スクイージングとは

スクイージングとは

スクイージングは呼吸介助法の手技の1つである。排痰体位をとり、胸郭を呼気時に圧迫する(スクイーズsqueeze)することにより排痰を促します。
わが国で開発され発展してきた排痰方法です。
特に訳語はありません。

当初、胸郭を圧迫する方向が気管分岐部に向かって行うとされていたが、これは胸郭の生理的運動方向と一致していないため、現在では生理的運動方向を意識して肺葉、ないし肺区域に相当する胸郭上を圧迫するように修正されています。

タッピングやバイブレーションよりも排痰効果が高く安全であるとされています。

左半側空間無視のリハビリテーションを進める上でのポイント

左半側空間無視のリハビリテーションを進める上でのポイント

①左側にとらわれずに感情的交流を工夫する

②そのままでは見落としても10個の星印がありますと言えば見落とさない、多くの刺激だと見落とすが1つの刺激だと見落とさないなど、反応の仕方に注目して刺激提示を工夫開発する

③できることの能力評価を正確に行い結果の肯定的再評価に努める

④半側空間無視以外の行動特性を分析する

⑤本人の意欲や関心に結びつく課題を設定し、自己意識化行動の援助をする

⑥環境調整・人的資源の確保・言葉の提供など、いわゆる概念的補装具の開発を行う

消失する無視の回復期間の中央値は9週で、発症2~4週に残存する例では6ヵ月後の完全消失は13%であったという報告がある。

左半側空間無視に対して行うリハビリテーションの種類

左半側空間無視に対して行うリハビリテーションの種類

(1)Visual scanning training(視覚探索練習)、左側への注意集中指導“look to the left”The New York studies

(2)左耳冷水刺激(Caloric stimulation)(Rubens 1985)

(3)視覚的課題による直接訓練(Dillerら1977)

(4)経皮的通電による刺激訓練(網本1997、Vallar 1995)

(5)足底接地(ブザー)フィードバックによる歩行改善、左上下肢にブザーやLEDなどを付けて注意を左に向ける訓練(Neglect Alert Device)(Robertson 1991)

(6)音楽療法(前田2001)

(7)車椅子移乗動作の段階的ステップ訓練(Stantonら1983)

(8)Dynamic stimulation LEDの利用(Butterら1989)

(9)健側の目にEye─patching(眼帯)装着(Butterら1992)

(10)Fresnel Prismの利用(対象物が10度右へシフトするプリズム眼鏡)(Rossettiら1998、Rossiら1990)

(11)半側サングラス(Araiら1997)

(12)体性感覚に対する注意の喚起(Gordonら1985)

(13)人的介助(Mental Prosthesis)(Seronら1989)

(14)左上肢使用の活性化と空間運動の手がかり(Robertson 1991)

(15)左への15度の体幹回旋(Robertson 1992、Karnath 1991)

(16)神経薬理学的治療:ドーパミン拮抗薬(Fleetら1987)

(17)低頻度反復経頭蓋磁気刺激(井上2007)

半側空間無視の病巣

半側空間無視の病巣

皮質領域の病巣では、中大脳動脈領域が一般的で、頭頂葉性(側頭・頭頂・後頭葉接合部、角回、縁上回)のものは、多彩な消去現象、視覚的イメージの左半分の無視(知覚的無視)、右側の刺激から離れることが困難、方向性運動低下などの特徴を持ち、病態失認、重度左片麻痺・感覚障害などを伴い予後不良のことが多いです。

後大脳動脈領域の病変では左同名半盲、地誌的失認などを伴うことがあります。

前大脳動脈領域の帯状回や補足運動野など前頭葉病変で生じることがあります。視覚スキャンや視覚定位における左側の運動性の無視、方向性運動低下などの特徴を持ち、予後良好なことが多く、motor impersistenceなどを伴いやすいです。

皮質下病巣では、前脈絡膜叢動脈領域の梗塞で生じることがあり、左片麻痺、感覚障害、記銘力障害などを伴い予後不良の場合もあります。

視床病巣でも生じることがあり一過性のことが多く、皮質下線維の障害などが考えられています。対側性の刺激に注意を固定できない、網様体による注意覚醒障害に伴う無視という特徴を持ちます。

線条体・内包・外包など穿通枝系の障害でも皮質関連線維の損傷により生じることが知られています。

特殊なものとして、テント下の中脳網様体賦活系の損傷や、脳梁損傷によって右手に半側空間無視が生じるといった報告もあります。

責任病巣が多岐に及んでいることが半側空間無視の特徴ともいえます。

注意集中と無視空間

注意集中と無視空間

半側空間無視の現象には、無視されていないような右の空間や、注意をしてみている中で左側を無視することがあります。
このように注意を向けた中での左、さらにその中で左を無視するという現象があり、入れ子現象、タマネギ現象などと呼ばれています。

見えている全体の左半分を無視してしまう主体性半側空間無視と、全体はあまり見落とさないが注目した細部の左半分を見落とす対象依存性半側空間無視に分ける考え方がありますが、この2つのタイプが入り混じって現われることも多いです。

注意を向けた中で左を無視しやすいかどうか、相貌の判別が主に眼や眉で行われるというという特性を考慮し回転相貌課題を用いて実験し、眼や眉が左側や下側にあるほうが無視しやすいことが認められています。

左半側空間無視の臨床症状

左半側空間無視の臨床症状

半側空間無視の、臨床での行動観察からは、ベッドサイドでは「顔や視線が健側を向いている」、「斜めに寝て左側の手足の位置に無頓着」、「座っていても患側に傾く」、「患側にいる人に気付かない」などの症状がみられます。

生活場面では「車椅子の患側ブレーキやフットプレートの操作忘れ」、「移動時に患側の壁や物にぶつかる、ぶつかっても強引に進もうとする」、「乗り移りのときに患側上下肢の置き忘れがあり、その操作も性急かつ強引さある」等見られます。

ADLの場面でも「患側の食事の食べ残し」、「衣服の左袖を通さない」のなどで気がつくことが多いです。

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)は、損傷大脳半球と反対側の刺激に気がついたり、反応したり、その方向に向いたりすることが障害されている病態です。

頻度は右半球損傷で報告が多く特に急性期で70~80%程度、慢性期で40%前後、左半球損傷による右半側空間無視は0~38%といわれています。

半盲は眼球を固定したときの視覚の欠損という視野における障害で、障害を認識し代償動作を行いますが、 半側空間無視は眼球の動きを制限しないときの視覚の欠如で、空間における障害で、障害を否認し代償動作を行わないことを特徴とします。

Kinsbourneの説によると、右脳は左右空間を、左脳は右空間を主に監視しているため、左脳損傷の場合は残っている右脳が左右両側を監視するために無視は生じませんが、右脳損傷の場合は左脳が残るため右空間しか監視できず、左半側空間無視が生じると説明されています。

左下ほど無視されやすいことも指摘されている。

小脳性認知情動症候群 (CCAS)

小脳性認知情動症候群 (CCAS)

小脳損傷による高次脳機能障害の先行研究では、右小脳半球損傷例の言語性学習障害や失語など、左小脳半球損傷例の視空間認知機能障害が報告されています。小脳虫部損傷では感情が不安定になるという報告もあります。これらの障害をまとめてSchmahmannらは小脳病変による遂行機能障害、言語障害、感情障害、空間認知障害の4症状を主症状とするCCASという病態概念を提唱しました。

障害の根拠として、脳血流検査やfMRI、PETを用いた研究から小脳機能と対側大脳半球との関係を示唆する報告が多く、また逆に、大脳半球錐体路の障害で対側小脳の血流低下や萎縮を示すcerebro-cerebellar diaschisisも良く知られています。

小脳と大脳皮質間の線維連絡の解剖学的基盤として、前頭前野の46野と淡蒼球内節、小脳虫部の線維連絡が明らかにされています。

認知症タイプごとの食支援の大まかな考え方

認知症タイプごとの食支援の大まかな考え方

アルツハイマー型認知症と血管性認知症の大きな違いは、進行性か非進行性かという点であります。

進行性であるアルツハイマー型認知症については「病態の進行に伴う特徴」、非進行性である血管性認知症では「損傷部位による特徴」を考慮しつつ食支援を行っていくことが大切です。

漠然と「アルツハイマー型(あるいは血管性)認知症」として患者をとらえる場合と、病期や損傷部位を把握して対応法を考える場合とでは、提供できる医療・介護の質はまったく異なります。

対応法で両者が共通するのは、「キュア=治す」ではなく、「ケア=支える」という考え方です。

基本的に認知症の摂食・嚥下障害はキュアできないことを心にとどめておく必要があります。

医療者や介護者は、どうしても患者に「よくなってほしい」と願いがちです。
しかし、良くなってほしいという思いぼかりが強くなると、良くならないときに医療・介護職だけでなく、患者・家族も消耗してしまいます。

真摯に臨床に取り組んでも症状が改善しない・悪化していく場合は疾患に起因する避けられない症状であり、医療・介護職が責められるものではありません。

専門職としては、病期・病態に基づいて冷静にとらえる必要があります。

局在病変型血管性認知症の摂食嚥下障害

局在病変型血管性認知症の摂食嚥下障害

認知機能障害に深くかかわる部位(角回、視床、前脳基底部など)に単一の血管性病変を生じることによって発症します。

症状は部位によって多岐にわたり、記憶障害、アパシー、傾眠など、さまざまです。

それらに随伴して食行動の障害が生じることや、嚥下機能の障害(誤嚥等)を生じることがあり注意が必要です。

皮質下性血管性認知症の食支援

皮質下性血管性認知症の食支援

主に多発性ラクナ梗塞とビンスワンガー病によって生じる認知症が含まれます。

日本では、このタイプの血管性認知症が多く、そのなかでもラクナ梗塞によるものがもっとも多いとされています。

ラクナ梗塞は、大脳基底核の穿通枝領域に小さな梗塞巣が多発する病態である。一方、ビンスワンガー病は、高血圧や脳の動脈硬化などによる脳の血流障害のため大脳白質が広範に障害されることによって生じる病態であり、徐々に進行するのが大きな特徴です。

そのため、アルツハイマー型認知症などの変性性認知症と誤診されやすいです。

症状としては、歩行障害、バランス障害などの基底核の症状がみられる。また、うつ傾向や感情失禁が多いのも特徴です。

四肢のまひや高次脳機能障害を認めない、もしくはあったとしても軽度であることが多く、臨床でのイメージとして「軽症例」としてとらえられやすいです。
しかしながら、嚥下機能に関しては、ドーパミン関連の神経ネットワークが障害されるため咽頭のサブスタンスPが減少し、嚥下反射低下や咳漱反射低下といった重度の嚥下障害を呈することがあるため注意が必要です。 そのため、皮質性や局在病変型の血管性認知症よりも誤嚥性肺炎のリスクは高いです。

対応法としては、誤嚥の防止・誤嚥性肺炎の予防に重きをおいたものとなります。
皮質下性血管性認知症の場合も意思疎通が困難な症例が多いため、嚥下訓練ではなく食支援の観点からのアプローチがメインとなります。

対応方法としては、認知しやすい食事(温度、味、においの工夫)、嗜好に合わせた食事、口腔機能に合わせた食事、増粘剤・ゼリー剤の利用、食事時のポジショニングにするなどの対応をします。

服用薬剤についても注意が必要です。ドーパミンをブロックする作用機序をもつ薬剤(抗精神病薬制吐剤など)は、ドーパミン関連の神経ネットワークの障害をさらに悪化させるため、嚥下障害を助長することがあります。
病院では不穏などのために抗精神病薬が投与されることがあり、それが原因で誤嚥や不顕性誤嚥を呈している症例があります。

抗精神病薬は、すべての高齢者で嚥下障害の原因になりえますが、皮質下性血管性認知症においては、とくに注意が必要です。

皮質性血管性認知症の食支援

皮質性血管性認知症の食支援

中大脳動脈などの主幹動脈が閉塞することによって、主に大脳皮質に梗塞巣が多発して生じる認知症を指します。

脳梗塞などの病巣に対応する皮質部位の障害と血管性認知症に共通してみられる遂行機能の障害を呈します。

皮質の言語野の障害のために失語を呈している場合や運動野の障害のために四肢麻痺を生じている場合には、臨床的に認知機能障害を重度に判定してしまうことがあり注意が必要です。

その場合でも、記憶障害が軽度であり人格も保たれている症例は多いです。そのため、遂行機能障害のために食事に時間がかかったとしても、ぞんざいな態度をとってはいけません。

さらに、食事の嗜好の主張がはっきりしていたり、食事の介助者によって反応が異なったりするといった症状にもつながります。

両側に病巣が存在する場合は、偽性球麻痺を示すことがあり脳卒中の嚥下リハに共通したアプローチが必要となります。

ただし、認知症のために意思疎通が困難であることが多いことから、患者自身が行う訓練や嚥下代償法は適応できないことが多いです。
マッサージや他動的な関節可動域(ROM)訓練食事時のポジショニングなど、介助者が主体となって行える支援を選択します。

脳血管性認知症の食支援の考え方

脳血管性認知症の食支援の考え方

脳血管性認知症は、局所的な脳血管障害や持続性脳虚血の結果生じる認知機能障害のことを指じます。 四大認知症のなかでもほかの3つ(アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型)の変性疾患による認知症とは異なり、非進行性のものが多いという特徴をもちます。
そのため、ほかの変性性認知症とは分けて考えられることもあります。
脳血管性認知症の認知機能に共通して認められるのは、遂行機能障害や注意障害、歩行障害です。 しかしながら、それ以外の障害は損傷する中枢の部位により、皮質欠落症状や基底核症状などさまざまな障害が現れるのが特徴です。
したがって、脳血管性認知症の食支援を考えるときには、アルツハイマー型認知症では「病態の進行」の把握が重要であるのに対し、「損傷された部位」の把握がポイントとなります。

アルツハイマー型認知症中期の摂食・嚥下障害の症状と対応

アルツハイマー型認知症中期の摂食・嚥下障害の症状と対応

アルツハイマー型認知症は変性疾患であるため、経過に伴い脳の萎縮も進行します。そのため、見当識障害や視空間認知障害も悪化し、失行や失認も出現してきます。
そのため、嚥下に関しては、食事を始められない、食器や食具が使えない、手を使って食べる、食器の模様に気をとられる、他人の食事を食べる、異食といった食行動の障害が出てきます。
これらの症状は、適切な食事環境のセッティングを行うことにより軽減することができます。

はじめのうちは、声かけをする、食器を持ってもらう、模様のない食器にする、集中できる環境を提供する、などの間接的な介助をすることで症状は軽減することが多いです。

進行すると、自分で食事はできますが食べこぼしが増えてきます。
さらに進むと、介助者が食事を口に入れるといった直接的な介助が必要となってきます。

この段階でのもう1つの大きな特徴は、一部の症例で拒食のような症状を認めることがあります。
口に食べ物を入れても口を動かさない、飲み込むまでに時間がかかる、口を開けない、などさまざまな拒食様症状があります。

この拒食様症状は、ボディイメージの喪失、すなわち自分の舌や顎がどこにあるのかが分からなくなることにより、食事を送り込めなくなると考えられています。しかし、詳細は不明です。
拒食様症状が出ると、食事介助の手を非常にわずらわせることとなり、また、体重減少にもつながることがあるため、介助者にとっては大きなストレスとなります。

重要なことは、拒食様症状のほとんどが一時的なもの(期間は1~6か月程度であり症例によって異なる)であり、再び食べるようになることを介助者に説明しておくことです。

拒食様症状が何年も続くと思うと介助者も消耗してしまいますが、数か月で治まると思えば許容できる場合が多いです。

拒食様症状に対して、介助の労力を考えて胃ろうを造設する方法でありますが、その場合は数か月後に拒食様症状が改善していないかどうか経口摂取の可否を再評価するということを忘れてはいけません。

誤嚥が時折みられるようになるのも中期からですが、誤嚥性肺炎につながるような重度の誤嚥を呈することは非常にまれです。
これは、中期から重度の誤嚥を呈するレビー小体型認知症とは大きく異なる特徴です。

長期臥床と精神障害

長期臥床と精神障害

長期臥床により身体的な障害だけでなく、精神面も問題も出現します。

不安や抑うつ症状が出現し、判断力、記憶力、注意力の低下となり認知症となる場合もあります。

不動化により脳波上基礎波(α波)の徐波化がみられ、感覚運動刺激の減少が関与して中枢神経機能が低下していることも示唆されています。

認知機能の低下となり、特に高齢者ほど、認知症、うつ症状になる可能性が高くなります。

対策としては、まず病気の早期から刺激を与え、適切な運動を提供することが大切です。

また、抗精神病薬も適切に併用することも必要となります。

褥瘡と廃用症候群

褥瘡と廃用症候群

褥瘡とは体の接触面から受ける圧力によって、組織の毛細血管が閉塞したために血管の灌流域が壊死に陥ってしまう病態です。

一般的には褥瘡の発生は外力の大きさと外力が作用している時間が主な決定因子であるとされていますがが、生体側の全身状態または外力を受ける局所の状態にも左右されます。
特に骨の突出部位に外力が集中されやすく、褥瘡発生の好発部位となります。

廃用症候群では同じ姿勢を長時間とることにより、外力の作用時間が長くなり、さらに生体側の全身状態も悪いことが多いため褥瘡が発生しやすい。

対策としては、褥瘡の成因から圧迫圧の分散、外力の作用時間の短縮、全身の栄養状態の改善、局所の皮膚状態の改善などが挙げられます。手術療法も有力な手段です。

初期のアルツハイマー型認知症と摂食障害

初期のアルツハイマー型認知症と摂食障害

アルツハイマー型認知症の初期は、一般には中核症状が主で、周辺症状はみられたとしてもまだ軽度です。

アルツハイマー型認知症の初期にまれにみられるのは、偏食や食欲といった先行期の問題です。

一部の症例で嗜好が甘味にかたよる、空腹を感じない、食べすぎるといった症状が出ることがあります。

もう少し進行すると、記憶障害や見当識障害、実行機能障害がみられるため、食べたことを忘れる、食器の使い方が分からない、などの症状を生じます。

食事をした直後に症例が「食事はまだ」と聞くのは有名なエピソードですが、それは近時記憶の障害によるものです。

血管性認知症では、脳血管障害の部位によっては発症当初から誤嚥を生じることがありますが、この時点のアルツハイマー型認知症では、誤嚥を生じることはありません。

すなわち、嚥下障害は生じておらず、食行動の障害のみを生じます。

長期安静と消化器系に及ぼす影響

長期安静と消化器系に及ぼす影響

安静臥床により腸管の蠕動運動は低下し、栄養の吸収率が低下します。
その結果、食欲不振、体重減少、便秘といった症状を生じてしまいます。

安静により抗利尿ホルモンが分泌抑制され、循環血液量は低下し、便秘となります。
ベッド上での排便も非生理的であり便秘を促進します。
また、逆流性食道炎の頻度も増加します。
対策としては、安静を防止することです。
トイレ動作の確立と野菜などの繊維を多く含んだ食事と水分補給が重要となります。
緩下薬や下剤などの薬剤も検討することも必要です。

半側空間無視の発現機序説

半側空間無視の発現機序説

1 注意障害説
右脳は左右に注意を向けるが、左脳は右へ注意を向けるため、右脳損傷で左への注意が低下する左半分には注意が向かない。(Kinsbourne 1987,Weintraubら 1989)

2 表象障害説
意識の中で、外空間、自己の身体に関する表象が認識されない。脳内で左半分のイメージがない。(Bisiachら 1978)

3 方向性運動減少説
知っているけど左へ手が動こうとしない(Heilmanら 1993)

4 眼球運動障害説
左側への眼球のサッケードの立ち上がりが不良で、左右同時に刺激されると右へ引かれる。

5 amorphosynthesis説
頭頂葉損傷で複数の感覚を空間処理できない。

6 一側性記憶障害説
左半側空間に提示された刺激を忘れてしまう。

長期臥床と呼吸器症状

長期臥床と呼吸器症状

長期臥床により呼吸筋の筋力低下や胸郭の可動域制限により肺活量や最大換気量の減少、咳漱力が減少してしまいます。

同一姿勢の仰臥位が長く続くと、重力の影響で、気道内分泌物もより背側に貯留しやすい状態となり、末梢気道閉塞が生じ肺胞は虚脱しやすく嚥下性肺炎のリスクが高まってしまいます。

対策としては、長期臥床の場合には、早期離床が一番の予防となります。
安静を強いられる場合には、体位変換や座位、立位時間をアップさせることが重要です。

呼吸方法としては、口すぼめ呼吸や腹式呼吸を行わせ、呼吸介助もする必要があります。

深部静脈血栓症(DVT)の対策

深部静脈血栓症(DVT)の対策

深部静脈血栓症(DVT)では、何といっても予防が第一です。そのためには早期離床と下肢の運動(自動、他動)です。弾性ストッキング(下肢の圧迫で表在静脈に流れる血液を減少させて、深部静脈の血流量を増やし血栓形成を抑える)や間欠的空気圧迫法(足底部からの静脈血流を保ち下肢血流停滞を予防する)による下肢の圧迫も有効です。

DVTの診断がくだされれば、ワルファリン内服による抗凝固療法を開始します。

効果の発現まで数日間を要するために、その間はヘパリンの静注を併用します。

深部静脈血栓症が残存する場合には下肢マッサージは禁忌となります。

長期臥床と静脈血栓症

長期臥床と静脈血栓症

長期臥床により、深部静脈血栓症(DVT)の発生が高まります。 原因として血液停滞、血液凝固能の亢進が考えられます。

臥床により、下肢の筋ポンプ作用が減少して血液が停滞します。 循環血漿量の減少によって血液凝固能は亢進し、下肢のDVTのリスクが高まることになります。

DVTにより生じた血栓が血流で運ばれ、肺動脈が閉塞すると、肺血栓塞栓症を生じます。
急性の循環動態不全、ガス交換不全を起こして呼吸困難を呈します。

末梢動脈が完全に閉塞すると肺梗塞をおこし肺組織の壊死となります。 肺塞栓の中で妬く20%に肺梗塞が起こるといわれています。

自覚症状は、突然の呼吸困難、息切れ、胸痛、胸内苦悶、背部痛、咳、血痰、失神、意識レベル低下、下肢痛などが上げられます。

他覚所見として血圧低下、頻脈、徐脈、肺雑音、チアノーゼ、頚静脈怒張、浮腫、下肢腫脹、発熱などがありますが、突然ショック症状で発症する致死性肺血栓塞栓症も多く、注意が必要です。

悪性腫瘍による凝固機能亢進や、下肢の手術後にもリスクが高くなる。

診断は、凝固線溶系マーカー(D−dimer)、超音波検査、静脈造影、造影CTで行われます。

肺血栓塞栓症の診断は、肺血管造影、胸部造影CT、肺血流シンチグラム、肺換気シンチグラム、心電図、心エコー動脈血液ガス胸部Xpで診断を行います。

廃用症候群と心機能、全身持久力の低下

廃用症候群と心機能、全身持久力の低下

安静臥床により、心拍数の増加、一回拍出量の減少、最大酸素摂取量の低下を認めるようになります。

安静臥床により、一回拍出量が減少し、その代償反応として心拍数の増加を認め、心拍出量を保持することとなります。

運動能力の指標とされる最大酸素摂取量は、安静臥床の日数と高い相関関係があるとConvertinoらは報告しています。

対策としては、仰臥位での軽度から中度の運動では、健常者の安静時の最大酸素摂取量の減少は完全に予防することはできませんが、減少度を抑えることは可能といわれています。

心肺系の機能が低下した時、運動開始時は予測最大心拍数の65%以下で心拍数上昇を20拍/分程度の運動強度を指標としています。

健常者(高齢者を含む)では最大酸素摂取量の50〜80%の運動が全身持久力の改善につながるとされています。

脳卒中患者では、最大運動負荷の30〜50%やATレベルでのエルゴメーター訓練が有効とされています。

頻度や時間については週に3〜5回、一回30分程度の運動をすることが多いです。

運動負荷は、バイタルチェックを行いながら、徐々にアップさせることが望ましいです。