変形性関節症の原因や分類、評価方法を解説します!

1、変形性関節症とは

①変形性関節症の概要

変形性関節症とは関節の変性が生じる疾患であり、関節を構成する骨や関節軟骨が摩耗したり、増殖したりすることで動作困難や疼痛が生じます。
具体的には荷重のかかりやすい部分では組織がすり減ってしまい、またかかりにくい部分では組織の増殖が起こり、骨棘が形成されてしまいます。
組織の変性や疼痛は生じますが、炎症は伴わない非炎症性疾患です。また進行性疾患であるため、適切な治療が行われなければ関節裂隙の狭小化や骨の摩耗などといった症状は重症化していってしまいます。
なお、関節裂隙の狭小化や消失により動作性の低下や疼痛は見られますが、骨癒合はしないため可動性は確保されます。好発年齢は50代で、特に女性に多い傾向にあります。
変形性関節症はすべての関節で生じうる疾患ではありますが、そのほとんどは荷重のかかりやすい膝関節と股関節で発症しています。
その中でも特に症例数が多いのは変形膝関節症ですが、変形性股関節症では発症すると重症となる傾向があります。

②変形性関節症の原因

変形性関節症はその原因によって一次性関節症と二次性関節に分類されます。
一次性関節症とは原因疾患が明らかとなっておらず、関節自体の加齢現象などにより生じるものです。変形性膝関節症であれば全体の90%以上がこの一次性関節症に該当します。
なお手指に生じる一次性関節症は発症部位により呼称が異なり、DIP(遠位指節間)関節に生じればヘバーデン結節、PIP(近位指節間)関節に生じればブシャール結節となります。
二次性関節症とは原因疾患が明らかとなっているものです。変形性股関節症であれば全体の80%程度がこの二次性関節症に該当します。

変形性膝関節症

  • 外傷(半月板損傷、靭帯損傷、関節内骨折など)
  • 炎症性疾患(関節リウマチ、化膿性関節炎など)
  • 代謝性疾患(痛風など)
  • 関節運動の異常(前十字靭帯損傷など)

変形性股関節症

  • 先天性疾患や幼少期に生じた疾患の後遺症(先天性股関節形成不全、臼蓋形成不全、ペルテス症など)
  • その他(骨頭壊死、外傷など)

③X線像での病期分類

X線像では骨棘の形成や骨嚢胞の有無や程度、そして関節裂隙の状態について確認し、疾患の進行度を判断します。
嚢胞とは骨の中に空間ができ、骨ではないゼリー状の組織と置き換わってしまっている状態です。中身はトロッとしているために体重がかかるとつぶれてしまい、平坦化の原因となります。

変形性膝関節症

Grade1:骨硬化像または骨棘のみ(ほぼ正常)
Grade2:関節裂隙の狭小化が認められる(3㎜以下)
Grade3:関節裂隙の消失(閉鎖)または亜脱臼
Grade4:荷重面の摩耗または欠損(5㎜未満)
Grade5:荷重面の摩耗または欠損(5㎜以上)
なお、Grade3、4は中期、Grade4、5は末期とされています。

変形性股関節症

前股関節症
臼蓋形成不全や亜脱臼、骨頭変形、頚部前捻増強、頚体角の異常など先天的、後天的にかかわらず変形がみられます。
関節軟骨は残存しており、また骨硬化や嚢胞形成もみられないため、関節裂隙の狭小化はありません。
初期股関節症
関節軟骨の摩耗などによる関節裂隙のわずかな狭小化が見られ始められますが、骨棘形成はあっても軽度です。他に関節面の不整合や、臼蓋縁や骨頭に骨硬化像もみられます。
進行期股関節症
関節裂隙の明らかな狭小化がみられ、一部が消失します。また、関節面の不整合、骨頭や臼蓋縁部分の骨棘形成、骨硬化、嚢胞形成も認められます。
末期股関節症
関節裂隙は消失し、著明な骨棘や嚢胞の増大がみられます。他にも広範な骨硬化や臼底二重像も認められます。

2、機能障害の評価方法

①身体計測

棘果長(SMD)、転子果長(TMD)

変形膝関節症では伸展制限や内反変形(O脚)、変形性股関節症では骨頭の平坦化による脚長差が認められます。これらの評価のために棘果長(SMD)や転子果長(TMD)を測定し、2つの測定値の差があるかどうかを確認します。

下肢周径

特に膝関節において関節内液の貯留があると関節運動の妨げとなるため、下肢周径に異常な増大が内果を確認します。

BMI

体重が多ければその分関節への負担が大きくなります。このため身長と体重からBMIを算出し、肥満の有無などを確認します。 BMI=体重㎏/(身長m)2

②整形外科的検査

股関節

X線像より、構造的な異常を確認します。股関節であれば頚体角や前捻角、そして臼蓋不全の有無や寛骨臼と大腿骨頭の適合性を確認するためのCE角やSharp角の測定を行います。
CE角とは大腿骨頭の中心を通る垂線と、大腿骨頭と臼蓋上縁を結んだ線から構成される角度の事です。小さいほど臼蓋のかぶっている部分が浅く、適合性が低いということになります。
また、Sharp角は寛骨にある左右の涙痕を結んだ線と、臼蓋上縁と同側の涙痕を結んだ線から構成される角度の事です。
こちらは大きいほど適合性は低いということになります。
関節可動域制限などのために筋短縮が起こる場合があります。このため、筋短縮の有無や程度を確認するためのテストを行います。
特に股関節屈曲、内転、外旋位での拘縮が生じることが多いため、股関節屈曲筋群に対する検査が中心となります。
トーマステスト
腸腰筋の短縮について確認するために用いられます。被検者は背臥位となり、検査下肢とは反対側の下肢を抱きかかえるようにして股関節と膝関節を屈曲させます。このとき検査下肢の股関節が屈曲し、大腿が台から離れれば陽性となります。
オーバーテスト
大腿筋膜張筋の短縮について確認するために用いられます。被検者は検査下肢を上にした状態で側臥位となります。検査者は膝関節を90°に屈曲させた状態で股関節を伸展させ、外転位で保持します。ここで手を離しても下肢が落下せず、外転位で保持されれば陽性です。変形性関節症では関節の構造的な変化がみられることから、動作への影響について確認するためにアライメントに対する検査を行います。
アリステスト
股関節脱臼などの有無を確認するために用いられます。背臥位にて両下肢を揃えて膝関節を屈曲させると、陽性であれば脱臼側の膝関節が正常下肢より低くなります。ただし内反股などにより脚長差がある場合でも同様の結果が得られるので注意が必要です。
ローザーネラトン線
股関節のアライメント自体を確認するために用いられます。ローザーネラトン線とは、上前腸骨棘と坐骨結節を結んだ線のことです。背臥位にて股関節を45°屈曲させ、ローザーネラトン線上に大転子が位置すれば正常ということになります。

膝関節

X線像より膝関節の正確なアライメントを確認します。様々な検査法の中でも特に重要視されるのはFTA(膝外側角、大腿脛骨角)です。
FTAは大腿骨長軸と脛骨長軸がなす角の事で、片脚立位で正面から撮影したX線像を用います。
正常は175°で5°程度外反していますが、変形性膝関節症にて多くみられる内反変形(O脚)では180°以上になります。
関節可動域制限により筋短縮が生じる場合があります。変形性膝関節症では伸展制限と屈曲制限の両方がみられるため、大腿前面筋と後面筋の両方に短縮が生じえます。
エリーテスト(尻上がり現象)
大腿直筋の短縮について確認するために用いられます。被検者は腹臥位となり、膝関節を屈曲させていきます。この時股関節が屈曲することで殿部が持ち上がってくると陽性です。
SLR
ハムストリングスの短縮について確認するために用いられます。被検者は背臥位となり、膝関節を伸展させておきます。この状態のまま検査者は股関節を屈曲させていき、膝関節を屈曲させてハムストリングスを緩めて行った角度との比較を行います。 変形性膝関節症ではスラストと呼ばれる側方動揺が生じる場合があります。このため、膝関節の動揺性を確認するためのストレステストを行います。スラストは内反膝(O脚)を呈する症例では外側方向に、外反膝(X脚)であれば内側方向にみられます。
外反ストレステスト
膝関節を軽く屈曲させ、内側の関節裂隙が開くように下腿に外反ストレスを加えます。
内反ストレステスト
膝関節を軽く屈曲させ、外側の関節裂隙が開くように下腿に内反ストレスを加えます。
関節内液が貯留して関節水腫が生じることで関節運動の妨げとなり、関節拘縮の原因となります。このため、膝蓋跳動の有無を確認する必要があります。検査は関節部分に組織液をためるように膝関節を把持し、膝蓋骨を押し込みます。この時膝蓋骨に上下運動が見られれば陽性です。

③疼痛検査

変形性関節症では疼痛が生じることが特徴であるため、その痛みの特徴や質、程度、生じるタイミングについて確認します。痛みの程度についてはVASやNRSなどを用いて行います。 疼痛の生じるタイミングについては、変形性膝関節であればStarting painという歩き出しに疼痛が生じ、歩行するにつれて緩和していくという特徴があります。反対に変形性股関節症であれば歩行をはじめとした運動後に疼痛が生じるという特徴があります。

④関節可動域検査

膝関節:完全伸展や完全屈曲が困難となり、歩行や正座などのADLが障害されやすくなります。このため膝関節屈曲、伸展ともに測定が必要です。 股関節:屈曲、内転、外旋位での拘縮が多くみられます。特に手術療法を選択する場合、内転拘縮があると術後も内転拘縮が起こりやすく、また脱臼のリスクもあります。このため内転角度の測定は特に重要です。

⑤筋力検査

患部だけでなく、周辺関節の筋に対しても徒手筋力検査を行います。基本的には運動の全可動域にわたって抵抗を加えるfree motion test(運動範囲テスト)を行いますが、運動時痛が強い場合には運動範囲の終わりに抵抗を加えるbreak test(制動テスト、抑止テスト)を行います。

⑥跛行の有無の確認

変形性膝関節症では荷重時に膝関節が側方に動揺するスラスト歩行となります。これは内反変形が生じていれば外側に、外反変形が生じていれば内側にみられます。
変形性股関節症では疼痛が原因となって、トレンデレンブルグ性の跛行がみられます。中殿筋の筋力低下が生じている際と同様の跛行がみられやすく、患側下肢の立脚相で上体と骨盤が遊脚側に傾くトレンデレンブルグ歩行と、患側下肢の立脚相で上体が立脚側に傾くデュシェンヌ歩行がみられます。
なお、デュシェンヌ歩行では上体の重心移動により、骨盤は水平位で保持されます。
また、股関節屈曲拘縮が生じている症例では患側下肢の立脚相の最後、股関節伸展の際に動作が制限されるため、腰椎前彎の代償的な増強がみられます。

3、社会への参加に関する評価

①日常生活動作に対する評価

変形性関節症では疼痛や関節の構造的変化により、障害されてしまう日常生活動作が多くあります。
特に歩行については日常的に行うことが多いため、歩容の観察や歩行速度の測定、持久性などを評価する必要があります。
また、階段昇降動作も可動域制限や疼痛により障害されやすい動作であるため、日常的に階段を使用する場合は評価することも重要です。
起居動作から歩行の一連の動作については、time up&go testによって総合的に、簡易的に評価することができます。
そして動作性の評価だけでなく、杖や歩行器といった補装具の使用状況や生活環境などについても問診し、把握しておくことも重要です。
以下では膝関節、股関節それぞれで障害されやすい動作について説明します。
変形性膝関節症においては膝関節の完全伸展と完全屈曲が出来なくなります。
このため、正座をする、しゃがむといった動作が障害され、和式の生活を送ることが困難になります。
また、洋式の生活であっても可動域制限のために階段昇降が困難になったり、疼痛のために歩行障害が生じたりします。
変形性股関節症においては股関節の屈曲、内転、外旋が制限されます。
このため、下肢の複合的な動作を必要とする日常生活動作は困難になります。
例えば股関節の外転が必要となる足の爪切りや靴下の着脱などです。
これらの動作が障害されていた場合はソックスエイドなどをはじめとした補助具の使用についても検討する必要があるため、具体的な動作について評価することが重要となります。
また、変形性膝関節症と同様に階段昇降や歩行についても疼痛や可動域制限により困難さが生じます。

②総合的評価

変形性関節症においては関節を構造的に診るだけでなく、身体状況と日常生活動作を結び付け、総合的に評価することも重要です。
以下の判定基準ではそれぞれの疾患で生じやすい症状と障害されやすい動作について総合的な評価をし、結果を数値として客観的に表すことができます。

日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準

 項目は「疼痛・歩行能力」、「疼痛・階段昇降能力」、「屈曲角度および強直・高度拘縮」、「腫脹」の4項目あり、100点満点で評価されます。疼痛と動作を結び付けて評価しており、また変形性膝関節症に特徴的な症状について評価項目にあげられているという特徴があります。

日本整形外科学会変形性股関節症治療成績判定基準

 項目は「疼痛」、「可動域」、「歩行能力」、「日常生活動作」の4項目あり、変形性膝関節症と同様に100点満点で評価されます。評価内容が変形性膝関節症と比較してより日常生活に則したものであるという特徴があります。
この記事は、理学療法イエロー・ノート専門編を参考に理学療法士が執筆しています。