ウェルニッケ失語の病巣

ウェルニッケ失語の病巣

Broca領域が解剖学的位置によって規定されているのに対 して、Wernicke領域はその障害により言語理解障害が起 こる領域と考えられています。
主に上側頭回後部を中心とした部位を指すようですが解剖学的定義は一定していません。
なお、Wernickeは、最初、音響心像の座として上側頭回を推定し、1906年の論文では上側頭回後半を感覚性言語 中枢と考えたが、これに隣接する中側頭回の一部を含めてもよいような表現をとっています。
最も狭い領域を指して言っているのはGeschwindであり, Brodmannの22野に相当する領域 (上側頭回の後ろ1/3付近)にほぼ相当するとして、一般的に狭義のWernicke領域 と呼ばれています。
典型的なウェルニッケ失語は、左側頭葉後上部を中心とし、縁上回と角回にも伸展する病巣で起こります。
後方の範囲が広く角回損傷が強い場合には、読みと書字の障害が強く現れます。
ウェルニッケ失語を起こす皮質下病巣として は、Alexanderらによると、側頭峡が重要であるとされています。
また、被殻出血が主に後方へ伸展し側頭峡を損傷した場合に、音韻性錯語を伴うウェルニッケ失語を呈し、小声 になり片麻痺を伴う点が皮質損傷主体のウェルニッケ失語と異なるといいます。

ウェルニッケ失語の症状

ウェルニッケ失語の症状

ウェルニッケ失語は、流暢で錯語が目立つ豊富な発話と聴覚的理解障害、復唱障害を特徴とする失語症です。
視野障害(右上四半盲など)以外の神経症状は伴わず、失語が表に立つ例が多いと言われています。
構音とプロソディーに問題にはなく、話す文章の長さも保たれていますが、内容は質問や状況に応じたものではないことが多いです。また、意味が伝わらない空疎な発話であることもあります。
しばしば多弁で、聞き手がさえぎらない限りしゃべり続ける語漏を呈することがあります。
患者は自己の言語障害に対する病識がないことが多いのもウェルニッケ失語の特徴です。
このような病態失認には理解障害が必発ですが、逆に理解障害が重度であっても必ずしも病識がないとはいえないと言われています。それは、病識がある場合、あるいは理解障害の改善とともに病識が出現してきた場合には、発話量があまり多くない場合もあるからです。発話は文法的には許容できる構造を持っていることが多いものの、錯語のために正常な文法構造にはみえないこともあります。
語性錯語がしばしばみられますが、発症初期には音韻性錯語や新造語がみられることもあり、錯語の頻発のため意味を汲み取ることができないジャーゴン失語の様相を呈することがあります。

ブローカ失語の再帰性発話と発語失行

ブローカ失語の再帰性発話と発語失行

常同言語が無意識的かつ不随意的に繰り返し発せられる言語症状を再帰性発話 (recurrent utterance)といいます。
常同言語が内容のある語からなるものを実在語再帰性発話といいます。
語として認知不可能な語音または語音の組み合わせで あるものを無意味再帰性発話といいます
Brocaの第1例は何を聞かれても「たん、たん」とだけ繰 り返す無意味再帰性発話を呈しています。
再帰性発話を示す失語症患者の失語型は主にブローカ失語あるいは全失語といわれています。
ブローカ失語と発語失行 ブローカ失語に発語失行は必須かどうかですが、Bensonによると、個々の症例でみた場合に発語失行がない場合があっても良いとのことです。
Broca領域皮質下から後方へ伸展する病巣で、中心前回下部皮質が保たれた症例では、発語失行を伴わない点を除いてプローカ失語に一致する失語症状が生じたとの報告もあります。

ブローカ失語の病巣

ブローカ失語の病巣

典型的ブローカ失語は、Broca領域 (下前頭回の弁蓋部と三角部)と中心前回下部を含む前頭葉、島前部、側頭葉前部、頭頂葉の一部の皮質と皮質下および側脳室周囲の白質を含む深部病変で起こると言われています。また、ブローカ失語は左中大脳動脈の上半領域の脳梗塞で起こるといわれています。 このような、広範囲の病巣例は、発症当初は全失語の病像を呈し、その後回復して持続性のブローカ失語に移行することが多いといいます。
ブローカ失語の重要な構成要因である非流暢性については、下部ローランド領域 (中心前回、中心後回)皮質および皮質下病変が持続性の非流暢性と関係するとする報告や、側脳室前角外側の白質と側脳室体部外側の自質の両者が損傷された場合に重度の非流暢性を生じるとする報告があります。
被殻出血の場合、出血が前方に伸展して前頭葉白質を広範に損傷する場合にブローカ失語が起こりますが、その頻度は必ずしも高くないようです。
↑Broca領域 シルビウス溝上行枝より三角部、後ろを弁蓋部と言います。

ブローカ失語の症状

ブローカ失語の症状

非流暢な発話を特徴とし、聴覚的理解が発話に比べて保たれたタイプの失語症です。
発話の量は減少し、努力的に1語〜数語の短い文を話す程度です。その他に、ごく限られた発話可能な語(常同言語、verbalstereotypies)が残る例もあります。名詞、動詞、形容詞、副詞のような実質語が多くなり文法構造が単純化する失文法がみられます。
また、発語失行を伴うことが多く、発話開始困難、構音運動の探索、プロソデイーの障害、構音の一貫しない誤りなど発語失行の特徴がみられます。しかし、「1、2、3」といった系列語や、「わかりません」というといった自動的発話、歌を歌う場面においては、言語表出が飛躍的に改善することがしばしばあります。
錯語は、音韻の脱落や置換をはじめとする音韻性錯語が主体であることが多いですが、語性錯語もみられます。
ブローカ失語の呼称障害は、語頭音ヒントがかなり有効である点が特徴です。呼称の際は、音韻性、語性のいずれの錯語も出現しますが、表出の誤りに気付く傾向があり、呼称の誤りを「違う」と言つて取り消すことが多いといわれています。
復唱は自発話よりも良い場合が多いですが、多かれ少なかれ前述のような発話障害の特徴を示し、復唱が正常に近い超皮質性運動失語とは区別されます。
書字による表出も話し言葉と同程度に障害されていることが多いです。
話し言葉の理解は、検者が言った単一の物品を指示することは大体可能である。しかし、2つ以上の物品を順番に指し示す二段階命令のレベルですでに障害を明らかにできることも多いです。
また、「鉛筆で鏡にさわってください」のような助詞の使い方を含む文法的な理解は不良となります。
観念運動失行および口・顔面失行を伴うことが比較的多く、この場合、日頭命令の理解は可能であるにもかかわらず、たとえば、「さよならと手を振る」というような上肢の行為、「口笛を吹く」、「せき込む」などの口・顔面を含む行為が障害されるので、理解障害との鑑別が必要となります。

流暢性と復唱能力による失語症のタイプ分類

流暢性と復唱能力による失語症のタイプ分類

I.非流暢性失語

単語レベルの理解障害あり

復唱不良→全失語
復唱良好→混合型超皮質性失語 a)

単語レベルの理解はほぼ良好

復唱不良→ブローカ失語
復唱良好→超皮質性運動失語
a)より軽い理解障害のものを含める場合がある

Ⅱ.流暢性失語

中等度以上の理解障害

復唱不良→ウェルニッケ失語 b)
復唱良好→超皮質性感覚失語 c)

理解障害なしまたは軽度

復唱不良→伝導失語
復唱良好→健忘失語
b)単語と文の両者で明らかな障害
c)単語と文の少なくとも一方で明らかな理解障害

WAB失語症検査の流暢性尺度

WAB失語症検査日本語版の流暢性尺度

(0)全く単語がないか、短かくて無意味な発話である。
(1)多様なイントネーションをもった紋切型の言葉 が頻発し、何らかの意思を伝えられる。
(2)1語文で錯語、努力性、渋滞が認められる。
(3)頻発する流暢な言葉か、ぶつぶつ言う非常に小さい声のジャーゴンである。
(4)つっかえる電文体の発話。ほとんどが1語文で、しば しば錯語になる。時々、動詞や助詞を伴う。 文は、「ちょっとわかりませんね」のような決り文句 だけである。
(5)しばしば電文体であるが、(4)よりは流暢な発話であり、文法的に正しい構造をした部分がある。 錯語が目立つこともある。命題文はほとんどみられない。
(6)完全な命題文がふえる。正常な統語法のパターン (正しい文法用法の意)が見られることもある。錯語がみられることもある。
(7)日本語の統語法のリズム上存在しうる発話であるが、音韻変化や新造語を伴う音韻性ジャーゴンである。常に流暢であり、多弁なこともある。
(8)迂遠な表現をし、流暢な発話、顕著な喚語困難があ り、語性錯語がある。意味性ジャーゴンが見られることもある。文は多くの場合、完全であるが、状況に不適切 な内容のことがある。
(9)ほとんど完全で適切な文である。時にためらい や錯語がある。多少の喚語困難がある。構音の誤りが多少みられることもある。
(10)正常な長さと複雑さをもった文で、明らかな遅さやためらい、あるいは構音の障害がない。錯語はない。

入力文字辞書とは

入力文字辞書とは

入力文字辞書とは、私たちの脳内にある文字の記憶が貯蔵されている倉庫と言い換えることができます。
つまり、日本語話者の場合、漢字や平仮名やカタカナなどの形態の記憶が集まった場所になります。
「ト」「ロ」という形態素は、日本語圏では、/to// ro/と いう音韻を表示していますが、ハングル文字の中にもきわめて似た形態が存在し、それぞれ/a// m/という音素を表示しています。このため、どちらの言語圏で生活する人もそれぞれこれら「ト」「口」という形態を文字として捉えることが可能です。
つまり、「ト」「口」という1 形態素は、日本語圏の人の入力文字辞書にも韓国語圏の人の入力文字辞書にも存在していることになります。
このように、人の脳の中には、その母国語に応じた文字辞書が存在していると言われています。

読解の音韻ルート

読解の音韻ルート

仮名単語「えんぴつ」を/え//ん//ぴ//つ/と 、1文字ずつ音韻に変換してから語彙照合し、意味の理解に至る場合に音韻ルート(読解)を通ります。
1.文字入力〜3.文字照合 (入力文字辞書)までは、こちらを参照ください↓

4.文字 /音韻変換

ここでは、文字照合 (入力文字辞書)の段階で照合された文字を1文 字ずつ音韻に変換する処理が行われます。 変換に成功すると、脳内の入力音韻辞書で、その文字に対応する音韻表象が活性化され、「心 の中で音読している(黙読)状態」となります。
文字 /音韻変換 とは、「文字辞書内で活性化 した特定の文字が、入力音韻辞書で照合を 受けること」です。 ですから、両辞書間に正しい対応関係が保たれていなくてはならないわけです。
文字 /音韻変換規則のことを、英語 では grapheme/phoneme conversion rule(GPC ru!e)といいます。 文字 /音韻変換の障害が起こると、それが文字であるということは分かるにもかかわらず、その文字から正しい音韻を活性化させることができない状態となります。 具体的には、 どのように読むのかが分からなかったり、誤った読み方をしてしまったりすることになります。

5.語彙照合 (入力語彙辞書)

次の段階は、聴覚的理解 (単語)の語彙照合と共通の処理過程になります。 /enpitsu/という4モーラからなる音韻列が語彙であるかどうかを、入力語彙辞書に照らし合わせる処理になります。 語彙照合 (入力語彙辞書)の段階で障害が起こると音韻列が語彙か非語彙かを判断することが難しくなります。

6.意味照合 (意味記憶の活性化)

語彙であると捉えられた後は、聴覚的理解 (単 語)の 場合と同じように、その語彙/enpitsu/に 対応する意味記憶を活性化させるという最終段階に入ります。 その人の認知体験に応 じた鉛筆の意味記憶に基づく、様々な鉛筆の視覚的表象や、聴覚的表象が活性化することになります。

単語の読解のルート

単語の読解のルート

単語の読解では、まず、被験者の前に何枚かの絵を提示します。 そのあと、検査者は、その中からどれか1つの絵を表す単語を文字で提示して、被験者に日の前の選択肢の中から該当する絵を指差すことを求めます 。
日本語の文字形態には、漢字、平仮名、片仮名があります。
漢字は中国から渡ってきた文字で、1文字1文字が何らかの語彙情報 を持っており、表語文字と呼ばれています。
平仮名や片仮名は音韻を表す目的で、漢字を基に後から日本人が作り出した文字であり、表音文字と呼ばれています。
性質の異なる漢字と仮名は、脳内での処理のされ方も異なっているようです。

1.文字入力

まず、被験者は、提示された「鉛筆」や「えんぴつ」という文字を見ることからはじまります。被験者の網膜に入力された視党的な情報は、主要なルー トとして視神経、外側膝状体を通り、後頭葉の第一次視覚野へ伝達されます。

2.形態認知

後頭葉の第一次視覚野に入力された情報は、さらに第二次視覚野、第二次視覚野と進み、より高次の処理を受けます。文字を構成している直線や曲線の傾き・形態および相互の位置関係などが分析され、脳内に「正しい形態」が表象されます。 形態認知の段階で障害があると、文字の形態を正しく模写 した り、同じ文字同士のマッチングを行ったりすること等が難しくなります。つまり、統覚型視覚失認の影響が文字の認知にも現れることになります。文字の同定以前の、形態としての認知の段階における障害のため、提示された「鉛筆」や「えんぴつ」という文字は、文字としては捉えることができません。

3.文字照合 (入力文字辞書)

「鉛J「筆」や「え」「ん」「ぴ」「つ」など、個々の文字の形態が脳内で正しく表象されると、次にその表象は、脳内に存在する文字の記憶 (文字辞書)と照らし合わされるこ とになります (文字記憶との照合)。つまり「鉛」や「え」 という視覚表象が、ここに至って「文字」として認知されます。 文字照合 (入力文字辞書)の段階で障害がおこると、同じ文字同士をマ ッチ ングさせることや、文字を図形として模写することなどは可能です。 しかし、文字であるという認知がなされないため、文字を模写しようとすると、文字を写しているというような連筆 (筆順)ではなく、まるで図形をコピーしているかのような書 き方になります。 また、文字照合 (入力文字辞書)の段階が障害されると、文字と文字によく似た図形とを区別する能力 (文字 /非文字弁別)も低下します。
ここまでが、「鉛J「 筆」や「え」「ん」「ぴ」「つ」が文字 として認知される段階となります。この後、大きく分けて2つのルートが存在する言われています。
1つ目のルートは、「文字を音韻に変換した後、語彙処理し、意味理解に至るルート」(音韻ルート)です↓
2つ目は、「文字を直接語彙処理し、意味理解に至るルート」(語彙ルート)です↓
読解の語彙ルートへ続く

復唱のルート

復唱のルート

認知神経心理学では、復唱のルートは、音響ルート、非語彙的音韻ルート、非意味的語彙ルート、意味ルートの4ルートあると考えられています。
後者になるほどより多くのプロセスを踏むことになります。
当サイトに投稿した復唱の各ルートの記事を以下にまとめていますので、ご参照ください。

4種類の復唱ルート

MST 低栄養のスクリーニングツール

MST 低栄養のスクリーニングツール

MST(Malnutrition Screening Tool)は、食事摂取量と体重減少に関する項目からなる低栄養スクリーニングツールです。
MST(Malnutrition Screening Tool)は、高齢リハ患者の転帰の予後予測に使えることが報告されています。 2つの問診のみで評価可能であり、外来リハ患者や施設入居者に活用しやすいツールですが、より詳細な栄養アセスメントには他のツールを用いた追加評価が必要となります。

Malnutrition Screening Tool(MST)

1:最近、意図しない体重減少があるか?
いいえ 0点
わからない 2点
もし「はい」なら、体重はどのくらい減ったか?
0.9〜6.3kg 1点
6.4〜10.7kg 2点
10.8〜14.9kg 3点
>15kg 4点
わからない 2点
2:食欲低下にて、食事摂取量が減っているか?
いいえ 3点
はい 1点

合計スコア

0~1:低リスク
2~3:中リスク
4~5:高リスク

意味ルート(復唱のルート)

意味ルート(復唱のルート)

通常の単語の復唱における中心的なルートです。
意味ルートは以下の通りです。
構音運動実行(音声出力)
復唱の意味ルートは、言われた単語の意味を理解した上で、あらためて同じ単語を自ら発話するというルートです。
つまり、単語の復唱とは、単なる模倣ではなく、いったん理解したことばを自ら改めて表出するという「再生」の要素を含んだ処理になります。
意味照合の段階に障害がある場合、聴きとった語が、単語であると感じながらも、その意味を解せないまま復唱をせざるを得なくなります。
意味ルートの場合には、語彙照合の障害の場合と異なり、聞き取った単語に対して、単語であるという既知感は持っています 。
健常者における単語の復唱では、音響ルート非語彙的音韻ルート非意味的語彙ルート、意味ルートのすべてが重畳して機能していると考えられます。そのため、復唱は、これらいずれの処理過程が障害されても復唱能力は低下してしまいます。
復唱は、聴覚的理解や呼称など、口頭言語に必要な、ほぼすべての言語情報処理を含むため、重要な処理過程になります。
注意するべき点は「復唱が障害される」=「把持力の低下」ではないことです。
把持という用語は、使うとすれば入力音韻辞書から出力音韻辞書 (および音韻出カバッファー)に 直接、音韻情報が転送される場合です。そのため、把持は語彙処理および意味処理の段階がバイパスされる場合に限定されます。

非意味的語彙ルート(復唱のルート)

非意味的語彙ルート(復唱のルート)

非意味的語彙ルート(復唱のルート)は、語彙処理までが関与し、意味の関与しない復唱ルートです。
非意味的語彙ルート(復唱のルート)は以下の通りです。
語彙照合 (入力語彙辞書) ※意味処理へ向かわず語彙選択へ向かいます。
構音運動実行 (音声表出)
単語であるとわかっているけど「意味がよくわからない」という状態で復唱が行われる場合には、この非意味的語彙ルートを通ることになります。
語彙照合 (入力語彙辞書)の段階に障害があると、聞き取った単語に対して、知っているという「既知感」が持てないまま復唱をせざるを得ない場合があります。
単語の復唱であるにもかかわらず、非語の復唱の様になります。

非語彙的音韻ルート(復唱のルート)

非語彙的音韻ルート(復唱のルート)

非語彙的音韻ルート(復唱のルート)は、音響として聞き取った言葉を、音韻として正しく捉えた後、そのまま同じ音韻を返す処理のルートをいいます。
非語彙的音韻ルート(復唱のルート)ルートは以下の通りです。
➅構音運動実行 (音声表出)
①音声入力→②音響分析→③音韻照合 (入力音韻辞書)までの処理は、単語の聴覚的理解と同じです。
しかし、文脈がない音韻1モーラや非語 (無意味語)は語彙ではないため、次の語彙照合では、「語彙ではない」という判定を受け、その先に進むことはできません。
そのため、音韻照合(入力音韻辞書)の後、直接音韻選択 (出力音韻辞書)の処理に進むことになります。
つまり文脈を伴わない1モーラや非語 (無意味語)では、語彙情報や意味情報は関与しません。
➃音韻選択 (出力音韻辞書)では、入力音韻辞書で照合 (同定)した音韻と、同じ音韻を出力音韻辞書で、再度選択する処理過程が行われます。 文脈を伴わない1モーラや非語 (無意味語)で音韻性錯語が起こる場合この段階での障害が疑われます。
⑤音韻配列 (音韻集力バッファー)は、選択した音韻を配列する過程です。非語 (無意味語)の場合で、音韻の並び替えの誤りが見られる場合は、この段階の障害が疑われます。(1モーラだけの処理の場合にはあまり考える必要はありません)
➅構音運動実行 (音声表出)の段階では、運動の設計図の通りに、発声発語器官の多数の神経・筋系が協調的に活動して日から音声が発せられます。
1モーラだけでなく、非語 (無意味語)の復唱も同様のルートで処理されますが、1モーラだけを復唱する場合に比べ、聴いてから復唱し終わるまでの短時間、複数の音韻を把持しなければならなくなり、その分だけ情報処理としての負荷量が増加します。
短時間音韻を把持する処理のことを音韻リハーサル と呼ばれています。
聞き取った音韻が消えてなくならないように、配列がばらばらにならないように、頭の中で何度も繰 り返して唱え続け、活性を保つ作業のことをいいます。
音韻リハーサルが途絶えてしまうと、その音韻は数秒から十数秒の間に脳の中から消えてしまうと言われています。この音韻リハーサルのシステムが障害されると、非語の復唱が非常に困難になります。

音響ルート(復唱のプロセス)

音響ルート(復唱のプロセス)

音響ルート(復唱のプロセス)は下記のようなルートです。
④構音運動実行 (音声表出)
音響ルートは耳に入ってきた言葉を、単に「音Jと して模倣する過程です。
これは厳密な意味では「復唱Jと は言えないかもしれませんが、幼児が言葉を獲得するプロセスにおいて欠かすことのできない能力です。
幼児期においては、周囲の人の日から発せられた言葉を、最初は単に「音」 として聞き取 り、 意味も解からず真似をして自分でも言ってみるという行為を経て、最終的にことばの獲得に至ります。
ある意味、これは復唱の根幹とも言える基礎的な情報処理ではないかと考えられ、復唱を支える 1つのルートとして捉えられています。
言語獲得前あるいは獲得途上にある幼児や、オウムや九官鳥が行う言葉の模倣がこれに該当します。

呼称のプロセス

呼称のプロセス

認知神経心理学では、➀〜➇のプロセスを経て、呼称がされていると考えられています。 当サイトに投稿した各プロセスの記事を以下にまとめていますので、ご参照ください。
➇構音運動実行 (音声表出)

運動障害性構音障害と発語失行の鑑別ポイント

運動障害性構音障害と発語失行の鑑別ポイント

運動障害性構音障害(ディサースリア)と、その1つ前の処理段階であるアナルトリー(失構音、発語失行)との症状の区別は一体どのようにして行えばよいのでしようか。
アナルトリー(失構音、発語失行)では、ある場面では正しく構音できたのに他の場面では誤る、1つ の音が必ずしもいつも同じように誤るとは限らない、という2つの側面での浮動性があります。
また、アナルトリー(失構音、発語失行)には、高い確率で口腔顔面失行を合併しているという点も見分 けるポイントになります。
このような違いを鑑別ポイントとして症状を観察することが、臨床上有益です。

口腔顔面失行

頬を膨らます、舌を出す、咳をするなどの行為が、反射的・自動的場面では出来るにもかかわらず、意図的状況下でには出来なくなる障害をいいます。

リハビリ職(理学療法・作業療法士・言語聴覚士)の転職の成功の秘訣教えます。

リハビリ職のための転職成功手順!

リハビリ職の転職には様々な理由があると思います。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士になりたいと心をワクワクさせて学校に入り、晴れてリハビリ職につき、どんな職場だろうと、少しの不安と期待に心躍らせて入職したのに、ここの職場なんだか思っていたのと違う場合。
気に入ってたけれど、結婚したらこの職場では、家庭との両立が難しい場合。
もっと自分を磨きたい場合。など、転職のきっかけは、様々です。
でも、どんな人でも、次なる職場は今よりもっと理想にあったところと考えるのは共通点です。
そうです。みなさん、転職成功して良いのです。
今よりもっと、自分を輝かせられる場所を求めていいのです。
でも、そんな時、どうすればより良い職場にあり付けるのかが分からないと嘆いている理学療法士さん、作業療法士さん、言語聴覚士さんは多いと思います。
そこで今回は、リハビリ職の転職成功の秘訣をお伝えできればと思います。

➀リハビリ転職サイトへの登録

転職したいけれど、仕事が忙しくてなかなかハローワークなどに行けない理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は多いと思います。 ですが、リハビリ転職サイトに登録していると、希望条件を伝えると、自分が仕事をしている間に担当者が代わって、転職先を選定・紹介してくれます。
給与面、時間帯面、勤務したい分野や診療科、交通面等を調査し、自分に合った場所を見定めてくれることが最大のメリットです。
また、探してくれるのは一か所ではなく、複数用意してくれるので、そこから自分が選べる利点があります。
それに、人間関係や業務の煩雑さなどが、気になる点ですが、面接等では聞きにくいところも、匿名で調査してくれたり、担当者に質問してくれたり、自分の所在を明らかにせずに調べて貰えるところも魅力的です。

理学療法士 作業療法士WORK 言語聴覚士
➁ハローワークに登録

やはり、失業保険などの給付、再就職給付金等の手当ても欲しいです。 安心して条件を確認したり、条件の比較ができるハローワークの登録はお勧めです。 時に、地元ならではの情報をハローワークの担当者から聞くことができる場合もあります。
転職サイトで確認した条件と、ハローワーク求人での情報を比較して、より良い条件での就職活動を行い、自分で決定すると言うことも一つの手であります。 転職をする際の、自分への言い訳を無くし、納得して転職先を決定するためには、情報量は多い方がいいはずです。

➂そして、最後に自分の目で確かめる。

たくさんの情報が錯綜し、頭が混乱状態になる事も そんな時に試して貰いたいこと。
それは、転職先への訪問です。
どのようにするかと言うと、職場見学をお願いすることもできますが、それをして後に引けなくなったらいけないと感じて、躊躇してしまうこともあるでしょう。
そんな時には、普段着で、ふら~っと、見舞客を装って、内偵調査を自分で行うと良いでしょう(他の人には内緒にしておいてください)
基本としては、不審者に見られないように、怪しい行動はしないようにしましょう。
まずは、現場を見て、使用物品などがしっかりと整理整頓されているかを確認します。
リハビリの現場だけでなく病棟全体も見ると参考になると思います。
物が乱れていると言うことは、忙しくて整理をする余裕がないと言うことが考えられます。
そんな病院で勤務したいかと考えると、ミスや事故を予測出来たり、人間関係や勤務に対してゆとりがないかもしれないと考えられ、止めておこうかと考えることができます。
次に、リハビリ職や看護師など医療スタッフの行動や言動を見ましょう。 荒々しい言動や動き、キビキビではなく殺伐とした動きが見られれば、業務整理が出来ていなかったり、一人に対する業務量が多くて、ゆとりがないことを予測できます。 そんな環境に身を寄せれば、どうでしょう。 自分の輝かしい看護師ライフは想像しにくくなります。
その他に、トイレに行ってみても良いでしょう。 きれいかどうか、座りたいと思う便座かどうか。 衛生面を気にしたいのが医療職。大切な観察点です。

最後に

上記の三つをおさえて、自分の働きたい、ワクワクするような職場を見つけましょう。
注意点としては、リハビリ転職サイトの担当者の言葉を鵜呑みにしないことです。
何故なら、担当者の中には、早く内定させて自分のノルマを達成したいと考えている人もいます。
そんな人に当たれば、良い事ばかりを言って、早く決めさせようとする事もあります。
だから、自分の目で最後は確認して決定することが大切なんです。
自分のことは自分が責任を持たなければならない年齢になりました。
いいわけが出来ないから、後悔しない転職活動が、より自分の未来を輝かせる方法と言ってもよいでしょう。
仕事と言うのは、一日の1/3以上を過ごす場所でもあります。
だからこそ、妥協したくない、楽しく、行きたいと思える場所でなければなりません。
リハビリ求人サイト、ハローワーク等の人の手を借りて行う求職活動で選定し、自分の足で、自分の目でしっかりと確かめて、「ここだ!!」と決められる職場で転職の成功を叶えましょう。

勝ち取りましょう!!働きたいと思える職場を。
理学療法士 作業療法士WORK 言語聴覚士

構音運動プログラム

構音運動プログラム

構音運動プログラムは、脳の中で正しく選択され、正しい順序に配列された音韻を、音声として外に出力させるために必要な、発声・発話器官の正しい運動の記憶(構音プログラム)を活性化させる(想起する)段階です。 単語を構成する音韻列を、日本語らしくスムーズに音声化していく上で必要な、一連の運動(パワー・速度・位置・タイミングなど)に関する設計図のことを言います。

構音運動プログラムの段階の障害

構音運動プログラムの段階の障害を、アナルトリー(発語失行、失構音)と呼ばれています。
アナルトリーがあると、構音すべき音韻は頭の中に正しく想起されているのに、発声発語器官をどのように動かせばよいのかわからず、結果として、発せられた音は、聞き手にとって不明瞭な、書き取ることが困難な独特な歪みを伴ったものとなります。
その他には、音が置換したり引き伸ばされたり脱落したように聞こえる場合や、発話速度やリズムの異常が観察されることもあります。
構音運動プログラムの段階での障害では、自分の発話が目的の音ではないことはすぐにわかるので、何度も修正しようとします。
言い直すことで修正される場合もありますが、もう1回発話すると再び誤った音に変わってしまい、しかも最初とは異なる音になっているという場合もあります。

構音運動実行 (音声表出)

いよいよ最後の段階です。構音運動プログラムが作動 し、発声発語器官の諸筋群が協調的に動 くことによって、被験者の口から音声が発せられます。 この段階の障害は、運動障害性構音障害 (dysarthriea)になります。

音韻配列 (音韻出力バッファー)

音韻配列 (音韻出力バッファー)

語彙の引き出し(出力語彙辞書)で手に入れた「レシピ」にしたがって、音韻を選んだら、次にそれを、順番に並べるという作業が待っています。これを音韻配列と呼びます。 従来、失語症の教科書では音韻を選ぶ処理と並べる処理を明確に区別せず、音韻の選択/配列という用語を用いられてきました。

音韻配列 (音韻出力バッファー)の段階の障害

単語を構成する音韻はすべて揃っているのですが、その順序が入れ替わってしまう症状、すなわち、音韻性錯語の中でも「転置」といわれる症状が生じます。 具体的には /tokei/に 対して /keito/、 /toike/などです。この症状は、伝導失語の中核的症状となります。

音韻選択(出力音韻辞書)

音韻選択(出力音韻辞書)

語彙を正しく選択すると、そこには、その単語に関するさまざまな情報(音韻の情報、文字の情報、統語に関する情報、イントネーションに関する情報など)を手に入れることができます。
呼称の場合は、発話が目標のため、語彙の引き出しから音韻に関する情報を取り出し、その指示通りに音韻の貯蔵庫から必要な音韻を正しく選択する処理が行われます。
この音韻の貯蔵庫のことを出力音韻辞書といいます。

音韻選択(出力音韻辞書)の段階の障害

音韻辞書に到達できない、または到達できたのに、音韻辞書をまったく開くことができない場合には、発話に至らないため、語彙の引き出しが開かない場合と、表面的には区別することができません。
音韻辞書がなかなか開かないという状況の場合には、『机』に対して、“ツ"とか、“ツキ、ツケ"などと、音韻を探しているかのような発話が観察されます。このような症状がある場合は、音韻選択の段階でのトラブルではないかと推論することができます。
音韻選択の間違いでは、“ツクオ"、“ツキエ"など、一部の音韻が人れ替わってしまいます。このような症状を音韻性錯語といいます。
また、“オタケ"のように、もともと何の単語を言おうとしていたのか全く予想のつかないような症状を新造語(あるいは語新作)と言います。このような場合も、音韻選択の段階の障害からも生じる可能性が考えられます。

語彙選択(出力語彙辞書)

語彙選択(出力語彙辞書)

私達の脳の中には様々な意味を指し示すための言語記号である「語彙」が多数蓄えられていると考えられており、「語彙辞書」と呼ばれています。
語彙選択の段階では、脳の中にある語彙辞書から、その意味を指し示すにふさわしい語彙を「検索」し、該当するものを「選択」します。「探索・選択」というのは、沢山ある引き出し(語彙辞書)の中からどれか1つ選んで、その引き出しを開けるようなイメージとなります。

語彙選択の段階の障害

語彙選択の段階の障害があると、語彙辞書に到達できない、あるいは、到達できても引き出しも開けることができない状況が起こります。その場合には何も語が表出できない状態になります。 全失語といわれるような重度の失語症の患者さんはそのような状態なのかもしれません。
そこまで重度ではない場合では、辞書に到達した後に、目当ての引き出しとは別の引き出しを開けてしまう症状が出現します。この場合には、りんごの絵を見て、バナナや時計など、別の単語を言ってしまう症状が現れます。語性錯語と呼ばれる症状は、この段階の障害と考えられます。
現在、語彙の選び損ないがどうして生じるのかや、選び間違う時に、なぜその語彙を選んでしまったのか等はよく分かっていません。

意味照合(呼称のプロセス)

意味照合(呼称のプロセス)

正しく、形態認知ができたとしても、それだけで、それが何かと分かるわけではありません。 形態認知の段階では、単に絵の形態が脳の中に表象されているに過ぎません。
次に、その形態が、無意味な図形が、何かを現している記号であるということの照合がなされ、さらに、意味記憶との照合が行われます。
そして、人それぞれの認知経験にもとづいてつくられた意味記憶が活性化されます。
この段階を意味照合といいます。

意味照合(呼称のプロセス)の段階の障害

対象の形態自体は正しく捉えられているので、その絵を模写することが可能ですか、その絵を、別の絵や、実物などと照合させることができないという症状が現れます。
上記のような症状、つまり、見えているのに何であるのかがわからないという症状を、運合型視覚失認といいます。

形態認知 (呼称のプロセス)

形態認知 (呼称のプロセス)

後頭葉の第1次視党野に到達した視覚情報は、この後、第2次視党野、第3次視覚野とさらに高次の中枢で、より複雑な視覚認知処理が行われます。
ここでは、絵に含まれるさまざま直線の角度や曲線の曲がり具合、さらには奥行き・色・場所・動きなどに関する情報の認知が行われます。
つまり、「形態認知」とは、その絵に対してゆがみのない正しい像を脳内に表象する処理のことをいいます。

形態認知の段階の障害

形態認知の段階の障害では、光を提えることは可能であるにもかかわらず、物体の形・位置・色・ 動きなどに関する情報を正しく認知することが困難になります。
このような障害を、統覚型視覚失認と呼びます。

エリクソンの心理社会的発達の8段階

エリクソンの心理社会的発達の8段階

乳児期前期(0〜1歳)

心理的危機 : 信頼 対 不信
有意義な対人関係 : 母親または、その代わりとなる人
好ましい結果 : 信頼と楽観性
発達課題 : 育児(母親との関係)を通して外界や自己への信頼を構築する。

乳児期後期(1〜3歳)

心理的危機 : 自律的 対 恥・疑惑
有意義な対人関係 : 両親
好ましい結果 : 自己統制と適切さの感じ
発達課題 : トイレ・トレーニングを中心とした「躾」による命令や禁止を内在化する。

幼児期(3〜6歳)

心理的危機 : 積極性 対 罪悪感
有意義な対人関係 : 基本的家庭
好ましい結果 : 目的と方向:自分の活動を開始する能力
発達課題 : 外界を探索し、創造することを獲得する。

児童期(6〜12歳)

心理的危機 : 勤勉性 対 劣等感
有意義な対人関係 : 学校
好ましい結果 : 知的・社会的・身体的技能の有能さ
発達課題 : 学業に努力し、社会的・対人的技能を身につけ、課題に取り組み、解決することで有能感を獲得する。

青年期(12〜19歳)

心理的危機 : 同一性 対 同一性の拡散
有意義な対人関係 : 仲間集団と外集団:リーダーシップモデル
好ましい結果 : 事故を独自な人間として統合したイメージを持つこと
発達課題 : さまざまな経験のなかから見つけ出してきた自己を統合する。

成人期初期(20〜30歳)

心理的危機 : 親身性 対 孤立
有意義な対人関係 : 親友:性、競争、共同
好ましい結果 : 親密で永続する関係を形成し、生涯を託すものを決める
発達課題 : 青年期に形成した自己の同一性と他者の同一性を自分を見失うことなく融合する。

壮年期(30〜65歳)

心理的危機 : 生殖性 対 沈滞
有意義な対人関係 : 労働を分けもつことと、家事を分けもつこと
好ましい結果 : 家族、社会、未来への世代への関心
発達課題 : 生産物、芸術、概念など次世代へ引き継 ぐものを責任をもって育て発展させる。

老年期(65歳〜)

心理的危機 : 統合性 対 絶望
有意義な対人関係 : ”人類”:”わが子”
好ましい結果 : 充足と自分の生への満足感
発達課題 : 次世代を育て信頼 し,自 己の生涯を統合する。

非言語的記号の入力(呼称のプロセス)

非言語的記号の入力(呼称のプロセス)

呼称の第一段階で、被験者が、提示された絵を見る段階です。
被験者の網膜に入力された光の刺激(視覚情報)は、視神経を通り、外側膝状体を中継し、後頭葉の第1次視覚野を目指します。

非言語的記号の入力の段階の障害

非言語的記号の入力の段階の障害は、視力障害・視野障害や皮質性の視知覚障害などです。
ここは、内言語障害には含まれません。
これらの問題をかかえた患者に検査を行う際には、視力障害であるなら、度の合った眼鏡を掛てもらったり、場合によっては、提示する図版を拡大する 必要するといった配慮が必要です。
また、視野障害の場合には、図版を正面に提示するのではなく、障害されていない側の視野にずらして提示した方が良い場合もありますが、検査手順に定められた標準的な施行方法ではない場合は、その旨検査用紙の欄外に記載しておくようにします。