多発性筋炎のための運動プログラム





多発性筋炎のための運動プログラム

 かつては、多発性筋炎に対する運動というのは筋肉の炎症を引き起こす恐れから推奨されませんでした。現在では、非活動性もしくは活動性の安定している多発性筋炎の患者に対する1か月の等尺性の筋力増強は、CKの持続的な上昇を生じずに筋力を増加させることが示されています。著名な筋肉の委縮や重度の筋力低下のある筋には、1か月のプログラムには反応しないようです。

 慢性のもしくは活動性があっても安定している多発性筋炎の患者に対し、週に3回または毎日、20秒の回復時間をおいて6秒間の等尺性筋収縮を610回施行することは妥当なことだと考えられます。訓練の中心となる筋肉は、三角筋、上腕二頭筋、股関節外転・伸展筋群、大腿四頭筋です。末梢の筋力低下がある患者(2040)では、手関節、手内筋、そして足関節背屈/底屈筋群を増強することも望まれます。封入体筋炎のかなりの割合の患者では、近位、遠位とも筋力低下を呈します。筋炎に対する抵抗運動の効果を示す報告はほとんどありません。

 筋炎の成人及び小児は、有酸素容量も低下します。成人に対する有酸素運動は、疾病の再燃を生じることなく有酸素容量を増大させることが示されています。慢性のもしくは活動性があっても安定している状態では、週3回の450gの重りを使用した等張性筋力増強、自転車もしくはプールでの低負荷の有酸素運動を行うことが出来ます。運動プログラムは、CKの著明な上昇に一致して筋力低下の増悪と疼痛が出現した際には、見直されなくてはなりません。激しい活動性もしくは活動性の不安定な筋炎の場合には、週3回の数回の等尺性収縮のみ行われるべきです。もし患者がプールへ通えるようであれば、運動するには最適の場です。

 関節可動域を保つためのストレッチは、慢性で安定している状態、活動性、急性期含めすべての患者に行われるべきです。成人患者では、しばしば著明な肩関節の関節可動域制限が生じ、小児では肩関節、肘関節、股関節、そして膝関節ですぐに関節可動域制限が生じ、しばしば手関節、足関節でも生じます。特に小児期の皮膚筋炎において関節周囲の軟部組織へのカルシウム沈着は、関節可動域の制限を生じさせやすくなります。

*参考 リハビリテーションシークレット(メディカル・サイエンス・インターナショナル)