全身弛緩法





全身弛緩法

はじめに
精神的・身体的過緊張が慢性化すると、頭痛、疼痛性筋痙縮、仕事能力の低下、消化不良、不眠、血圧の上昇および心拍数や血糖の増加がもたらされやすくなります。このような状態において全身弛緩法を実行すれば、筋の過緊張を感じ取れるとともに、その筋の弛緩に役立ちます。はじめは種々の筋群をどのように緊張させたり弛緩させたりするのかを学んで、全身的な弛緩状態の実現に結びつけます。
今回はその方法の一つである「対比法」について説明します。

対比法の方法
対比法は三段階からなり、第一段階はある関節を動かし、運動中の筋の緊張と弛緩を識別することです。第二段階は関節を動かさずに筋を収縮したり弛緩すること、第三段階は、筋を収縮させずに弛緩することです。すべての段階にはゆっくりした深呼吸を伴うことが大切です。
初心者は静かで薄暗い部屋で始め、リラックスをした臥位をとるために、クッション・枕・リクライニングチェアなどを利用するのも良いでしょう。
練習には一般に30~40分の時間を費やします。最初の10分は目を閉じたまま静かに横たわり、次の10~20分は筋の収縮と弛緩に費やします。最後の10分は目を閉じたまま休息します。

①第一段階
一側の上肢、たとえば右腕の上部から始め、肘をゆっくりかつしっかりと曲げ、手首を掌方向に垂らします。その時に上腕部の筋緊張を感じ取ります。肘を徐々に伸ばしながら力を抜き、約1分間休みます。次に手首を下方に曲げ、ゆっくりかつしっかりと拳を握ります。前腕の筋緊張を感じ取ったならば、徐々に力を抜き、約1分間休みます。手首を反り、指を力いっぱい伸ばします。徐々に力を抜き、約1分間休みます。以上を左腕でも行います。
このように筋の緊張を感じながら四肢・体幹を動かし、筋収縮・弛緩を行います。練習が進むにつれ、筋が収縮しているときと弛緩しているときの感覚が区別できるようになります。

②第二段階
筋の収縮・弛緩を制御できるようになったら、四肢を動かさずに筋を収縮させながら、同じ動きを繰り返します。力を抜いた後、さらに深い弛緩状態に入ろうと試みます。肘の関節を例にすると、肘を曲げることを想像する→上腕の筋をゆっくりかつしっかり収縮させる→筋の緊張を感じ取る(実際には肘は曲げない)という動作を行います。これを第一段階と同じように全身で行います。
最適な環境で行えるようになったら、状況を徐々に難しくしていくことも大切です。体を直立位にしたり、部屋の明かりを灯したり、ラジオ・テレビをつけるなど、注意が散漫しやすい状態で深い弛緩の獲得を試みます。

③第三段階
これは全身の意識的弛緩です。個人差はありますが、数週間後には実際に筋を収縮しなくても弛緩できるようになります。その際深い深呼吸を伴わせます。例えば就寝時に数回行うことにより、さらに深い弛緩を達成できれば安眠も可能になるでしょう。

おわりに
以上対比法について説明しましたが、全身の弛緩を得るには、前述した方法を反復練習することが大切です。最小限のきっかけで最大限の弛緩反応を達成できることで、精神的・身体的過緊張の状態は徐々に緩和されていくものと思います。