障害者にどう対応すべきか

障害者にどう対応すべきか

障害エチケット
 エチケットとは、障害者を含むすべての人に対して、丁寧で礼儀正しくあることです。さらに、障害エチケット(disability etiquette)では、その人の人間性を一番に考え、次に障害に関して考えます。黄金律は「尊厳と自立に対する理解、感受性、敬意とともに、自分が他の人にしてもらいたいことを障害者にすること」というものです。障害エチケットの原理として、平等の原則と相容れない支配や従属を含むものがあるとしたら、拒否されなければならないでしょう。人はみな同じように尊敬されること、尊厳を保つこと、感謝されること、自律することを必要としています。
 医学的ケアの種類や治療法の選択肢やリハビリテーション・ゴールを選ぶとき、他の人と同じように障害者も自分自身の人生の主人であり続けるべきだという事を認識することが必要です。基本的な要求に対して他人への身体面での依存性が増えると、平等な基本的人権を見逃しやすくなります。公共施設(たとえば、医療施設)は、患者と家族の連帯感、自己管理、自由の機会を最大にするように、同時に環境の制限を最小にするように機能すべきです。障害を持つ人々とのよいコミュニケーションの原則は、障害の無い人々とのコミュニケーションの原則となんら変わるところはないといえます。

障害を持つ人々とのコミュニケーションに使う用語
 私たちが使う言語と、その言語を通して広げるイメージは、私たちが特定のグループの人に対して持つ態度を映し出します。ネーミングには力があります。障害を持つ人々とコミュニケーションをとるときあるいは障害を持つ人々について語るとき、障害を持つ多くの人たちは、人間第一の用語を用い、人間全体をみずに障害に焦点をあてることを避けることを主張します。「障害を持つ人」あるいは「車椅子を使う人」という言い方は、その人自身の特徴を定義しているわけではなく、状況を説明する言い方です。同様に、障害者の対義語として「正常」を使うことは避けます。「正常」という用語を使うことは、障害を持つ人は正常ではないことを意味してしまいます。「非障害者」か「障害を持たない人」というようにすることが必要です。障害の概念と、それを表現するために使われる言葉は、変化してきています。障害者の中には、障害は自分たちの生活のもっとも重要な部分であり、「障害を持っていることを誇りにしている」と表明する人たちがいます。医療場面では、多くの場合、治療対象としての障害の側面に焦点が当てられます。このような特徴が患者の人格を覆い隠すことが無いように、特に努力する必要があるでしょう。

*参考 リハビリテーションシークレット(株式会社 メディカル・サイエンス・インターナショナル)

脳卒中患者の肩に起こる問題

脳卒中患者の肩に起こる問題

脳卒中片麻痺の患者の約70~80%は肩関節痛、拘縮、他の機能障害を有し、脳卒中の2次的合併症のもっとも一般的なものの一つとなっています。

片麻痺の肩の機能障害の原因は多く、上腕肩甲関節の亜脱臼、癒着性関節炎(凍結肩)、インピンジメント症候群、回旋腱板の断裂、上腕神経叢の牽引による神経障害、複合性局所疼痛症候群(CRPS)(肩手症候群、25%の患者に出現する)、関節包炎と腱炎、中枢性疼痛が含まれます。

以前から存在あるいは長期間持続している肩関節の問題の病歴やX線上の所見が存在することがしばしばあり、脳卒中が原因で起こった異常な機械的ストレスが慢性的な問題を増悪または顕在化させたと考えられます。

患者の中には、痛みとROMの制限は不適切なポジショニングあるいはハンドリング、肩甲帯筋力の低下、痙性が関連している者もいます。

関節障害は弛緩性の上肢よりも痙性のある上肢に有意に高頻度であることが見出されています。

痛みと肩甲上腕関節の亜脱臼は同時に起こることもありますが別々に起こることもあり、痛みと亜脱臼の因果関係がどの程度あるかは不明確です。

肩関節機能障害の治療は患者によって異なり、アーム・サポート、肩スリング、トラフ、ラップボード、服薬、物理療法、適切なポジショニング、スタッフによるハンドリングなどからなりますが、もっとも重要なのは、積極的かつ首尾一貫として行われるROM訓練です。

肩スリングの使用は議論があるところでありますが、亜脱臼が肩関節機能障害の主な原因の場合はスリングが役立つ可能性があります。首尾一貫としたストレッチ運動を確実に行うことは、非常に重要な手法です。

福祉用具を用いるにあったっての注意点

福祉用具を用いるにあったっての注意点

患者に福祉用具を適用する場合、実際には個々の障害に合わせた綿密な対応が必要になりますが、ここでは福祉用具の適応に関する一般的な注意事項について記載いたします。

福祉用具の適応にあたっては、本人との適合は言うまでもなく、介護者や住環境を含めた生活全般を考慮してか決定することが必要です。

また、福祉用具の使用に介助が必要な場合は、その導入により介助作業が増えるコタがある点に注意しなければなりません。介護者のやってあげたい気持ちと、それが継続的に実行できるか否かは質の違う問題であって、このあたりをよく見極めて検討することが大切です。

福祉用具を選定するにあたって具体的にどのような点に注意すればよいか以下に述べます。

・福祉用具の使用目的を明確にし、どの場面で必要か、使用する主体は当事者化介護者か、使用頻度はどのくらいかを明らかにする。

・当事者との適合にあたっては、起居・移乗動作、移動動作、手の操作性、理解力などを評価する。

・介護者との適合にあたっては、福祉用具の導入により介助作業が増えることを想定したうえで、生活状況を総合的に判断して決定する。当然ながら、介護者が無理なく操作できるかを確認しておかねばならない。

・環境との適合にあたっては、時に家具の配置換えや家屋改造が必要なる。したがって住環境が福祉用具の使用に適しているかを評価する必要がある。

 実際に福祉用具を適用するにあたっては、上記事項をよく検討するとともに、対象となる機器を可能な限り個々の生活場面に持ち込み、実際に使用するとよい。こうすることで、福祉用具の適用を具体的に検討でき、使用上の問題点をより明確に把握することができます。
 また福祉用具の導入には少なからず出費が伴うので、これらに関する公的補助制度をよく理解することが大切です。

*参考 地域リハビリテーションマニュアル(三輪書店)

地域リハシステムの概要

地域リハシステムの概要

 日本における地域リハのシステムは、未だ一部の地域で稼働しているに過ぎない。高齢化社会を迎えて障害の重度・重複化が進む中、寝たきりを減らす最も有効な方法は、第1に、早期リハによって廃用症候群を防ぎ、できるだけ早く日常生活能力の回復を図ることです。そして第2に、生活の受け皿となる地域の社会資源を充実させ、住宅を基盤としたリハビリテーションにより生活スタイルを再構築し、たとえ介護の手を借りても、社会参加の機会を保障してその人なりの生活の自立を図ることです。その為には、急性期医療の充実と地域における保健・医療・福祉の総合的なサービスシステムを同時並行的に整備することが必要であり、医療機関だけではなく、保健・福祉サービスを提供している行政機関などとの連携が必須の条件となります。
 ちなみに、このようなシステム下における地域リハの役割は、医療機関で行われてきた機能訓練などの成果を地域・在宅生活の中でどのように生活していくのか、障害のある状態でどのように生活していくのか、家屋改造などの住環境整備や介護方法、機能訓練の指導などを含めて、利用者およびその家族の最適な生活スタイルを模索し、その再構築を援助することにあります。したがって、サービスの提供者は医学的リハを担うスタッフだけではなく、主役となる社会的リハを担うスタッフが必要であり、その両者をメンバーとしたチームアプローチが基本でなくてはなりません。

*参考 地域リハビリテーションマニュアル(三輪書店)

人工呼吸器による身体への影響

人工呼吸器による身体への影響

 人工呼吸器が正常の呼吸と違う点は、大きく分けて次の2つになります。

①人工呼吸器を行うための人工気道が挿入されていること。
②通常の呼吸は陰圧呼吸であるのに対し、人工呼吸は陽圧呼吸であること。この陽圧呼吸が身体に様々な影響を与える。

(1)呼吸器系への影響
 上気道に気管チューブが挿入されることで、鼻腔咽頭をバイパスし、本来の加湿・加温が行われなくなります。性状呼吸での吸引ガスは、気管分岐部でほぼ相対湿度80%まで過失がなされます。そして肺胞に達した時には、温度37℃、湿度100%まで達しています。
 気管チューブはこの機能を妨げるため、起動粘膜上皮の繊毛運動が低下し、起動粘液の粘稠性が増すこととなります。そのため、痰や微生物などの排出機能が低下します。さらに、人工呼吸におけるパイピングガスは低温・乾燥状態にあるため、直接吸入すると起動粘膜の乾燥は促進され、固着、貯留して感染や起動閉塞をきたす要因となります。
 非生理的な人工呼吸(陽圧呼吸)を続けることで肺のコンプライアンスは低下します。それが進行してくると無気肺の原因にもつながります。その結果、肺内にシャント形成がなされ、酸素濃度を一定にしていてもPaO2の低下が見られることがあります。
 持続的な陽圧呼吸は、肺に機能的障害を生じるだけでなく、肺組織自体に損傷を与え、肺胞内ガスが肺実質外へ漏れ出すこともあります。(皮下気腫、気胸など)
 気管チューブの留置自体に伴う合併症は、気道損傷です。これは挿管チューブの位置や固定が適切でない場合に、先端で気管粘膜を損傷するという事です。特に体位変換や体動などによって位置がずれることは少なくありません。その為体位変換後などには、適切な位置に留置されているかどうかを常に確認することを習慣化しておくことが必要です。
 気管チューブのカフにより、起動粘膜を圧迫し、壊死を引き起こすこともあります。これは後に瘢痕化し、抜管後の軌道狭窄の原因となります。

(2)循環器系への影響
 陽圧は肺を通して胸腔に伝わり、自然呼吸時に存在していた胸腔内陰圧を消滅させます。
 心臓はもともと陰圧の環境下にあるため、静脈血は末梢から中枢の右心房に還流しやすい状態にあります。しかし、人工呼吸ではこの胸腔内圧が上昇し、むしろ陽圧となるため、静脈血は戻りにくくなります。右心房の静脈還流が減少すれば、当然、心拍出量も減少してきます。
 陽圧呼吸による静脈還流は、気道内圧に反比例します。つまり平均気道内圧が高いほど静脈還流は減少します。したがって、吸気時間が長くなる場合や、常に気道内が陽圧に保たれているような場合(たとえば、持続陽圧換気:CPPV)は著明な心拍出量の減少を起こす危険性があります。
 通常ある程度の胸腔内圧の上昇に対しては、心拍出量を一定に保とうとする代償機能が働きます。しかし、静脈血流量の減少や中枢神経系に高度な抑制がある場合は、この代償機能が働かず、著明な心拍出量の減少をきたす恐れがあります。

(3)水分代謝への影響
 静脈還流の減少により、右心房の伸展が抑制されます。生体側では、これを循環血液量の減少ととらえ、恒常性維持の為下垂体後葉から抗利尿ホルモン(ADH)分泌が促進されます。これにより尿排泄を抑制し循環血液量を維持しようとします。

(4)その他
 ストレスによる潰瘍形成や消化管出血、空気の嚥下に伴う胃の膨満を起こしやすくなります。これは腹圧を上昇させ換気障害の原因となります。さらに、全身状態の悪化に伴い、腸管の蠕動運動が抑制され、呼吸運動の障害につながります。

*参考 Expert Nurse Vo.19 No.14

肥満と運動療法の意義

肥満と運動療法の意義

 肥満とは、貯留脂肪が身体に過剰に蓄積した状態と定義されます。したがって肥満治療の原則は、エネルギー出納のバランスを長期的に、また継続的にマイナスに保つことにより、脂肪細胞を減少させることにあります。すなわち、肥満の運動療法とは運動を行わせることにより、脂肪組織を減少させることにあります。すなわち、肥満の運動療法とは運動を行わせることにより、脂肪組織の中性脂肪に分解を起こさせ、生じた遊離脂肪酸(FFA)を効率よく運動(収縮)筋で消費(利用)させることに尽きます。

 肥満の大部分は基礎疾患のはっきりしない単純性肥満ですが、稀に基礎疾患に由来する症候性肥満が存在します。この症候性肥満では、基礎疾患に応じた治療が必要となるため、常にその鑑別を念頭に置かなくてはなりません。一方、前者の単純性肥満では、インスリンの過剰分泌(高インスリン血症)、脂肪細胞の増殖、過食、誤った食事パターン、遺伝、運動不足、褐色脂肪細胞の機能障害(熱産生機能障害)などが、個々の症例に応じて種々の程度に複合的に働き、肥満の原因を構成しています。中でも、摂取パターンの異常を含めた過食と運動不足は、グルメ志向が一般化し、オートメ機器の普及による省力化が進行している今日、肥満の成因として最も重要な役割を果たしており、単純性肥満では、食事療法と運動療法が根本治療となっている。

 また単純性肥満には、糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症、脂肪肝、胆石、痛風、関節性疾患、卵巣機能障害など多種多様な疾病異常を合併しやすくなっています。

 最近、体型と合併症の関連が注目を集めています。すなわち、体への脂肪沈着部位により、上半身(男性型、リンゴ型)肥満と下半身(女性型、西洋梨型)肥満に分類すれば、前者に糖尿病をはじめとする上記の合併症の発病率が高いといわれています。また上半身肥満を内臓脂肪型と皮下脂肪型肥満とに分類し、前者には糖質代謝異常の合併率が高い事実があるようです。さらに腹部内臓脂肪と個体のインスリン感受性が負の相関関係にあることが分かっています。

*参考 理学療法ジャーナル(泰山堂書店)

頭痛の分類

頭痛の分類

 頭痛は発症形式によって、急性または亜急性、発作性反復性、慢性持続性の3群に分類できます。頭痛の病歴、発症様式、誘因、家族歴、副薬歴などに注意を要します。

(1)急性または亜急性頭痛
 くも膜下出血は、今で経験したことの無い激しい頭痛が突発的に出現し持続することが特徴です。他の血管障害としては、脳室穿破を伴う脳出血、小脳出血、上矢状静脈洞血栓症での頭痛頻度が高くなっています。
 髄膜炎は発熱、頭痛、項部硬直を3主徴とし、脳炎ではこれに加えて脳実質損傷による神経徴候を呈します。

(2)発作性反復性頭痛
 片頭痛は思春期(特に女性)に初発して、家族歴を有することが多くなります。前兆のある例では、閃輝暗点、視野欠損、眼痛などの眼症状が拍動性頭痛に先行します。拍動性頭痛は、片側性(まれに両側性または交代制)で数時間ないし3日間程度持続します。悪心、嘔吐や光・音過敏を伴うことが多く、暗室での臥床を好み、睡眠により頭痛が軽減することが多くみられます。失語、片麻痺、外眼筋麻痺など局在徴候が頭痛に前後して出現することがあります。誘因としては精神的ストレス、食事、喫煙、薬物、月経周期、天候などがあります。発作時には消炎鎮痛剤や酒石酸エルゴタミンの内服やスマトリプタン皮下注射が使用されます。発作間欠期にはカルシウム拮抗薬、抗セロトニン薬などの予防薬や生活管理が重要です。
 群発頭痛では、片側の眼窩を中心に激痛が15分から3時間程度持続します。若年男性に多く、1日1~数回、同時刻(特に夜間睡眠時に痛みで覚醒)に起こります。発作は2~6週間にわたって群発し、自然に寛解します。寛解期には数か月ないし2年以上にわたります。随伴症状として結膜充血、流涙、鼻汁、ホルネル症候群、徐脈などの自律神経症状が出現します。誘発因子として飲酒、薬物などがあります。発作時には100%酸素吸入と酒石酸エルゴタミンの内服またはスマトリプタン皮下注射が用いられます。予防薬は片頭痛と同様ですが、難治性の場合には炭酸リチウムが有効です。
 類似の発作性頭痛として慢性発作性片側痛や特発性穿刺様頭痛があり、いずれもインドメタシンが奏功します。
 良性労作性頭痛は肉体運動、排便、性交などにより拍動性頭痛が誘発されます。三叉神経痛や大後頭神経痛はそれぞれの支配神経領域の疼痛を生じます。

(3)慢性持続性頭痛
 緊張型頭痛は後頸部・後頭部の鈍痛、頭重感が主体で、午前よりも午後に頭痛が増強する傾向があります。精神安定剤、筋弛緩薬、鎮痛剤で対症的に治療します。
 脳腫瘍、脳膿瘍、慢性硬膜下血腫なども慢性頭痛の原因となります。
*参考 神経内科学テキスト (南江堂)

肩こりの原因と対応

肩こりの原因と対応

肩こりは、ありふれた訴えですが、症状が激しくないことから軽視される傾向があります。しかし、時に重大に疾患が隠されていることもあり、慎重な対応が必要です。
原因疾患の有無によって症候性と原発性に分けられます。症候性肩こりの原因としては以下のものが挙げられます。

①頸椎およびその周辺の整形外科疾患
②高血圧症、風邪などの全身性疾患
③冠動脈、肺・肋骨、胆・肝などの内臓疾患
④眼、耳鼻、歯などの顔面の疾患
⑤仮面うつ病などの心因性疾患

また、肩こりの誘因としては、不良姿勢、特に頸椎屈曲位での作業、寒冷、精神の不安、緊張があります。

肩こりをきたすメカニズムとしては、人類が直立したことにより、頸椎を支え、上肢を吊り下げている僧帽筋をはじめとする肩甲周囲筋群の疲労が要因となり、筋肉のうっ血→乳酸などの疲労物質の蓄積→筋緊張の過程が悪循環を呈してくると考えられています。

それゆえに、肩こりの予防法としては、以下のことが挙げられます。
①正しい姿勢
②適当な運動
③ストレスに対する気分転換
④快適な日常生活

肩こりを訴える人の多くは、キーパンチャーやレジ作業者など職業性頸肩腕障害の患者、胸郭出口症候群を起こしやすい”なで肩”の女性、中高年者では頸椎に退行性変化を認める人などです。それゆえ肩こりが、筋肉の疲労原因だと考える場合にも、頸椎のX線撮影は行うべきでしょう。

*参考 リハビリテーションマニュアル(日本医師会)

捻挫・打撲のテーピング

捻挫・打撲のテーピング

テーピングとは、のりのついているテープによる固定法のことで、古くから絆創膏固定法として足関節捻挫に用いられているGibney法が固定による安静が目的であるのに対し、テーピング法では、有害な動きを制限しますが、運動に必要な動きを残そうとする点が違います。

テーピングの目的は、①外傷の予防、②外傷の応急処置、③捻挫の再発予防、④リハビリテーション治療の補助などになります。

テーピング法の基本
①汚れを洗い流し、体毛を剃る。
②テープで擦れる部にはワセリン付綿花をあてる。
③のりスプレーをして、薄いスポンジ状包帯でアンダーラップを巻き、皮膚炎を予防する。④固定肢位をとらせる。
⑤テーピングを行う部位の両端にアンカーテープを貼り、この間に関節を固定・支持するサポートテープを貼り、これを固定するために最後にロックテープを張る。

テーピングを実施するうえでの注意すべき点
①循環障害や神経障害を起こさないよう、解剖学的知識が必要。
②受賞直後で腫脹が予想される場合には、テープを一周させないで、前開きのオープン法を用いるか、一部を切開するなど腫れの逃げる隙間を残す。
③運動中に圧迫による循環障害を起こさない為、テーピング実施中は筋肉の緊張状態を維持させる。
以上のようなことが挙げられます。

テーピングの運動時の有効性については、10分後では効果があり、または有効率40%に対し、1時間後にはほとんど効果なしという研究結果になっています。
軽い捻挫ならテーピングをすれば大丈夫といった過信は禁物です。
しかし、テーピングによってギプス固定期間を短縮して早期から運動療法などのリハビリテーションにより機能回復を早められます。
外傷、特に捻挫予防としてのテーピングは、足関節の内反捻挫を予防するための健全な足関節に行うものです。強固なテーピングは、他の足関節の負担を増すことになるので、最小限度の軽いテーピングが重要です。

捻挫の応急処置の原則は、RICE(Rest安静、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation拳上、Support,Stsbilization支持、固定)であり、テーピングの役割は圧迫と支持、固定に過ぎないので、捻挫に対する応急処置では、テーピングを行った後、冷水につけるなどの配慮が必要です。

捻挫の重症度分類(Ⅰ度:靱帯伸展、圧痛のみで腫れが無い、Ⅱ度:靱帯部分断裂、圧痛と腫れはあるが関節の不安定性はない、Ⅲ度:靱帯の完全断裂、関節の不安定がある)のうち、テーピングによって運動続行可能なのはⅠ度までで、Ⅱ度以上では専門医での治療が必要です。

捻挫の再発予防については、テーピングの効果が最も期待されるところであります。スポーツ傷害に対して早期回復の為に安全な範囲でテーピングを応用した運動療法を積極的に行わせることをアスレチック・リハビリテーションと呼び、損傷の程度に応じたテーピングが工夫されています。

打撲のテーピングは、肉離れや筋腱皮下断裂に対して、運動時の衝撃緩和を目的に用いられていますが、手間のかかるわりには効果があまりありません。キネシオテープで代表される弾力テープは、伸長率がよく通気性に富み、かぶれも少なく、皮膚に直接貼れます。静脈還流を促進するので皮下出血の吸収性に優れ、打撲後の腫脹や筋腱損傷に対して有効です。

*参考 リハビリテーションマニュアル(日本医師会)

リハビリテーションの進行に伴う患者心理の変化

リハビリテーションの進行に伴う患者心理の変化

患者の心理は疾病経過に従って変化します。一般に身体機能の回復は時間の単調な関数として記述できますが、心理面における変化はやや複雑です。以下では脳卒中を例にモデル的に示します。

発症時(急性期)には患者は心理的ショックの状態にあります。自分の存在に対する圧倒的脅威の前に、混乱し、理解も出来ず、不安や無力感を抱いています。これが第Ⅰ相です。

急性期を脱すると、自分の身に起こった変化(機能障害)を防衛的に処理しようとします。現実を否認したり、八つ当たりをしたり、退行するなど、現実から逃避しようとする傾向が増します。防衛機制の理論では、これらの現象は自我を不安から守るため無意識的に生じるので、咎めたり強く否定すべきではありません。これが第Ⅱ相です。ただし患者によっては、心理的に自分を守ることができず、直接ストレスにさらされてうつ状態に陥る場合もあります。

機能訓練が軌道に乗り、一旦失われたかにみえた身体機能が徐々に回復しだすと、患者は希望を持ち、防衛機制は衰弱して心理的状態は安定へ向かいます。

訓練への参加も意欲的になりますが、このとき患者は完全な回復あるいは満足できる水準まで回復することを期待するようになります。ところが多くの場合、その前に機能回復はプラトーに達します。
これ以上の機能回復が得られないことを告げられると、患者は驚き、失望し、情緒は再び不安定になります。これが第Ⅲ相です。

このような事態は当然予想されることなので、早い時期からの準備が必要です。全体の機能回復とともに、心理的適応を支援する働きが必要になります。

障害受容のため価値意識の変化を伴う心理的再体制化がなされるのが第Ⅳ相です。しかし、ひと口に障害需要といっても、それは優しいことではなく、患者にとっておそらく一生の課題です。したがって第4相は目標といえます。患者に携わるメンバーは、同様の条件で努力している事例などをモデルで示し、患者や家族を勇気づけるような対応が必要になります。

*参考 リハビリテーションマニュアル(日本医師会)

インフォームド・コンセント(説明と同意)

インフォームド・コンセント(説明と同意)

説明を加えた結果生じる同意に基づいて治療計画を進めることは、医療にかかわるもの全てに共通した原則といえます。

治療を開始する前に患者あるいは患者の家族の了承を得て、あらかじめ十分に納得しておく必要があります。

近代的な医療形態では、分化した専門職によって専門領域の業務が遂行されています。医業分業のみならず、診療放射線、検査、理学療法、作業療法、言語聴覚訓練、そしてケースワーカーに至るまで専門職に委ねられるようになっています。

当然、医療の質及び密度は濃く、そして高度なものになりましたが、各々が専門的なサービスを提供することができるようになった反面、医療チームの中での医師の統一が図られにくくなるという側面もあり、ケースカンファレンスの場などにおいて患者に対する治療計画説明の一貫性を確認し、少なくとも医師と他の専門職との間に、患者に対する説明上の差異が無いようにする必要があります。

特にゴールについての発言については慎重であるべきで、患者の意識を鼓舞するよう、しかし誤った過度の期待を抱かせぬよう慎重に説明し同意を得ることが肝要です。

患者の精神状態を良好に保ち、最大の治療効果を期待するためにも、インフォームド・コンセントの確認は必須事項になります。

1つの契約事項として業務を遂行することは、患者に安心感を与えると同時に、医療者の自覚を高めることにもなり、結果的に「医療の質」を高める結果になります。

1997年の医療法の改正時に趣旨が明文化されました。

*参考 整形外科学テキスト(南江堂)