誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎の症状は、通常の肺炎と同様で、発熱、咳、黄色調の痰、胸痛、呼吸困難があります。
ただし、高齢者の場合は、症状が軽いことがあり、必ずしも高熱や多量の疲の喀出がみられないこともあります。呼吸困難も、はっきりとは訴えないので、家族や医療従事者は、呼吸数やチアノーゼの有無に注意する必要があります。
チアノーゼも高齢者は貧血があることが多いので、認めらにくいです。

栄養とリハ

栄養とリハ

低栄養・過栄養による代謝異常があるのに、栄養管理を行わずにリハを行うと、リハの効果が得られず、さらに機能低下を招き、ADL自立度が低下することを念頭に置く必要がある。
患者が最大限の力を発揮できるように、個々の病態を把握し、口から食べることを推奨しながら適切な栄養管理を行うことが望まれている。

肥満の病体

肥満の病体

肥満とは、肥満に起因・関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合であり、医学的に減量を要する病態である。
肥満には遺伝因子と環境因子の両者が関与するので、過栄養のみが肥満の原因ではないことに留意すべきとされている。

WHO分類ではBMI 30kg/m2以上を肥満と定義しているが、日本肥満学会はBMI 25kg/m2以上から肥満と定義している。

日本人ではBMIが25kg/m2を超えると肥満に伴う健康障害が合併しやすく、BMIが22kg/m2以下で最も疾病が少ないと報告されている。

合併症は、代謝異常として耐糖能異常、脂質代謝異常(高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症)、高血圧、内臓脂肪蓄積をはじめとする動脈硬化のリスクが挙げられる。

内臓脂肪蓄積による高血糖、高脂血症、高血圧などの合併率が高くなり、複数の心血管疾患のリスクが高くなる病態(メタボリックシンドローム)も問題となっている。
肥満では筋力や持久力低下などによるADL低下を認めることがある。
代謝異常を改善させるには内臓脂肪の減少が必要となる。BMI単独評価ではクワシオコルの栄養障害を見過ごさないように注意が必要である。

悪液質の特徴

悪液質の特徴

骨格筋の減少はADLに支障をきたすだけでなく、代謝障害のため食欲不振やさまざまな身体症状も出現し、抑うつ症状など精神的な有病率も高く、QOLも低下してしまう。

飢餓であればエネルギー必要量を投与すれば栄養状態は改善するが、悪液質の場合、エネルギー必要量を投与するだけでは栄養状態の改善は難しいことが多く、飢餓と悪液質の鑑別は栄養管理を行ううえできわめて重要となり、CRP 0.3〜0.5mg/dL以上が慢性炎症や悪液質の目安となるといわれている。
悪液質では原因疾患の治療が重要となる。
補助として適切な栄養管理、廃用予防程度の運動、n-3系脂肪酸(EPA)、L-カルニチン・グレリンなどの薬剤や栄養素の効果が期待されている。

悪液質 栄養代謝障害

悪液質 栄養代謝障害

がんに起因する悪液質はよく知られているが、悪液質とはがんだけでなく慢性疾患によってひき起こされる栄養代謝障害のことを指している。
悪液質の原因となるのは、がん、慢性感染症(ARDSなど)、慢性心不全、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患、リウマチなどの膠原病、肝不全などである。
飢餓は脂肪組織の減少が主体で骨格筋の大きな喪失を伴わないのに対し、悪液質は早期から骨格筋の喪失を生じるため、飢餓と異なる病態と考えられている。

異化期と同化期の評価

異化期と同化期の評価

患者が異化期なのか同化期なのかを見極めることは大切なことである。異化期では筋肉の蛋白質や脂肪を分解してエネルギーを産生するが、同化期では筋肉の蛋白質や脂肪が合成されるようになり、点滴や経腸栄養投与による栄養素を有効活用できるようになる。

異化期から同化期への指標となるのが、尿中の窒素排泄量と水分バランスである。
窒素バランスは異化期では負になり、同化期では正になる。
侵襲直後は栄養を入れすぎないように注意しなくてはならないが、異化期が過ぎれば少しずつ目標とするエネルギー必要量に増やしていく。
高血糖とならないように、適宜、インスリンを投与し、尿糖・AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)・BUN(血中尿素窒素)などをモニタリングしながら投与量の調節をする。
侵襲時は補助的に栄養管理を行い、同化期になってから機能訓練を行うようにする。

傷害期と異化期

傷害期と異化期

侵襲の初期、傷害期には肝臓のグリコーゲンが分解されるが、これが枯渇すると筋肉の蛋白質や脂肪を分解してエネルギーを供給するようになる。この時期を異化期とよぶ。

高度な侵襲の場合、外部から糖を補っても蛋白質の分解を抑制することができない。糖は最も効率のよいエネルギー源だが、インスリン抵抗性を示す場合は糖を入れても生体は利用しにくい状態である。侵襲直後、とくに異化期の患者に高カロリー輸液を行ってもなかなか利用できないのは、こういった代謝異常があるためである。
侵襲をコントロールできなければ、いくら適切な栄養管理とリハを行っても栄養や機能の維持は困難となる。
異化期に機能訓練を行っても筋肉量が減少するばかりで逆効果となるため注意が必要である。

侵襲時の炎症とサイトカイン

侵襲時の炎症とサイトカイン

侵襲とは、具体的には手術、外傷、骨折、感染症、熱傷などのことで、CRP(C反応性蛋白)の急速な上昇が一つの目安になる。
侵襲時には創傷治癒などのためエネルギー需要が亢進するほか、ホルモンやサイトカインの産生が増加する。
侵襲が加わると傷を治すために炎症性サイトカインが分泌され、必ず炎症が生じる。

炎症性サイトカインが過剰に分泌されると体中に炎症が起こり、臓器障害が発生してしまう。
抗炎症性サイトカインは炎症性サイトカインとほぼ同時に、その量に応じて分泌されるが、これが出すぎると免疫能が低下し、感染症から臓器障害をひき起こしてしまう。

リフィーディング症候群

リフィーディング症候群

高度な低栄養状態にある場合に栄養補給を行う際は、必ずrefeeding症候群の発症リスクを念頭に置いて栄養補給する必要がある。
マラスムスやクワシオルコルはrefeeding症候群発症のリスクとなる。

Refeeding症候群とは、長期間、高度な低栄養状態にあった患者に急速に栄養投与することで発症する代謝異常で、急激に起こる異化から同化への代謝変化と、それに伴うリン、カリウム、マグネシウムの細胞内移動が原因となる。
なかでも低リン酸血症はとくに危険な状態である。
低栄養の患者の栄養補給を行う際は、とくに糖の補給方法が問題となるためモニタリングとともに段階的な栄養補給が必要となる。

炎症を伴わない低栄養

炎症を伴わない低栄養

炎症を伴わない低栄養であれば、エネルギー必要量を補充し、消化・吸収・代謝されることで改善する。
5大栄養素についてバランスよくエネルギー必要量を摂取し、廃用予防程度の運動は行うようにする。

典型的な飢餓

典型的な飢餓

飢餓には、「マラスムス」と「クワシオルコル」とよばれる典型的な2つの病型がある。
マラスムスは蛋白質量とエネルギー量のどちらも不足しているため、protein energy malnutri-tion(PEM/蛋白質・エネルギー栄養失調)とよばれ、著明なやせ、体重減少や筋肉・脂肪の減少、成長停止、筋萎縮や貧血が認められるが、浮腫や低蛋白血症は認められない。
血中アルブミン値も低下しないことがある。

クワシオルコルは、蛋白質の不足がエネルギー量の不足よりも重篤な場合の病型で、内臓蛋白の高度減少が特徴で低蛋白血症から浮腫、腹水をきたす。 実際の臨床現場では、両者が混在することが少なくない。

窒素死 飢餓

窒素死 飢餓

飢餓が長期間続くと、多くの組織が、グルコースではなく遊離脂肪酸から産生したケトン体からエネルギーを獲得する。
さらに飢餓が悪化すると、免疫能の低下、創傷治癒遅延、臓器障害を認め、除脂肪体重(LBM:lean body mass/全体重のうち、体脂肪を除いた総量)の30%を失うと、「Nitrogen Death、窒素死」とよばれる死に至るとされている。

飢餓とリハビリテーション

飢餓とリハビリテーション

飢餓とは、エネルギー必要量より少ない摂取量が続いたときに起こる低栄養の状態である。
飢餓のときは体外からのエネルギー摂取量が不足しているため、体内に蓄えられている糖質、脂質、蛋白質を分解することで、生きるために必要なエネルギーを産生する。

短期(24時間以内)の飢餓では肝臓のグリコーゲンが分解され、まかなわれるが、その後、蛋白質と脂肪を分解してエネルギーを産生する。

アミノ酸や脂質、エネルギーが不足している飢餓の状態で運動すると、筋肉の蛋白質をさらに分解するため、筋肉量は減少してしまう。

栄養管理をせずにリハを行うと低栄養が長期化し、ますます機能低下が進み、日常生活活動(ADL)に大きな支障をきたすことにもなりかねないため留意する必要がある。

低栄養へのアプローチ

低栄養へのアプローチ

成人の低栄養は、炎症反応の有無が重要な因子である。
病因によって、
①飢餓(炎症を伴わない)
②悪液質(軽度〜中程度の炎症を伴う)
③侵襲(中程度〜高度の炎症を伴う)
の3つに分類され、低栄養を体系的に診断しアプローチするよう提唱されている。

病態によって代謝は変動するため、栄養管理を理解するうえで、個々の病態の代謝を考えることが重要である。

栄養障害

栄養障害

生命活動を維持するために必要な栄養量と摂取量のバランスが崩れると栄養障害が起こる。
エネルギー必要量より少ない食物を摂取していることで起こる代謝障害を「低栄養」という。
またエネルギー必要量よりも多くの食物を摂取することで起こる代謝障害を「過栄養」という。

代謝とは

代謝とは

生命活動を行っている私たちの生体を形づくる組織は、つねに壊され生まれ変わっている。
これを「代謝」という。
その材料・燃料となるのが食物である。
材料となる食物や栄養素がなければ、徐々に生命活動を維持できなくなり、最終的には死に至る。
代謝とは、栄養素の同化(合成)および異化(分解)のことである。
食事から消化吸収された栄養素は異化することでエネルギーを産生し、同化にはエネルギーが必要になる。

ウェルニッケ・コルサコフ症候群

ウェルニッケ・コルサコフ症候群

ウェルニッケ・コルサコフ症候群はビタミンB1欠乏を原因とし、急性期には意識障害、眼球運動障害、運動失調といったウェルニッケ脳症の症状が前景に立ち、約半数の例で前向健忘、逆向健忘、見当識障害、作話病識の欠如といったコルサコフ症候群が残存します。

アルコール依存症に多いですが、拒食症でもみられ、なかにはビタミンB1を欠いた点滴時といった医原性の場合もみられます。

急性期であればMRIのT2強調画像、FLAIR画像、拡散強調画像でしばしば病巣が確認されます。

病巣の範囲は、第3脳室、中脳水道第4脳室底の周辺であり、この部位の損傷によって意識障害、眼球運動障害、運動失調、記憶障害が生じます。

記憶障害に関しては、視床(背内側核、乳頭体視床路、前核等)や乳頭体の障害により起こります。

作話 記憶障害

作話 記憶障害
作話は記憶障害を背景として出現しますが、側頭葉内側部、乳頭体、脳弓、脳梁膨大後域皮質の限局損傷で作話を認めることは稀てす。
限局損傷で作話が出現する際は、前脳基底部を含む病巣が多く、疾病としては前交通動脈破裂によるクモ膜下出血で出現しやすいです。

ただし、限局した前脳基底部損傷では作話は出現しても一過性であると報告されています。

作話を伴う記憶障害の患者は、程度の差はあるものの見当識障害や遂行機能障害を伴い、自立した生活を送ることは困難と言われています。

健忘症候群 病巣

健忘症候群 病巣

健忘症候群の責任病巣としては、側頭葉内側部(海馬、海馬傍回、嗅内野、嗅周囲野)、視床(背内側核、乳頭体視床路、前核等。)、乳頭体、脳弓、脳梁膨大部後方領域、前脳基底部が知られています。
これらの責任病巣の多くは、Papezの回路、すなわち、海馬体(歯状回、固有海馬、海馬台)一脳弓一乳頭体一視床前核一帯状回(脳梁膨大部後方領域も含まれる)一海馬傍白一海馬体といった回路にあります。
このなかでも臨床上、健忘症候群が出現する典型的な病巣は、側頭葉内側部の損傷です。

記憶障害 高次脳機能障害

記憶障害 高次脳機能障害

記憶障害は、脳損傷に伴う高次脳機能障害のなかでも比較的頻度が高く出現し、日常生活における問題の中核となることが多いです。記憶障害は知能の低下や注意障害に伴って出現する場合が少なくありませんが、独立して出現する場合もあります。この場合は健忘症候群といい、その正確な定義は、基本的な注意機能、短期記憶(即時記憶)、手続き記憶、プライミング効果が保たれているなかで、前向健忘および、または逆向健忘がみられることとされています。

利き手と失語症

利き手と失語症

右利きであれば、言語機能は左半球に側性化※しています。右利き失語症患者の約1%に、病変が右半球にある交叉性失語を認めます。
左利き、両手利きの場合は、右利きほど言語機能の左半球の優位性ははっきりせず、約60%が左半球に言語機能が側性化していますが、右半球で営まれている場合や、左右で分担している場合などさまざまです。

※側性化とは、ある特定の機能の処理が、大脳半球の左右のどちらかで重点的に行われていることをいいます。