ジストロフィン dystrophin

ジストロフィン dystrophin

ジストロフィンは、ジストロフィン・β-ジストログリカン(β-dystroglycan)・α-ジストログリカン( α-dystroglycan)・ラミニン2( laminin 2)からなる「ジストロフィン軸」と呼ばれる蛋白質複合体を構成し、これを支えるサルコグリカン(sarcoglycan)複合体とともに、筋線維膜を裏打ちするアクチン線維のネットワークと基底膜とをつないで筋線維膜を補強しています。ジストロフィンが欠損すると、この補強が弱まり、筋収縮時に筋線維膜に強い負荷が掛かって損傷を起こします。損傷を受けた筋線維膜に小さな穴ができます。細胞外のカルシウム濃度は細胞内の濃度の1万倍以上高いことから、筋線維膜に穴が開くと高濃度のカルシウムが一気に細胞質内に流れ込みます。一方、筋収縮は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが滑ることによって生じますが、これは、筋小胞体からの少量のカルシウム放出によってコントロールされています。このような仕組みのあるところに高濃度のカルシウムが流入すると、筋線維の過収縮が引き起こされ、筋線維の内部構造が破壊されてしまいます。これが筋線維壊死の原因と考えられています。筋線維は壊死を起こすと、カルパインなどのプロテアーゼが活性化されて自己消化を起こすとともに、速やかにマクロファージが出現して障害を受けた細胞質を貪食します。さらに、休眠していた筋衛星細胞が活性化されて分裂増殖し、筋線維を再生し、やがてほぼ元通りの筋線維が構築されます。筋ジストロフィーの場合は、何度も壊死が繰り返されるために、やがて再生が追いつかなくなり、筋線維数が減少していきます。更にそのスペースを埋めるべく間質の線維組織や脂肪組織が増加します。