学齢期の吃音の対応方法や治療について

学齢初期は発達の状況に差が大きく、本人のモチベーションによっても治療の成否が変わってきます。
吃音への意識や困り感が少ない症例は治療に乗りにくいですが、低学年では幼児期と同様にリッカムプログラムが有効な場合があります。
8歳頃以降になると第2相の吃音に移行し、心理的悪循環が加わって自然治癒が少なくなります。
小学校の通級教室は地域差が大きく、教師に対して吃音についての研修の機会が与えられていない地域では、医療との連携が必要になります。

環境調整といじめ・からかいへの対応

吃ってもせかさずに最後まで聞き、吃るかどうかより、発話内容を重視するなどの態度を周囲が示す必要があります。朗読が苦手な場合は、授業では複数人で斉読するなどで困難が軽減されることがあります。順番に当てるよりランダム順に当てる方が言いやすい場合もあります。ランダム順に当てていると、抜かされても目立たないので、調子の悪い日は当てないという対応もしやすいです。何れにせよ、吃音のことをクラスに言いたいか、隠したいかなども含めて、あらゆる側面で、本人の希望を優先していきます。いじめやからかいが生じやすく、それらがあっても恥ずかしいために誰にも相談しないことも多いため、ことばの教室など、話を聞いてもらえる場を提供することが重要です。いじめやからかいが起きている場合は担任教師に断固とした対応を依頼します。低学年の場合、クラスメートにはわざと吃っているのではないという説明も有用です。

流暢性形成法

流暢性形成法は、柔らかくゆっくり言うことで、吃らないという目標を達成するための方法ですが、幼児期と異なり発話を意識的に修正しようとすることになり、ワーキングメモリが小さい学童では、日常的に使えるようになるのは難しいです。学童後期でワーキングメモリが大きい生徒は流暢性形成法が使えるようになることもあります。落ち着いて」「ゆっくりなどのアドバイスは、当人がすでに意識的に類似の努力を最大限しており、無効です。

吃音緩和法

吃音緩和法は力の入った吃音を楽な吃音にして、辛さを減らす方法です。わざと吃ることで吃音症状に慣れ、あるいは吃っても大丈夫だとわかり、過敏な情緒反応が減って、コミュニケーションが楽にできるようになります。遊び場面から導入することが多いです。手技としては流暢性形成法より容易であり、発話の不安を減らす効果があります。欧米では学童には、吃音緩和法を中心として、流暢性形成法を組み合わせて治療することが多いようです。

斉読、シャドーイング等

斉読やシャドーイングを行うと自動的に流暢な発話ができるので、繰り返すことで自然な発話能力があることを理解し、発話への自信が生まれます。斉読では指導者は徐々に声を小さくして(フェードアウト)、一人でも読めるようにします。シャドーイングは、適切な話速で行うと、吃らないように頑張る余裕がなくなり、結果的にそれをしなくても吃らないという体験ができます。素材としてはニュースなどが使えますが、速度調整ができるものが望ましいです。構音を意識しないで発話できるような他の二重課題によっても、自然な発話を誘導することができます。想定練習(ロールプレイ)も有用です。構音を意識させる単語の復唱練習や単なる朗読では悪化しやすいです。遅延聴覚フィードバック(DAF)は自分の発話を数十msから200ms程度遅らせて聴取するものであり、対症療法ではありますが、吃音がある者の半数近くはDAFを使うと吃音症状が抑制されるとの報告があります。これが有効であれば、発表や朗読等で使って授業への参加を改善することも選択肢になります(低学年には推奨しない)。

自己効力感の維持・増強

吃音のある方は、発話困難によって、自己効力感が低下していることが多いと言われています。学齢期には有症率が1〜2%になるため、他の吃音がある児に会うことは稀で、孤立感を深める一因になるので、行事などで他の吃音児と交流する機会を作ることが望ましいです。自助団体が主催するキャンプなども利用できます。学齢中期以降、個別対応としては、得意分野を伸ばすなどで自己効力感を高めさせることも重要となります。自己イメージを改善したり、吃音への見方を変えるなどを目的として、認知行動療法が用いられます。

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