入浴による循環動態への影響と変動が少ない入浴方法について解説!

はじめに

入浴は日本人の文化として深く根付いているため、入浴のケアでは、正しい知識をもち、生活に医療が無用な制限をかけないようにすることが重要になります。
入浴の効果としては、皮膚を清潔に保つ、末梢循環の促進により新陳代謝を活性化する、適度な温熱刺激は心身の緊張を緩和し、鎮静をもたらすこと等が知られています。
一方で他国と比較し、日本の冬期の高齢者を中心とした入浴にまつわる死亡は多いことが知られています。
死因は溺死をはじめとして、心疾患や脳疾患と診断されていることが多いようです。

入浴による循環動態への影響について

入浴は、自律神経・発汗・静水圧により循環動態に作用をします。
自律神経の働きとしては、入浴前および入浴直後は交感神経が働き、血圧が上昇します。
その一方、入浴中は副交感神経が働き、血圧が低下します。
長時間の入浴により発汗し、循環血液量が低下します。
また、静水圧のため循環血液量が増加し、心負荷が増大します。
横隔膜までと比べ、首まで浸かった場合は、胸郭の動きも制限されることによって、より心負荷が増大し、呼吸機能にも影響します。

循環動態の変動が少ない入浴の方法

入浴にまつわる事故を防止するために、高齢者や心疾患・呼吸器疾患のある患者に対しては、循環動態の変動が少ない入浴の方法を検討することが必要となり、以下のような対策が有効となります。
1)部屋を温める。
2)39℃程度のお湯で5分程度の入浴。
3)食直後や深夜に入浴しない。
4)高齢者や心疾患・呼吸器疾患患者は、横隔膜までの入浴。
5)入浴に比べてシャワー浴のほうが、循環動態に変動が少ない。

ケアにまつわる入浴の話題

発熱時に入浴を控える明確な根拠はありません。

発熱時に入浴を控えるのは日本固有の習慣である。これは、昔はお風呂が屋外にあり、屋内との気温差があったためではないかといわれている。欧米ではむしろ発熱時にはぬるめの湯に入浴させる習慣があります。

高血圧で入浴を制限する根拠となる研究はありません。

血圧の高低よりも、血圧の変動が入浴にまつわる事故にかかわっているため、循環動態の変動が少ない入浴方法を検討するべきです。

術後は48時間以降で入浴許可可能といわれています。

CDCガイドラインには術後48時間以降の入浴やシャワーが治療を阻害しているかどうかは明らかではないと書かれています。また、NICEガイドラインには術後48時間でシャワーを安全に行うよう患者にアドバイスをしてよいと書かれています。

参考文献

・高橋龍太郎:ヒートショック対策。診断と治療 98:2035−2038、2010
・深井喜代子:ケア技術のエビデンス。pp65−76、へるす出版、2006
・奥田泰子、他:入浴とシャワー浴における高齢者と若年者の循環と体温への影響。日看会誌 14:2−13、2005



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