歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病が全身に及ぼす影響

これまで歯周病は「口の中だけに限局した病気」と考えられてきました。

しかしながら近年歯周病が全身にもたらす影響、全身が歯周病へあたえる影響についての研究も進み、歯周病と関連があるといわれている以下の症状がわかってきています。

①糖尿病
歯周病は糖尿病の合併症の一つとして捉えられています。歯周病を合併した患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られており、歯周病になるリスクが高い反面、歯周病の治療によっては血糖値が改善する可能性があります。

②心疾患
心疾患は生活習慣病が要因とされていますが、別の因子として歯周病菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。歯周病が重篤であればあるほど、心疾患を発症するリスクが高いと言われています。
これは、歯周病によって歯肉で生産された炎症物質が血流を開して心臓血管にも影響を及ぼすためと考えられています。

③脳梗塞
歯周病の人はそうでない人の2.8倍なりやすいと言われています。

④誤嚥性肺炎
唾液中に含まれる細菌が主な原因です。歯周病菌は誤嚥性肺炎の原因になるものが多く、唾液中に含まれる細菌が主な原因です。

⑤骨粗鬆症
全身的の骨が弱くなると、歯を支える歯周組織にも影響があると考えられており、骨粗鬆症は歯周病を進行させる一因とみられています。
特に閉経後の女性は骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下によって、かかりやすく、広がりやすいと言われています。
また治療薬のビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)を服用中に歯を抜くと、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。

⑥関節炎・腎炎
発症する原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌は、口の中に存在する歯周病菌にも多く存在しているため、発症することがあります。

⑦早期低体重児出産
妊娠中の女性で歯周病の人は、そうでない人に比べて低体重児出産や早産する確率が高いことが報告されています。
歯周病による炎症性物質が、へその緒を通じて胎児に影響するため、早期低体重児出産の確立が高まると考えられています。
妊娠中は、つわりによって口腔清掃が不良になりやすく、またホルモンの変化などによって、妊娠中期から後期にかけて歯肉の炎症が起こりやすくなります。
基本的には歯垢が残存しない清潔な状態では起こりにくいため、気を付けて歯をみがくことで予防できます。