脳卒中後の疼痛(痛み)

脳卒中後の疼痛について

脳卒中後の痛みは14~43%に生じるといわれています。
中枢性脳卒中後疼痛(Central post-stroke
pain;CPSP)と肩手症候群(shoulder-hand syn-
drome)がよく知られていますが、変形性関節症筋骨格系の痛みや疼痛性のスパズム、深部静脈血栓症等が原因であることもあります。
以上の症状が単独でみられることもあります、複数重なっていることもあります。

中枢性脳卒中後疼痛

中枢性脳卒中後疼痛では、疼痛が増強する因子として、運動70%、冷却48%、温暖22%、接触44%、情動19%、その他15%と報告されており、疼痛が減弱する因子としては、運動19%、冷却7%、温暖30%、安静37%との報告があります。
以上のことから個々において様々な病態を取り、対応の仕方も個々で異なると推測されます。
このように、中枢性脳卒中後疼痛は複雑な病態を呈する側面があります。
中枢性脳卒中後疼痛は、視床痛とよばれることが多いです。
視床に病変がある脳卒中において生じることが多いためですが、実際は、視床だけでなく、感覚野への求心路における障害、spino-thalamo-cortical tractsでの障害で生じ、CPSPとよぶようになっています。
CPSPは脳卒中発症後しばらくたってから生じ、数週間~数カ月後にみられることが多いと言われています。
痛みの範囲としては、脳卒中による障害の領域が主体ですが、ときに、その痛みの分布には差が出るともいわれています。
自発痛はburning 47~59%、 aching 30~41%との報告があります。
感覚障害は異常感覚だけでなく、感覚低下、痛覚過敏、低感覚刺激でも誘発されるallodynia等がみられます。
肩手症候群はCRPS(complex regional pain syndrome)type Iのひとつとされています。

肩手症候群

肩手症候群は、脳卒中患者の12.5~23%に生じ、重度な片麻痺における肩の痛みとともに、手の疼痛や腫脹、血管運動障害、関節拘縮上肢機能の低下を引き起こします。

肩手症候群の分類

肩手症候群の病期は、3期に分類されています。
  • 第1期は、発症後0~3カ月間で、肩の疹痛に伴い、手の疼痛、腫脹が生じ、局所の血流増加のため皮膚は赤色となり、浮腫、発赤、熱感関節可動域の制限等がみられます。
  • 第2期は、発症後3~6カ月間で、疹痛は増悪し、冷感、関節拘縮、チアノーゼを認めます。
  • 第3期は、発症後6カ月以降の慢性期で、疹痛、皮膚萎縮、骨萎縮関節拘縮、筋萎縮を認めます。

早期に治療を開始する必要があり、病期が進むと改善は難しくなります。
肩関節周囲筋等の痙縮に伴う肩の疹痛、肩関節の可動域制限等により引き起こされる癒着性肩関節包炎、腱板損傷や断裂、インピンジメント症候群、肩関節亜脱臼等の運動器の問題によっても肩の痛みは生じます。