脳内側部の病巣 記憶障害 Papez回路

脳内側部の病巣 記憶障害 Papez回路

脳内側部は脳梗塞、ヘルペス脳炎、前交通動脈瘤破裂等で損傷され、様々な記憶障害(前向性健忘と逆向性健忘)を起こします。

また時に、作話(作り話)を伴うことがあります。

新しいことを覚える近時記憶について最も重要なのはPapez の回路です。

Papez の回路は、海馬―脳弓―乳頭体―視床前核―帯状束―(脳梁膨大後域)―海馬という構成からなり脳の内側に位置します。

そのため、記憶障害は、運動麻痺や言語の障害とは独立して起こることが多いと言われています。
Papez の回路のうちのどこかが損傷されると、新しいことが覚えられない前向性健忘が生じます。
さらにこの回路を超えて病巣範囲が拡大すると、発症時点よりも遡って思い出せない逆向性健忘を伴いやすくなります。

前交通動脈瘤破裂では、前脳基底部が損傷され、記憶項目の組織化と時間順序の障害からなる特徴的な健忘が起こります。
病巣範囲が拡大して前頭葉眼窩面から内側面の損傷が加わると、しばしば現実とは異なる空想的な内容の作話が自発的に産出されることがあるようです。

右半球の脳卒中と空間性注意のネットワーク

右半球の脳卒中と空間性注意のネットワーク


右半球の中大脳動脈領域の脳梗塞や被殻出血では、左片麻痺に加えて、半側空間無視が起こることがあります。
半側空間無視とは、身体から見て病巣と対側の刺激を発見して反応したり、その方向を向くことの障害のことを言います。
頭部や視線の動きを自由にした状況で生じる症状であり、多くの生活場面に無視症状が現れます。

空間性注意の神経ネットワークを構成する皮質領域は、下頭頂小葉(角回と縁上回)と下前頭回後部と言われています。

両者は上縦束で結ばれ、さらにそれぞれ内包後脚と前脚の白質線維を介して視床と結ばれ、基本的な空間性注意のネットワークを構成していると言われています。

後方の下頭頂小葉病巣では感覚表象に依存した無視として、線分二等分や横書き単語の読みにおける無視が起こり、前方の下前頭回後部病巣では探索運動に依存した無視として、抹消試験や探索を伴う日常的課題における無視が起こりやすいと言われています。

左半球の脳卒中と言語の神経ネットワーク

左半球の脳卒中と言語の神経ネットワーク


左半球の中大脳動脈領域の脳梗塞や被殻出血では、右片麻痺や失語症、失行症が起こることが多いです。

失語症は、シルビウス裂の周囲に広がる言語野の損傷することによっておこり、脳が言語をうまく操れなくなってしまう症状です。

音は左右の一時聴覚野(横側頭回)で処理されますが、言語音として認知し把持するのは上側頭回の後部付近です。

その後、語としてのまとまった音(語形)として認知され、さらに、左側頭葉前部にある言語性意味記憶と照合されます。

語レベルの意味処理は側頭葉内で概ね可能であるが、文など語レベルを超えた意味処理は、前頭葉―島皮質下―側頭葉―頭頂葉・後頭葉からなる腹側のネットワークが担うと言われています。

発話の自発性は、補足運動野から前頭葉深部を経る白質路により駆動されます。

Broca野後部を含む運動前野下方で言語の音である音韻の配列が準備され、中心前回の中・下部が構音器官をコントロールします。

弓状束は復唱のルートと考えられてきましたが、上・中側頭回後部と前頭葉を結んでおり、運動―感覚協調という意味で、音韻選択・構音と言語音・語形認知を正しく遂行する上で重要となっていると言われています。

身体活動は癌死亡率を下げるとの報告あり

身体活動は癌死亡率を下げるとの報告あり


身体活動(PA)は癌死亡率を低下させるだけでなく、死亡リスク軽減とPAの間に用量作用関係のあることが、300万人以上の参加者を対象とした研究のメタ解析によりわかりました。

詳細結果では、最低推奨運動量に従うことで死亡率は13%低下しており、癌経験者ではこの効果は更に大きく、高運動量PAを実施した人は22%も死亡率が低下していました。

さらに乳癌については、診断前PAより診断後PAの方が死亡率低下幅が大きい結果となりました。

この結果は他研究結果と一致しており、考えられる理由の一つは、診断後にPAに参加する患者が健康維持への意識が高い人々であり、生活習慣の改善に積極的であった、ということです。

有効性の理由は別として、全体的にはすべてのひとびとに2.5 h/week以上の身体活動が強く推奨されると言えます。

British Journal of Sports Medicine掲載論文(解析対象71論文)結論より

FDA 下肢膝上切断後に使用する人工補助装具OPRAの使用を許可

FDA 下肢膝上切断後に使用する人工補助装具OPRAの使用を許可


FDAは、下肢の膝上切断後に、従来のソケット義足の欠点を改善した人工装具Osseoanchored Prostheses for the Rehabilitation of Amputees(OPRA)を使用することを許可しました。

FDAは、下肢膝上切断患者で従来型ソケット義足ではリハビリに問題を抱える患者に対して、人工補綴装具Osseoanchored Prostheses for the Rehabilitation of Amputees(OPRA)の使用を許可しました。

患者の残された大腿骨に固定具・ボルトを埋め込んで外部義肢と連結させるものです。

従来の装具は、ソケットを患者の大腿骨に埋め込むため、一定程度の長さの大腿骨が残されている必要があり、また痛みや感染などのリスクがありました。

OPRAは数ヶ月を隔てて2段階の埋め込み手術を行うことで感染などのリスクを軽減させることができるようです。

同装具はHumanitarian Use Device(HUD)指定をうけ、加速承認されました。

その安全性・性能は51名の患者への使用による臨床試験データによって評価されれ、高頻度の副作用には感染があったとのことです。

認知症患者の5年死亡率は60%

認知症患者の5年死亡率は60%


オランダUniversity Medical Center Utrechtのvan de Vorstらは、同国全国レジストリデータを解析しました(平均年齢:81.4歳)。

認知症診断後5年死亡率は男女各 65.4%・58.5%で、入院した患者では1年死亡リスクが通院患者より非常に高い結果となっています。

健常者と比較した1年死亡リスクは通院患者でも高かった模様です。

この傾向は低年齢認知症患者で著しかったようです。

認知症入院の死亡リスクは心血管疾患におとらない結果となりました。

認知症患者の生命予後の悪いことは知られていますが、古典的なカナダ研究(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11297701)の5倍の規模で詳細を確定しました。