反響言語 失語症





反響言語 失語症

相手の話しかけや質問に対して、それに適切に答えることなく、話しかけや質問をおうむ返しにそのまま発話する現象です。
波多野の総説によれば、反響言語には、その「反響」の有様と程度によって、いくつかの亜型が区別されています。
まず、相手の発話をそっくりそのまま反復するのを「完全型反響言語」という(例:「今日の調子はいかがですか?」→「今日の調子はいかがですか?」)。
より軽度の反響言語ともみなし得る亜型に「減弱型反響言語」があります。
これは相手の質問に答える際に、まず質問の一部を「おうむ返し」的に繰り返してから後に、自己の答えるべきことがらを発話するという現象です(例:「ご住所はどちらですか?」→「ご住所はね、○○です」)。相手の質問全部を「反響」するのではなく、最後の1個(または数個)のシラブルのみを復唱する形式のものを「部分型反響言語」といいます(例:「ご住所はどちらですか?」→「か!」)。
この場合、発話内容には意味的価値が欠如しています。
また相手の話しかけに対して、その直後に「おうむ返し」する反響言語を「即発型反響言語」、相手の話しかけから相当の時間が経過した後になって「おうむ返し」するものを「遅延型反響言語」といいます。
検者が故意に文法的に誤った文章で話しかけると、患者はその文法的な誤りを訂正して「鸚鵡返し」することがある(例:「お歳といくつ?」→「お歳はいくつ」)。これを「訂正現象」といいます。
成句・ことわざの類を発話し、故意に途中で止めてしまうと、患者はそこまでの語句を反響するのではなく、その後の言葉を発話して文章を完成させる(例:「犬もあるけば」→「棒に当たる」)。これが「補完」といいます。
これに似た現象に「(部分的)同時発話」があります)。挨拶言葉や患者の姓名などのような決まり切った言葉を検者が患者に比較的ゆっくり話しかけた時、検者の発話の途中から、患者が同じ言葉を同時に発話する現象をいいます。
検者が「おはよう」とゆっくり話しかけた場合、患者は検者の「よう」の部分と殆ど同時に「よう」と発話します。
反響言語の機序としては、①外的環境からの被影響性の亢進(環境依存症候群)、②選択的に保存された「復唱」、③強迫行動、などの説が提出されました。
現在は環境依存症候群説が有力とされています。
なお、ゲシュヴィンドは反響言語の神経機構として「言語領野孤立説」を提案しました。
この学説を巡る議論については超皮質性混合失語にています。

反響言語の責任病巣としては、環境依存症候群との関連で前頭葉損傷が問題となりますが、波多野は反響言語を特定領野の損傷に関連させることに否定的です