嚥下内視鏡検査 (VE) と嚥下造影検査 (VF)

嚥下内視鏡検査 (VE) と嚥下造影検査 (VF)

RSSTやMWST、FTはベッドサイドで施行可能な簡便な検査で、非常に汎用性が高いですが、いずれの検査も外見からみた観察所見によるもので、実際にどのような嚥下が行われているか観察することができないのが欠点となります。

これを補うために実施されるのが、嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)です。

VEのメリット

VEのメリットとしては、被曝がなく、携帯性に優れていて、粘膜や唾液の状態が直視下に観察可能で、実際の食事場面での評価も行えるため利便性が高いです。

VEのデメリット

デメリットは、ファイバー挿入時の疼痛や鼻出血などのリスクがあり、また咀嚼・食塊形成や奥舌への食塊移送の様子など、口腔内はみることができず、嚥下の瞬間はホワイトアウトしてしまうため、喉頭侵入や誤嚥の詳細を知ることは困難となります。
加えてファイバーの挿入が嚥下機能に悪影響を及ぼす可能性についても考慮が必要です。

VFとは

VFはX線透視装置が必要で、結果の解釈がやや煩雑ですが、造影剤を含んだ食材を摂食し、その様子を直接観察できるため、単に喉頭侵入や誤嚥の有無をみるだけでなく、咀嚼や食塊形成の様子、口腔内保持や送り込みの能力、咽頭残留や喉頭侵入・誤嚥の有無やその量まで観察可能です。

また、検査中に体勢を変化させたり、さまざまな代償手段を試したりすることも可能であり、嚥下障害の詳細を観察し、それに即した治療戦略を立てるために非常に重要な情報を提供してくれる検査として、嚥下機能評価検査のゴールド・スタンダードと考えられています。

このようにVEやVFは嚥下障害の評価・治療において重要な情報を提供してくれますが、脳卒中患者の摂食・嚥下を考える上で必要な情報は、病前の身体機能、日常生活能力、摂食・嚥下機能、既往、今回の疾患、疾患の経過、病巣、意識レベル(意識レベルの変動の有無)、全身状態、高次脳機能障害の有無、頸部、体幹機能、咳鰍の強さ、治療期間など多岐にわたり、これらの要素すべてを総合して決定されます。

嚥下障害の直接訓練の概要

嚥下障害の直接訓練

直接訓練とは


直接訓練とは、食物を直接用いた嚥下訓練のことをいいます。

直接訓練開始についてと注意点


直接訓練開始に関しては、 急性期の経口摂取開始基準を参考にし、RSST、MWST、FT等の詳細な評価行い、摂食の安全な条件が設定された上で摂食訓練を開始します。

その後、3~7日程度、誤嚥や肺炎の徴候がないかを観察し、食事条件をアップさせていきます。

脳卒中患者の摂食・嚥下の特徴としては、覚醒レベルによって機能が容易に変動し得ることと、顔面の麻痺などを伴うことが多いです。
顔面や舌の麻痺により咀曜機能が低下している場合が多く、十分な咀噌によって滑らかで適量の食塊を形成することができなくなるため、咽頭でのクリアランスが悪くなり、食塊の咽頭部での残留を引き起こしやすくなります。

残留食物は誤嚥や窒息の原因となり得るため、脳卒中急性期から咀嚼を要するような食事を摂取させることは危険です。

そのため、軽度であっても嚥下障害を疑う場合は、ペーストなど単一の食形態から摂食を開始することが安全です。

摂食開始後に注意すべき徴候としては、唾液・流涎および痰の増加、咳漱の増加、食後の疲労、発熱、食事中の声の変化(湿性嗄声)、口腔内残留などです。

むせのない誤嚥も多くあるため、むせ以外でもこのような徴候がみられるようであれば、胸部聴診やバイタルサインのチェックを行い、必要に応じて胸部レントゲン検査、採血検査などを実施します。

肺の背側の肺炎では胸部レントゲン検査では明確な異常所見を得られないことが多いため、背側の肺炎を疑う場合は胸部CT検査の実施も考慮します。

これらの検査で誤嚥性肺炎がみられた場合には、いったん直接訓練を中止し、肺炎の治療を実施します。

治療終了後、再度ベッドサイドの嚥下機能評価を行い、必要に応じてVE/VFで再評価を行うようにします。

特に、高齢、両側病変、神経症候の重度な患者は誤嚥性肺炎を来たすリスクが高いため、より慎重な対応が必要となります。

脳血管障害急性期の経口摂取開始基準

脳血管障害急性期の経口摂取開始基準

1.意識障害がJapan Coma Scaleで1桁である。

2.重篤な心肺合併症や消化器合併症がなく、全身状態が安定している。脱水・栄養障害については補正しておくことが望ましい。

3.脳血管障害の進行がない。

4.飲水試験(3mL)で嚥下反射を認める。

5.十分な咳(随意性または反射性)ができる。

6.著しい舌運動・咽頭運動の低下がない。

7.口腔内が清潔で湿潤している。

嚥下障害の内科的治療

嚥下障害の内科的治療

脳梗塞患者では他疾患を合併することも多く、服薬内容も多彩です。 なかには摂食・嚥下機能低下を来たす薬剤も少なくありません。

睡眠薬・抗精神病薬は集中力の欠如や嚥下機能不全を引き起こします。 また、唾液分泌低下に伴う食塊形成不全を呈する抗コリン薬、嚥下機能不全を引き起こすCa拮抗薬などの内服時にも注意が必要です。
このような薬剤は可能な限り中止または減量します。

一方、脳梗塞ではドパミン作動性神経とそれに連なる迷走神経の機能低下が起こり、神経末端からのサブスタンスP放出が低下することによって、嚥下反射・咳反射の低下を来たすことが知られていますが、この部分を狙ったいくつかの薬剤が、嚥下性肺炎の予防に効果的と考えられています。

具体的にはACE阻害薬、アマンタジンなどのドパミン遊離促進薬、カプサイシンなどが知られていますが、抗血小板薬であるシロスタゾールも急性期~慢性期を通じて嚥下性肺炎の予防に効果的である可能性が示されています。

嚥下障害に対する外科的治療

嚥下障害に対する外科的治療

嚥下障害に対しては種々の外科治療法がありますが、いずれも患者に侵襲を与えるため、手術以前に十分なリハビリテーションを行っても改善がないことを確認し、また手術に伴うリスクと予想し得る結果を十分に説明した上で慎重に手術適応を決定するようにします。

術式を選択する際には、誤嚥の有無、輪状咽頭筋弛緩不全の有無、音声機能を残存するか否かがポイントとなります。

誤嚥がなく輪状咽頭筋弛緩不全がある場合は輪状咽頭筋切除術を、誤嚥があり輪状咽頭筋の弛緩不全がなく音声機能を残存させたい場合は喉頭挙上術を、誤嚥と輪状咽頭筋の弛緩不全があり音声機能を残存させたい場合は輪状咽頭筋切除術と喉頭挙上術を、誤嚥が重度で音声機能を犠牲にせざるを得ない場合は喉頭摘出術または喉頭気管分離術を選択します。

喉頭摘出術または喉頭気管分離術を行った場合は、基本的には誤嚥のリスクはなくなりが、音声と引き換えになるため、患者と家族が十分に納得してから手術を実施する必要があります。

その他の嚥下機能の改善を目的とした手術は、喉頭挙上を改善したり嚥下圧を高めたり、嚥下時の抵抗を改善しクリアランスを高めることができるため、何らかの嚥下機能の改善につながることが多いのですが、手術後も誤嚥のリスクは残存するため、術後の間接訓練、直接訓練の継続が重要となります。

LPAとは

LPAとは

LPAとは、2004年にGorno-Tempiniらによって提唱された、PPAのうち、進行性非流暢性失語 (progressive non一且uent aphasia;PNFA)、SDに次ぐ、第3の亜型です。

言語性の短期記憶障害が中核であるため、句や文の復唱障害が主にみられます。

また、自由会話や呼称において、喚語困難や音韻性錯語がみられます。 しかしながら、文法や構文は冒されないため、発語は基本的に流暢です。

優位半球の上・中側頭葉後部から下頭頂小葉を中心とした、萎縮あるいは血流低下がみられます。
病理学的には、ADの病理が多いです。

LPA(Logopenic progressive aphasia)の診断基準

LPA(Logopenic progressive aphasia)の診断基準

Ⅰ.臨床診断
 次の中核的特徴の両方を満たすこと

 1.自由会話や呼称における単語検索障害
 2.句や文章の復唱障害

次のその他の特徴のうち少なくとも3個以上満たすこと
 1.自由会話や呼称で音韻の誤り
 2.単語の理解や物の知識は保たれている
 3.運動性発話は保たれている
 4.明らかな失文法はない


ll.画像所見に支持された、LPA  次の両方を満たすこと

 1.LPAの臨床診断
 2.次のうち少なくとも1つは満たすこと
  a.MRIで、左シルビウス裂周囲後方あるいは頭頂葉の顕著な萎縮
  b.SPECTかPETで、左シルビウス裂周囲後方あるいは頭頂葉の顕著な血流あるいは代謝低下

Ⅲ.LPAの確定病理診断
 臨床診断(下記基準1)かつ、基準2か3

 1.LPAの臨床診断を満たす
 2.特定の神経変性疾患病理を示す組織病理学的証拠 
  (AD,FTLD-tau,FTLD-TDPなど)
 3.既知の病因性突然変異の存在

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)の言語症状

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)の言語症状

アルツハイマー病患者は、初期には物の名前が出てこないという健忘失語を呈します。

中期には、言葉の意味がわからない、反響言語がみられるという超皮質性感覚失語様の症状を呈し、錯語やジャルゴンがみられるウェルニッケ失語様の症状を呈します。

末期には表出障害と了解障害がみられ、無言症となり、全失語を呈し、最末期には無言無動、寝たきりとなり、失外套症候群を呈するようになります。

Probable AD dementia の主要臨床症状

Probable AD dementia の主要臨床症状

A.数か月から数年あまりに緩徐進行

B.報告や観察による認知機能低下の明らかな病歴

C.初期の最も顕著な症状として、病歴や検査において、以下の1つの項目で明らかな低下
 a.健忘症
 b.非健忘症状:失語、視空間障害、遂行機能障害

D.以下の所見がない場合
 a.脳血管障害
 b.レビー小体型認知症
 c. behavior variant FTD
d.意味性認知症、non-fiuent/agramrnatic PPA
 e.他の内科・神経疾患の存在、薬剤性認知機能障害

麻痺側上肢強制使用療法(constraint-induced movement therapy:CI療法)

麻痺側上肢強制使用療法(constraint-induced movement therapy:CI療法)

CI療法は非麻痺側の上肢を三角巾やミットで拘束し、強制的に麻痺側上肢の使用を促すものです。

手関節の背屈が20度、手指の伸展が10度できるのが基準であり、比較的軽度の片麻痺が適応となり、片麻痺が中等度または重度の患者には実施困難でとなります。
Wolfは、14日間1日中非麻痺側を抑制し、Taubらはこれに6時間の麻痺側上肢を使用する訓練を組み込んでおり、いずれも麻痺側上肢機能の改善を認めました。CI療法を行うと麻痺側上肢機能が改善するばかりではなく、上肢運動時の脳活性レベルは低下し運動マップの領域は拡大していました。しかし、実際の臨床場面では長時間療法士と患者が1対1対応で訓練を継続できる施設は限られ、患者に関しても長時間の健側の拘束に耐えうる精神力と麻痺肢の機能レベルが要求されるため、適応には限りがありたす。

そこで、外来通院でも行えるようにに訓練時間を短縮したmodified CI療法が開発されました。
それでも通常の訓練にくらべ拘束時間が長く煩雑であり適応には限界があります。

リハ訓練による運動学習と大脳皮質の変化

リハ訓練による運動学習と大脳皮質の変化

運動学習とは訓練や練習を通じて獲得される運動行動の変化のことを言い、運動学習によって、ニューロンやシナプスに変化が起こることが、知られています。

運動学習により、脳可塑性を引き起こし、ニューロンやシナプスの解剖学的または機能的再構築が生じます。

運動学習を行うと大脳皮質では樹状突起の分岐が増加し、樹状突起にある棘の密度が増加してニューロンあたりのシナプス数が増加します。
またシナプスの構造的な変化も認めます。

動物モデルでの実験では、脳卒中後のリハ訓練において課題を特定した訓練が有用とされています。
訓練により、学習・記憶に関与する神経発生に重要な脳由来神経栄養因子を、増加させる等の分子経路が、活性化します。

マウスの研究では運動トレーニングの種類によって解剖学的および生理学的な変化の違いが指摘されていてます。 耐久性トレーニングでは代謝要求量が増加して新脈管形成を誘導し、スキルに特化した訓練ではシナプス形成やシナプスの相乗効果を誘導することが報告されています。

脳梗塞ラットでは社会的交流があり、自由な身体活動が可能な環境で飼育すると、最も良好な回復が得られたとの報告があります。

特定の運動課題を行う以外にも、動物を様々な遊戯や活動ができる、刺激の豊富な環境で飼育するほうが、刺激が少ない環境で飼育するよりも、大脳皮質の神経ネットワークの変化が増えることも報告されています。

脳の可塑性

脳の可塑性

脳卒中後の機能回復で臨床的に重要なのはネットワークレベルでの可塑性です。

この可塑性は中枢神経の解剖学的および機能的再構築により生じ、中枢神経の機能を制御して障害や生理学的要求に応じて変化します。

脳可塑性には、①もともと存在していたが抑制されていた経路の顕在化(unmasking)、②残存する軸索から側芽形成をして新しいシナプスができる(sprouting)の2つがあげられ、将来的には、③移植(transplantation)により神経の損傷を改善することが可能かもしれません。

脳可塑性は神経回路の再構築により体部位に対応する感覚運動領域の再発現に関係している脳の再マップ化、あるいはニューロン可塑性として出現します。

短期間で発現する変化は機能的にはたらいていない経路の顕在化による機能回復であり、長期間を要する変化はシナプスの形、数、サイズ、タイプの変化を伴う神経再生や側芽によるプロセスです。

マップ可塑性に関して、活動、行動、技術獲得に応じて大脳皮質に体部位発現を引き起こすことが報告されており、ニューロン可塑性は、シナプス抑制が解除され、神経ネットワークのすみやかな変化を生じる際に認められます。

ヒトでの脳卒中後のネットワークの再構築は、病変の周囲はもちろん、病変と同側の大脳半球、あるいは病変と反対側の大脳半球でも起こります。 またリハ訓練により上肢の運動機能の改善とともに大脳皮質での神経ネットワークの再構築を生じます。

脳卒中後の神経機能回復機序

脳卒中後の神経機能回復機序

脳卒中により中枢神経に傷害を生じると、神経細胞や神経ネットワークに機能障害を生じます。

脳卒中急性期には神経細胞死を防止するための治療が重要であり、急性期治療の成否はその後の神経機能回復の重要な因子となります。

脳梗塞急性期において脳血流が低下すると、細胞死をもたらす高度虚血領域と、その周囲に細胞死には至らないが機能障害をもたらすペナンブラ領域が生じます。

ペナンブラ領域の神経細胞は、適切な時間内に再灌流させれば機能回復の可能性があり、急性期治療のターゲットとなります。

ペナンブラ領域の早期の再配流は脳卒中発症後にすみやかな機能回復を生じると考えられ、浮腫の軽減や神経保護的治療も細胞内レベルの神経機能回復を促進します。

また脳卒中によって傷害を受けた神経は再生しないといわれてきましたが、成人の中枢神経系にも神経新生がみられ、虚血損傷が幹細胞や前駆細胞の神経新生のトリガーとなり、穎粒細胞層あるいは損傷を受けた海馬CA1領域や線条体に移動し、神経結合の再構築を生じて機能回復をもたらす可能性も示唆されています。

また動物実験レベルですはありますが、幹細胞移植により炎症を抑制し、新脈管形成、再髄鞘化、軸索の可塑性を起こすことによりニューロンを新生することが示されており、内因性神経幹細胞が脳卒中後の新たな治療ターゲットになる可能性が示唆されています。

脳卒中後の運動機能回復の経過

脳卒中後の運動機能回復の経過

Duncanらは脳梗塞急性期患者104名の経過をFugl Meyerスコアで評価しました。
Fugl Meyerスコアは片麻痺重症度の評価で、発症時の脳卒中重症度にかかわらずおおむね最初の30日以内に大きく改善しましたが、中等度および重度の患者は30~90日のあいだも改善しており、その後わずかであるが180日まで改善傾向がありました。

この結果より、機能障害は30日以内の回復が著しく、大部分は90日以内にプラトーに達すると考えられます。

Duncan以外にも運動麻痺回復に関して多くの報告がありますが、この運動麻痺回復の経過と大きく異なる点はありません。

運動麻痺回復には脳卒中により直接障害を受けた神経やネットワークの修復のほかに、浮腫や血液灌流低下により二次的に障害されていた機能の回復が要因としてあげられます。

一方で神経系の可塑性変化は脳内に新しい神経ネットワークをつくり、残された正常な組織がはたらくことでの機能回復であり、その回復は長期に及ぶと考えられています。

パーキンソン病の非薬物療法(手術療法、リハビリテーション)

パーキンソン病の非薬物療法(手術療法、リハビリテーション)

・手術療法
脳に電極を埋め込む深部脳刺激療法を代表として、パーキンソン病の治療として手術を行うことがあります。術式や用いる機械も日々進歩しており、ドパミンを増やすような遺伝子を脳に導入するような治療も研究されている。

原則として手術療法は薬剤による治療を工夫しても症状がコントロールできない患者に対し適応となる。

まずは、薬を使って症状が抑えられないかどうか、十分に検討することが大切となる。

・リハビリテーション
リハビリに関しても、様々な研究・工夫が進められている。
残念ながらリハビリでパーキンソン病の病態そのものが良くなったり失われた神経細胞が蘇ったりする訳ではないが、実際の歩行能力・生活能力に関してはある程度の改善が見込め、能力の維持という意味でも重要となる。
ただし、症状の程度やライフスタイルによっては、入院して専門的なリハビリを受ける事よりも、家で生活をすること自体が一番のリハビリになることもある。
地域や環境によっても利用できる福祉サービスなどには違いがあるため、患者それぞれの生活環境と症状の程度に応じて対応を相談していく必要がある。

パーキンソン病治療開始のタイミング

パーキンソン病治療開始のタイミング

現在用いられているどの薬剤も、パーキンソン病の病態そのものを根本的に改善させたり進行を遅らせたりする効果は証明されていない。

そのため症状が軽いうちから少しでも早く診断をつけて薬を使わないといけないと考える必要はない。

しかしパーキンソン病の症状のせいで日常生活が上手く送れず家に引きこもってしまったり寝たきりに近い生活になってしまったりすれば、体を動かさないことでますます弱ってしまう(廃用)ため、日常生活を送るために適切に薬を使うことは結果的に体の状態を維持するために有用だと考えられている。

つまり、「生活や仕事に支障がでてきたとき」が治療を開始すべきタイミングとなる。

歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病が全身に及ぼす影響

これまで歯周病は「口の中だけに限局した病気」と考えられてきました。

しかしながら近年歯周病が全身にもたらす影響、全身が歯周病へあたえる影響についての研究も進み、歯周病と関連があるといわれている以下の症状がわかってきています。

①糖尿病
歯周病は糖尿病の合併症の一つとして捉えられています。歯周病を合併した患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られており、歯周病になるリスクが高い反面、歯周病の治療によっては血糖値が改善する可能性があります。

②心疾患
心疾患は生活習慣病が要因とされていますが、別の因子として歯周病菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。歯周病が重篤であればあるほど、心疾患を発症するリスクが高いと言われています。
これは、歯周病によって歯肉で生産された炎症物質が血流を開して心臓血管にも影響を及ぼすためと考えられています。

③脳梗塞
歯周病の人はそうでない人の2.8倍なりやすいと言われています。

④誤嚥性肺炎
唾液中に含まれる細菌が主な原因です。歯周病菌は誤嚥性肺炎の原因になるものが多く、唾液中に含まれる細菌が主な原因です。

⑤骨粗鬆症
全身的の骨が弱くなると、歯を支える歯周組織にも影響があると考えられており、骨粗鬆症は歯周病を進行させる一因とみられています。
特に閉経後の女性は骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下によって、かかりやすく、広がりやすいと言われています。
また治療薬のビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)を服用中に歯を抜くと、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。

⑥関節炎・腎炎
発症する原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌は、口の中に存在する歯周病菌にも多く存在しているため、発症することがあります。

⑦早期低体重児出産
妊娠中の女性で歯周病の人は、そうでない人に比べて低体重児出産や早産する確率が高いことが報告されています。
歯周病による炎症性物質が、へその緒を通じて胎児に影響するため、早期低体重児出産の確立が高まると考えられています。
妊娠中は、つわりによって口腔清掃が不良になりやすく、またホルモンの変化などによって、妊娠中期から後期にかけて歯肉の炎症が起こりやすくなります。
基本的には歯垢が残存しない清潔な状態では起こりにくいため、気を付けて歯をみがくことで予防できます。

左半側空間無視に対する機能的アプローチ

左半側空間無視に対する機能的アプローチ

機能的アプローチは、日常生活活動(Activity ofdaily living;AD:L)のなかで重要度の高いものを繰り返し練習して、患者の自立度を向上させるようなものをいいます。
半側空間無視そのものの改善を促すアプローチではないので、汎化は困難とも考えられていますが、トップダウンアプローチやボトムアップアプローチにおいてもADLに汎化されるというエビデンスは乏しいのが現状であり、日常生活に結びつきやすく、具体的な成果がわかりやすい機能的アプローチで、有用なリハの手法となります。

左半側空間無視に対するボトムアップアプローチ

左半側空間無視に対するボトムアップアプローチ

一側性感覚刺激が古くから行われています。
カロリック刺激を応用し左向きの眼振を誘発する方法、ランダムドットが左側に動く背景を用いて視運動性眼振を引き起こす方法、左後頸部への電気刺激や振動刺激を利用する方法、反復頭蓋磁気刺激等がありますが、無視を改善させるというエビデンスにはなかなか至っていないのが現状です。

ただし、左頸部への振動刺激では、身体中心の座標系の右方偏僑が矯正され、視覚走査訓練と組み合わせると無視が改善するという報告もあり、今後さまざまな方法の組み合わせが無視の改善に寄与する可能性を示唆しています。

また、感覚と運動の協調に介入する目的で半側空間無視患者に対するプリズム適応(プリズム順応)療法が行われています。
これは、視野を右にずらすプリズムの入った眼鏡をかけてリーチ動作訓練を行うことで、視覚的には右側にずれてみえる状態に到達運動を順応させるというものです。

眼鏡を外しても数週間効果が持続するとの報告がある一方、プリズム順応の有用性を確認できないとする報告もあり、現在進行中であるランダム化比較試験や長期予後に関する結果の報告が待たれています。

左半側空間無視へのトップダウンアプローチ

左半側空間無視へのトップダウンアプローチ

代表的な訓練法に視覚走査訓、Spatiomotor cueing、体幹を左に向けるアプローチ、聴覚的フィードバックを用いた訓練等があります。

視覚走査訓練では、訓練課題に近い評価課題では改善がみられたが、課題内容との違いが大きくなると効果が一定しなかったといいます。

また、類似した訓練として、左側をみるようにそのつどcueを出す、探索すべき空間的フレームの左端に目印をつける、右側の標的に反応したら視界から取り去る等の方法があり、いずれも左側を探索しようとせず、右側の刺激に引きつけられ、そこから注意が解放されにくいという視覚走査の問題に着眼した訓練法ですが、視覚走査に特化しずぎても効果が得られにくいとされ、ある程度幅の広い課題で繰り返し訓練すると良いと言われています。

あるいは、患側の左上肢をわざと無視空間である左側の空間内で動かすことで効果が得られるという報告や、体幹そのものを左側に回旋させるとよいという興味深い報告等がありますが、麻痺が重度であったり、体幹の安定が得られていなかったりする場合は実施困難である等、現実的な訓練場面で行うには工夫が必要です。

呼吸リハビリテーション・包括的呼吸リハビリテーションプログラムとは

呼吸リハビリテーション・包括的呼吸リハビリテーションプログラムとは

・呼吸リハビリテーション 呼吸器の疾患によって生じた障害を持つ患者に対して、可能な限り機能を回復、あるいは維持させて、これにより患者が自立できるように継続的に支援していくためのリハビリテーション医療です。

・包括的呼吸リハビリテーションプログラム 呼吸リハが単なる手技を意味するのではなく、理学療法や運動療法、患者指導など「包括的に」広く含んでいるということを強調した用語です。内科治療、呼吸理学療法、栄養療法を組み合わせたプログラムのことを言います。