日本版modified Rankin Scale (mRS) 判定基準書





日本版modified Rankin Scale (mRS) 判定基準書


modified Rankin Scale

  1. まったく症候がない
  2. 症候はあっても明らかな障害はない: 日常の勤めや活動は行える
  3. 軽度の障害: 発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の 回りのことは介助なしに行える
  4. 中等度の障害: 何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える
  5. 中等度から重度の障害: 歩行や身体的要求には介助が必要である
  6. 重度の障害: 寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする
  7. 死亡

食事・栄養 (N)

  1. 症候なし。
  2. 時にむせる、食事動作がぎこちないなどの症候があるが、社会生活・日常生活に支障ない。
  3. 食物形態の工夫や、食事時の道具の工夫を必要とする。
  4. 食事・栄養摂取に何らかの介助を要する。
  5. 補助的な非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)を必要とする。
  6. 全面的に非経口的栄養摂取に依存している。

呼吸 (R)

  1. 症候なし。
  2. 肺活量の低下などの所見はあるが、社会生活・日常生活に支障ない。
  3. 呼吸障害のために軽度の息切れなどの症状がある。
  4. 呼吸症状が睡眠の妨げになる、あるいは着替えなどの日常生活動作で息切れが生じる。
  5. 喀痰の吸引あるいは間欠的な換気補助装置使用が必要。
  6. 気管切開あるいは継続的な換気補助装置使用が必要。



30ml水飲みテスト





30ml水飲みテスト


手技

常温の水30mlを注いだ薬杯を、座位のじょうたいにある患者の健手に渡し、”この水をいつものように飲んでください”という。
水を飲み終えるまでの時間を計測、プロフィール、エピソードを観察し、評価する。

プロフィール

1.1回でむせることなく飲むことができる
2.2回以上に分けるが、むせることなく飲むことができる
3.1回で飲むことができるが、むせることがある。
4.2回以上に分けて飲むにもかかわらず、むせることがある
5.むせることがしばしばで、全量飲むことが困難である


誤嚥の病態分類





誤嚥の病態分類


食塊が気道の入口を通過する咽頭期を基準にして、誤嚥が起こる時期を咽頭期前、咽頭期、咽頭期後に分けて考えます。

咽頭期前の誤嚥


捕食・咀嚼期、および口腔期で食塊を口腔に保持できないために、食塊を咽頭に送り込む動作をしないまま食塊が咽頭に流入し(咽頭流入)そのまま喉頭(喉頭流入)から気管に誤嚥する型をいいます。
咽頭流入が起こった時に咽頭期反射が惹起されない、あるいは惹起されても食塊の流入の方が早い場合に、気道に食塊が侵入することになります。

咽頭期の誤嚥


随意的に食塊を咽頭に送り込んでも、咽頭期の反射が弱い、惹起されない、あるいは惹起されても食塊の流入の方が早い場合や喉頭閉鎖が不完全な場合に誤嚥する型をいいます。

咽頭期後の誤嚥


咽頭期が終了した後に、喉頭蓋谷や梨状窩などに残留した食塊(咽頭残留)が気管に流入する型をいいます。

混合型誤嚥


上記3つの型の誤嚥が混在する場合をいいます。多くの場合、混合型誤嚥を呈しますが、どの誤嚥の型がおもな障害になっているのかを診断することが大切です。

嚥下運動不全型誤嚥


咽頭期の反射がほとんど起こらず、重力と弱い舌運動によって食塊が少しずつ咽頭に流入しそのまま気道に侵入して誤嚥する型をいいます。多くの場合、喉頭機能を保存した治療は無効です。

誤嚥の型を診断するには、嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を行い評価します。


嚥下圧検査





嚥下圧検査


嚥下時に各部位に生じる圧を測定する検査です。
経鼻的に圧プローベを挿入し、中咽頭、下咽頭、食道入口部、食
道内といった部位の嚥下時の圧を直接測定します。

プローベは径3~5mm程度で、数個所の圧センサーを有するものを使用します。
測定方法としてはプローベを一定速度にて引き抜きながら圧変化をグラフ化する方法(引き抜き法)や、プローベを固定した状態で測定を行い、その後0.5~1.0cmずつ引き抜き、固定した位置で繰り返し測定する方法(station pull-through法)が知られています。


一般には下咽頭部にて100~120mmHg程度とされています。また、最近では多チャンネルを有したマノメトリーを用いることにより、さらに詳細に嚥下圧を測定する方法が報告されてきています。


食道期 嚥下





食道期 嚥下


食塊が食道入口部を通過してから胃に送られるまでの期間を食道期と言います。

ここでは、嚥下反射が起こることで輪状咽頭筋が弛緩し、食塊が食道入口部を通過します。

食道入口部を通過した食塊は、食道の蠕動運動によって胃へ送られます。

胃の噴門部を食塊が通過する直前に食道下部括約筋が弛緩し、食塊が胃の中に入ると、逆流を防ぐために再度、収縮します。

蠕動運動は食塊が、食道壁の感覚神経(迷走神経)を刺激することで、反射的に誘発され、運動神経(迷走神経)を介し行われます。


咽頭期 嚥下





咽頭期 嚥下


喉頭蓋谷で形成された食塊が下方へと移動を始めた時点から、食道入口部に到達するまでの咽頭腔を通過する時期を指します。
この時期は、意識的に開始したり中止したりすることができない反射です。
ここでは、下顎と舌骨とを連結する舌骨上筋群と、舌骨と喉頭とを連結する甲状舌骨筋がほぼ同時に収縮することで、舌骨挙上
と喉頭挙上が起こります。
そして、喉頭が挙上すると、その上端にある喉頭蓋は尖端が下垂します。

喉頭蓋の動きに合わせるかのように、咽頭を包んでいる上・中・下咽頭筋の不随意収縮に伴い、食塊が食道入口部へ送り込まれます。

この時期は幾つかの誤嚥防止機構が働きます。

喉頭蓋の尖端が下垂(喉頭蓋の反転)することは、喉頭口を塞ぐことで誤嚥を防ぎます。
披裂は挙上することで喉頭蓋に密着し誤嚥を防ぎます。
声帯と前庭ヒダは、内転運動を行うことで声門を閉じ誤嚥を防ぎます。
咳反射も誤嚥を防ぐ重要な機能です。

嚥下反射では、主に迷走神経の枝である上喉頭神経からの求心性の刺激が、延髄の孤束核に送られ、さらに外側網様体内側部に存在するとされる嚥下中枢へ伝えられます。

その後、刺激は嚥下中枢から三叉神経運動核、顔面神経核、疑核、迷走神経背側核、舌下神経核などの脳神経核を経て、顔面神経、三叉神経、舌咽神経、迷走神経、
舌下神経を介して舌骨上筋群、甲状舌骨筋、咽頭筋、喉頭の筋などに伝わります。



口腔期 嚥下





口腔期 嚥下


口腔内から咽頭腔へ加工処理(食塊形成)された食物が喉頭蓋谷へ送り込まれる非随意的な運動の時期です。

ここでは、閉口し、舌尖が硬口蓋に密着し、舌筋の後方への収縮に伴い、食物は喉頭蓋谷へ送り込まれます。

そして、同時に軟口蓋が挙上して鼻咽腔を閉鎖します。

この時期には、顔面神経(閉口)、三叉神経(軟口蓋挙上)、舌咽神経(軟口蓋挙上,舌根部の感覚)、迷走神経(軟口蓋挙上)、舌下神経(舌尖の硬口蓋への密着)が関与します。

時に高次脳機能障害(嚥下失行)でも障害されます。



口腔準備期 嚥下





口腔準備期 嚥下


食物を口の中に取り込むことから始まり、嚥下運動が始まる直前まで随意的な運動の時期のことをいいます。

ここでは、まず、開口、舌による食物の引き込み、閉口の動作(捕食)があります。

その後、食物を飲み込みやすくするための処理(咀嚼、舌によるこね回し、一時的
な口腔前庭への貯蓄)が行われます。

脳神経の顔面神経(捕食、味覚、
唾液分泌)、三叉神経(捕食、咀嚼、口腔内感覚)、舌咽神経(味覚、
唾液分泌)、舌下神経(捕食、咀嚼)が関与するだけでなく、律動的な運動を行う上で重要となるCentral pattern generatorや歯牙
が重要な働きをします。

また随意・半随意的に行われるため意識状態や認知機能が影響を与えます。