重症心身障害児の嚥下障害への対応

重症心身障害児の嚥下障害への対応


頸部緊張からの反り返りや後屈は誤嚥の重大な要因となっているため、筋緊張を和らげる姿勢は嚥下に有利です。

しかし、誤嚥を防止する最適な姿勢は小児例では個々の症例でかなり異なります。
VFで誤嚥しにくい姿勢、誤嚥の程度を把握しておくことが可能です。

日常的な肺炎予防として、口腔ケアは成人同様に大切な対策です。
特に経口摂取が中止されると口腔の汚染は急激に悪化するため口腔ケアの必要性が高くなります。

嚥下機能訓練は成人では保存的治療の中心ですが、重症児では筋緊張亢進や姿勢保持の問題、さらに年齢とともに悪化する病状から効果は乏しく積極的な適応とはなりません。
誤嚥量の増加、肺炎発症で保存的な治療が限界となると、経口摂取を中止し経管栄養に切り替えることになります。

しかし、経鼻からの栄養チューブ留置は咽頭の刺激が胃食道逆流からの嘔吐の誘発につながるため、胃瘻からの経管栄養が最善と言われています。
唾液の流れ込みや肺炎による呼吸障害が増悪し、特に気管内挿管された時には気管切開術が考慮されます。

しかし、気管切開術のみでは唾液の気管流入を完全に防止することはできず、結果として頻回の気管内吸引を要する生活が続きます。
さらに、喉頭挙上の制限、気管カニューレのカフによる食道の狭窄など嚥下機能の低下だけでなく、気管カニューレ留置に伴うトラブルなど負の要因が増えます。
術前に家族への十分な説明が必須であり、気管切開術ではなく、誤嚥防止術を検討する必要があります。

小児では行われる誤嚥防止術は喉頭気管分離術および気管食道吻合術が第一選択とされています。
手術適応決定のためには、肺炎の反復、高度誤嚥の確認、発声喪失に対する家族の同意、手術の生命予後への改善、小児科医の手術への希望、術後のフォロー体制の確立をする必要があります。
手術療法の時期や方法は、主治医である小児科医との綿密な連携のもとに決定ことが大切です。
小児の術後の特徴として気管軟骨の軟化・胸郭変性や肥満からの気管孔・気管狭窄、また呼吸器が必要となる症例など術後も気管カニューレが留置される症例があります。
気管カニューレと気管壁との慢性的接触は致死的な気管腕頭動脈瘻のリスクとなるため、最適な気管カニューレの選択に加え、定期的な気管内の観察、気管カニューレの留置位置と血管の確認のためのCT検査はリスク回避に有用です。