多系統萎縮症 嚥下障害

多系統萎縮症 嚥下障害

多系統萎縮症(multiple system atrophy:以下MSA)は50歳代以降に発症し、小脳系、自律神経系、錐体外路系の3つの神経系が進行性に障害される原因不明の、孤発性神経変性疾患です。有病率は人口10万人に5人程度です。 MSAは進行性の経過で、多くの患者は発症から5年で独歩不能になり、10年で寝たきりになります。
死因の3割が突然死で、他に尿路感染症、衰弱、嚥下機能障害による窒息や肺炎が多いと言われています。

MSAは小脳性運動失調が目立つMSA-Cとパーキンソニズムが目立つMSA-Pの2つに分類されます。

いずれも根治的な治療がなく、進行に伴って摂食・嚥下障害は増悪し、摂食動作の障害、咀噌運動の障害、口腔から咽頭への食物の送り込みの障害、嚥下反射惹起の遅れ、誤嚥、咽頭残留などを認めます。また、起立性低血圧のために食事で坐位になると失神する患者もいます。

摂食・嚥下障害には、食物形態の変更や姿勢の調整などを行いますが、進行期には摂取量低下のために栄養状態が悪化し、経管栄養や胃痩造設が必要になります。
声帯外転麻痺があり、かつ、誤嚥性肺炎の発症を繰り返す患者には、誤嚥防止術が有効な場合があります。

進行期のMSA患者は、摂食・嚥下障害以外にもさまざま問題が現れ、どのような対応が生命予後の改善に寄与するかはわかっていません。対症治療には限界があり、進行性に運動機能は低下していくため、患者の生活の質の改善を目標とした治療方針の設定が望まれます。