形態認知 (呼称のルート)

形態認知 (呼称のルート)

後頭葉の第1次視党野に到達した視覚情報は、この後、第2次視党野、第3次視覚野とさらに高次の中枢で、より複雑な視覚認知処理が行われます。
ここでは、絵に含まれるさまざま直線の角度や曲線の曲がり具合、さらには奥行き・色・場所・動きなどに関する情報の認知が行われます。
つまり、「形態認知」とは、その絵に対してゆがみのない正しい像を脳内に表象する処理のことをいいます。

形態認知の段階の障害

形態認知の段階の障害では、光を提えることは可能であるにもかかわらず、物体の形・位置・色・ 動きなどに関する情報を正しく認知することが困難になります。
このような障害を、統覚型視覚失認と呼びます。

エリクソンの心理社会的発達の8段階

エリクソンの心理社会的発達の8段階

乳児期前期(0〜1歳)

心理的危機 : 信頼 対 不信
有意義な対人関係 : 母親または、その代わりとなる人
好ましい結果 : 信頼と楽観性
発達課題 : 育児(母親との関係)を通して外界や自己への信頼を構築する。

乳児期後期(1〜3歳)

心理的危機 : 自律的 対 恥・疑惑
有意義な対人関係 : 両親
好ましい結果 : 自己統制と適切さの感じ
発達課題 : トイレ・トレーニングを中心とした「躾」による命令や禁止を内在化する。

幼児期(3〜6歳)

心理的危機 : 積極性 対 罪悪感
有意義な対人関係 : 基本的家庭
好ましい結果 : 目的と方向:自分の活動を開始する能力
発達課題 : 外界を探索し、創造することを獲得する。

児童期(6〜12歳)

心理的危機 : 勤勉性 対 劣等感
有意義な対人関係 : 学校
好ましい結果 : 知的・社会的・身体的技能の有能さ
発達課題 : 学業に努力し、社会的・対人的技能を身につけ、課題に取り組み、解決することで有能感を獲得する。

青年期(12〜19歳)

心理的危機 : 同一性 対 同一性の拡散
有意義な対人関係 : 仲間集団と外集団:リーダーシップモデル
好ましい結果 : 事故を独自な人間として統合したイメージを持つこと
発達課題 : さまざまな経験のなかから見つけ出してきた自己を統合する。

成人期初期(20〜30歳)

心理的危機 : 親身性 対 孤立
有意義な対人関係 : 親友:性、競争、共同
好ましい結果 : 親密で永続する関係を形成し、生涯を託すものを決める
発達課題 : 青年期に形成した自己の同一性と他者の同一性を自分を見失うことなく融合する。

壮年期(30〜65歳)

心理的危機 : 生殖性 対 沈滞
有意義な対人関係 : 労働を分けもつことと、家事を分けもつこと
好ましい結果 : 家族、社会、未来への世代への関心
発達課題 : 生産物、芸術、概念など次世代へ引き継 ぐものを責任をもって育て発展させる。

老年期(65歳〜)

心理的危機 : 統合性 対 絶望
有意義な対人関係 : ”人類”:”わが子”
好ましい結果 : 充足と自分の生への満足感
発達課題 : 次世代を育て信頼 し,自 己の生涯を統合する。

非言語的記号の入力(呼称のルート)

非言語的記号の入力(呼称のルート)

呼称の第一段階で、被験者が、提示された絵を見る段階です。
被験者の網膜に入力された光の刺激(視覚情報)は、視神経を通り、外側膝状体を中継し、後頭葉の第1次視覚野を目指します。

非言語的記号の入力の段階の障害

非言語的記号の入力の段階の障害は、視力障害・視野障害や皮質性の視知覚障害などです。
ここは、内言語障害には含まれません。
これらの問題をかかえた患者に検査を行う際には、視力障害であるなら、度の合った眼鏡を掛てもらったり、場合によっては、提示する図版を拡大する 必要するといった配慮が必要です。
また、視野障害の場合には、図版を正面に提示するのではなく、障害されていない側の視野にずらして提示した方が良い場合もありますが、検査手順に定められた標準的な施行方法ではない場合は、その旨検査用紙の欄外に記載しておくようにします。

純粋失書の病巣と特徴

純粋失書の病巣と特徴

純粋失書を出現させる病巣として、①左中前頭回後部、②左上頭頂小葉、③左角回~後頭葉、④左側頭葉後下部、⑤左前頭葉内側面を報告しています。
障害部位別の特徴として、①左中前頭回後部では、仮名の錯書に順序置換が特徴的で、②左上頭頂小葉では、筆順異常が顕著で写字でも障害があり、③左角回~後頭葉では、仮名優位の書字障害の報告もあるが一般には両者の障害が混在し、失書の内容は色々であり、④左側頭葉後下部では、漢字に優位の失書で無反応が多いとされており、⑤左前頭葉内側面では、漢字・仮名に差異はなく、誤り内容は漢字・仮名とも錯書が多いと報告されています。

アルツハイマー型認知症末期の嚥下障害と対応

アルツハイマー型認知症末期の嚥下障害と対応

アルツハイマー型認知症は末期になると脳の萎縮も重度になり、全介助でほぼ寝たきり状態となります。
このころには偏食や過食といった症状はなくなり、身体機能の低下もあいまって食事中の立ち去りもみられなくなります。 反対に、身体機能の低下に伴い嚥下機能自体も障害されてくるため、食塊形成の障害、送り込み不良、誤嚥、窒息などがみられるようになります。
意識レベルの低下や傾眠傾向といった症状も出現し、日常の生活リズムも乱れることがあるため、それらが食事摂取量に影響することも多くなってくきます。
さらに進むとパーキンソン症状も出て経口摂取量が極端に少なくなり、重度の誤嚥を呈するようになります。
その場合には看取りも含めた終末期に対する対応が必要となります。

聴覚的理解(単語)のプロセス

聴覚的理解(単語)のプロセス

認知神経心理学では、➀〜➄のプロセスを経て、単語の聴覚的理解がされていると考えられています。
 当サイトに投稿した各プロセスの記事を以下にまとめていますので、ご参照ください。
➀音声入力

➁音響分析

➂音韻照合(入力音韻辞書)

➃語彙照合(入力語彙辞書)

➄意味照合(意味記憶)

意味照合 (意味記憶の活性化)

意味照合 (意味記憶の活性化)

語彙照合で、語彙であると判断されると次に、意味照合 (意味記憶の活性化)が行われます。
「意味」とは、その人が生まれてから現在に至るまでの認知体験の中で、「世界」を切り分けて整理してきた「項目」の総体のことをいいます。
この「項目」のことを「カテゴリー」と呼ぶこともあります。
「意味 (あるいは意味記憶)」 とは、 このような「項目(カテゴリー)」の総体をいいます。
例:「鳥、猫、ねずみ」は「動物」の小項目となり、「動物」は「生き物」の小項目といったように、自分を取り巻く環境世界を、たくさんの項目によって切り分けて、整理して理解しています。
また、「意味 (あるいは意味記憶)」は 、一人ひとりの体験によって、切り分け方、整理の仕方が異なっているといわれています。

意味照合 (意味記憶の活性化)の段階の障害

語彙として捉えることができても意味が分からないという症状が出現します。聞き取れているにもかかわらず意味が理解できない症状に対して、認知神経心理学では、語義聾 (word meaning deaflless)という用語が使われています。
例:/ame/という2モーラの音韻列が日本語の単語(語彙)であると判断することはできているにもかかわらず、「雨って聞いたこがある言葉だけど、なんだ?」のように意味にたどりつくことができない、または、「晴れ」と誤って違う意味にたどり着いてしまうというような症状が現れます。

語彙照合(入力語彙辞書)

語彙照合(入力語彙辞書)

音韻照合(音韻入力辞書)で、音韻が認知されると、次に音韻の並び(音韻列)が脳の中に語彙(単語)として登録されているかどうか(入力語彙辞書) を、照らし合わせる処理が行われます。この段階を語彙照合と呼びます。
語彙照合で「語彙である」と判断されると(語彙照合の成立)、次はその語彙が指し示す意味 (語義)の解釈に進みますが、「語彙ではない」と判断されてしまう場合もあります。
語彙照合が上手くいかないと、脳がその音韻列は意味をもたない、つまり非語であると感じてしまうことがあります。

語彙照合の段階の障害

語彙照合の段階の障害では、例として、/neko/という2モーラの音韻列が、日本語の単語なのかどうか(語彙か語彙でないか)についての正しい判断が難しくになります。
また、「アメフリデスネ」と話しかけられたのに対して、「アメフ?」と、不適切な部分で区切って聞き返すような症状として現れることもあります。 そのような、聞き取った音韻を正しく語彙照合させることのできない障害を、語形聾(wordformdeahess)といいます。

音韻照合(入力音韻辞書)

音韻照合(入力音韻辞書)

音声入力や音響分析に異常がなければ、検査者の口から発せられた音声は音響的には正しく捉えられます。
しかし、音響分析の段階では、その音響が日本語の音韻、いわゆる五十音のどれに該当するかはまだ確定されていません。
音韻照合(入力音韻辞書)の段階では、聞き取った音響を日本語の音韻と照らし合わせる作業を行います。
その際に、参照されるリストのことを入力音韻辞書と呼び、照らし合わせる処理のことを音韻照合と呼びます。

音韻照合(入力音韻辞書)段階の障害

音韻照合(入力音韻辞書)段階の障害では、音響として正しく脳内に響いているにもかかわらず、日本語におけるどの音韻なのかが確定できないという状態となります。
そのため、症状としては、発話者の音声が正しい音韻として認知できなかったり、異なる音韻に照合されてしまうなどの誤りがみられます。
この症状は、正しく聞き取った語音を音韻と照合させる段階の障害という意味で音韻聾(phonological deafness)と言われています。

音響分析(単語の聴覚的理解)

音響分析(単語の聴覚的理解)

音響分析は、単語理解までの二段階目です。
音は内耳 (蝸牛)で、電気信号に変換された後、蝸牛神経核→上オリーブ核→下丘→内側膝状体と、聴神経を上行し、側頭葉の1次聴皮質(横側頭回)に到達します。
その間に、母音の弁別に必要な周波数特性 (フォルマント構造)や、子音の知覚に必要な時間的変化 に関する詳細な特徴分析が行われます。
この段階を「音響分析」 と呼びます。

音響分析の段階の障害

音響分析の段階の障害大きく分けて2種類あります。

第1次聴皮質もしくは皮質下(聴放線)が両側とも損傷された場合

第1次聴皮質もしくは皮質下(聴放線)が両側とも損傷された場合では、音は聞こえるのですが、言語音や動物の泣き声・乗り物の音、電話の音等の環境音、音楽のメロディーなど、いずれも認知困難になります(狭義の聴覚失認)。

損傷が左右いずれか一側の場合

損傷が左右いずれか一側の場合では、障害は比較的言語音に限定されます(広義の聴覚失認)。
この症状は、言語音に関する聾という意味で、古くから語聾 (word deafness)という用語で知られてきました。 近年では、語音聾 (word sound deadness)と呼ばれています。
auditory neuropathy、auditory nerve diseaseといった聴神経レベルの疾患でも、純音聴力の閾値上昇が軽微であるにもかかわらず、語音の間き取りが障害される場合があると言われています。

音声入力(単語の聴覚的理解)

音声入力(単語の聴覚的理解)

音声入力 (聴覚)は単語理解までの一段階目です。
この段階では、検査者が発話した音声が、空気の振動として被験者の鼓膜から耳小骨へと伝達され、内耳 (蝸牛)で基本的な周波数分析が行われます。

音声入力 (聴覚)の段階での障害

音声入力 (聴覚)の段階での障害は、聴党障害 (伝音性難聴・感音性難聴など)です。
内言語 (language)の情報処理過程の障害ではありません。
音声入力に問題のある患者 さんに検査を行う際には、補聴器をつけていただ くなど配慮が必要となります。

認知神経心理学的モデルの用語の定義

認知神経心理学的モデルの用語の定義

照合

「照合」は、音声や文字など耳や目から入ってきた情報を、自分の脳内の記憶 (鋳型)と 照らし合わせる処理を表します。

選択 想起 配列

「選択」「想起」「配列」は 、いずれも語彙や音韻や文字など、脳の中にある言語記号を表出する (出力する)ための処理を表します。

変換

「変換」は、情報を、性質の違ったものへ「翻訳」する機能を表しています。

活性化

「活性化」は 、脳の中に貯蔵されている特定の項目(アイテム)が 、処理されるために「意識 (ワーキング・メモリー)」 の場に呼び出されることを意味しています。

国際生活機能分類における構成要素の定義

国際生活機能分類における構成要素の定義

心身機能(body functions)

身体系の生理的機能(心理的機能を含む)のこと。

身体構造(body structures)

器官・肢体とその構成部分などの、身体の解剖学的部分のこと。

機能障害(構造障害を含む)(impairments)

著しい変異や喪失などといった、心身機能または身体構造上の問題のこと。

活動(activity)

課題や行為の個人による遂行のこと。

参加(participation)

生活 。人生場面(life situation)への関わりのこと個人が活動を行うときに生じる難しさのこと(activity linnitations)。

活動制限

個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと。

参加制約(partlcipalon restnc10ns)

人々が生活し、人生を送つている物的な環境や社会的環境のこと。

環境因子(environmentalfactors)

人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと。

非律動性不随意運動(異常運動)の種類

非律動性不随意運動(異常運動)の種類

バリズム

四肢近位関節を中心に振り回されるような粗大で 激しい運動をバリズムといいます。

舞踏病(アテトーゼ)

一定の肢位を保持できずに、四肢や体幹の不規則かつ非律動的にゆっくりと動かす運動を舞踏病(アテトーゼ)といいます。

ジストニー

緩徐で持続の長い力強い、主に長軸を中心として 捻るような運動をジストニーといいます。

チック

顔しかめ、瞬き、舌だし、肩すくめ、首振り、溜息、唸り声など突発する瞬間的な身振りや習癖と 関連した運動をチックといいます。

口舌ジスキネジー

口の左右へのもぐもぐや尖らし運動、舌の前後左 右への不規則な動きや回唇のなめ回しなどを口舌ジスキネジーといいます。

ミオクローヌス

一つまたは多くの筋の短時間の不随意的な収縮運動をミオクローヌスといいます。

絶対筋力と最大筋力と筋力増加について

絶対筋力

  • 絶対筋力は、l㎠あたり4~10kgとなります。
  • 絶対筋力は、年齢・性別・トレーニングの有無により異なります。
  • 絶対筋力は、筋横断面積に比例します。

最大筋力を決める要因

  • 収縮様態は遠心性収縮>等尺性収縮>求心性収縮の順で最大筋力の強さが異なります。
  • 最大筋力は、筋線維の数と長さ、筋の横断面積のより異なります。
  • 関節の回転運動が、関節角度が120°付近が最大筋力が発揮されます。
  • 通常、筋収縮は70~80%で制限されています。

筋力増加について

トレーニング初期の筋力増加は、収縮していなかつた筋線維が働き出すことによるものになります。 単位断面積あたりの発揮筋力、すなわち絶対筋力は増加しますが、筋横断面積はそれほど増加しません。 さらにトレーニングを続けると、骨格筋が肥大して筋力が増加します。

排尿異常や排便異常の用語について

排尿の異常

尿量の異常

無尿

一日の尿量が100ml以下で腎臓から膀胱に排泄できない状態をいいます。

乏尿

一日の尿量が300〜500ml以下で一日に産生される代謝産物を尿中に排泄できず、体内に蓄積が生じる状態をいいます。

多尿

一日の尿量が2000〜3000ml以上の状態をいいます。

排尿回数の異常

頻尿

一日の排尿回数が10回以上あるもので、排尿回数が以上に増えた状態をいいます。

稀尿

一日の排尿回数が1〜2回と極度に少ないものをいいます。

排尿困難

膀胱内に溜まっている尿が出にくい状態をいいます。 尿線が細くなつたり、排出力が弱くて排尿するまでに時間がかかったり、排尿しはじめてから終わるまでに長い時間がかかったりすることをいいます。

尿閉

排尿困難の最終段階で膀洸内に溜まった尿が完全に排泄できなくなった状態をいいます。

尿失禁

膀胱内に尿を保持できず、自分の意思とは無関係に尿が漏れ出してしまう状態をいいます。

排便の異常

便秘

大腸内での便の通過時間が長く、水分が吸収されて便がかたくなり、排便困難を伴う状態をいいます。

下痢

便が大腸を早く通過するため、水分が吸収されず、液状またはそれに近い状態で便を繰り返し排出する状態 をいいます。

便失禁

S状結腸や直腸内に便を保持できず、自分の意思とは無関係に使が漏れ出してしまう状態をいいます。

姿勢制御機構の階層性

下位中枢の機能は上位中枢に統合され、下位中枢独自の機能は抑制されています。

静的姿勢制御

頭部・体幹を重力方向に対 して正しい位置に戻し、構えを正常位にすることを立ち直り反射といいます。

動的姿勢制御

支持基底面を移動させて姿勢を保持する反応をバランス反応、平衡反応といいます。
1つの反射による運動が次の反射運動の刺激となリー連の反射が連続して起こる連鎖反応です。 個々の反射が連続して規則的に機能します。

脊髄反射

脊髄反射には、①伸張反射、②屈曲反射、③陽性支持反応と陰性支持反応、④交叉性反射、⑤長脊髄反射があります。

低位脳幹(延髄、橋)の反射

①緊張性頸反射(非対称性緊張性頸反射 、対称性緊張性頸反射)、②緊張性迷路反射 、③頸の立ち直り反射があります。

高位脳幹(中脳)と視床の反射

①迷路性立ち直り反射、②頸に対する体の立ち直り反射、③体に対する体の立ち直り反射があります。

大脳皮質の反射

①視性立ち直り反射、②踏み直り反応、③跳び直 り反応、④足踏み反応があります。

筋収縮の種類と特徴

等尺性収縮 isometric contraction

抵抗に対して筋が収縮する場合、筋の張力が増し収縮しているにもかかわらず、筋の起始・停止が一定の長さを保っている収縮のことをいいます。
実際には筋内部における収縮性部(筋線維)の短縮と両端の弾性部(腱など)の延長が起こっています。

等尺性収縮の特徴

  • 酸素消費は少ない。
  • 最大張力を得やすい。
  • 関節を動かしてはならない場合でも、筋力増強訓練として使用することができる。
  • 特別な機器を利用せずにどこでも簡単に行うことができる。
  • 運動痛のある四肢の筋力増強に適している。
  • 比較的短時間に急速に筋力を向上させる。
  • 関節角度特異性がある。
  • 大きな力をだしていなくても疲労感が強くなりやすい。
  • 強い負荷を持続的に与えた場合、末梢血管抵抗を増大させて血圧の上昇を招く恐れがある。
  • 運動負荷が過負荷になる傾向がある。
  • 固有感覚障害により位置覚・運動覚力、喪失している場合には、運動を自覚することが困難となる。

等張性収縮 isotonic contraction

抵抗に対して筋が収縮し、張力がかかり、関節運動が起きる場合の収縮をいいます。 (同量の負荷抵抗に対して筋収縮を行うため、等張性収縮といいます)
実際には、筋の牽引角度・角速度・てこの原理による負荷量が変化するため一定の張力を保持することは不可能です。

等張性収縮の特徴

  • 筋のポンプ作用の賦活により静脈血・リンパの還流を多くする。
  • 心肺機能の働きの促進に適している。
  • 運動感覚刺激を向上させることができる。
  • 筋力を規則正しい速度で改善していく傾向がある。
  • 強度が強く、時間を延長するに従って酸素消費が大きくなる。
  • 最大張力を得にくい。

求心性収縮(短縮性収縮) concentric contraction

筋収縮時に筋の起始・停止が近づいていく、筋張力が抵抗より大きい場合にみられる相のことをいいます。
  • 負荷量よりも筋張力が強く、筋の長さが短縮しつつ運動する。
  • 一定の割合で筋力増強をするのに適している。
  • 少ない負荷量で運動回数を増やすことにより筋持久力の増大が図れる。

遠心性収縮(伸張性収縮) eccentnc contraction

筋収縮時に筋の起始・停止が遠ざかる、抵抗が筋張力より大きい場合にみられる相のことをいいます。
  • 筋張力よりも負荷量が強く、筋の長さが伸張しつつ運動する。
  • 発揮される筋力は、伸張性1又縮、等尺性収縮、短縮性収縮の順であり、筋力増強運動に適している。
  • 負荷量としては、最大筋力の120~130%が最適とされている。

等速性収縮 isokinetic contraction

関節運動における角速度を一定に保持した筋収縮の相のことをいいます。 このとき、運動速度はあまり問題とされておらず、また、いかに速度を一定にしようと努力しても等速にはなり得ないといわれています。

等速性収縮の特徴

  • 種々に運動速度を変化させることにより等尺性収縮や等張性収縮特徴をもっています。
  • 運動後の疲労・痛みの出現が比較的少ないとされています。
  • 各々の角度で最大の抵抗を筋に負荷させ得ます。
  • 運動痛があれば、痛みの許容範囲内での最大抵抗を筋に負荷させ得ます。
  • 等尺性収縮・等張性収縮より大きな筋の活動電位を示し、より多くの運動単位を活動状態にしています。

リハビリテーションの時期と特徴

リハビリテーションの時期と特徴

急性期

早期離床による廃用症候群の予防と早期からの運動学習によりセルフケアなど日常生活の早期自立を目指します。理学療法であれば、疾患や障害特性への配慮、リスク管理、廃用症候群の予防を考慮しながら早期離床、基本的な運動、動作の獲得を目標とします。

回復期(亜急性期)

セルフケア、移動、コミュニケーションなどの日常生活動作(ADL)を最大限に改善するような介入を行い、寝たきりの防止、家庭復帰、早期社会復帰を目指します。 基本動作練習、日常生活動作(ADL)練習、こころのケア、家族への対応、家屋改修などが行われます。

維持期(慢性期)

通院、通所、訪問でのリハビリテーションを継続して回復期で獲得した日常生活動作(ADL)を維持します。獲得した機能・体力維持、生活環境整備、社会参加の促進など効果的な日常生活活動の能力を維持します。

終末期

尊厳のある終末期を支援します。最後まで人間らしさを保証するように、清潔保持、不動による苦痛の解除、不作為による廃用症候群の予防、著しい関節の変形・拘縮の予防、呼吸の安楽、経口摂取の確保、尊厳の排泄手法の確保、家族へのケアなどが必要となります。

強直と拘縮と関節機能異常

強直と拘縮と関節機能異常

強直 ankylosis

関節内にある組織の病理的変化に基づいて関節面が癒着し、可能性を喪失した状態を言います。 骨性強直(完全強直)と結合織性強直(不完全強直)とがあります。 理学療法では、ほとんど治療困難なものです。

拘縮 sontracture

関節外にある軟部組織が病理的変化に基づいて短縮し、伸展性が喪失したために、可動域が制限された状態を言います。対象となる組織によって皮膚性拘縮、筋性拘縮、神経性拘縮、関節性拘縮などと呼ばれます。 感染に、またはある程度改善される余地のあるものをいいます。

関節機能異常 jaoint dysfunction(Mennellによる)

病理学的に変化がない関節で遊び、滑り、回転などの関節内運動の機能が傷害された状態を言います。 改善が可能なものを言います。

NIHSS

NIHSSとは

NIHSSとは、脳卒中の重症度を評価するスケールです。
National institute of Health Storoke Scaleの略でNIHSSです。1989年ごろから臨床現場でよく用いられています。
脳梗塞の治療法の1つであるrt-PA静脈注射中は、1時間までは15分毎に、投与開始から7時間までは30分毎、24時間までは1時間毎にこのNIHSSを行うことが管理指針で定められています。

NIHSSの評価方法

NIHSSの評価方法は、1a~1cと(2)~(11)までの合計13の項目をチェックして点数を計算して行きます。
最高は42点で、点数が高いほど重症度が大きくなります。
  • 1aは、意識水準です。0点が完全覚醒で、1点が簡単な刺激で覚醒する、2点が繰り返して刺激したり強い刺激で覚醒する、3点が強い刺激に対しても完全に無反応、となっています。
  • 1bは、意識障害の評価です。今は何月ですか?あなたは今何歳ですか?といった質問に正確に答えられるかどうかをみます。 0点が両方正解、1点がどちらか片方のみ正解、2点が両方不正解となっています。
  • 1cは意識障害の評価で、開眼閉眼の指示や手を握る開くの指示に従えるかどうかを見ます。 同じく2つともできれば0点、どちらか片方だけできれば1点、両方ともできなければ2点です。
  • (2)は、注視がどのくらいできるかです。 0点が正常、1が部分的注視麻痺、2点が完全注視麻痺です。
  • (3)は、視野を評価します。 0点が視野の欠損なし、1点が部分的半盲、2点が完全半盲、3点が両側性半盲です。
  • (4)は、顔面の麻痺のチェックです。 0点が正常、1点が軽度の麻痺、2点が部分的麻痺、3点が完全麻痺の4段階で判定します。
  • (5)は、上肢の運動で、座位で90度、仰臥位(仰向けに寝る)で45度の挙上ができるかどうかを見ます。 0点の45度を10秒保持可能、1点が45度を保持できるが10秒以内に下垂してしまう場合、2点が45度の挙上や保持ができない場合、3点が重力に抗して動かない場合、4点が全く動かないと5段階で判定します。
  • (6)は、下肢の運動で、仰臥位で下肢を30度挙上させます。 0点の30度を5秒間保持可能、1点が30度を保持できるが5秒以内に下垂してしまう場合、2点が重力に抗して動きが見られる、3点が重力に抗して動かない、4点が全く動かない、となっています。
  • (7)は、運動失調・指鼻指試験です。 0点のなしから2点の2肢で評価します。
  • (8)は、感覚の評価でpin pickテストです。 0点が障害なし、1点が軽度から中等度障害、2点が重度から感覚脱失です。
  • (9)は、言語の評価です。 0点の正常から1点の軽度から中等度の失語、2点の高度の失語、3点の無言・全失語まであります。
  • (10)は、構音障害のチェックです。 0点が正常、1点が軽度から中等度の障害、2点が高度の障害です。
  • そして最後の項目(11)は、消去や無視の程度です。 0点がなし、1点が軽度から中等度、2点が高度です。
このようにして1つ1つ判定して行き、それぞれの点数を足していきます。 全部が最高得点だった場合は42点となります。

NIHSSでわかること

このNIHSSでわかることや用いられ方は、点数に応じて投薬治療や手術の適応の有無を判断することが可能です。 また、その後の神経回復やどれくらい自立した生活ができるかといった、予後の予測をつけるために用いられています。 この点数が高いほど退院後の自立した生活が難しくなるということで、退院後のおよその生活状況がわかります。 家族で介護ができるか、デイサービスや訪問看護が必要か、他施設への転院を考えるべきかといった看護計画やその後のリハビリなどの判断にも用いられます。
しかし、NIHSSではいくつかの欠点も指摘されています。
1つ目は、脳神経のチェック項目が少なく、循環系の障害は評価が不十分であること、2つ目は、言語機能の点数配分が高いことから失語症があると点数がアップして重症度が高くなることがあげられます。 そして3つ目に、意識障害があると点数が高くなること、4つ目は、軽微な麻痺がカウントされないことです。 さらに5つ目に、同じ点数でもADLの程度が全く違うことがあって、ADL障害を反映していないことです。
全般的な機能を評価することはできますが、この点数で治療効果の判定ができると言うものではないでしょう。
また、NIHSSは、いつ評価しても同じ結果が得られるという点や、誰が評価しても同じ結果が得られるという点は優れていますが、同じ人が複数回評価すると同じ結果になるかどうかの検者内信頼性は確認されていない、と言うデメリットも指摘されています。
NIHSSによる脳卒中の重症度評価のこれらの欠点を補うために、NIHSSだけではなく他の評価方法を併用することが多いです。 例えば、modified rankin scale(mRS)やstroke impairment assessment(SIAS)があります。
それぞれのスケールのメリットやデメリットを知ったうえで、上手く併用することが大切です。

精巣腫瘍の病期分類(日本泌尿器科学会 日本病理学会/編)

精巣腫瘍の病期分類(日本泌尿器科学会 日本病理学会/編)

I期

転移がない

Ⅱ期

横隔膜以下のリンパ節にのみ転移がある

ⅡA

後腹膜転移巣が5cm未満

ⅡB

後腹膜転移巣が5cm以上

Ⅲ期

遠隔転移

Ⅲ0

腫瘍マーカーが陽性であるが、転移巣不明

ⅢA

横隔膜以上のリンパ節に転移がある

ⅢB

肺に転移がある
  • B1:片側の肺の転移が4個以下かつ2cm未満
  • B2:片側の肺の転移が5個以上または2cm以上

ⅢC

肺以外の臓器にも転移がある
※陰のう内にとどまる腫瘍は、腫瘍の大きさによる差を見出し難いため、手術の困難さ、転移により分類しています。
日本泌尿器科学会、日本病理学会編「泌尿器・病理 精巣腫瘍取扱い規約 2005年3月【第3版】」(金原出版)より参照

頭部外傷の分類

頭部外傷の分類

1)頭蓋骨骨折(Skull injury)

①円蓋部骨折(Vault fracture)

  • 線状骨折(Linear fracture)
  • 陥没骨折(Depressed fracture)

②頭蓋底骨折(Basiler fracture)

2)局所脳損傷(Focal brain injury)

①急性硬膜外血腫(Acute epidural hematoma, AEDH)

②急性硬膜下血腫(Acute subdural hematoma, ASDH)

③脳挫傷(Brain contusion)

④外傷性脳内血腫(Traumatic intracerebral hematoma, TICH)

3)びまん性脳損傷(Diffuse brain injury, DBI)

①軽症脳震盪(Mild concussion)

 一時的な神経機能障害(記憶障害)のみで意識障 害なし.

②古典的脳震盪(Classical cerebral concussion)

 6 時間以内の意識障害あり.

③びまん性軸索損傷(Diffuse axonal injury, DAI)

 Mild DAI:昏睡 6 ~ 24 時間
 Moderate DAI:昏睡24時間以上,脳幹部障害なし.
 Severe DAI :昏睡24時間以上,脳幹部障害あり.

IGCC(International Germ Cell Consensus)分類

IGCC(International Germ Cell Consensus)分類

予後良好

非セミノーマ

  • 肺以外の臓器転移がない。
  • かつAFP<1,000ng/ml
  • かつhCG<5,000IU/L
  • かつLDH<1.5×正常上限値

セミノーマ

  • 肺以外の臓器転移がない。
  • かつAFPは正常範囲内
  • hCG、LDHは問わない。

予後中程度

非セミノーマ

  • 肺以外の臓器転移がない。
  • かつ1,000ng/ml≦AFP≦10,000ng/ml
  • または5,000IU/L≦hCG≦50,000IU/L
  • または1.5×正常上限値≦LDH≦10×正常上限値

セミノーマ

  • 肺以外の臓器転移がある。
  • かつAFPは正常範囲内
  • hCG、LDHは問わない。

予後不良

非セミノーマ

  • 肺以外の臓器転移がある。
  • またはAFP>10,000ng/ml
  • またはhCG>50,000IU/L
  • またはLDH>10×正常上限値

セミノーマ

  • 該当なし

IGCC(International Germ Cell Consensus)分類とは

1977年に提唱されたマーカー値を重視した精巣(睾丸)腫瘍の分類法です。 hCG(Intact hCG)を用います。 日本のFree-β hCGは利用できません。
日本泌尿器科学会、日本病理学会編「泌尿器・病理 精巣腫瘍取扱い規約 2005年3月【第3版】」(金原出版)より参照。

ワレンベルグ症候群患者の特徴

ワレンベルグ症候群患者の特徴

唾液嚥下困難

急性期では唾液嚥下が困難な例が多いです。 そのため、自身でティッシュペーパーに喀出している場面が見かけます。 夜間はティッシュペーパーを1箱以上使用することも珍しくないといわれています。 唾液喀出量の減少が、嚥下機能改善を確認する 1つの指標となります。

栄養摂取方法

急性期では、経鼻胃経管栄養法が主となります。 回復期リハビリテーション時に、バルーン訓練を行うためには、咽頭部をフリーにする OE 法(間欠的口腔食道経管栄養法)、または胃瘻の選択が必要となります。 嚥下機能に改善が見られれば、その改善に合わせて摂取量、回数、食事形態に注意しながら経口摂取を進めていきます。

咽頭機能の左右差

食塊の通過側は、非麻痺側が優位であることがほとんどです。しかし、急性期には麻痺側優位に通過する症例も見られます。この詳細はVF(嚥下造影検査)の正面像で検討することができます。

高次脳機能

認知症を合併しているケースを除いて、高次脳機能には問題が見られないケースが多いです。 そのため、自主訓練として頭部挙上訓練やバルーン拡張法などを積極的に進めていくことが可能です。

ADL

小脳の脳血管障害の合併などによっては、失調症状を呈し歩行が困難になることもありますが、急性期から独歩可能、トイレ動作、ADL 自立というケースも珍しないと言われています。

誤嚥性肺炎の危険因子

誤嚥性肺炎の危険因子


患者背景

  • 高齢
  • 男性
  • 喫煙
  • 栄養不良
  • 咽喉頭コロニーの形成(口腔内不衛生)
  • 嚥下障害
  • 食道蠕動低下・嘔吐
  • 咳嗽反射の低下
  • 意識状態の変調
  • 経管栄養
  • アンギオテンシン変換酵素遺伝子型(deletion/deletion)

基礎疾患

  • 認知症
  • 糖尿病
  • 慢性肺疾患
  • パーキンソン病

薬剤

  • 制酸剤(プロトンポンプ阻害剤)
  • 鎮静剤
  • 向精神薬
  • 抗コリン剤(胃内残渣増加)
  • カルシウム拮抗薬(食道括約筋力低下)
  • アンギオテンシン変換酵素阻害剤の未使用

日本外科感染症学会雑誌Vol.13(3)2016より参照

気管切開患者のケアの注意点

気管切開患者のケアの注意点


サイズ、形状の選択


患者毎の呼吸状態、嚥下機能、咽頭や気道の解剖をアセスメントし、単管・複管、カフの有無、カフ上部吸引の必要性、発声の可能性を考えて必要な気管切開チューブを選択をする。

サイズはフレーム部分や製品の外箱に内径(I.D)や外径(O.D)がミリ単位で表記されている。

チューブの形状やサイズが合わず長期に気道粘膜を刺激すると、出血や肉芽形成、潰瘍形成、気管食道瘻など合併症発生の原因となるため注意が必要となる。

挿入時はスタイレットの抜き忘れに注意が必要


気管切開チューブ挿入の際は、製品に付属しているスタイレット(オブチュレーター)を使用する。

挿入後は必ず抜去されていることを必ず確認することが重要である。

固定方法


一般的にはネックホルダーをフランジの穴に通し、指が1本入るくらいの緩みをもたせて頸部に固定する。

頸部術後で頸部の浮腫の可能性がある場合は頸部周囲に1周せず固定する方法もある。

また、自己抜去予防安全用具を使用するなど安全対策も行う必要がある。

閉塞への注意


硬くなった痰や気道分泌物による閉塞は窒息や低酸素など重篤な合併症につながるため、気管切開チューブの開存性には常に注意が必要となる。

痰の粘稠度が高い場合は、加温・加湿、去痰薬の使用、脱水の是正に注意し、気道クリアランスを保つケアを行う。

気管切開チューブ先端の肉芽形成による閉塞の可能性もあるため、呼吸音聴取や痰の性状から痰の貯留以外の閉塞が考えられる場合は医師に報告し気管支鏡による確認や処置が必要となる。

また、スピーチバルブの装着や気管切開患者のネブライザー使用時など、呼気の排出経路が不完全な場合は窒息につながるため、必ず吸気と呼気の通り道を確認して接続する。

スキンケア


出血や気管分泌物は速やかに取り除くようにする。

気管孔周囲の機械的刺激や分泌物による皮膚の浸軟から皮膚トラブルが起こると強い不快感につながるため、皮膚保護材やドレッシング材の使用を検討する。

永久的に気管孔を維持する場合はより丁寧なケアが求められる。

気管切開チューブ抜去後のケア


自発呼吸の安定や気道狭窄、気道のクリアランスなどの問題が解決した場合、気管切開チューブ抜去を検討する。

通常、切開孔は抜去から3〜7日前後で自然閉鎖するが、酸素化・換気の維持、痰の排出、気道狭窄の有無、誤嚥がないかなど観察し、酸素や挿管準備、吸引の物品を揃えておく必要がある。

呼吸器ケア 2016 vol.14 no.3より参照。

気管切開が必要となる場合

気管切開が必要となる場合

  1. 1〜2週間を超えて気道確保が必要と予測される場合
  2. 上気道閉塞や気管狭窄、気道の病変があり人工気道を要する場合
  3. 反回神経麻痺や嚥下障害などによって下気道への誤嚥リスクが高い場合 ...etc

気管挿管から気管切開への移行は、早期実施による死亡率や肺炎発生率に有意な差は示されていません。

一般的には患者状況により挿管後1〜2週間のタイミングで行われます。

気道熱傷や頸部損傷、呼吸中枢の障害など、原疾患の回復に時間がかかると予測される場合には気管挿管せずに気管切開が行われています。

また、開心術後などは縦隔炎のリスク回避のために、術後2週間経過し手術創の治癒が進んでから行われる場合もあります。

呼吸器ケア 2016 vol.14 no.3より参照

気管切開チューブの交換時期と交換方法

気管切開チューブの交換時期


気管切開チューブの交換については、現在は明確なエビデンスがない状況です。
通常は1週間で交換を行われていますが、在宅や長期留置で感染などのリスクが少ない場合には、2週間で交換する施設もあるようです。

気管切開チューブの交換方法


交換時は同じサイズを選択するようにしますが、再挿入困難な場合もあり、それに備えるような形で、1サイズ小さいサイズを準備しておく場合もあります。

気管切開術後2〜3日間は、気管孔が瘻孔化しないことから、再挿入が困難になる場合があり、計画外抜管には、注意が必要となります。

無理に押し込んでしまうと、皮下に迷入し皮下気腫や縦隔気腫などの重篤な合併症につながる可能性があります。
挿入経路が再確保できない場合は経口挿管を行い対応します。

呼吸器ケア 2016 vol.14 no.3より参照

気管切開チューブの種類と特徴

気管切開チューブの種類と特徴のまとめ


単管式と複管式


単管式の特徴


単管式は臨床で最も多く使用されている。
内筒や側孔がなく、管は一重になっている。
急性期から慢性期まで幅広く使用でき、人工呼吸器への接続など陽圧換気を必要とする場合は単管式が最適と言われている。

複管式の特徴


  • 複管式は内筒と外筒の二重管式の気管切開チューブで、内筒だけを取り出して交換・洗浄が可能。
  • 痰が多く硬くなりやすいケースや、在宅など挿管が長期にわたる場合に使用される。
  • 内筒は医師以外で取り出して洗浄や交換ができるため、分泌物による内腔閉塞の予防がしやすいメリットがある。
  • チューブ部分が二重になることから、内腔が狭くなる欠点がある。

カフ付きとカフなし


単管式・複管式のどちらのタイプの気管切開チューブにもカフ付きとカフなしがあります。

カフ付き


  • カフ付きは気管切開術後の出血や口腔内からの分泌物の垂れ込みをシールドし、人工呼吸器使用において、陽圧換気中のエアリークを防止することができる。
  • デメリットは、違和感やカフによる圧迫から気管粘膜の損傷を起こす場合があることである。

カフなし


  • カフなしは主に小児で使用するほか、誤嚥のリスクがない場合に使用可能。
  • 嚥下機能が十分でない場合は、不顕性誤嚥を起こしやすいため嚥下機能の評価が重要となる。

カフ上部吸引ポート付き


  • カフ付きチューブにはカフ上部吸引のポートが付いているタイプもある。
  • カフ上部吸引は、カフの気道側上部に溜まった気道分泌物をポートから吸引し、下気道への流入を防止することが目的となる。
  • カフのしわや、咳嗽により気道内圧が上昇した場合、下気道への分泌物流入はゼロにはできないため、誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアによる清浄化が重要となる。

特殊形状タイプ


スピーチタイプ


  • 自発呼吸があり、意識レベルが低下していない患者で咽頭機能が残っている場合、発声を目的に使用する。
  • 一方弁の発声バルブを使用して、チューブ頭側の側孔から呼気を声門に送ります。そのため、呼気経路の遮断がないように側孔の位置が合っているか、閉塞がないか観察する必要がある。
  • 痰によりバルブの開閉が不能になるトラブルを避けるため、夜間は取り外すことが基本となる。

ネックフランジ可動タイプ


  • フランジの位置が可動式になっており、肥満や頸部腫脹で気管までの距離が長いときや、逆に短いときに長さの調節が可能。
  • 気管内肉芽や気管裂傷、潰瘍など気道の問題があり中枢側に深く挿入したい場合などに選択する。
  • 挿入後はフランジの固定に緩みがないように確認が必要なる。

切開孔保持用(レティナ)


  • 呼吸状態が安定しており、病態的に気管切開孔を保持したい場合に使用します。
  • 素材がやわらかく小さいため、気道の違和感が少ないことが特徴です。
  • ワンウェイバルブを使用することで発声も可能となります。

気道維持用

  • 肺がんや咽頭がんなどの気管狭窄や、気管粘膜の肉芽形成、気管軟化症例などで気管の閉塞防止のために使用する。
  • 気管ステント留置までの一時的な使用に用いる場合が多い。

ケベック分類 (外傷性頸部症候群の重症度分類)

ケベック分類 (外傷性頸部症候群の重症度分類)


Grade O:頸部に訴えがない、徴候がない

Grade I:頸部の痛み、こわばり、圧痛のみの主訴、客観的所見なし

Grade Ⅱ:筋・骨格徴候を伴う頸部主訴

Grade Ⅲ:神経学的徴候を伴う頸部主訴

Grade Ⅳ:骨折または脱臼を伴う頸部主訴

ケベック分類の注意点


・筋・骨格徴候には可動域制限と圧痛を含む

・神経学的徴候には腱反射低下や消失と感覚障害を含む

・症状や障害は、耳が聞こえない、めまい、耳鳴、頭痛、記憶喪失、嚥下障害、側頭上顎関節痛などを含み,どのような程度に発現してもよい

外傷性頸部症候群に対するケベック分類grade Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの推定病理


Grade I:顕微鏡的あるいは多発性顕微鏡的損傷

Grade Ⅱ:頸部捻挫と南部組織(椎間関節包、靭帯、腱、筋肉)周辺の出血軟部組織損傷による筋痙縮

Grade Ⅲ:機械的損傷あるいは出血、炎症で惹起される神経組織の損傷