嚥下障害の直接訓練の概要

嚥下障害の直接訓練

直接訓練とは


直接訓練とは、食物を直接用いた嚥下訓練のことをいいます。

直接訓練開始についてと注意点


直接訓練開始に関しては、 急性期の経口摂取開始基準を参考にし、RSST、MWST、FT等の詳細な評価行い、摂食の安全な条件が設定された上で摂食訓練を開始します。

その後、3~7日程度、誤嚥や肺炎の徴候がないかを観察し、食事条件をアップさせていきます。

脳卒中患者の摂食・嚥下の特徴としては、覚醒レベルによって機能が容易に変動し得ることと、顔面の麻痺などを伴うことが多いです。
顔面や舌の麻痺により咀曜機能が低下している場合が多く、十分な咀噌によって滑らかで適量の食塊を形成することができなくなるため、咽頭でのクリアランスが悪くなり、食塊の咽頭部での残留を引き起こしやすくなります。

残留食物は誤嚥や窒息の原因となり得るため、脳卒中急性期から咀嚼を要するような食事を摂取させることは危険です。

そのため、軽度であっても嚥下障害を疑う場合は、ペーストなど単一の食形態から摂食を開始することが安全です。

摂食開始後に注意すべき徴候としては、唾液・流涎および痰の増加、咳漱の増加、食後の疲労、発熱、食事中の声の変化(湿性嗄声)、口腔内残留などです。

むせのない誤嚥も多くあるため、むせ以外でもこのような徴候がみられるようであれば、胸部聴診やバイタルサインのチェックを行い、必要に応じて胸部レントゲン検査、採血検査などを実施します。

肺の背側の肺炎では胸部レントゲン検査では明確な異常所見を得られないことが多いため、背側の肺炎を疑う場合は胸部CT検査の実施も考慮します。

これらの検査で誤嚥性肺炎がみられた場合には、いったん直接訓練を中止し、肺炎の治療を実施します。

治療終了後、再度ベッドサイドの嚥下機能評価を行い、必要に応じてVE/VFで再評価を行うようにします。

特に、高齢、両側病変、神経症候の重度な患者は誤嚥性肺炎を来たすリスクが高いため、より慎重な対応が必要となります。