょうだいが生まれると、周囲の大人から与えられる注目が激減する。
大人の注目はより小さい子どもに向けられることが多いので、注目の減少は、半減以上のものがある。
そのため、きょうだいが生まれることは、それだけで子どもにとっては大きなストレッサーをかかえることになるのである。
このようなときに子どもは、赤ちゃん返りをしてより幼い時期に特徴的な行動をしたり、不適切な行動をして親や周囲の大人の注目を取り戻そうとさまざまな努力をする。

自己主張と譲歩


きょうだいが生まれてしばらくたつと、きょうだい間での争いが生じることがある。
子どもは2~4歳頃に第一反抗期を迎え、親の意図とは別個に自らの意図を主張したり自ら物事を決断したいということを主張するようになる。
これが自我の芽生えと呼ばれるものだが、年上の方の子どもがこの段階に達すると、周囲の大人はある程度自分の意図にあわせて調整してくれるのに、そのような調整ができない年下の子どもや近い年齢の子どもは年上の子どもの意図にあわせて調整してくれない。
そのため、年上の子どもと年下の子どもとの間での争いが生じ始めるようになるのである。
やがて、年下の子どもも第一反抗期に達して自己主張を始めるようになると、年上の子どもと年下の子どもの間の争いはさらに頻度が増す。
それは、双方が、自分の意図を行動や言葉で主張できるようになってきたのに、それを調整する能力がまだ十分に育っていないためである。
子どもが、他者との間での意図の違いをある程度の譲歩でもって調整できるようになるのは、自我が芽生えて自己主張を始める時期よりも遅れ、また、幼児は、目の前の物や事態に左右され、先々の展開を予測して今現在の欲求を抑える能力がまだ不十分である。
そのような理由から、目前の物や出来事をめぐって争いが生じることが多いのである。
このような自己調整能力は、幼児期から児童期にかけてゆっくりと発達し、また非常に個人差の大きな領域でもあるため、きょうだいげんかは、乳幼児期に発生し、児童期ぐらいまでの間にずっとみられる現象となる。

タテの関係


親子間の関係や保育者や教師と子どもとの間の関係は、自己調整能力に圧倒的な差があり、一般にタテの関係と呼ばれる。
幼児期から児童期にかけてのタテの関係のなかでは、親や保育者または教師などの子どもの周りの大人が、子どもの欲求を受け入れたり、あるいは子どもがうまく調整していけるようにリードしていく。
一方、同年齢の学級集団や年齢の近いきょうだいの関係は、若干の能力差のなかではぼ対等に渡り合うヨコの社会である。
近年の子どもたちは、かつてギャング集団と呼ばれたような異年齢集団で過ごす経験が減っているようであるが、このようなタテの関係を体験できる機会を意図的に企画することが必要な時代になったのかもしれない。
子供たちは、タテの関係のなかで、葛藤や争いを調整していく能力が、実践のなかではぐくまれていくのである。
大人は、子どもたちが体験する、きょうだいや同級生たちとの間での葛藤や争いを、ときには見守り、ときには双方の主張を代弁したり整理したりし、あるいは解決のためのヒントを提供したり上手な解決法のお手本を示してあげたりしながら、子どもたちの自己調整能力の発達を促すと良い。
その際に、我慢したり譲歩したりする子どもの精神的な努力を誉めて導いてあげることが非常に大切である。
このような教育的介入の方法のひとつとして、社会的スキル指導(SST)があげられる。

ホールディング、オブジエクトプレゼンティングについて言語聴覚士が解説!

ホールディング

乳幼児は柔らかくて暖かな存在を求め、その近くに身を置くことによって安心感を得て生活していく。
ウイニコットは、母親が子どもの安心感を保障するこのようなシステムをホールディングという言葉で示している。
ウイニコットは、母親の機能として、子どもを抱き支えるホールディング、子どもをあやし大切に扱うハンドリング、さまざまな対象や人的環境を差し出し経験させるオブジェクトプレゼンティングという3つの機能をあげている。
このなかで、ホールディングとは、子どもを抱き、支える機能である。
これは、単に物理的に子どもを抱っこしたり支えたりすることだけを指すのではない。
生きている世のなかのほとんどの事柄がまだわからない、理解できない、人生のごく早期の乳幼児にとっては、ホールディングされることによってまず安心感を得る。
そして、人格を持った存在として大切にハンドリングされることによって徐々に自己の存在や大切さに気づき、さらに、さまざまな経験を与えられるオブジェクトプレゼンティングのなかで対人関係をひろげ、少しずつ外界の様子を学び適応していくすべを身につけていくのである。
子育ての初期においては、普通、子育ての主役は母親になる。
これには、女性にしか妊娠や母手しの授乳ができないこと、また、妊娠期間からおなかのなかの子どもと一体感を持って過ごすことなどの生物学的な条件や、社会や文化の背景が大きく影響しているようである。
この時期は、さまざまなことに注意を向けなければならない一方で、生活上の多くの制約を受けている、非常に大変な時期なのである。
そして、子育ての主役となっている母親を精神的に抱き支えることが、父親をはじめとする家族の大切な役割なのである。
「お母さんは、お父さんをはじめとする家族にホールディングされていてはじめて、わが子をホールディングできる」のである。
母親を支え、また、配偶者としてその他の家族のホールディングをリードするという父親の役割は、つい見過ごされがちだが、子育ての重要なポイントなのである。

オブジエクトプレゼンティング

正高信男は、絵本の読み聞かせ実験を通して、より積極的な父親の役割を述べている。
彼の行った実験は、1歳半の女児に対して、計34人の男子学生が子どもに向かって絵本を読み聞かせを行うというものだ。

育児語

女性が乳幼児に語りかける際には、平常時より声が高くなったり抑揚が誇張され、マザリーズまたは母親語と呼ばれている。
実験では、男性が読み聞かせを行った状況でも、平常時より声が高くなったり抑揚が誇張されたりした母親語が出現していることが示され、育児語という言葉で呼び換えている。
男性の読み聞かせの声は、音の高さ自体は、もともとそれほど高くはなく、乳幼児が相手だからといって女性ほど高くなることはないのだが、抑揚の変化の幅は女性によるそれを上回っている結果となっている。

オブジエクトプレゼンティングについて

さらに一連の実験のなかで、このような男性による育児語の特徴は、読み聞かせる絵本の内容によってその効果が異なることが明らかにされている。
つまり、クマや汽車を題材にした楽しく可愛い内容の絵本では、女性による母親語のほうが子どもの注意をひきつけ楽しい雰囲気をかもし出す傾向が高いのだが、オバケや怪獣が出てくる怖い内容の絵本では、逆に男性による育児語のほうが乳幼児の注意をひきつける効果が高いのだ。
子どもが生活する環境は、必ずしも安全な環境ではない。
家の周りの側溝やストーブのそばなどの危険な場所では、子どもの活動に制限を加えなければならないことがある。
ストープに手を伸ばそうとしたわが子を見て、母親がとっさに金切り声をあげて子どもを制止することがある。
とっさの場合にはこの方法はもちろん有効だが、普段から言い聞かせておくためには、男性すなわち父親による育児語の語りかけのほうが効果を発揮するようである。
子どもが生きていく世界は、楽しいものや可愛いものだけではない。
怖いもの、畏れるべきものをも経験させていくオブジェクトプレゼンティングは父親の得意技だと考えられる。
正高は、子どもを外の世界へ導き、困難に立ち向かうことのできる存在へと発達させるために見守り、必要に応じて手を差し伸べ、前方へと踏み出す手助けをする、たんなる“もうひとりの母親"ではない父親のあり方を提案している。

乳児期前期に毛布などを好きになるのはなぜ?移行対象とは?

乳児院や養護施設などでは、子どもが、汚れてにおい立つような毛布やタオルケットを常に持ち歩く姿がまれに見受けられる。なぜ、毛布なのだろうか?
この問いに対しては、ハーロウによるアカゲザルの赤ちゃんによる実験がヒントを与えてくれる。

愛着を抱かせる刺激

ハーロウは、生後すぐにアカゲザルを母親から引き離し、母親の代わりに2種類の代理母親のもとで生活させた。代理母親の一方は、むき出しの針金でできており(ハードマザー)、もう一方は針金の上をやわらかい布で覆われた構造になっていた(ソフトマザー)。
8頭の生まれたてのアカゲザルを1匹ずつ檻に入れ、その檻のなかにはハードマザーとソフトマザーの両方の代理母親がいる。8匹のうち4頭は、ハードマザーの胸に仕掛けた哺乳びんからミルクを飲み、残りの4匹はソフトマザーの胸に仕掛けた哺乳びんからミルクを飲むという2種類の条件を設けた。
そうして、アカゲザルの赤ちゃんが、どちらの代理母親のもとにいる時間が長いかを測定した。
結果は、ハードマザーとソフトマザーのどちらの母親からミルクを与える条件でも、アカゲザルの赤ちゃんは、明らかにソフトマザーにしがみついて生活する時間が長かったのである。
このことは、アカゲザルの赤ちゃんは、生まれながらにして柔らかな感触のものを求める性質があることを示している。
ハーロウはまた、同じようにソフトマザーとハードマザーに育てられているアカゲザルが母親から離れているときに、動くおもちゃをそばに置いてみた。
赤ちゃんザルは恐怖を感じて、どちらの母親から授乳されているかにかかわらず、ソフトマザーの方に飛んでいってしがみついた。
さらにその後は、ソフトマザーから少し離れたおもちゃに関心を示し、またソフトマザーにしがみつくことを繰り返しながら、徐々におもちゃへの関わりを持つことができるようになったのである。

移行対象

このような現象は、人間の赤ちゃんにもみられる現象で、母親(愛着対象者)との間で安定した信頼関係を築けている子供は、母親との間での視線の交換を繰り返しながらその能力を伸ばしていくことができるのである。
下記の絵はスヌーピーのキャラクターで知られる有名な漫画のカットである。
このなかで頬に毛布をあて指をしゃぶっているライナスは、常に毛布を手放さず、彼の心を不安定にさせる事態に遭遇したとき、このようなしぐさで安心感を取り戻そうとするのである。このようなしぐさで安心感を取り戻そうとするのである。
乳児期には、安心感の源は母親の存在であり、声であり、抱擁であったりする。
幼稚園に入園したばかりの幼児は、園内で何かトラブルがあると母親の呼び名を呼んで泣く。
この頃までの子どもにとって母親は無条件に子どもの悲しみを受け入れ、あらゆる問題を解決し、必ず味方になって助けてくれるスーパーな存在なのである。
ところが、幼稚園には常時母親がいてくれるわけではない。
そこで、母親の代わりのものとして、母親を思わせる柔らかな存在であるところの毛布が、母親に代わって彼の安心感を取り戻させる材料となるのである。
このようなお気に入りの毛布やぬいぐるみなどを移行対象と呼んでいる。
この移行対象は、一般に母親を思わせ安心感の源になる一次的な移行対象から、友達のような人格を持ったぬいぐるみのような二次的な移行対象、さらに、自分の分身として存在する三次的な移行対象へと移り変わっていくのである。

乳幼児期の子供が「うそをつく理由」と「対応方法」を言語聴覚士が解説!

乳幼児がある程度言葉を話すようになると、真実とは異なることを言葉にして表出してしまうことがある。
“真実とは異なることを話す"ということを“うそ"と定義するならば、乳幼児期からうそが生じることはありえる。
乳幼児期は、急速に言語の能力が発達する。
言葉の発達は、子どもが育つ環境や持って生まれた性質などに左右され非常に個人差の大きな領域である。
また、乳幼児期の言葉は、言葉を媒介にした思考能力や、認知能力全般の発達にも左右されている。
そのため、乳幼児期にはうそをついてその場を逃れる意図がない、“結果的にうそになってしまったうそ"が発生することがある。

記憶容量の未発達のために生じるうそ

幼児は、よく周囲の親しい大人の口真似をして言葉を覚えていく。
そのため、周囲の大人たちからみれば、子どもが少々大人びた話し方をするのを見て、幼児でも大人と同じレベルの記憶能力や認識能力を持っているように感じてしまう。
ところが、実際には幼児はまだまだ発展途上中である。
記憶の容量についていえば、大人が一度に記憶しておけるものごとの数が5~9個であるのに対して、幼児ではだいたい年齢-1個といわれている。
たとえば、3歳の乗り物が大好きな幼児が幼稚園の保育室でロボットのおもちゃで遊んでいるときに、友達が車のおもちゃを持ってきた。
またもうひとりの子どもが、飛行機のおもちゃをもって来て、一緒に遊び始めた。
このような状況が続いた後で、この子どもに最初にどのおもちゃで遊んでいたのかを尋ねると、最初にロボットで遊んでいたことを思い出せずに、最も印象の強かった飛行機や車のおもちゃで遊んでいたと答えてしまうことがある。

現実モニタリングが未発達なために生じるうそ

幼児は、自分の願望と現実の区別がつかないことがある。
そのため、「~してくれたらいいなぁJという願望があると、その願望が実現していたかのように感じてしまうことがあるのである。
ですから、きょうだいでひとつずつのお菓子を食べているときに、先に食べ終わった弟が、お兄ちゃんが目を離した隙にお菓子をとって、「お兄ちゃんがくれた」と主張することが生じうるのである。

自分を守るためのうそ


2歳から3歳前後の時期は、第一反抗期と呼ばれ、お父さんやお母さんが指示したことに対して、「イャッ!」という言葉でもって、従うことを拒否することが多く見られる。
これは、それまで親、特に母親との間で強い一体感を持って生活してきた乳児期から幼児期の初期に移行するこの時期に、子ども自身の意図と母親の意図が必ずしも一致しない経験を重ねるうちに、自分は母親とは独立した存在であることを理解し、自らのことを“自分で決めたい"という自律性を獲得しつつあるために生じる現象なのである。
お父さんやお母さんにとってはやっかいな時期ではあるのだが、見方を変えれば、子どもにとっての世のなかの認識や自己主張の能力が芽生えてきた、発達の証なのである。
子どもが自我をはっきりと持つようになるにつれて、親や保育者との間での意思の葛藤が生じることが増えていく。
子どもが親の意思に反する行動を行って罰を受けたり、厳しく叱責されたりすることもある。
子どもにとって、罰を受けることはできれば避けたいことであるし、あまりに厳しい叱責は、親から見捨てられてしまうことへの恐怖にもつながる。
そのために、叱られないように、あるいは罰を受けないように、苦し紛れのうそをついてしまうことがある。
たとえば、お母さんが留守の間に我慢できずにお菓子を食べてしまった幼児が、「おじさんが来て、お菓子を食べちゃった!」などと言うことがある。
多くの場合、親や保育者は、子どもがうそをついたこと自体に驚き、逆上して、激しく問い詰めたり、叱ったりする。
このようなことが続くと、子どもはうそをついてしまった自分を守るために、うそにうそを重ねていってしまう。
さらに、親がどこまでも自分を追い詰めていく恐怖感を感じるようにもなり、それが親子関係の安定を崩してしまう危険性もある。
意図的なうそであっても、子どものうそのほとんどは、子どもの認知能力や他者の心のうちを推測する能力の未熟さのために、簡単に見破られてしまう。
子どもがうそをついたことを問い詰めて責めると、子どものうそはますます複雑化し狡猾なものに変わっていく危険性がある。
そういった場合は、子どもがうそをつかなければならなくなった心情を察して、その気持ちを代弁してあげることを通して、うそをつかずに素直に心情を表出することを身につけさせましょう。

親がうそをつくことの真似


大人は、時と場合によって、うそを方便として用いることがある。
大人が、うそをつく手本を見せ続けると、子どもがこれを観察学習して身につけてしまうこともある。
意図的にうそをつかない子どもに育てたいのならば、大人もまたうそをつかないで問題を解決する望ましいお手本を示すことが大切である。

レビー小体型認知症と進行性核上性麻痺の方の摂食嚥下障害への対応

レビー小体型認知症と進行性核上性麻痺の方の嚥下障害の特徴

レビー小体型認知症と進行性核上性麻痺で、もっとも重篤な嚥下障害の所見は誤嚥です。
誤嚥は声帯を越えた異物の侵入と定義され、固形物よりも液体で観察されることが多いです。
解剖学的な構造上、声帯より下方で異物の侵入を遮るがないため、誤嚥量が多ければ、そして咳漱による異物の排出がなければ、異物が肺野まで流れ込み、肺炎を起こします。
レビー小体型認知症ではむせのない誤嚥(不顕性誤嚥が多く、患者もその家族も重篤な嚥下障害に気づいていないことが多い。)
誤嚥はレビー小体病患者の肺炎発症のリスク因子であり、VFで誤嚥したレビー小体型認知症患者の検査後2年以内の肺炎発症率は83%です。
それに対し、誤嚥を認めなかったレビー小体型認知症患者の2年以内の肺炎発症率は4%に過ぎません。
レビー小体型認知症患者の嚥下造影検査(VF)では、口腔期の異常は50%、咽頭期の異常が17人85%に認められると言われています。
そして、レビー小体型認知症患者の45%は口腔期と咽頭期の両方に異常が認められます
レビー小体型認知症患者の口腔期の動きは認知機能と相関がある一方で、咽頭期は認知機能と相関しないとされています。
進行性核上性麻痺では嚥下障害が80%に現れ、死因は肺炎が最も多くなります。
進行性核上性麻痺は発症早期には嚥下反射の惹起は良好ですが、進行すると嚥下反射の惹起も遅くなります。
また、無動寡動のため口腔期の障害が強くなり、食物の送り込みが困難になります。
進行性核上性麻痺は、レビー小体型認知症に比べると誤嚥した時にむせることが多いが、むせたときの呼気流速が弱くなり、やがて肺炎を繰り返すようになります。

レビー小体型認知症と進行性核上性麻痺の方の摂食嚥下に影響する病態とその対応


レビー小体型認知症と進行性核上性麻痺の摂食嚥下には認知機能や運動機能の障害が影響します。 レビー小体型認知症は覚醒レベルの変動や起立性低血圧のため、食事中に急に覚醒レベルが低くなることがあります。
そのため、食事中の覚醒レベルが低いと、誤嚥や窒息のリスクが高くなります。無理に食べさせず、覚醒レベルが改善してから食事するようにして対処します。
覚醒する時間帯がバラバラであったり、一度に食べられる量が少なかったりする場合は、食事の回数を多くするなどして対応をするとよいでしょう。
レビー小体型認知症患者で、「食物に虫がいる、虫が見える」といった幻視や「食物に毒が入っている」といった妄想がある場合、錐体外路症状が出にくい非定型抗精神病薬を試す場合があるそうです。
その場合、過鎮静に前頭葉徴候がある進行性核上性麻痺患者は黙々と食物を口に運び続けることがあります。 嚥下のスピードよりも捕食のスピードが速いと激しくむせ、口腔に詰め込んだ食物を吹き出すことがあります。 介護者は声掛けし、口の中に食物を詰め込まないようにペーシングします。 注意が散漫な進行性核上性麻痺患者は窒息を起こしうるため、食事以外に気を惹くものを避け、声掛けするなどして食事に集中させる必要があります。
摂食動作に影響する運動機能の障害として、どちらの疾患も無動寡動が現れます。無動寡動が強いと、嚥下においては咀囑に時間がかかるようになり、舌による口腔から咽頭への食物の送り込みも悪くなります。
そういった場合は、食物のサイズを小さくし、まとまりを持たせると食べやすいことがあります。
また、レビー小体型認知症では口腔での食物の保持が悪く、口唇から食物が洩れたり、不用意に咽頭に送られた食物が誤嚥の原因になったりすることがあります。
そのような症状を認めた場合には、トロミをつけて対応します。
進行性核上性麻痺では頸部が後屈位になると口腔に入れた液体が意図せずして咽頭に流れ込み、誤嚥の原因になります。 このような場合にもトロミで対応するとよいでしょう。
誤嚥が疑わしい患者には、誤嚥性肺炎の予防のため、口腔の知覚神経を刺激する口腔ケアは有効です。
食事中の姿勢は、レビー小体型認知症ではしばしば上体は前屈し、頸部は後屈します。
頸部の筋強剛が強くなければ、上体を起こすことで、頸部後屈は解消されることが多いです。 上体を起こした姿勢は、食道での食物の通過も良くなります。
上体を起こすことが困難な患者であれば、食卓を低くし、頸部が過伸展しないようにします。 進行性核上性麻痺はむしろ上体が直立で、頸部は伸展位になります。頸部の過伸展は咽頭での食物の通過を障害するだけでなく、誤嚥の原因になりうるため危険です。
できるだけ下顎を引いた姿勢をとるように調整します。
また、眼球運動制限のため下方視ができない進行性核上性麻痺患者は、捕食の際、食物をよくこぼします。 食卓を高くして食物が視野に入るように調整したり、捕食しやすい食具を導入したりして対処するとよいでしょう。

幼児の困った行動をなくす工夫「計画的無視」「タイムアウト」について言語聴覚士が解説!

注目獲得が目的で困った行動をする場合の対応方法

子どもの困った行動に影響を及ぼす大きな因子のひとつとして、親や周囲の人々が子どもに“注目を与えること"があげられる。
例えば、幼稚園や保育所に通う子どもが時力下品な言葉を覚えてきてしまうことをあげよう。
家庭に帰って子どもがこのような言葉を口に出すと、お父さんやお母さんは思わず吹き出してしまったりすることがある。
そうすると子どもは得意げに何度も何度も繰り返す。
そして、大事なお客さんが来ているときに、子どもがお父さんやお母さんの注目をひきたくて下品な言葉を口に出してしまい、お父さんもお母さんも大赤面などという事態が稀に生じる。
さて、上記の例のなかにあるように、子どもの行動に反応して笑ったり声をかけたり、微笑みかけたりすること、あるいは誉め言葉を与えることや、叱ることも含めて、これらはすべて子どもに“注目を与えること"に相当する。
最も身近で信頼できる存在である、お父さんやお母さんから注目を与えられることは、乳幼児の行動に大きな影響を及ぼす。
親が与える“注目"は、子どもが行動を学習する際の行動を強める因子(強化子)としては、最も強力で汎用性に富んだものである。
先ほどの例では、お父さんとお母さんが、子どもの下品な言葉に対して吹き出してしまい、楽しい雰囲気が形作られたことが、子どもの「下品な言葉」という困った行動を強める強化子となってしまったのである。
周囲の大人の注目を獲得するために繰り返し行われるこのような行動を、注目獲得行動と呼ぶ。
この注目獲得行動は、幼稚園や保育所で着手の先生がよくはまってしまうトラップの例でもある。
保育活動中に、クラスの集団から離れて困った行動を繰り返す子どもを、他の子どもたちを待たせておいて叱りに行ったりすることがよくある。
当該の子どもは叱ったときにはシュンとなるのだが、先生が目を離すと、また困った行動をし始める。
これは、先生が叱ること(この時間は先生を独占できる)が、子どもにとって困った行動を強める強化子となってしまっているためで、子どもは先生の注目をひきつけるために困った行動を繰り返しているのである。
このようなときには、行動を強めている強化子を取り去ることが有効である。
つまり、あらかじめ危険なものをできるだけ取り除いておいた上で、一時的に子どもに注目を与えない(計画的無視)ようにするのである。
このようにすると、子どもの困った行動は一時的に激しくなったりするが、さらに注目を与えないようにしつづけると、やがて子どもの困った行動はみられなくなっていく(消去)

計画的無視について

先生や親にかまってもらうことを目的として行われる注目獲得行動に対して、計画的無視の手法がよく用いられる。
この方法では、子どもの特定の困った行動を無視する。
決して子ども自体を無視することではない。また、親や先生自身が興奮してしまっているときには、自身が一時的に子どものいる部屋から出て行く非隔離型のタイムアウトも有効である。

注目獲得が目的ではない困った行動


子どもの困った行動は、親や保育者の注目を目的としない形でも現れる。
たとえば水遊びをしていて、おもしろくておもしろくて、自分の服や周囲のものがびしょぬれになってしまっても、それにかまわずに遊び続けてしまうことがある。
この場合は、親や保育者の注目が困った行動の強化子になっているのではなく、活動そのものの楽しさが因子(強化子)になっているのである。
そのため、親や保育者が注目を与えなくても、活動そのものにはほとんど影響を及ぼしない。
このような注目が目的ではない困った行動に対しては、あらかじめルールを定めておくことや、子どもの興奮を冷まさせるためのタイムアウトなどのテクニックが有効である。

タイムアウトについて

なにか困った行動に熱中してしまっている子どもを、退屈な場所に連れて行き、ひとりで座らせておいて興奮を覚まさせる方法。
暗いところや恐怖を覚えさせることが目的ではなく、ねらいはあくまで感覚遮断による沈静化であることに注意する必要がある。

遊びと仲間関係の発達について言語聴覚士が解説!「ひとり遊び」「並行遊び」「連合遊び」「共同遊び」「ギャングエイジ」とは?

「ひとり遊び」「並行遊び」「連合遊び」「共同遊び」とは?

童謡「めだかの学校」のなかに、「みんなでお遊戯しているよ」という歌詞があるが、人間の子どもも小さい頃からみんなで遊ぶのだろうか。ここでは、子どもの社会性、すなわち対人関係の発達という観点から考えてみたいと思う。
パーテンによれば、社会性の発達に着目すると、乳幼児期における遊びの形態は次の4段階に分けられるとされている。

ひとり遊び

乳児期に多く見られる遊びの形態で、読んで字のごとく玩具を相手にひとりで遊ぶ状態を指す。
玩具の取り合いをする以外は、基本的に他の子どもたちと関わることはなく、自分だけの遊びに熱中する。保護者や保育者の援助を除けば、基本的には遊び相手をあまり必要としない遊びである。

平行(並行)遊び

3歳児頃に多く見られる遊びの形態である。たとえば、絵を描いたり、折り紙をしたりと、皆で同じ遊びをしてはいるのであるが、そのなかで子ども同士の関わりはなく、同一の遊びが平行して展開している状態である。
一緒に遊んでいるという感覚があるという点で、ひとり遊びよりも社会性の発達がみられるが、隣で遊んでいるのがどのような子でも、まただれかが同じ遊びを始めても気にせず、他の子どもに干渉したり、協力したり、という行動はみられない遊びである。

連合遊び

3、4歳児くらいにみられる遊びの形態で、一応、「子ども同士で遊ぶJという形態である。遊びのなかで、内容についてのやりとりや会話があり、玩具の貸し借りをする。
また、時には遊ぶ相手のえり好みをしたり、場合によっては拒否したりもする。しかしながら、一緒に遊んでいる子どもはほぼ同じ行動をしており、分業をしたり、リーダーシップをとる子どもがいるということはない。
また、同じ遊びをしていても、イメージが異なっていることがあり、たとえば大型積木で囲いを造って一緒に遊んでいる場合でも、ある子は「家」のつもり、別の子は「船」のつもり、ということがある。

協同遊び

幼児期における仲間遊びの完成形といわれ、およそ5歳以降にみられる。一緒に遊びながら、遊びのなかには分業がみられ、それぞれの子どもが違った役割をとりながら、一つの遊びを展開していく。
これに伴って、遊びのなかにルールを取り入れることが可能になり、子ども同士でルールを話し合ったりもする。また遊びのなかでリーダーシップをとる子ども(いわゆるガキ大将)など、子どものなかに社会的な地位が生まれる。

けんかも大事な学習

遊びは高次になるほど友達との関係や役割が複雑化するというように、社会性の発達の影響を強く受けているといえる。またその反対に、友達と一緒に遊ぶことで、自己を表現、主張したり、また友達のことを考えて我慢したりするなど、遊びを通して社会性の発達が促されるともいえる。
遊びのなかでは、時にはけんかやいざこざが起こる。特に、幼児期の子どもの思考には「自己中心性」と呼ばれる特徴があり、他の子どもの意見を取り入れにくく、遊びのなかでのトラブルの元になる。
しかし、幼児期のけんかはその場限りのものが多く、児童期以降にみられるいじめのように、長期化するものは少ないといわれている。ところで親や保育者は、このような子どもたちの間のトラブルにどう対処すればよいのだろうか。
「みんな仲良く」という標語の元に、けんかをいけないもの、としてとらえがちかもしれないが、子どもたちは遊びのなかでけんかやいざこざを体験することにより、例えば仲良くできなかった時の気分を味わうことで、仲良くすることの大切さや、対人関係をうまく結ぶにはどうしたらよいか、といった社会性に関する様々なことを学習するのである。
もちろん、けがをしそうだったり、明らかに危険な場合は大人の介入もやむえないが、けんかやいざこざも社会性の発達にとって意味を持つものであると考え、ある程度は見守る姿勢も必要ではないだろうか。
ちなみに幼稚園教育要領においても、「人に対する信頼感や思いやりの気持ちは、葛藤やつまずきをも体験し、それらを乗り越えることにより次第に芽生えてくることに配慮すること」(第2章ねらい及び内容人間関係)と、子どもの遊びにおけるけんかの持つ意味が示されている。

児童期の遊び仲間「ギャング・エイジ」とは?

さて、ここまで乳幼児期の遊びの形態についてみてきたが、それ以降の児童期ではどうなるのだろうか。児童期の中期ぐらいになると、同性、同年齢の、気の合う仲間との非公式的な(クラスや班などの外的な基準で決められたものではない)3~5人くらいの小集団による遊びが展開されている。
グループ内での団結が非常に強く、自分たちのルールや秘密の遊び場を作ったりする一方、ほかの集団や大人からは距離を置くようになる。このような集団はその特徴から「ギャング・エイジ」と呼ばれている。

誰もが悩む2~3歳の第一次反抗期について言語聴覚士が解説!第一次の反抗期の意味とは?

自我の芽生えと第一次反抗期

2、3歳の子どもを持つ保護者からの相談に、「最近、私の言うことに対して、何でも「ダメ!」「イヤ!」と言うようになり、急に反抗的でわがままになったようで困っている」というものがある。
さらに、相談は続き「この前も、出かけるときに私が『この服を着ていこうか』と薦めても「イヤ!」と言い、「じゃあ、こっちの服は?」と言っても「イヤ!」と言い続け、出かけられずに困ってしまった。
少し前までは素直ないい子だったのに……子育ての仕方を間違ってしまったのだろうか」と。
確かに、このように子どもが言うことを聞いてくれなかったり、反抗的だったりするのは、親にとっては悩みの種だし、ともすれば自分の子育てについても疑間を感じてしまうことだろう。
皆さんは、このような子どもの姿をどう思うだろうか。
何か問題を抱えているのでは、と思う方も多いと思うが、じつは、この時期の子どものこのような姿は、発達のなかで(第一次反抗期」と呼ばれる、だれにでもある、ごく普通の姿なのだ。
それではなぜ、子どもはこの時期になると急に親の言うことに反抗的になるのだろうか?

自我が芽生える

反抗期を説明するキーワードの一つに、「自我の芽生え」がある。
1歳くらいまでの乳児は、自分と母親とが別の存在であるという明確な認識を持っていないといわれている。
ですから、母親の言うことには素直に従うことが多いし、逆に母親が見えなくなると、とたんに不安定になり泣き出したりする。
そのような時期を過ぎて、2、3歳頃に起きる「自我の芽生え」とは、まさに「私は親とは別の存在である」ということを認識することだ。
自分を他の誰とも違った、独立した存在として認識できるようになることは、人格発達の上でも非常に重要な一歩であるといえるのである。

第一次の反抗期の意味とは

自己を主張する

自分は独自の存在であるという意識が強くなると、親との間に対立が起こるようになり、反抗期が訪れる。
親の指示を拒否し、自己主張が強くなるということは、一方の当事者である親からすれば、今まで可愛がってきて、そして素直になついてきたわが子がはじめて自分の言うことに反抗するわけだからだ、ショックも大きいだろう。
しかし反抗期は、反抗という形により自己を表現する能力の発達として考えられるので、できるだけ肯定的にとらえる姿勢が必要だ。
逆に、適度な反抗を起こさないということは、単に「素直な良い子」というだけでなく、自己を表現する能力の乏しさととらえることもできる。
また、家庭外、たとえば幼稚園や保育所において、他の子どもたちとの関わりのなかで自己を十分に表現できないという、社会性の問題につながる可能性もある。
反抗が起こらない原因の可能性としては、発達上の問題も考えられるし、親が過保護でいつも子どもの先回りをして、子どもが自発的に、自由に活動する機会を与えなかったり、また親が子どもに対して威圧的で子どもが自己表現することができないなど、育児をめぐる環境に問題がある場合もある。
自分は独自の存在であるという意識が強くなると、親との間に対立が起こるようになり、反抗期が訪れ、親の指示を拒否し、自己主張が強くなるのである。

自分に興味を持つ

自我の芽生えに伴うもう一つの側面として、自分の名前(名札や表札、自分の名前を書いた持ち物など)や、自分を示すマークに非常に興味を持つようになる。
また、親の言うことには拒否的である一方で、親の手を借りずに、自分で何かをすることや、自分で決定することには非常に積極的に取り組むようになる。つまり、自主性、自発性が育ってきているといえるのだ。
自分で何でもやってみたいわけだからだ。

親が手を貸そうとすると、強く拒否する。
つまり、親への反抗は子どもの自発性の裏返しともいえるのだ。

反抗期の子どもとうまく付き合うには

服を着てもらうには

ところで、冒頭の悩み相談に関して、子どもに服を着てもらうにはどうしたらよいだろうか。
ここまでの説明からもうお気づきかもしれないが、親が薦めるものには拒否的なのだが、自分で決定することに興味を持つということを考えてみよう。
一つのアイデアとして、子どもの前にいくつかの服を並べ、「さあ、○○ちゃんはどの服が着たいかな。自分で選んでごらん」と言えば、子どもは喜んで洋服を選んで着るかもしれない。

子どもを尊重しつつ、しつけも大切

反抗期を通して育つ子どもの自主性、自発性は、決して子どもが身勝手になることや、親が子どもの言いなりになることを示すものではない。
子どもは自己を主張することと同時に、それを年齢なりに調節したり、時には周囲のことを考えて我慢をすることを身につけることも必要なのだ。
その意味でも、親は子どもの反抗期の特性を受け止めながら、同時に子どもに対するしつけという立場も忘れてはならないといえるのではないか。

子供の発達で大切な見立て遊びとは?見立て遊びでの発達分類や「象徴」「象徴機能」について言語聴覚士が解説!

見立て遊びとは?


幼児期の子どもたちの遊びのなかで多くみられるものに、「ままごと」や「電車ごっこ」などの「ごっこ遊び」がある。
そのなかでは、たとえば砂がご飯に、泥水がコーヒーに、縄が電車に、というように現実とは異なった物を用いて、いわばその「ふり」をして遊んでいるといえ、このような活動を「見立て」と呼ぶ。
見立てはだいたい1歳半頃から見られはじめ、2歳を過ぎると、遊びのなかで見立てを行う「象徴遊び」が活発化する。
心理的発達に伴って、子どもは身の回りの事物を心のなかで別のものに見立てることが可能になり、それによっておもちゃや素材などの事物との関わり方も変化していく。
幼児期後半では、友達同士でイメージを共有することができるようになり、見立てたものを友達同士で共有することによって、遊びはよりいっそう複雑化していく。
この、見立てる能力の発達という観点から、村田は遊びを下記に示すような4段階に分類している。

「見立てる」能力の発達による遊びの分類

・第1段階(0~1歳)

事物はそのままの形で、子どもの身体運動遊びの対象となる。

・第2段階(2~3歳)

事物は別の事物の象徴となる。たとえば枕が人形になる。子どもの関心は象徴されているもの、およびその行為活動に注がれる。

・第3段階(4歳~)

事物はそれを媒介として対人活動が行われるものとなる。たとえば、風呂敷はドレスとして白雪姫遊びの展開をうながす。これは、象徴が仲間のあいだで共通化されるときに可能となる。

・第4段階(5歳~)

事物は遊びのなかで純粋に記号となるか、さもなければ不必要になる。

「見立てる」ために必要な力

この「見立てる」という活動は、非常に高度な認知的能力を持っているからこそ可能になるもので、特にこの活動にとって必要な能力には、表象と象徴機能とがある。

表象とは

表象とは、日の前にそのものがない場合でも、心のなかにそのものや事柄を思い浮かべる、イメージすることのできる能力のことだ。
たとえば、ままごとで茶碗に入った砂をご飯に見立てることができるようになるには、当然ながらご飯に関する知識がなくてはいけないが、それに加え、目の前にご飯がなくても、それを心のなかに思い浮かべることができなくてはならないのである。

象徴機能とは

象徴機能とは、事物や事象を、記号などの別のものによって認識する働きのことを指す。
砂をご飯に見立てている場合、子どもは砂を本来のものとは異なった、ご飯という別のもの(象徴的記号)としてとらえていると考えられる。
つまり子どもは「砂一ご飯」の関係を、「意味するもの一意味されるもの」として認識しているのだ。
このようなことができるということは、子どもが、日の前に存在する現実世界をそのまま認識するだけではなく、別のものに置き換えて、心のなかで操作する能力を持っていることを意味する。

見立てからわかる、子どもの持つ概念

見立てるという活動は、表象によって心のなかにイメージしたものを、日の前にある別のものに置き換えるという象徴機能によって成立していると考えることができる。
また、子どもは見かけが似ているものを見立てるだけではない。たとえば、大きい積木を「お父さん」、小さい積木を「赤ちゃん」というふうに見立てていることがある。これは、子どものなかに「大きいもの=大人」「小さいもの=子ども」という概念があることを示すものだが、このように漠然としたイメージもまた、見立てには利用されているのである。

ものを見立てる子どもの心


ものを見立てている子どもの心理状態は、どのようなものなのか。たとえば、ままごとで泥水をコーヒーに見立てている場合、おいしそうに飲むふりはしても、本当に飲んでしまうことはない。
それは、確かに遊びのなかでは「コーヒー」であっても、子どもは心のなかで、「本当は泥水だけれども、ここ(ままごと)のなかではコーヒーの『ふり』をしている」ということを認識していることを示している。
つまり、子どもなりに現実の世界と想像の世界とを区別しているのである。

また、時折大人に対して泥水のコーヒーを見せて喜ぶなど、見立てているものをアピールすることがあるが、これは、「泥水を、コーヒーに見立てているよ」という面白さについて、大人の承認を求めている行動と考えることができる。
子どもの「ごっこ遊び」は一見、本物が手に入らないのでとりあえず代わりのもので妥協しているような、いわゆる「子どもだましな世界」に見えるかもしれない。

しかし、子どもは高度な認知能力を働かせながら、見立てること自体を楽しんでいるのだ。
そのように考えると、子どもはわれわれが思うよりもずっと多くの能力を発揮しながら遊んでいるといえよう。