脳卒中患者の肩に起こる問題

脳卒中患者の肩に起こる問題

脳卒中片麻痺の患者の約70~80%は肩関節痛、拘縮、他の機能障害を有し、脳卒中の2次的合併症のもっとも一般的なものの一つとなっています。

片麻痺の肩の機能障害の原因は多く、上腕肩甲関節の亜脱臼、癒着性関節炎(凍結肩)、インピンジメント症候群、回旋腱板の断裂、上腕神経叢の牽引による神経障害、複合性局所疼痛症候群(CRPS)(肩手症候群、25%の患者に出現する)、関節包炎と腱炎、中枢性疼痛が含まれます。

以前から存在あるいは長期間持続している肩関節の問題の病歴やX線上の所見が存在することがしばしばあり、脳卒中が原因で起こった異常な機械的ストレスが慢性的な問題を増悪または顕在化させたと考えられます。

患者の中には、痛みとROMの制限は不適切なポジショニングあるいはハンドリング、肩甲帯筋力の低下、痙性が関連している者もいます。

関節障害は弛緩性の上肢よりも痙性のある上肢に有意に高頻度であることが見出されています。

痛みと肩甲上腕関節の亜脱臼は同時に起こることもありますが別々に起こることもあり、痛みと亜脱臼の因果関係がどの程度あるかは不明確です。

肩関節機能障害の治療は患者によって異なり、アーム・サポート、肩スリング、トラフ、ラップボード、服薬、物理療法、適切なポジショニング、スタッフによるハンドリングなどからなりますが、もっとも重要なのは、積極的かつ首尾一貫として行われるROM訓練です。

肩スリングの使用は議論があるところでありますが、亜脱臼が肩関節機能障害の主な原因の場合はスリングが役立つ可能性があります。首尾一貫としたストレッチ運動を確実に行うことは、非常に重要な手法です。