意味記憶障害にみられる症状

意味記憶障害にみられる症状

長期記憶のうち、意識にのぼる記憶である陳述記憶は意味記憶とエピソード記憶に大別されます。
エピソード記憶は「いつ」「どこで」「どのような状況で」という時間・場所・感情などの文脈を持つ個人的な体験の記憶です。
一方、意味記憶とは、社会や文化に共通の知識として言語活動をはじめヒトのさまざまな認知活動を支えている記憶です。
選択的意味記憶障害であるSD例では側頭葉萎縮の左右差や進行過程でさまざまな症状が出現し、左側頭葉萎縮優位のSD例では語義失語が特徴的です。
SDに見られる語義失語では、障害された語を引き出そうと語頭音ヒントを提示しても効果はなく、2音節、3音節とヒントを増すと、まだことばとなっていない非語の段階で「ああ、~というんですか」(例二鉛筆→「“えんび’というんですか」)という反応が認められます。
意味理解のみならず、SDにみられる語義失語では語や諺の初頭部分を与えられて続きを答える補完課題ができず、語彙そのものの消失を示唆しています。
これは、もはや語から意味のアクセス障害に留まらず、語という意味情報そのものが失われた状態と考えられます。

語義失語が言語の問題に限定されるのに比べ、意味記憶障害であるSDは言語だけでなく、視覚、嗅覚触覚聴覚など、さまざまな知覚表象を経由しても対象となる「モノ」の理解ができなくなります。