尿失禁のタイプごとの排泄ケアや対応方法について解説!


高齢者に最も多く認められる排泄障害は、尿失禁です。
尿失禁は、患者に苦痛を与え、生活範囲を縮小し、生活の質を低下させるため、適切なケアが重要となります。

高齢者の尿失禁のタイプについて

高齢者の尿失禁には、尿路感染症、精神疾患などによる一過性尿失禁と、4タイプに分類される慢性尿失禁(機能性、腹圧性、切迫性、溢流性)があります。
一過性尿失禁は、原因を取り除くことで、改善が得られることが多いです。
慢性尿失禁は、タイプが重複することが多いため、苦痛を与えているタイプを把握し、泌尿器科医、かかりつけ医、看護師、介護者がチームとして対応することが重要となります。

排泄ケアの方法について

尿失禁を減少させるケア

機能性尿失禁

認知症患者における機能性尿失禁のケアでは、排尿自覚刺激行動療法が有効といわれています。
排尿自覚刺激行動療法は、介護者が患者の尿意や失禁の有無を定期的に確認(介入初期は2時間ごと)し、排尿の意思に応じてトイレに誘導します。
さらに問題なく排尿できた場合は賞賛するというもので、能力の再獲得を目的に行われます。
身体能力の低下に伴う機能性尿失禁に対しては、トイレに行きやすい場所での生活、ポータブル便器および尿器の使用、衣類の工夫(脱衣しやすい衣類など)を検討します。

腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁がある方には、骨盤底筋運動が有効といわれています。
肛門に軽く指を添え、肛門が収縮していることを確認できれば、骨盤底筋運動を正しく実施できている確認になります。

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁の方へは、排尿日誌に、自立排泄と失禁を記録し、状況に合わせた排尿介助(一定の時間にトイレに誘導すること)を行います。
膀胱訓練(尿意を感じても気を紛らわせ、排尿間隔を延ばすこと)が有効なこともあります。

溢流性尿失禁

溢流性尿失禁は、前立腺肥大症や神経因性膀胱による尿排出障害が原因となります。
そのため、泌尿器科専門医へのコンサルタントが必要です。
溢流性尿失禁を疑う所見として、膀胱内尿貯留に伴う下腹部膨満が挙げられます。

尿失禁への適切な対応

環境の整備

患者の尿意、伝達能力を把握し、言葉による意思疎通が困難な場合は、ナースコールや鈴などを用いた伝達方法を試し、介護者による排尿ケアの潤滑化を目指します。

医療用具による排尿ケア

改善が認められない失禁に対しては、パッド、おむつなどの医療用具の使用や、間欠的導尿、尿道カテーテル、あるいは膀胱瘻による排尿管理が行われます。
パッド、おむつは、汚れたらすみやかに交換し、陰部清拭し、肌を乾かすことが勧められます。
間欠的導尿は、患者自身が導尿を行いますが、介護者も操作の理解は必要です。

排泄ケアの看護・介護のポイント

パッド、おむつの早期からの使用は、患者の意欲低下をきたす可能性があり、まずは尿失禁を減少させるケアを優先することが望ましいと言えます。

参考文献

・Flanagan L、et al:Systematic review of care intervention studies for the management of incontinence and promotion of continence in older people in care homes with urinary incontinence as the primary focus(1966-2010)。Geriatr Gerontol Int 12:600−611、2012
・Qaseem A、et al:Nonsurgical management of urinary incontinence in women:a clinical practice guideline from the American College of Physicians。Ann Intern Med 161:429−440、2014

ことばの発達を促す「ことばかけ」の方法「ミラリング」「モニタリング」「パラレルトーク」「セルフトーク」「リフレクション」「エキスパンション」について言語聴覚士が解説!

赤ちゃんの動きをまねる「ミラリング」


生後2ヶ月くらいまでは、赤ちゃんは、身体を大きくすることに懸命ですが、3ヶ月、4ヶ月以降は、自分で身体を動かせるようになってきます。
目もだいぶ上手に使えるようになってきます。
赤ちゃんが手足をバタバタさせたら、大人も真似て手をパタパタさせてみたり、まねをしてあげると良いです。
おすわりができるようになったら、ベッドのさくをガタガタさせるのを一緒に真似て遊んだり、積み木をトントン打ち合わせるのを真似てみたり、いろんなことができます。
赤ちゃんは、自分と同じ動きをしてくれる大人に、興味をもち、「この次も、また真似をしてくれるかな?」と大人の様子を観察しながら、誘いをかけてきたりします。
鏡に映すように真似るという意味で「ミラリング」といいます。

赤ちゃんの出す声や音をまねる「モニタリング」


赤ちゃんはごきげんなときに、唇を使って「ブーブー」「ブーブー」と言ったり、「フニャー、ウニャー」と声を出したりします。
こういう意味のない(と大人にはみえる)声を真似して返してあげることで、赤ちゃんは「音を出すこと」「音を出すと、あっちから同じ音が返ってくること」を楽しむようになり、話をする楽しさを知るようになっていきます。
このことを、音を拾ってモニターする意味で、「モニタリング」いいます。

赤ちゃんの状態や気持ちを代わりにことばで言ってあげる「パラレルトーク」


赤ちゃんが、おやつを食べながら幸せそうな顔になったら、「おいしいね」といい、ミルクがこぼれてエプロンがびしょびしょになったら、「あら、びしょびしょになっちゃったね」などと言います。
どこかにゴチンとぶつけたら「痛くない!」ではなく「イタイ、イタイね」などと言ってあげましょう。
そういった言葉かけを行うことで、大人はボク(ワタシ)のことを「よく分かってくれているんだな」という安心感が、子どもの一生を支える宝物になります。
子ども平行していうので、「パラレルトーク」といいます。

お父さんお母さんが自分の口に出していう「セルフトーク」


お風呂に入ろうとしている時にバスタオルが見つからない。「あれ?バスタオルどこだろう?」
怪訝そうな顔をしてみているこどもに「バスタオルを探しているんだよ」
そして「あった、あった」「さあ、お風呂にはいろう!」
こんなふうに自分の行動を口に出していうことを「セルフトーク」といいます。
赤ちゃんや子どもは大人の姿をみて、だんだんに「バスタオル」や「探す」といったことばの意味を知るようになっていきます。

子どもが間違えた言葉をさり気なく直して返す「リフレクション」


子:「あ、うたぎたん!」
親:「ほんどだ、うさぎさんだね」
子:「うたぎさん、お耳、おっちいねぇ」
親:「ほんとだね、うさぎさんの耳、おおきいねぇ」
子どもが言った言葉に間違いがあってもm言い直しをさせたり、訂正するのではなく、さりげなく正しく直して返してあげるようにしましょう。
これを「リフレクション」といいます。
「そうね」「ほんとだ」で始まる文章で返しましょう。
カラスのことを「たあちゅ」っていう子がいます。
「たあちゅじゃないの、か・ら・す!いってごらん!」
なんて言われ続けたら、お話をするのを嫌いな子になってしまうかもしれません。
子どもがおぼつかない口調で一生懸命に話してくれることは、なるべく「そうだね」「ほんとだね」という受け方で答えます。
「そうだね」(あなたは、あの、黒い鳥のことを言ったのね、という気持ちで)いったん受け止めてから、正しいことば「カラスだね」とさりげなく直してあげる程度が良いでしょう。

子どもが言った言葉を少し広げて返す「エクスパンション」


子:「うわー、おおっきいブーブ」
親:「ほんどだ、大きいブーブだね。何を積んでるんだろうね。」
という具合に、話題を少しふくらませて返すことを「エクスパンション」といいます。
単語を並べて(2語文、3語文)、比較的達者にお話ができるようになると、こういった関わりが大切になってきます。

ゆっくり、はっきり、繰り返し話してあげましょう!

赤ちゃんや小さい子の耳の聞き取りの力はまだ未熟です。
ご国語を習い始めた時と同じです。
相手がゆっくり、はっきり話してくれると、よくわかります。
赤ちゃんに対しても、普通の大人に対して話すよりも、心持ちゆっくりめに、はっきりと話してあげましょう。
一番大切なことは、大人が何かを教えようという気負いを捨てて、赤ちゃんがどんな気持ちでいるのかを知ろう、まだ「ことば」にはならない色々なしぐさを読み取ろう、とあの手この手で観察することです。
赤ちゃんのことを細かく観察しているうちに、きっと、赤ちゃんと一緒にいることを楽しめるようになるでしょう。

「ことばかけ」は日頃の生活の中の自然な関わりで十分


お母さんたちに「何について話しかければいいですか?」と真剣に尋ねられることがあります。
何か特別なことをしようと思わなくても、日頃の生活の中で自然にやっていれば十分です。
日頃の生活の中で、今回、ご紹介した「ミラリング」「モニタリング」「パラレルトーク」「セルフトーク」「リフレクション」「エキスパンション」を取り入れながら、子育てを楽しみながら子どもと接していきましょう!

誤嚥性肺炎の予防と栄養管理などのケアについて言語聴覚士が解説!


今回は、高齢者においてよくみられる誤嚥性肺炎の予防と栄養管理などのケアについて説明していきたいと思います。

誤嚥性肺炎の病態と評価・診断方法

病態について

高齢者では、認知症の進行や摂食嚥下機能の低下、全身機能の低下などにより誤嚥性肺炎を発症することがあります。
発熱や炎症を伴う誤嚥性肺炎を繰り返すと、栄養状態の悪化やADLの低下をきたすため、まずは誤嚥性肺炎を繰り返さないための予防が大切となります。
そのためには口腔内を清潔に保つことに加え、摂食・嚥下機能の評価と食事の工夫を含めた栄養管理が重要となります。

摂食・嚥下機能の評価について

検査結果は藤島の摂食、嚥下能力グレードや、才藤の摂食・嚥下障害の重症度分類などで段階分けをします。

栄養管理について

摂食・嚥下グレードに準じて、嚥下食や嚥下訓練食など食事の工夫が必要となってきます。
嚥下調整食の分類については、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2013」を参照すると良いでしょう。
「嚥下調整食分類2013」はこちらからPDFファイルで開くことができます↓
嚥下機能が正常でも、十分な栄養量を確保できない場合は、メイバランスミニなどの栄養補助食品などで補充する必要があります。
また、食事量が十分でない場合には、Na・Kなどのミネラルや亜鉛・鉄などの微量元素が不足するので注意する必要があります。

誤嚥性肺炎の治療方針

嚥下機能評価の結果、少しでも経口摂取が可能な場合は経口摂取を継続することが望ましいのですが、重症の嚥下機能障害がある場合は経口摂取継続による誤嚥性肺炎再燃のリスクもあるため、患者や家族に対しては十分に説明を行い、相談していく必要があります。
また、経口摂取のみで十分な栄養補給が難しい場合には、ほかの栄養ルートについての検討が必要となります。
十分な栄養量が確保できない期間が長期化することで栄養状態とADLの低下をきたし、その後の治療に難渋する場合があるため、食事摂取状況を観察し栄養障害をきたす前に判断することが望まれます。

経口摂取のみで栄養補給可能な場合の対応方法について

通常の食事、または誤嚥が認められた食品について検討すれば3食経口摂取が可能なことが多いです。
高齢者の多くが誤嚥しやすい水分に関しては、増粘剤で粘度をつけることで改善される場合が多いですが、その場合には増粘剤の適正使用について十分に指導する必要があります。

経口と代替栄養が必要な場合の対応方法について

3食経口摂取が可能でも、代替栄養が必要な場合には、栄養補助食品を併用し必要栄養量が充足できるように栄養プランを作成する必要があります。
栄養補助食品には、液体・ゼリー状・ムース状などさまざまな形態があります。
また、味の種類もおかず系のものやデザート系のものなど種類が多くあるので、何種類かを組み合わせて使用することで飽きずに継続することができるため工夫すると良いでしょう。
一部経口摂取が可能・お楽しみとしての摂取が可能な場合は、栄養補助食品の併用だけでは必要栄養量を充足することが難しいため、経口摂取以外の栄養ルートの検討が必要となります。

経口不可な場合の対応方法について

経口摂取以外での栄養ルートを検討する必要があります。
基本的には消化管を使用することが第1選択になるが、高齢者の場合は倫理的適応も含めて本人・家族と十分に相談する必要があります。
また、重度の嚥下機能障害や認知症がある場合でも、身体機能の回復や栄養状態の改善により経口摂取可能になる場合もあるため、変化を見逃さない日頃の観察が大切です。

経腸栄養

経鼻胃チューブ・経鼻十二指腸チューブ・経鼻腸チューブ
鼻から胃、空腸にチューブを入れ非侵襲的に栄養投与できるため短期間の栄養法として適しています。チューブの違和感があり、誤嚥性肺炎のリスクが高まるため長期間使用する場合には適しません。
胃瘻・腸瘻
チューブによる違和感や苦痛がないため、長期の経腸栄養法として適しています。瘻孔周囲の栄養漏れが起こる場合がありますが、半固形栄養剤の選択により改善される場合が多いです。

経静脈栄養

末梢静脈
必要栄養量を投与することが難しいため、栄養障害の改善には適しません。短期間の栄養管理において選択すべき方法です。
中心静脈
2週間以上の長期間での使用に適しています。適応については日本静脈経腸栄養学会が作成した「静脈経腸栄養ガイドライン第3版」を参照すると良いでしょう。
「静脈経腸栄養ガイドライン第3版」は下記のリンクからPDFファイルを開くことができます↓
低栄養状態にある高齢者に経腸栄養法や静脈栄養法を開始する場合には、早期の合併症としてリフィーディング症候群を発症する可能性を必ず念頭におき、栄養投与量の増量中は呼吸機能、心機能、神経症状(脱力、意識障害、痙攣など)などについて厳格なモニタリングを行います。
同時に、ビタミンB1 や亜鉛欠乏症にも注意を要します。
発症予防には、初期投与エネルギー量の制限と緩徐な増量、適切なビタミンとミネラル類の補給が大切です。

きょうだいげんかの理由や意味について言語聴覚士が解説!

大人からの注目


すでに子どもがいる家庭に、またひとり子どもが生まれると、きょうだいという関係が生じる。
このきょうだいの出現は、まったく自然なことなのだが、当の子どもたちにとっては非常に大きな生活環境の変化である。
家庭のなかでの最初の子どもは、多くの場合、両親やその他の家族の注目を一身に浴びながら育つ。
ここでいう注目とは、視線を向けること、声をかけること、笑顔を向けること、指示すること、叱ることなど、子どもにあらゆる種類の信号が送られることを指す。
注目を受けることは、人間にとって行動の原動力となる。
新たな料理に挑戦して、「おいしかったよ」「新しいレパートリーが増えたね」などと言われると、この料理をまた作ってみようと、さらに新たな料理に挑戦しようという気になる。
仮に、「いまひとつ、おいしくないな」と言われても、それはそれで、今度はもっとうまく作ろうとか、残念だったけど次はもう少し工夫してみようなどと思うものである。
しかし、まったく何の反応も得られないと、新しい料理に挑戦しようといった意欲がそがれていってしまう。
乳幼児期は、大人に比べて、よい子でいたい、よい子であることを認めてもらいたい、あるいはいろいろなものごとが“できる"ことを認めてもらいたいという素朴な気持ちを持ち、またそれを素直に表出できる時期である。
幼児の生活には、周囲の大人が与える注目が、より大きな影響を及ぼしているのである。
きょうだいが生まれると、周囲の大人から与えられる注目が激減する。
大人の注目はより小さい子どもに向けられることが多いので、注目の減少は、半減以上のものがある。
そのため、きょうだいが生まれることは、それだけで子どもにとっては大きなストレッサーをかかえることになるのである。
このようなときに子どもは、赤ちゃん返りをしてより幼い時期に特徴的な行動をしたり、不適切な行動をして親や周囲の大人の注目を取り戻そうとさまざまな努力をする。

自己主張と譲歩


きょうだいが生まれてしばらくたつと、きょうだい間での争いが生じることがある。
子どもは2~4歳頃に第一反抗期を迎え、親の意図とは別個に自らの意図を主張したり自ら物事を決断したいということを主張するようになる。
これが自我の芽生えと呼ばれるものだが、年上の方の子どもがこの段階に達すると、周囲の大人はある程度自分の意図にあわせて調整してくれるのに、そのような調整ができない年下の子どもや近い年齢の子どもは年上の子どもの意図にあわせて調整してくれない。
そのため、年上の子どもと年下の子どもとの間での争いが生じ始めるようになるのである。
やがて、年下の子どもも第一反抗期に達して自己主張を始めるようになると、年上の子どもと年下の子どもの間の争いはさらに頻度が増す。
それは、双方が、自分の意図を行動や言葉で主張できるようになってきたのに、それを調整する能力がまだ十分に育っていないためである。
子どもが、他者との間での意図の違いをある程度の譲歩でもって調整できるようになるのは、自我が芽生えて自己主張を始める時期よりも遅れ、また、幼児は、目の前の物や事態に左右され、先々の展開を予測して今現在の欲求を抑える能力がまだ不十分である。
そのような理由から、目前の物や出来事をめぐって争いが生じることが多いのである。
このような自己調整能力は、幼児期から児童期にかけてゆっくりと発達し、また非常に個人差の大きな領域でもあるため、きょうだいげんかは、乳幼児期に発生し、児童期ぐらいまでの間にずっとみられる現象となる。

タテの関係


親子間の関係や保育者や教師と子どもとの間の関係は、自己調整能力に圧倒的な差があり、一般にタテの関係と呼ばれる。
幼児期から児童期にかけてのタテの関係のなかでは、親や保育者または教師などの子どもの周りの大人が、子どもの欲求を受け入れたり、あるいは子どもがうまく調整していけるようにリードしていく。
一方、同年齢の学級集団や年齢の近いきょうだいの関係は、若干の能力差のなかではぼ対等に渡り合うヨコの社会である。
近年の子どもたちは、かつてギャング集団と呼ばれたような異年齢集団で過ごす経験が減っているようであるが、このようなタテの関係を体験できる機会を意図的に企画することが必要な時代になったのかもしれない。
子供たちは、タテの関係のなかで、葛藤や争いを調整していく能力が、実践のなかではぐくまれていくのである。
大人は、子どもたちが体験する、きょうだいや同級生たちとの間での葛藤や争いを、ときには見守り、ときには双方の主張を代弁したり整理したりし、あるいは解決のためのヒントを提供したり上手な解決法のお手本を示してあげたりしながら、子どもたちの自己調整能力の発達を促すと良い。
その際に、我慢したり譲歩したりする子どもの精神的な努力を誉めて導いてあげることが非常に大切である。
このような教育的介入の方法のひとつとして、社会的スキル指導(SST)があげられる。

ホールディング、オブジエクトプレゼンティングについて言語聴覚士が解説!

ホールディング

乳幼児は柔らかくて暖かな存在を求め、その近くに身を置くことによって安心感を得て生活していく。
ウイニコットは、母親が子どもの安心感を保障するこのようなシステムをホールディングという言葉で示している。
ウイニコットは、母親の機能として、子どもを抱き支えるホールディング、子どもをあやし大切に扱うハンドリング、さまざまな対象や人的環境を差し出し経験させるオブジェクトプレゼンティングという3つの機能をあげている。
このなかで、ホールディングとは、子どもを抱き、支える機能である。
これは、単に物理的に子どもを抱っこしたり支えたりすることだけを指すのではない。
生きている世のなかのほとんどの事柄がまだわからない、理解できない、人生のごく早期の乳幼児にとっては、ホールディングされることによってまず安心感を得る。
そして、人格を持った存在として大切にハンドリングされることによって徐々に自己の存在や大切さに気づき、さらに、さまざまな経験を与えられるオブジェクトプレゼンティングのなかで対人関係をひろげ、少しずつ外界の様子を学び適応していくすべを身につけていくのである。
子育ての初期においては、普通、子育ての主役は母親になる。
これには、女性にしか妊娠や母手しの授乳ができないこと、また、妊娠期間からおなかのなかの子どもと一体感を持って過ごすことなどの生物学的な条件や、社会や文化の背景が大きく影響しているようである。
この時期は、さまざまなことに注意を向けなければならない一方で、生活上の多くの制約を受けている、非常に大変な時期なのである。
そして、子育ての主役となっている母親を精神的に抱き支えることが、父親をはじめとする家族の大切な役割なのである。
「お母さんは、お父さんをはじめとする家族にホールディングされていてはじめて、わが子をホールディングできる」のである。
母親を支え、また、配偶者としてその他の家族のホールディングをリードするという父親の役割は、つい見過ごされがちだが、子育ての重要なポイントなのである。

オブジエクトプレゼンティング

正高信男は、絵本の読み聞かせ実験を通して、より積極的な父親の役割を述べている。
彼の行った実験は、1歳半の女児に対して、計34人の男子学生が子どもに向かって絵本を読み聞かせを行うというものだ。

育児語

女性が乳幼児に語りかける際には、平常時より声が高くなったり抑揚が誇張され、マザリーズまたは母親語と呼ばれている。
実験では、男性が読み聞かせを行った状況でも、平常時より声が高くなったり抑揚が誇張されたりした母親語が出現していることが示され、育児語という言葉で呼び換えている。
男性の読み聞かせの声は、音の高さ自体は、もともとそれほど高くはなく、乳幼児が相手だからといって女性ほど高くなることはないのだが、抑揚の変化の幅は女性によるそれを上回っている結果となっている。

オブジエクトプレゼンティングについて

さらに一連の実験のなかで、このような男性による育児語の特徴は、読み聞かせる絵本の内容によってその効果が異なることが明らかにされている。
つまり、クマや汽車を題材にした楽しく可愛い内容の絵本では、女性による母親語のほうが子どもの注意をひきつけ楽しい雰囲気をかもし出す傾向が高いのだが、オバケや怪獣が出てくる怖い内容の絵本では、逆に男性による育児語のほうが乳幼児の注意をひきつける効果が高いのだ。
子どもが生活する環境は、必ずしも安全な環境ではない。
家の周りの側溝やストーブのそばなどの危険な場所では、子どもの活動に制限を加えなければならないことがある。
ストープに手を伸ばそうとしたわが子を見て、母親がとっさに金切り声をあげて子どもを制止することがある。
とっさの場合にはこの方法はもちろん有効だが、普段から言い聞かせておくためには、男性すなわち父親による育児語の語りかけのほうが効果を発揮するようである。
子どもが生きていく世界は、楽しいものや可愛いものだけではない。
怖いもの、畏れるべきものをも経験させていくオブジェクトプレゼンティングは父親の得意技だと考えられる。
正高は、子どもを外の世界へ導き、困難に立ち向かうことのできる存在へと発達させるために見守り、必要に応じて手を差し伸べ、前方へと踏み出す手助けをする、たんなる“もうひとりの母親"ではない父親のあり方を提案している。

乳児期前期に毛布などを好きになるのはなぜ?移行対象とは?

乳児院や養護施設などでは、子どもが、汚れてにおい立つような毛布やタオルケットを常に持ち歩く姿がまれに見受けられる。なぜ、毛布なのだろうか?
この問いに対しては、ハーロウによるアカゲザルの赤ちゃんによる実験がヒントを与えてくれる。

愛着を抱かせる刺激

ハーロウは、生後すぐにアカゲザルを母親から引き離し、母親の代わりに2種類の代理母親のもとで生活させた。代理母親の一方は、むき出しの針金でできており(ハードマザー)、もう一方は針金の上をやわらかい布で覆われた構造になっていた(ソフトマザー)。
8頭の生まれたてのアカゲザルを1匹ずつ檻に入れ、その檻のなかにはハードマザーとソフトマザーの両方の代理母親がいる。8匹のうち4頭は、ハードマザーの胸に仕掛けた哺乳びんからミルクを飲み、残りの4匹はソフトマザーの胸に仕掛けた哺乳びんからミルクを飲むという2種類の条件を設けた。
そうして、アカゲザルの赤ちゃんが、どちらの代理母親のもとにいる時間が長いかを測定した。
結果は、ハードマザーとソフトマザーのどちらの母親からミルクを与える条件でも、アカゲザルの赤ちゃんは、明らかにソフトマザーにしがみついて生活する時間が長かったのである。
このことは、アカゲザルの赤ちゃんは、生まれながらにして柔らかな感触のものを求める性質があることを示している。
ハーロウはまた、同じようにソフトマザーとハードマザーに育てられているアカゲザルが母親から離れているときに、動くおもちゃをそばに置いてみた。
赤ちゃんザルは恐怖を感じて、どちらの母親から授乳されているかにかかわらず、ソフトマザーの方に飛んでいってしがみついた。
さらにその後は、ソフトマザーから少し離れたおもちゃに関心を示し、またソフトマザーにしがみつくことを繰り返しながら、徐々におもちゃへの関わりを持つことができるようになったのである。

移行対象

このような現象は、人間の赤ちゃんにもみられる現象で、母親(愛着対象者)との間で安定した信頼関係を築けている子供は、母親との間での視線の交換を繰り返しながらその能力を伸ばしていくことができるのである。
下記の絵はスヌーピーのキャラクターで知られる有名な漫画のカットである。
このなかで頬に毛布をあて指をしゃぶっているライナスは、常に毛布を手放さず、彼の心を不安定にさせる事態に遭遇したとき、このようなしぐさで安心感を取り戻そうとするのである。このようなしぐさで安心感を取り戻そうとするのである。
乳児期には、安心感の源は母親の存在であり、声であり、抱擁であったりする。
幼稚園に入園したばかりの幼児は、園内で何かトラブルがあると母親の呼び名を呼んで泣く。
この頃までの子どもにとって母親は無条件に子どもの悲しみを受け入れ、あらゆる問題を解決し、必ず味方になって助けてくれるスーパーな存在なのである。
ところが、幼稚園には常時母親がいてくれるわけではない。
そこで、母親の代わりのものとして、母親を思わせる柔らかな存在であるところの毛布が、母親に代わって彼の安心感を取り戻させる材料となるのである。
このようなお気に入りの毛布やぬいぐるみなどを移行対象と呼んでいる。
この移行対象は、一般に母親を思わせ安心感の源になる一次的な移行対象から、友達のような人格を持ったぬいぐるみのような二次的な移行対象、さらに、自分の分身として存在する三次的な移行対象へと移り変わっていくのである。

乳幼児期の子供が「うそをつく理由」と「対応方法」を言語聴覚士が解説!

乳幼児がある程度言葉を話すようになると、真実とは異なることを言葉にして表出してしまうことがある。
“真実とは異なることを話す"ということを“うそ"と定義するならば、乳幼児期からうそが生じることはありえる。
乳幼児期は、急速に言語の能力が発達する。
言葉の発達は、子どもが育つ環境や持って生まれた性質などに左右され非常に個人差の大きな領域である。
また、乳幼児期の言葉は、言葉を媒介にした思考能力や、認知能力全般の発達にも左右されている。
そのため、乳幼児期にはうそをついてその場を逃れる意図がない、“結果的にうそになってしまったうそ"が発生することがある。

記憶容量の未発達のために生じるうそ

幼児は、よく周囲の親しい大人の口真似をして言葉を覚えていく。
そのため、周囲の大人たちからみれば、子どもが少々大人びた話し方をするのを見て、幼児でも大人と同じレベルの記憶能力や認識能力を持っているように感じてしまう。
ところが、実際には幼児はまだまだ発展途上中である。
記憶の容量についていえば、大人が一度に記憶しておけるものごとの数が5~9個であるのに対して、幼児ではだいたい年齢-1個といわれている。
たとえば、3歳の乗り物が大好きな幼児が幼稚園の保育室でロボットのおもちゃで遊んでいるときに、友達が車のおもちゃを持ってきた。
またもうひとりの子どもが、飛行機のおもちゃをもって来て、一緒に遊び始めた。
このような状況が続いた後で、この子どもに最初にどのおもちゃで遊んでいたのかを尋ねると、最初にロボットで遊んでいたことを思い出せずに、最も印象の強かった飛行機や車のおもちゃで遊んでいたと答えてしまうことがある。

現実モニタリングが未発達なために生じるうそ

幼児は、自分の願望と現実の区別がつかないことがある。
そのため、「~してくれたらいいなぁJという願望があると、その願望が実現していたかのように感じてしまうことがあるのである。
ですから、きょうだいでひとつずつのお菓子を食べているときに、先に食べ終わった弟が、お兄ちゃんが目を離した隙にお菓子をとって、「お兄ちゃんがくれた」と主張することが生じうるのである。

自分を守るためのうそ


2歳から3歳前後の時期は、第一反抗期と呼ばれ、お父さんやお母さんが指示したことに対して、「イャッ!」という言葉でもって、従うことを拒否することが多く見られる。
これは、それまで親、特に母親との間で強い一体感を持って生活してきた乳児期から幼児期の初期に移行するこの時期に、子ども自身の意図と母親の意図が必ずしも一致しない経験を重ねるうちに、自分は母親とは独立した存在であることを理解し、自らのことを“自分で決めたい"という自律性を獲得しつつあるために生じる現象なのである。
お父さんやお母さんにとってはやっかいな時期ではあるのだが、見方を変えれば、子どもにとっての世のなかの認識や自己主張の能力が芽生えてきた、発達の証なのである。
子どもが自我をはっきりと持つようになるにつれて、親や保育者との間での意思の葛藤が生じることが増えていく。
子どもが親の意思に反する行動を行って罰を受けたり、厳しく叱責されたりすることもある。
子どもにとって、罰を受けることはできれば避けたいことであるし、あまりに厳しい叱責は、親から見捨てられてしまうことへの恐怖にもつながる。
そのために、叱られないように、あるいは罰を受けないように、苦し紛れのうそをついてしまうことがある。
たとえば、お母さんが留守の間に我慢できずにお菓子を食べてしまった幼児が、「おじさんが来て、お菓子を食べちゃった!」などと言うことがある。
多くの場合、親や保育者は、子どもがうそをついたこと自体に驚き、逆上して、激しく問い詰めたり、叱ったりする。
このようなことが続くと、子どもはうそをついてしまった自分を守るために、うそにうそを重ねていってしまう。
さらに、親がどこまでも自分を追い詰めていく恐怖感を感じるようにもなり、それが親子関係の安定を崩してしまう危険性もある。
意図的なうそであっても、子どものうそのほとんどは、子どもの認知能力や他者の心のうちを推測する能力の未熟さのために、簡単に見破られてしまう。
子どもがうそをついたことを問い詰めて責めると、子どものうそはますます複雑化し狡猾なものに変わっていく危険性がある。
そういった場合は、子どもがうそをつかなければならなくなった心情を察して、その気持ちを代弁してあげることを通して、うそをつかずに素直に心情を表出することを身につけさせましょう。

親がうそをつくことの真似


大人は、時と場合によって、うそを方便として用いることがある。
大人が、うそをつく手本を見せ続けると、子どもがこれを観察学習して身につけてしまうこともある。
意図的にうそをつかない子どもに育てたいのならば、大人もまたうそをつかないで問題を解決する望ましいお手本を示すことが大切である。