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復唱の語彙ルート

復唱の語彙ルート 復唱の語彙ルートは、簡単に説明すると、「鉛筆」という文字を見て、頭の中で音韻に変えずに(黙読をせずに)、語彙であると認知し、その意味がわかるという経路のことをいいます。 つまり文字を音韻に変換せず、語彙/意味処理をするということになります。 例えば「海老舗」という文字が提示されたとします。この中に単語が隠されています。何をみつけましたでしょうか? 「エビ」ですか?それとも「シニセ」でしょうか? もしかすると読み方がわからなくても、意味があまり理解できなくても、何となく単語かなと感じることができた方がいらっしゃるかも知れません。 それではなぜ、「海老」あるいは「老舗」という区切りをみつけることができたのでしょうか? まず、「海老」や「老舗」という単語の特徴について考えてみましょう。 これらのような漢字1文字ずつの読み方とは無関係に、単語全体で決められている読み方を「熟字訓」と言います。個々の漢字にはそれぞれ音読み・訓読みという音韻が対応していますが、これらの単語の読みはそのどちらにも該当しません。このような単語は、漢字1文字1文字を直接音韻に変換しても、正しい読みに到達することはできないため、音韻ルートでは読解に至ることができません。 このような単語を正しく読解するためには、まず、単語全体を「ひとかたまりJの語彙としてとらえる必要があります。入力語彙辞書は音韻からばかりでなく、文字からもアクセスできるようになっています。表音文字である仮名で書かれた単語の場合、通常、脳はまず1文字ずつ音韻変換を行いつつ、語彙処理へ進もうとするのですが、「海老」や「老舗」のような、1文字ごとの音韻変換では読めない熟字訓を持つ単語の場合は単語全体を直接語彙照合にかけることになります。 さきほど「海老舗」という文字列の中から「海老」を見つけた方は、語彙辞書の中の「海老」という項目、また先に「老舗」を見つけた方は「老舗」という項目と照合したことになります。 このような直接的な文字/語彙照合は漢字単語に限ったことではありません。 仮名単語であっても、常に仮名で書かれていて日常生活上、目にする頻度も高い単語(通常仮名表記語と言う)は、最初は音韻ルートを用いて読解されていても、徐々にいちいち音韻変換されなくなり、文字列全体から直接語...

入力文字辞書とは

入力文字辞書とは 入力文字辞書とは、私たちの脳内にある文字の記憶が貯蔵されている倉庫と言い換えることができます。 つまり、日本語話者の場合、漢字や平仮名やカタカナなどの形態の記憶が集まった場所になります。 「ト」「ロ」という形態素は、日本語圏では、/to// ro/と いう音韻を表示していますが、ハングル文字の中にもきわめて似た形態が存在し、それぞれ/a// m/という音素を表示しています。このため、どちらの言語圏で生活する人もそれぞれこれら「ト」「口」という形態を文字として捉えることが可能です。 つまり、「ト」「口」という1 形態素は、日本語圏の人の入力文字辞書にも韓国語圏の人の入力文字辞書にも存在していることになります。 このように、人の脳の中には、その母国語に応じた文字辞書が存在していると言われています。

読解の音韻ルート

読解の音韻ルート 仮名単語「えんぴつ」を/え//ん//ぴ//つ/と 、1文字ずつ音韻に変換してから語彙照合し、意味の理解に至る場合に音韻ルート(読解)を通ります。 1.文字入力〜3.文字照合 (入力文字辞書)までは、こちらを参照ください↓ http://www.st-medica.com/2017/06/tango-dokkai-root.html 4.文字 /音韻変換 ここでは、文字照合 (入力文字辞書)の段階で照合された文字を1文 字ずつ音韻に変換する処理が行われます。 変換に成功すると、脳内の入力音韻辞書で、その文字に対応する音韻表象が活性化され、「心 の中で音読している(黙読)状態」となります。 文字 /音韻変換 とは、「文字辞書内で活性化 した特定の文字が、入力音韻辞書で照合を 受けること」です。 ですから、両辞書間に正しい対応関係が保たれていなくてはならないわけです。 文字 /音韻変換規則のことを、英語 では grapheme/phoneme conversion rule(GPC ru!e)といいます。 文字 /音韻変換の障害が起こると、それが文字であるということは分かるにもかかわらず、その文字から正しい音韻を活性化させることができない状態となります。 具体的には、 どのように読むのかが分からなかったり、誤った読み方をしてしまったりすることになります。 5.語彙照合 (入力語彙辞書) 次の段階は、聴覚的理解 (単語)の語彙照合と共通の処理過程になります。 /enpitsu/という4モーラからなる音韻列が語彙であるかどうかを、入力語彙辞書に照らし合わせる処理になります。 語彙照合 (入力語彙辞書)の段階で障害が起こると音韻列が語彙か非語彙かを判断することが難しくなります。 6.意味照合 (意味記憶の活性化) 語彙であると捉えられた後は、聴覚的理解 (単 語)の 場合と同じように、その語彙/enpitsu/に 対応する意味記憶を活性化させるという最終段階に入ります。 その人の認知体験に応 じた鉛筆の意味記憶に基づく、様々な鉛筆の視覚的表象や、聴覚的表象が活性化することになります。

単語の読解のルート

単語の読解のルート 単語の読解では、まず、被験者の前に何枚かの絵を提示します。 そのあと、検査者は、その中からどれか1つの絵を表す単語を文字で提示して、被験者に日の前の選択肢の中から該当する絵を指差すことを求めます 。 日本語の文字形態には、漢字、平仮名、片仮名があります。 漢字は中国から渡ってきた文字で、1文字1文字が何らかの語彙情報 を持っており、表語文字と呼ばれています。 平仮名や片仮名は音韻を表す目的で、漢字を基に後から日本人が作り出した文字であり、表音文字と呼ばれています。 性質の異なる漢字と仮名は、脳内での処理のされ方も異なっているようです。 文字入力 まず、被験者は、提示された「鉛筆」や「えんぴつ」という文字を見ることからはじまります。被験者の網膜に入力された視党的な情報は、主要なルー トとして視神経、外側膝状体を通り、後頭葉の第一次視覚野へ伝達されます。 形態認知 後頭葉の第一次視覚野に入力された情報は、さらに第二次視覚野、第二次視覚野と進み、より高次の処理を受けます。文字を構成している直線や曲線の傾き・形態および相互の位置関係などが分析され、脳内に「正しい形態」が表象されます。 形態認知の段階で障害があると、文字の形態を正しく模写 した り、同じ文字同士のマッチングを行ったりすること等が難しくなります。つまり、統覚型視覚失認の影響が文字の認知にも現れることになります。文字の同定以前の、形態としての認知の段階における障害のため、提示された「鉛筆」や「えんぴつ」という文字は、文字としては捉えることができません。 文字照合 (入力文字辞書) 「鉛J「筆」や「え」「ん」「ぴ」「つ」など、個々の文字の形態が脳内で正しく表象されると、次にその表象は、脳内に存在する文字の記憶 (文字辞書)と照らし合わされるこ とになります (文字記憶との照合)。つまり「鉛」や「え」 という視覚表象が、ここに至って「文字」として認知されます。 文字照合 (入力文字辞書)の段階で障害がおこると、同じ文字同士をマ ッチ ングさせることや、文字を図形として模写することなどは可能です。 しかし、文字であるという認知がなされないため、文字を模写しようとすると、文字を写しているというような連筆 (筆順)ではなく、まるで図形をコピーしているかのよう...

復唱のルート

復唱のルート 認知神経心理学では、復唱のルートは、音響ルート、非語彙的音韻ルート、非意味的語彙ルート、意味ルートの4ルートあると考えられています。 後者になるほどより多くのプロセスを踏むことになります。 当サイトに投稿した復唱の各ルートの記事を以下にまとめていますので、ご参照ください。 4種類の復唱ルート 1. 音響ルート(復唱のルート) 2. 非語彙的音韻ルート(復唱のルート) 3. 非意味的語彙ルート(復唱のルート) 4. 意味ルート(復唱のルート)

意味ルート(復唱のルート)

意味ルート(復唱のルート) 通常の単語の復唱における中心的なルートです。 意味ルートは以下の通りです。 音声入力 ↓ 音響分析 ↓ 音韻照合 (入力音韻辞書) ↓ 語彙照合 (入力語彙辞書) ↓ 意味照合 (意味記憶の活性化) ↓ 語彙選択(出力語彙辞書) ↓ 音韻選択(出力音韻辞書) ↓ 音韻配列 (音韻出カバッファー) ↓ 構音運動プログラム ↓ 構音運動実行(音声出力) 復唱の意味ルートは、言われた単語の意味を理解した上で、あらためて同じ単語を自ら発話するというルートです。 つまり、単語の復唱とは、単なる模倣ではなく、いったん理解したことばを自ら改めて表出するという「再生」の要素を含んだ処理になります。 意味照合の段階に障害がある場合、聴きとった語が、単語であると感じながらも、その意味を解せないまま復唱をせざるを得なくなります。 意味ルートの場合には、語彙照合の障害の場合と異なり、聞き取った単語に対して、単語であるという既知感は持っています 。 健常者における単語の復唱では、 音響ルート 、 非語彙的音韻ルート 、 非意味的語彙ルート 、意味ルートのすべてが重畳して機能していると考えられます。そのため、復唱は、これらいずれの処理過程が障害されても復唱能力は低下してしまいます。 復唱は、聴覚的理解や呼称など、口頭言語に必要な、ほぼすべての言語情報処理を含むため、重要な処理過程になります。 注意するべき点は「復唱が障害される」=「把持力の低下」ではないことです。 把持という用語は、使うとすれば入力音韻辞書から出力音韻辞書 (および音韻出カバッファー)に 直接、音韻情報が転送される場合です。そのため、把持は語彙処理および意味処理の段階がバイパスされる場合に限定されます。

非意味的語彙ルート(復唱のルート)

非意味的語彙ルート(復唱のルート) 非意味的語彙ルート(復唱のルート)は、語彙処理までが関与し、意味の関与しない復唱ルートです。 非意味的語彙ルート(復唱のルート)は以下の通りです。 音声入力 ↓ 音響分析 ↓ 音韻照合 (入力音韻辞書) ↓ 語彙照合 (入力語彙辞書)  ※意味処理へ向かわず語彙選択へ向かいます。 ↓ 語彙選択(出力語彙辞書) ↓ 音韻選択(出力音韻辞書) ↓ 音韻配列 (音韻出カバッファー) ↓ 構音運動プログラム ↓ 構音運動実行 (音声表出) 単語であるとわかっているけど「意味がよくわからない」という状態で復唱が行われる場合には、この非意味的語彙ルートを通ることになります。 語彙照合 (入力語彙辞書)の段階に障害があると、聞き取った単語に対して、知っているという「既知感」が持てないまま復唱をせざるを得ない場合があります。 単語の復唱であるにもかかわらず、非語の復唱の様になります。

非語彙的音韻ルート(復唱のルート)

非語彙的音韻ルート(復唱のルート) 非語彙的音韻ルート(復唱のルート)は、音響として聞き取った言葉を、音韻として正しく捉えた後、そのまま同じ音韻を返す処理のルートをいいます。 非語彙的音韻ルート(復唱のルート)ルートは以下の通りです。 ➀音声入力 ↓ ➁音響分析 ↓ ➂音韻照合 (入力音韻辞書) ↓ ➃音韻選択 (出力音韻辞書) ↓ ➄ 音韻配列 (音韻集力バッファー) ↓ ➅構音運動実行 (音声表出) ①音声入力→②音響分析→③音韻照合 (入力音韻辞書)までの処理は、単語の聴覚的理解と同じです。 しかし、文脈がない音韻1モーラや非語 (無意味語)は語彙ではないため、次の語彙照合では、「語彙ではない」という判定を受け、その先に進むことはできません。 そのため、音韻照合(入力音韻辞書)の後、直接音韻選択 (出力音韻辞書)の処理に進むことになります。 つまり文脈を伴わない1モーラや非語 (無意味語)では、語彙情報や意味情報は関与しません。 ➃音韻選択 (出力音韻辞書)では、入力音韻辞書で照合 (同定)した音韻と、同じ音韻を出力音韻辞書で、再度選択する処理過程が行われます。 文脈を伴わない1モーラや非語 (無意味語)で音韻性錯語が起こる場合この段階での障害が疑われます。 ⑤音韻配列 (音韻集力バッファー)は、選択した音韻を配列する過程です。非語 (無意味語)の場合で、音韻の並び替えの誤りが見られる場合は、この段階の障害が疑われます。(1モーラだけの処理の場合にはあまり考える必要はありません) ➅構音運動実行 (音声表出)の段階では、運動の設計図の通りに、発声発語器官の多数の神経・筋系が協調的に活動して日から音声が発せられます。 1モーラだけでなく、非語 (無意味語)の復唱も同様のルートで処理されますが、1モーラだけを復唱する場合に比べ、聴いてから復唱し終わるまでの短時間、複数の音韻を把持しなければならなくなり、その分だけ情報処理としての負荷量が増加します。 短時間音韻を把持する処理のことを 音韻リハーサル  と呼ばれています。 聞き取った音韻が消えてなくならないように、配列がばらばらにならないように、頭の中で何度も繰 り返して唱え続け、活性を保つ作業のことをいいます。 ...

音響ルート(復唱のプロセス)

音響ルート(復唱のプロセス) 音響ルート(復唱のプロセス)は下記のようなルートです。 ①音声入力 ↓ ②音響分析 ↓ ③構音運動プログラム ↓ ④構音運動実行 (音声表出) 音響ルートは耳に入ってきた言葉を、単に「音Jと して模倣する過程です。 これは厳密な意味では「復唱Jと は言えないかもしれませんが、幼児が言葉を獲得するプロセスにおいて欠かすことのできない能力です。 幼児期においては、周囲の人の日から発せられた言葉を、最初は単に「音」 として聞き取 り、 意味も解からず真似をして自分でも言ってみるという行為を経て、最終的にことばの獲得に至ります。 ある意味、 これは復唱の根幹とも言える基礎的な情報処理ではないかと考えられ、復唱を支える 1つのルートとして捉えられています。 言語獲得前あるいは獲得途上にある幼児や、オウムや九官鳥が行う言葉の模倣がこれに該当します。

呼称のプロセス

呼称のプロセス 認知神経心理学では、➀〜➇のプロセスを経て、呼称がされていると考えられています。 当サイトに投稿した各プロセスの記事を以下にまとめていますので、ご参照ください。 ➀非言語的記号の入力(呼称のプロセス) ↓ ➁形態認知(呼称のプロセス) ↓ ➂意味照合(呼称のプロセス) ↓ ➃語彙選択(出力語彙辞書) ↓ ➄音韻選択(出力音韻辞書) ↓ ➅音韻配列 (音韻出力バッファー) ↓ ➆構音運動プログラム ↓ ➇構音運動実行 (音声表出)

構音運動プログラム

構音運動プログラム 構音運動プログラムは、脳の中で正しく選択され、正しい順序に配列された音韻を、音声として外に出力させるために必要な、発声・発話器官の正しい運動の記憶(構音プログラム)を活性化させる(想起する)段階です。 単語を構成する音韻列を、日本語らしくスムーズに音声化していく上で必要な、一連の運動(パワー・速度・位置・タイミングなど)に関する設計図のことを言います。 構音運動プログラムの段階の障害 構音運動プログラムの段階の障害を、アナルトリー(発語失行、失構音)と呼ばれています。 アナルトリーがあると、構音すべき音韻は頭の中に正しく想起されているのに、発声発語器官をどのように動かせばよいのかわからず、結果として、発せられた音は、聞き手にとって不明瞭な、書き取ることが困難な独特な歪みを伴ったものとなります。 その他には、音が置換したり引き伸ばされたり脱落したように聞こえる場合や、発話速度やリズムの異常が観察されることもあります。 構音運動プログラムの段階での障害では、自分の発話が目的の音ではないことはすぐにわかるので、何度も修正しようとします。 言い直すことで修正される場合もありますが、もう1回発話すると再び誤った音に変わってしまい、しかも最初とは異なる音になっているという場合もあります。 構音運動実行 (音声表出) いよいよ最後の段階です。構音運動プログラムが作動 し、発声発語器官の諸筋群が協調的に動 くことによって、被験者の口から音声が発せられます。 この段階の障害は、運動障害性構音障害 (dysarthriea)になります。

音韻配列 (音韻出力バッファー)

音韻配列 (音韻出力バッファー) 語彙の引き出し(出力語彙辞書)で手に入れた「レシピ」にしたがって、音韻を選んだら、次にそれを、順番に並べるという作業が待っています。これを音韻配列と呼びます。 従来、失語症の教科書では音韻を選ぶ処理と並べる処理を明確に区別せず、音韻の選択/配列という用語を用いられてきました。 音韻配列 (音韻出力バッファー)の段階の障害 単語を構成する音韻はすべて揃っているのですが、その順序が入れ替わってしまう症状、すなわち、音韻性錯語の中でも「転置」といわれる症状が生じます。 具体的には /tokei/に 対して /keito/、 /toike/などです。この症状は、伝導失語の中核的症状となります。

音韻選択(出力音韻辞書)

音韻選択(出力音韻辞書) 語彙を正しく選択すると、そこには、その単語に関するさまざまな情報(音韻の情報、文字の情報、統語に関する情報、イントネーションに関する情報など)を手に入れることができます。 呼称の場合は、発話が目標のため、語彙の引き出しから音韻に関する情報を取り出し、その指示通りに音韻の貯蔵庫から必要な音韻を正しく選択する処理が行われます。 この音韻の貯蔵庫のことを出力音韻辞書といいます。 音韻選択(出力音韻辞書)の段階の障害 音韻辞書に到達できない、または到達できたのに、音韻辞書をまったく開くことができない場合には、発話に至らないため、語彙の引き出しが開かない場合と、表面的には区別することができません。 音韻辞書がなかなか開かないという状況の場合には、 『机』に対して、“ツ"とか、“ツキ、ツケ"などと、音韻を探しているかのような発話が観察されます。このような症状がある場合は、音韻選択の段階でのトラブルではないかと推論することができます。 音韻選択の間違いでは、“ツクオ"、“ツキエ"など、一部の音韻が人れ替わってしまいます。このような症状を音韻性錯語といいます。 また、“オタケ"のように、もともと何の単語を言おうとしていたのか全く予想のつかないような症状を新造語(あるいは語新作)と言います。このような場合も、音韻選択の段階の障害からも生じる可能性が考えられます。

語彙選択(出力語彙辞書)

語彙選択(出力語彙辞書) 私達の脳の中には様々な意味を指し示すための言語記号である「語彙」が多数蓄えられていると考えられており、「語彙辞書」と呼ばれています。 語彙選択の段階では、脳の中にある語彙辞書から、その意味を指し示すにふさわしい語彙を「検索」し、該当するものを「選択」します。「探索・選択」というのは、沢山ある引き出し(語彙辞書)の中からどれか1つ選んで、その引き出しを開けるようなイメージとなります。 語彙選択の段階の障害 語彙選択の段階の障害があると、語彙辞書に到達できない、あるいは、到達できても引き出しも開けることができない状況が起こります。その場合には何も語が表出できない状態になります。 全失語といわれるような重度の失語症の患者さんはそのような状態なのかもしれません。 そこまで重度ではない場合では、辞書に到達した後に、目当ての引き出しとは別の引き出しを開けてしまう症状が出現します。この場合には、りんごの絵を見て、バナナや時計など、別の単語を言ってしまう症状が現れます。語性錯語と呼ばれる症状は、この段階の障害と考えられます。 現在、語彙の選び損ないがどうして生じるのかや、選び間違う時に、なぜその語彙を選んでしまったのか等はよく分かっていません。

意味照合(呼称のプロセス)

意味照合(呼称のプロセス) 正しく、形態認知ができたとしても、それだけで、それが何かと分かるわけではありません。 形態認知の段階では、単に絵の形態が脳の中に表象されているに過ぎません。 次に、その形態が、無意味な図形が、何かを現している記号であるということの照合がなされ、さらに、意味記憶との照合が行われます。 そして、人それぞれの認知経験にもとづいてつくられた意味記憶が活性化されます。 この段階を 意味照合 といいます。 意味照合(呼称のプロセス)の段階の障害 対象の形態自体は正しく捉えられているので、その絵を模写することが可能ですか、その絵を、別の絵や、実物などと照合させることができないという症状が現れます。 上記のような症状、つまり、見えているのに何であるのかがわからないという症状を、 運合型視覚失認 といいます。

形態認知 (呼称のプロセス)

形態認知 (呼称のプロセス) 後頭葉の第1次視党野に到達した視覚情報は、この後、第2次視党野、第3次視覚野とさらに高次の中枢で、より複雑な視覚認知処理が行われます。 ここでは、絵に含まれるさまざま直線の角度や曲線の曲がり具合、さらには奥行き・色・場所・動きなどに関する情報の認知が行われます。 つまり、「形態認知」とは、その絵に対してゆがみのない正しい像を脳内に表象する処理のことをいいます。 形態認知の段階の障害 形態認知の段階の障害では、光を提えることは可能であるにもかかわらず、物体の形・位置・色・ 動きなどに関する情報を正しく認知することが困難になります。 このような障害を、 統覚型視覚失認 と呼びます。

非言語的記号の入力(呼称のプロセス)

非言語的記号の入力(呼称のプロセス) 呼称の第一段階で、被験者が、提示された絵を見る段階です。 被験者の網膜に入力された光の刺激(視覚情報)は、視神経を通り、外側膝状体を中継し、後頭葉の第1次視覚野を目指します。 非言語的記号の入力の段階の障害 非言語的記号の入力の段階の障害は、視力障害・視野障害や皮質性の視知覚障害などです。 ここは、内言語障害には含まれません。 これらの問題をかかえた患者に検査を行う際には、視力障害であるなら、度の合った眼鏡を掛てもらったり、場合によっては、提示する図版を拡大する 必要するといった配慮が必要です。 また、視野障害の場合には、図版を正面に提示するのではなく、障害されていない側の視野にずらして提示した方が良い場合もありますが、検査手順に定められた標準的な施行方法ではない場合は、その旨検査用紙の欄外に記載しておくようにします。

聴覚的理解(単語)のプロセス

聴覚的理解(単語)のプロセス 認知神経心理学では、➀〜➄のプロセスを経て、単語の聴覚的理解がされていると考えられています。  当サイトに投稿した各プロセスの記事を以下にまとめていますので、ご参照ください。 ➀音声入力 ↓ ➁音響分析 ↓ ➂音韻照合(入力音韻辞書) ↓ ➃語彙照合(入力語彙辞書) ↓ ➄意味照合(意味記憶)

意味照合 (意味記憶の活性化)

意味照合 (意味記憶の活性化) 語彙照合で、語彙であると判断されると次に、意味照合 (意味記憶の活性化)が行われます。 「意味」とは、その人が生まれてから現在に至るまでの認知体験の中で、「世界」を切り分けて整理してきた「項目」の総体のことをいいます。 この「項目」のことを「カテゴリー」と呼ぶこともあります。 「意味 (あるいは意味記憶)」 とは、 このような「項目(カテゴリー)」の総体をいいます。 例:「鳥、猫、ねずみ」は「動物」の小項目となり、「動物」は「生き物」の小項目といったように、自分を取り巻く環境世界を、たくさんの項目によって切り分けて、整理して理解しています。 また、「意味 (あるいは意味記憶)」は 、一人ひとりの体験によって、切り分け方、整理の仕方が異なっているといわれています。 意味照合 (意味記憶の活性化)の 段階の障害 語彙として捉えることができても意味が分からないという症状が出現します。聞き取れているにもかかわらず意味が理解できない症状に対して、認知神経心理学では、語義聾 (word meaning deaflless)という用語が使われています。 例:/ame/という2モーラの音韻列が日本語の単語(語彙)であると判断することはできているにもかかわらず、「雨って聞いたこがある言葉だけど、なんだ?」のように意味にたどりつくことができない、または、「晴れ」と誤って違う意味にたどり着いてしまうというような症状が現れます。 聴覚的理解(単語)のプロセスへ戻る

音韻照合(入力音韻辞書)

音韻照合(入力音韻辞書) 音声入力や音響分析に異常がなければ、検査者の口から発せられた音声は音響的には正しく捉えられます。 しかし、音響分析の段階では、その音響が日本語の音韻、いわゆる五十音のどれに該当するかはまだ確定されていません。 音韻照合(入力音韻辞書)の段階では、聞き取った音響を日本語の音韻と照らし合わせる作業を行います。 その際に、参照されるリストのことを入力音韻辞書と呼び、照らし合わせる処理のことを音韻照合と呼びます。 音韻照合(入力音韻辞書)段階の障害 音韻照合(入力音韻辞書)段階の障害では、音響として正しく脳内に響いているにもかかわらず、日本語におけるどの音韻なのかが確定できないという状態となります。 そのため、症状としては、発話者の音声が正しい音韻として認知できなかったり、異なる音韻に照合されてしまうなどの誤りがみられます。 この症状は、正しく聞き取った語音を音韻と照合させる段階の障害という意味で音韻聾(phonological deafness)と言われています。 聴覚的理解(単語)のプロセスへ戻る