心不全の誘因

心不全の誘因

○治療の中断
一般的注意(塩分摂取制限や過負荷の回避など)や定期的な服薬を怠ること。
臨床的には最も頻度が高く、定期的な医療面接による情報収集が重要である。

○感染
発熱による代謝の亢進、頻脈、咳嗽などが心臓への負荷を増大させる。
慢性的な肺うっ血の存在が呼吸器感染症を誘発しやすい面もある。
弁膜症や先天性心疾患の存在下では感染性心内膜炎の合併にも注意が必要。

○不整脈
心不全の結果として不整脈が出現する場合も多いが、原因あるいは増悪因子として作用する場合も少なくない。臨床的に頻度が高いのは頻拍性心房細動である。代償的な一回拍出量の増加が制限されている場合には、徐脈性不整脈、房室解離や心房細動による心房収縮の喪失、左脚ブロック等の心室内伝導障害に基づく収縮拡張の不均一性(asynchrony)が問題になる場合もあり、両心室ペーシング等の新たな治療法も試みられてきている。

○無症候性心筋虚血
高齢者や糖尿病患者では高頻度に認められる。

○血栓塞栓症
高度心不全例や心房細動合併例では血栓塞栓症の合併頻度も高い。
動脈系では脳梗塞、腎梗塞、静脈系では肺血栓塞栓症(PTE)の合併が重要である。特にPTEの合併は臨床的には見落とされがちで、低酸素血症や頻脈をさらに増悪させ致死的になりやすい。急激な動脈血液ガス所見の悪化や右心負荷所見の増悪を認めた場合には可及的速やかに(除外)診断を行うことが重要である。

○その他
一過性の過激な労作や情動、貧血、甲状腺機能障害、生理や妊娠、心筋抑制のある薬剤

の服用()(β遮断剤や抗不整脈剤、抗癌剤など)にも注意が必要である。