角回のMRI上の目印と優位半球における欠落症状

角回のMRI上の目印と優位半球における欠落症状

角回は、MRl水平断では、側脳室の体部がややくびれる断面で、側脳室の後角の延長線上にあります。

優位半球における角回付近の欠落症状は、手指失認、失書、左右失認、失算の4徴を呈するGerstmann症候群です。

Broca Wenicke領野のMRI上の指標と局在性

Broca Wenicke領野のMRI上の指標と局在性

Brooa領野は、下前頭回の三角部、弁蓋部に相当する領域です。
MRI水平断では、外側溝がコの字に見える部位の断面で、コの字1画目にあたる上行枝の前方が三角部、その後方が弁蓋部です。
Broca領野に限局した病変ではBroca失語を生じす流暢性の失語生じると言われています。

典型的なBroca失語は、Broca領野を含む下前頭回、中前頭回後部と中心前回下部を含む広い病巣で生じます。

Wernicke領野は、矢状断でみて上側頭回後方1/3領域の部位です。
MR1水平断では、Broca領野が見える同じ断面で、横側頭回があれば、その直後がWemicke領野に相当する上側頭回です。
Wemicke失語は、Wernicke領野を含む側頭葉後方、頭頂葉に広がる病巣によって生じます。

障害半球別の失語症と利き手の関係

障害半球別の失語症と利き手の関係

利き手が右手であるとき、言語機能は左半球が重要な役割を担います。右利きである失語症の病変のほとんどが左側にあります。

利き手が左手または両手の場合(非右利き)は、右利きほど左半球の優位性は明らかではありません。 非右利きの失語症で、左側に病変があるのは60%程度です。

利き手が右手である失語症で、病変が右側にある場合は交叉性失語と呼ばれます。

純粋語唖と伝導失語

純粋語唖と伝導失語

純粋語唖と伝導失語は症状と病巣の対応関係が明らかです。

純粋語唖は、Wernicke―Lichtheimの図式では、皮質下運動失語の範疇に入ります。
基本的には失語の要素を欠き、発話面において失構音のみ呈するのが特徴です。
しかし、実際には軽度の書字障害を伴うこともあります。
失構音は、構音障害とは異なり、誤りかたに一貫性がありません。
顔面失行、軽度の上肢の筋力の低下を伴うこともあるが、必発ではありません。
発症当初から純粋語唖を呈する場合と、Broca失語が軽快する過程で同様の症状をきたす場合があります。病巣は、左中心前回下部の病巣で生じる。

伝導失語は、聴覚理解が良好な流暢性失語で、音韻性錯語の頻出が発話の特徴です。
復唱、呼称、音読にも音韻性錯語は現れます。復唱において最も音韻性錯語が目立ち、特に文節が長くなると顕著となります。Wernicke失語と異なる点は、聴覚理解が保持され、 さらに自己の発話の間違いに気づいていることであす。
自己修正をし、何度も言い直す接近行動を認めます。書字にも音韻性錯書を認めます。
病巣は、左縁上回皮質、皮質下を含んでいます。

失語症の重症度と予後

失語症の重症度と予後

失語症の重症度、その予後は、発症年齢、病前の言語能力、病変部位、広さ、発症初期の言語症状、言語の側性化など複合的な要因がかかわります。

失語症の病因が血管障害の場合は、病変が大きいほど回復が遅い、あるいは回復が困難であることが示されています。

病変部位に関しては、脳の前方病変による非流暢性失語の場合、Broca領野の最深部、中心前回、中心後回下部の深部に病巣があると、非流暢性発話が長期間持続するという報告があります。
Wernicke失語では、中側頭回に病変が広がる場合は、回復が遅いという報告などがあります。
失語症の長期的な回復には、病巣側の機能回復だけではなく、非言語半球の関与もあると推測されています。

脳の機能面の評価には、脳血流シンチグラフイが用いられ、定量的な評価も可能となっています。頭部MRIで認められる病巣よりも、広範囲に血流が低下している場合があり、このときには、回復に時間がかかる可能性があります。

健忘失語

健忘失語

喚語の障害を中核症状とする軽症の失語症です。
純粋型も存在しますが、各失語型の回復過程で本型を呈することも多いです。
失名詞失語と同義的に使用されています。
本型は基本的には流暢失語であり、責任病巣として側頭葉や頭頂葉病変を指摘する報告があります。しかし、各失語型の回復過程に出現することからも予想されるように、本症の責任病巣を特定するには困難も多いです。

全失語

全失語

言語の基本要素である「聴く」「話す」「書く」「読む」の能力が重度に障害された状態です。
ブローカ領野とウェルニッケ領野を含む左中大脳動脈領域の広範な障害で出現してきます。
通常、右の片麻痺や感覚障害も重度です。
主幹動脈の血栓閉塞(左内頸動脈閉塞症)では、深部型境界域梗塞例で全失語をみることがあります。
この場合、形態画像による病巣は深部白質のみに限局しているようにみえますが、機能画像でみると、言語野を含む大脳皮質領域にも広範な脳循環代謝の障害を見ることができます。
形態画像と機能画像の顕著な解離をきたす状態となります。

皮質下性失語

皮質下性失語

大脳基底核部や視床、深部白質のみの病巣で失語を呈する症例があります。線条体失語や視床性失語とよばれる一群です。これらの失語症は皮質下性失語ともよばれています。
線条体失語は中大脳動脈の穿通枝領域の脳梗塞(線条体内包梗塞)や被殻出血で出現します。
失語症のタイプや重症度は様々です。

視床を中心とした病巣による失語症を視床性失語とよびますが、通常、流暢型の失語を呈してきます。
しかし、視床に限局した病巣で真の失語症が出現してくるか否かに関しては検討の余地が残っています。視床に限局した梗塞で失語症をきたした症例の報告はありますが、視床に限局した梗塞の大多数には失語は認められていません。一方、視床出血ではしばしば失語症状が認められます。この場合は線条体失語と同様に、周囲の白質や言語領野への直接的、間接的影響の有無について検討されています。

境界域梗塞と超皮質性失語

境界域梗塞と超皮質性失語

超皮質性失語は復唱が保たれている失語群です。
超皮質性失語の発現機序は境界域梗塞に限ったわけではありませんが、境界域梗塞により各タイプの超皮質性失語が出現してくることが指摘されています。

前大脳動脈と中大脳動脈、後大脳動脈の脳動脈には脳表を介する吻合があります。
灌膨圧の低下により、これらの脳動脈の境界領域に出現してくる梗塞が境界域(分水嶺)梗塞である主幹動脈の閉塞ないしは高度の狭窄によるアテローム血栓性脳梗塞に特徴的な所見で、表層型境界領域とよばれています。

中大脳動脈と前大脳動脈との境界域梗塞は、前方部境界領域梗塞で、中大脳動脈と後大脳動脈のそれは後方部境界領域梗塞です。
前者では超皮質性運動性失語が、後者では超皮質性感覚性失語が出現することがあります。

中大脳動脈からの穿通枝とその皮質枝から髄質へと向かう髄質枝の境界域は深部型の境界領域です。深部型境界域梗塞では全失語や超皮質性混合性失語のような重症失語が出現してくることがあります。
この場合、形態学的病巣部位は皮質下に限局しているようにみえても、機能障害部位は広範囲です。
失語症が重症であることが、障害が重度であること示唆しています。主幹動脈閉塞による深部型境界域梗塞に基因する重症失語も、形態画像と機能画像の著明な解離を示す病態です。

頭頂葉と失語症

頭頂葉と失語症

伝導性失語の責任病巣としては、縁上回が重要です。
通常、病巣は皮質下の弓状束も損傷しています。
この領域を灌流する中大脳動脈の主要な分枝は後頭頂動脈です。

側頭葉と失語症

側頭葉と失語症

感覚性失語症の責任病巣はウェルニッケ領野と言われています。
病巣が頭頂葉(角回や縁上回)へと拡がるとウェルニッケ失語はより重度となります。
領域は中大脳動脈の灌流域にあります。
ウェルニッケ領域は主として後側頭動脈の灌流域にあります。
頭頂葉の縁上回や角回を灌流するのは後頭頂動脈や角回動脈です。

頭頂葉症候群としての失書や失算、観念性失行、観念運動性失行などを伴うことがあります。

超皮質性感覚性失語はブローカ領域に限局した領域でも出現しますが、その責任病巣は主として、ウェルニッケ領野の周辺領域の側頭葉、頭頂葉後頭葉領域と言われています。その領域は、後方部の境界域梗塞により障害される部位でもありますが、塞栓症によることもあります。

前頭葉と失語症

前頭葉と失語症

運動性失語症の責任病巣は、ブローカ領野と中心前回下部を含む領域と言われています。
中大脳動脈の分枝でいえば、前前頭動脈や前中心門動脈、中心溝動脈の灌流域に相当します。
病巣が周囲へと拡大していれば失語症は重度になります。

神経症状としては、右片麻痺や口腔顔面失行を伴うことが多いです。 

純粋語唖は失構音を主徴とします。責任病巣は中心前回に想定されています。
この部位は中心溝動脈の灌流域にあります。

ブローカ領野のみに限局した病巣では運動性失語は出現せず、流暢性の失語を呈してくると言われています。失語症のタイプでいえば、超皮質性感覚性失語である心溝動脈の灌流域にあります。
この両動脈の灌流域には中前頭回も含まれます。
この領域は前頭葉性純粋失書の責任病巣であり、通常、書字の障害も顕著となります。

超皮質性運動性失語の責任病巣は、前大脳動脈領域にある補足運動野や中大脳動脈が灌流する前頭葉でブローカ領野周辺部位と言われています。
中大脳動脈が灌流する前頭葉でブローカ領野周辺部位を原因とする本症の発現機序としては、前方部の境界域梗塞や深部前方部の境界域梗塞や深部型境界域梗塞が関与することがあります。

失語症タイプ診断の流れ

失語症タイプ診断の流れ


失語症のタイプの診断は発話の流暢性や聴覚的理解障害の程度、復唱障害の程度などから判定します。

流暢性


ひとつのポイントは発話の流暢性です。
非流暢性失語群であれば、次は聴覚的理解の障害の重症度です。
これが重症であれば、全失語か超皮質性混合性失語です。
超皮質性混合性失語であれば復唱が保たれています。

聴覚的理解


聴覚的理解が比較的保たれていれば、運動性失語か超皮質性運動性失語です。


復唱


超皮質性失語であれば復唱は保たれています。

流暢性失語群で中等度以上の聴覚的理解障害をみれば、感覚性失語か超皮質性感覚性失語です。

前者では復唱が障害され、後者では保たれています。

聴覚的理解障害が比較的軽度であれば、伝導性失語か健忘性失語です。復唱でみると、前者では障害が目立ち、後者では障害は認めません。 伝導性失語の診断においては、音韻性錯語の存在に留意します。


失語症の症状

失語症の症状

失語症は「聞いて理解する」「話す」「読んで理解する」「書く」のいずれも障害されます。 失語症のタイプによってそれぞれの重症度は異なります。 また、計算の障害も伴う事が多いです。

「聞いて理解する」ことの障害
聴覚的理解の障害は程度の軽重はあってもすべての失語症者に認められる症状です。
理解障害に影響を与える因子は、単語の使用頻度や抽象性、文の長さや構文の複雑さ、発話の速度などです。
ウェルニッケ領野を中心とした病巣では、聴覚的理解の障害が目立ってきます。言語音そのものの認知が障害されるときは純粋語聾とよばれますが稀な病態です。環境音や音楽の認知障害とともに聴覚性失認として論じられることが多いです。

「話す」ことの障害
意図した言葉をうまく出せない状態を喚語困難と呼びます。失語の中核症状であり、すべての失語症者に認められると言っても過言ではありません。状況に応じて呼称障害や語想起障害として区別されています。
物品の名称が言えないため、その用途を述べたり、回りくどい説明を加えたりする。迂言や迂回表現などと呼ばれています。
喚語がうまくできないこともあれば、喚語したものが誤っていることもあり、字や語が誤って発せられる現象を錯語とよびます。
単語が他の語へ置き換えられるとき語性錯語といいます。
意味的関連がある単語へと置き換わる語性錯語を意味性錯語と呼びます。無関係な語であれば無関連錯語と呼ばれています。

単語の特定の字の誤りを音韻性錯語、ないしは字性錯語といいます。
音韻性錯語を特徴とする失語は伝導性失語やウェルニッケ失語です。
縁上回や弓状束の障害を示唆する局在性が高い症状です。
音の置換が多いときは意味がとれなくなります。単語レベルであれば新造語とよばれ、発話全体の意味が不明となればジャルゴンとよばれています。 ジャルゴンはウェルニッケ失語で出現してくる症候です。

ブローカ失語で観察される特有の構音やプロソディーの障害を発語失行(アナルトリー)と呼びます。 一貫性のある構音の誤りである構音障害と異なり、発語失行は一貫性のない構音の誤りが特徴で、プロソディー(発話のスピードやリズム、抑揚など)が障害されてくる。この非流暢性の発語障害の責任病巣は中心前回と考えられています。

個々の単語の喚語は可能でも文の構成に障害をきたすことがあり、失文法とよばれ、とくに助詞や助動詞が脱落し、名詞のみがぼつりぽつりと発語される電文体が特徴です。ブローカ失語で観察される症状です。

「読んで理解する」「書く」ことの障害
失語症では、読み書きにも障害をきたしてきます。失語症で出現してくる読み書きの障害は失語性失読や失語性失書とよばれています。
一方、音声言語に障害を示さずに、文字言語、すなわち、読み書きのみに純粋な障害を呈してくることがあります。純粋失書や失読失書、純粋失読などが代表的な病態です。
純粋失書は前頭葉性純粋失書と頭頂葉性純粋失書に分類されます。
失読失書は側頭葉後下部病変や角回病変により出現してくる。純粋失読の発現には後頭葉や脳梁膨大の障害が関与します。

「計算」の障害
計算機能は言語機能と独立していると考えられていますが、多くの失語症者では計算障害を伴っています。標準的な失語症検査では計算能力も同時に評価しています。
失計算の責任病巣は左の頭頂葉(特に角回)に想定されることが多いですが、種々部位の損傷による計算障害も報告されています。

失語症 言語領野

失語症 言語領野

言語領野は左の大脳半球にあります。左半球は言語の優位半球とよばれています。大脳優位性との関連では利き手を知ることも重要です。右利きであれば言語領野はそのほとんどが左半球に存在すると考えて良いでしょう。一方、左利きでも多くは左半球に言語領野があると考えられていますが、言語領野が右半球に存在する頻度は、右利きで右半球に存在する場合よりも圧倒的に高くなります。
また、中枢は左にあっても左右両側に側性化していることもあり、左利きや両手利きでは大脳優位性に配慮が必要となります。

言語領野の、ブローカ(Broca)領野は下前頭回後部の前頭弁蓋部や三角部に存在します。
ウェルニッケ(Wernicke)領野は上側豆頁回の後半部に存在しています。 中心前回は運動性失語にみられる発語の障害の責任病巣と考えられています。

縁上回は音韻性錯語の責任病巣として重視されています。
この皮質下には弓状束が走っています。縁上回皮質、皮質下の障害で伝導性失語が出現します。

失語症の訓練のエビデンス

失語症の訓練のエビデンス

誰が訓練を行うかについては必ずしも専門家(言語聴覚士:ST)である必要はないという報告が多いです。
訓練方法を訓練された非専門家であれば、言語聴覚士同様の訓練効果を提供できるといわれています。
ST資源不足な現状にとって重要な事実です。在宅生活も踏まえ家族指導の重要性もわかります。

発症早期からの訓練の有効性については肯定的な意見が多いです。
BhogalやRobeyの報告を基にIntercollegiate Stroke Wbrking PartyのNational Clinical Guidelines for Stroke2004では週に2~8時間を推奨しています。
訓練をいつまで続けるかという点については実際には人的資源の問題や、病院・地域・家族等訓練を行う場所によっても意見は分かれるところですが、長期にわたり訓練効果があるとする報告は多いです。
特にCI言語療法やコンピュータを用いた補助的訓練は慢性期失語症に対する治療効果を認めており、少なくとも長期にわたり専門的なフォローアップが重要であることは間違いないと思われます。
長期的な視野でみた際に最終的にはコミュニティーベースの訓練、ホームリハが中心になると考えられます。訓練を受けた非専門家でも同様の結果を示していることからも支持されるように、集団訓練含めたコミュニティーベースの訓練や家族介護者指導は積極的に検討すべきです。
家族指導については、患者の会話能力向上を認めており、失語症訓練の補助として有用です。

具体的な訓練手法についてはさまざまな脳卒中リハのガイドラインでも明確には述べられていない場合が多く、ゴールデンスタンダードがないのが現状です。しかし慢性期失語症に対するアプローチでも訓練の有効性を示されています。

一般的に行われている手法としては、「直接刺激法」「刺激促通法」、「機能再編成法」「PACE」などがあります。

失語症の評価

失語症の評価

失語症においてその程度や回復、治療効果の判断などに適切な評価が重要です。
疫学的には、失語症は発症後2週間~3カ月までの改善が著明であり、その後も改善度は低下するものの1年程度は緩徐に改善、結果的に失語症状の40%は1年でほぼ完全に戻るとされています。
発症時の重症度によって最も改善するタイミングも異なり、最終的な改善に対する最大の予測因子は発症時の重症度であるため、初回の評価は特に重要です。
Davidらは失語症訓練の有効性に対する研究において、むしろ訓練よりも患者の適切な環境設定、そのための評価が重要であるとしています。わが国で広く使用されている評価法としては標準失語症検査(Standard Language Test of Aphaisia:SLTA)が有名で、失語症患者のSLTAによる評価とコミュニケーション能力評価の問に高い相関が報告されています。
世界的にも広く使用され有用性が確立しているWestern Aphasia Battery(WAB)失語症検査には日本語版もあるため、こちらもわが国でも使用されています。
イギリスをはじめヨーロッパで広く使用されているFrenchay Aphasia Screen-ing Test(FAST)は、6つのRCTの系統的レビューにおいて有用性が認められたものの、筆者も評価法のゴールドスタンダードはないと結論づけています。FASTの日本語版はありません。

鎮痛薬使用の5原則

鎮痛薬使用の5原則

①経口的に (by mouth)

②時刻を決めて規則正しく (by the clock)

③除痛ラダーにそって効力の順に (by the ladder)

④患者ごとの個別的な量で (for the individual)

WHO方式がん疼痛治療法 治療戦略

WHO方式がん疼痛治療法 治療戦略

WHO方式がん疼痛治療法では次のような治療戦略を立てています。

①チームアプローチによる、がん患者の痛みの診断とマネジメントの重要性

②詳細な問診診察画像診断などによる痛みの原因、部位、症状の十分な把握の必要性

③痛みの治療における患者の心理的、社会的およびスピリチュアルな側面への配慮と患者への説明の重要性

④症状や病態に応じた薬物または非薬物療法の選択

⑤段階的な治療目標の設定

⑥臨床薬理学に基づいた鎮痛薬の使用法

筋性疼痛

筋性疼痛

痛みを訴える筋群の触診で、筋組織の緊張(凝りや張り)が明らかで、マッサージなどで痛みが緩和するような場合、あるいは廃用が進行している四肢の痛みの場合も筋性疼痛(無動による痛み)に該当します。
筋緊張亢進による痛みでは、鎮痛薬のほかに、筋緊張をほぐすストレッチ運動(リハビリテーション)、マッサージ、温(冷)器法、NSAIDs系の貼付剤を用いて対応します。

炎症性の疼痛

炎症性の疼痛

原因病態として炎症が示唆される痛みのことです。
鎮痛にはNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)、コルチコステロイドが有効であることが多く、原因疾患の治療と並行して用いることが多いです。
長期にわたって使用せざるをえない場合には、それぞれの薬剤が起こしうる副作用について適切にモニターしながら、注意して継続します。

神経障害性疼痛

神経障害性疼痛

障害された神経の支配領域にさまざまな痛みや感覚異常が発生します。
通常、癖痛領域の感覚は低下しており、しばしば運動障害や自律神経系の異常(発汗異常、皮膚色調の変化)を伴います。
また、神経障害性疼痛においてはオピオイド受容体の機能低下が示唆されており、オピオイドの作用が減弱している可能性があります。
非オピオイド鎮痛薬、オピオイドといった鎮痛薬の効果が乏しいことがあり、その場合には鎮痛補助薬の併用を考慮します。
薬物療法のみで治療困難な難治性の神経障害性痺痛では、神経ブロック等も適応になります。

内臓痛

内臓痛

胸腔や腹腔の内部組織に分布する侵害受容器から伝達される痛みです。 痛覚刺激が複数の脊髄レベルに分散して入力されるため、痛みが広い範囲に漠然と感じられると考えられています。
内臓痛が発生すると、通常は機能していないC線維が活性化され痛みを伝えるようになります。
こうした状況下では痛みの程度も非常に強くなり、関連痛と呼ばれる病巣から離れた部位に痛みが発生する原因にもなります。
内臓痛には非オピオイド鎮痛薬、オピオイドが鎮痛に有効です。

体性痛

体性痛

筋骨格系組織(体性組織)の侵害受容器から伝達される痛みです。
体性痛は伝達速度の速いAδ線維、遅いC線維の2種類の感覚神経で脊髄に伝えられます。
Aδ線維、C線維は 脊髄後角に入力し、主に脊髄視床路ニューロンに痛みの情報を伝達します。
通常、非オピオイド鎮痛薬、オピオイドが鎮痛に有効ですが、体動時痛の増強にはレスキュー・ドーズ (痛み出現時の鎮痛薬頓用)で対応します。

認知症高齢者の日常生活自立度

認知症高齢者の日常生活自立度

 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。

Ⅱa 家庭外で、日常生活に支障を来たすような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。

Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱaの状態が見られる。

Ⅲa 日中を中心として、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。

Ⅲb 夜間を中心として、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。

 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。

M 著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患(意志疎通が全くできない寝たきり状態)が見られ、専門医療を必要とする。

下行性痛覚調整経路

下行性痛覚調整経路

同じ程度の傷害を受けても、それによって生じる瘍痛は状況や人により著しい差があります。

このことは、脳に痛覚伝導路の活性を調整する回路が存在することを意味しています。

これらの回路の1つは視床下部、中脳、延髄につながっており、下行路を通して選択性に脊髄の痛覚伝導 ニューロンを制御します。
遷延した痺痛や恐怖がこの内因性のオピオイドを介した調整系を最も確実に活性化します。
痛覚伝導ニューロンは調節系ニューロンによって活性化されうるので、理論的には末梢の侵害刺激がなくても痛覚シグナルを生じることがわかっています。
この理論により、心理的要因がいかに慢性終日に影響を及ぼしうるかを理解することが可能になりました。

痛覚の上行経路

痛覚の上行経路

一次求心性侵害受容器につながる脊髄ニューロンの大多数は対側の視床に軸索を伸ばしています。これらの軸索は対側の脊髄視床路を形成し、脊髄白質の前側方、延髄の外下縁、橋と中脳の外側に位置します。

伝導路と痛覚調整路

伝導路と痛覚調整路

・侵害受容メッセージの伝導系
侵害性刺激は、刺激伝導の過程で一次求心性侵害受容器の感受性がある末梢神経の末端を活性化します。メッセージは、末梢神経から脊髄に送信されます。脊髄では主要な上行性の面部経路である脊髄視床路由来の細胞でシナプスを形成します。メッセージは、視床で前帯状回、前島皮質、体性感覚野に中継されます。

・蓼冬痛調整ネットワーク
前頭部皮質と視床下部からの入力は、中脳にある細胞を活性化します。それにより延髄の細胞を介して脊髄の痛覚伝導細胞を制御します。