マイオフェイシャルリリース


マイオフェイシャルリリース

筋膜は,全体として身体のすべての他の要素を被っているため,膜組織どうしの異常な癒着は,筋膜とその深部にある筋組織などすべての組織で滑り合う性質や運動性を低下させ,円滑で機能的・効率的な運動や抗重力姿勢の保持を制限する。

顎関節症では,顎関節自体の生痕や炎症,筋スパズム,疾痛,痙縮,筋緊張異常,偏った筋活動などに加え,頭部や頸部のアライメント不良,異常勢,習慣的姿勢パターン,慢性的な身体ストレスや精神的ストレスなど種々の原因で筋膜の機能異常をきたす。これらの機能異常の結果として,顎関節に関与する筋膜の短縮や癒着,栄養障害,関節可動域制限,筋の廃用性萎縮・弱化,活動性の低下,循環不全,触知覚異常などを生じさせることとなる。

そこで,リリース(解きほぐす)によって筋膜のねじれを元に戻し,筋と筋の間もしくは筋と他の構成物の間の可動性や伸張性を改善し,筋やその他の構造物が正常に機能できるように助けるのが治療の目的となる。

深筋膜の制限を穏やかにリリースすることは,筋や血管,神経などへの異常な圧の軽減,疹痛の軽減,動きや機能の量と質の改善などを可能とする。リリースする際は,身体に合わせて手の全体を指先まで密着させる。治療者自身が手をリラックスさせ,筋スパズムの最初の障壁に達するまで交叉させた手でゆっくりとその筋膜の弾性要素を伸張する。
障壁に達した時点で,その障壁がリリ一スされるまで90秒から120秒間(長くても3分から5分間)十分な圧力を維持し,膠原要素もリリースし,リリース後はゆっくりと手を離す。技術の上達に合わせて時間は短縮する。強い力で無理に伸張するのではなく,皮膚のたるみがなくなるくらいの圧力(5~20g)を加えて伸張する。患者の皮膚が治療者の手の一部かのように感じとることが大切である。



顎関節症の理学療法Ⅱ

竹井仁 氏

HiTosHi TAKEI, RPT, MS
School of Physical Therapy, Tokyo Metropolitan University of Health Sciences: 7-2-10 Hi,gashiogu, Arakawa-ku, Tokyo
I16-8551, Japan. +81-3-3819-1211
Rigakuryoho Kagaku 15(2): 49-54, 2000. Received Feb. 29, 2000.
より抜粋

マイオフェイシャルリリースは嚥下の間接訓練としても応用できると考えられる。