関節拘縮とその分類

関節拘縮とその分類

拘縮とは
関節周囲軟部組織が原因で生じた関節可動域制限は拘縮(contracture)と呼ばれ、その定義は、皮膚や皮下組織、骨格筋。腱、靱帯、関節包などといった関節周囲に存在する軟部組織が器質的に変化したことに由来した関節可動域制限とされています。しかし、その英語表記であるcontractureは、「contract=収縮する」という動詞を抽象名詞化した言葉であり、元来は関節によって隣り合う2つの体部が、筋肉収縮の結果、互いに近づいた状態が継続していることと定義されています。

拘縮の分類
拘縮は大きく先天性内反足の様な先天性拘縮と、後天的な原因によって発生する後天性拘縮に分類され、後者に関しては病変部位やその原因によって分類でき、Hoffaの分類がよく用いられます。これによれば、拘縮は①皮膚性、②結合組織性、③筋性、④神経性、⑤関節性に分類されます。

1) 皮膚性拘縮
   熱傷後や皮膚挫創後に皮膚が壊死を起こし、瘢痕治癒後に発生する瘢痕拘縮がそのほとんどを占めます。

2) 結合組織性拘縮
   皮下組織や靱帯、腱、筋膜など、主に結合組織によって構成される組織に起因するものを言います。手掌腱膜が癒着、瘢痕化し、手指の拘縮をきたすDupuytren拘縮はこれに属します。また、元来含まれていないですが、組織の校正から考えると筋膜に起因する拘縮もこれに属すると考えられます。

3) 筋性拘縮
   骨格筋の短縮や萎縮が原因とされ、関節が特定の肢位で長時間固定されたことで起こった拘縮はこれに属します。また注射後の不幸な後遺症である三角筋拘縮症や殿筋拘縮症、大腿四頭筋短縮症なども筋性拘縮の一つと考えられています。

4) 神経性拘縮
   拘縮の原因が神経疾患に由来するものを言います。具体的には痛みが強く発生する場合には反射的に筋スパズムが起こり、痛みから逃れたい肢位をとるが、これが長時間続くと拘縮が起こります。(反射性拘縮)また、痙性麻痺を伴う中枢神経疾患では、筋緊張亢進の為に拘縮が発生することが多く見受けられます。一方、末梢神経障害に伴う骨格筋の弛緩性麻痺でも拘縮が発生することがあります。これは拮抗筋と主動作筋の両方が完全な弛緩性麻痺を呈している場合には発生することは少なく、回復過程などにおいて拮抗筋と主動作筋の筋力のアンバランスの際に生じると考えられています。

5) 関節性拘縮
   関節構成体に属する軟部組織である滑膜や関節包、関節内靱帯などに由来する拘縮のことを言いますが、これらの組織の構成は結合組織であるため結合組織性拘縮と考えても問題は無いと言われています。

終わりに
拘縮の原因・分類について知っておくことは、拘縮の予防・改善にとって非常に重要な意味を持っています。前述したHoffaの分類はかなり古典的な分類であるため、臨床症例にマッチングできない部分もあります。その為、拘縮の分類については見直さなければならない時期に差し掛かっているのではないでしょうか。

*参考 関節可動域制限-病態の理解と治療の考え方