認知症 髄液検査により正確な診断

認知症 髄液検査により正確な診断
 
アルツハイマー型認知症の人の脳にたまったたんぱく質「リン酸化タウ」(黒い部分)を示す荒井啓行さん(東北大で)
 「自分は、もしかしたら認知症ではないか」

 仙台市青葉区の男性(79)は、4年ほど前からそう心配し始めた。日付や予定などを忘れることが頻繁にあったからだ。

 2008年、東北大病院(同市)の物忘れ外来を受診した。問診や認知機能テスト、頭部画像による検査などを受けたが、すべて正常。「加齢に伴う物忘れ」と診断された。

 それでも心配な男性は、2年後に再度受診した。主治医で老年科准教授の古川勝敏さんに、アルツハイマー型認知症かどうかを調べる脳脊髄液(髄液)の検査を提案された。

 アルツハイマー型は認知症の中で最も多いタイプで、脳の神経細胞が急速に死滅する。その過程で、「リン酸化タウ」という異常なたんぱく質が脳内にたまり、一部が脳と脊髄の周囲を巡る髄液に流れ出す。

 そのため、髄液中のリン酸化タウの量を調べて普通の人よりも3倍程度多ければ、アルツハイマー型認知症の疑いが強いと判断できる。

 男性は検査に同意。腰に針を刺して髄液を採取する「腰椎穿刺せんし」を受け、髄液を分析機器にかけてリン酸化タウの量を調べた。その結果、量は普通の人と同程度で、アルツハイマー型認知症の疑いは低いことが分かった。頭部画像など他の検査も問題なかった。

 この髄液検査は1997年頃から、東北大などが研究費を使って実施してきたが、今年4月から保険で検査を行えるようになった。費用は6800円で、患者負担はこの1~3割だ。

 老年科教授の荒井啓行さんによると、リン酸化タウが一定量を超えれば、80%以上の確率で、すでにアルツハイマー型認知症を発症しているか、今後、発症の恐れがあるという。

 全国的な検査体制が整っておらず、普及にはまだ時間がかかりそうだが、荒井さんは「頭部画像など従来の方法と併用することで、より早期で正確な診断につながる」と期待する。

 腰椎穿刺で重大な障害が残る危険性は低い。ただ、脳内の髄液による圧力が変化し、強い頭痛を覚える人は比較的多い。大半はやがて治るが、長引く場合もある。検査を受ける際はこうした点も知っておきたい。

 男性は検査結果にも安心せず、「将来、認知症にならないように」と、軽い運動や栄養バランスのよい食事など規則正しい生活を心がけている。古川さんは「生活習慣の乱れは認知症になるリスクを高めるので、規則正しい生活はとても良いことだ」と話す。

(2012年4月26日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=58023&from=osusume